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(「パルナ」の施設前に置かれた赤ちゃんをいれる籐のかご “flickr”より By Steve Browne & John Verkleir https://www.flickr.com/photos/proxyindian/2972041628/in/photolist-bdKHEM-6GuxWX-7pDWsN-dAF1Dz-aQMBbg-dALt4N-7pA3Q2-7pDWtd-7pDWuJ-7pA63T-7pDYkG-7pDYgU-7pA2da-7pDYeS-7pDUQs-7pDYwQ-7pA3Xk-7pDWqN-7pDYpG-7pA3Uk-7pA2bp-7pDYhf-7pA2fc-7pA2ck-7pDWvd-7pA2at-n9RFki-ibo6Uj-8CgiYx-okNiBZ-okMNpn-35Pmo-gU5Cr-odk5fM-otKgab-ocaDFZ-ocbR9X-oefQKH-oxAFcF-7pDUSq-7pDWrw-7pA3Si-7pDWw9-7pDULq-i52hcT-5wCur3-4Lttwm-6eCZ8i-ouvNru-owa97u)
【日本:年間9人 7年間で101人】
一般に「赤ちゃんポスト」と呼べれているものは、日本では熊本市の慈恵病院「こうのとりのゆりかご」が運営されています。
****赤ちゃんポスト、昨年度は9人 設置から7年で101人****
熊本市は22日、親が育てられない子どもを匿名で預かる慈恵病院(同市西区)の赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」に2013年度は9人(男児4人、女児5人)が預けられたと発表した。
12年度と同数で、07年の設置から7年間で累計101人になった。
発表によると、親の身元を特定できず、市が戸籍を作成したのは6人(66・7%)で、割合は過去最高。
生後1カ月未満の新生児は8人で、うち7日未満が3人。生後1カ月以上1年未満の乳児が1人。
子どもを預けた父母らの居住地は熊本以外の九州・沖縄が1件、近畿地方、関東地方が各1件、不明が6件。出産場所は自宅(推測含む)が最多の6件、医療機関(同)は2件で、不明が1件。
ゆりかごを利用した理由(複数回答可)は「不倫」が2件で、「生活困窮」「未婚」が各1件、6件は不明。
母親の年齢は30代が2人、40代が1人、不明が6人。9人の親の婚姻状況は、1人が離婚、2人が既婚、6人が不明だった。【5月23日 朝日】
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その賛否については、いろんな意見がありますが、ここでは触れません。
【中国:全国32か所 多くが障害を抱えた乳幼児】
同様の制度は世界各地にありますが、中国の場合は障害を抱えた赤ちゃんが多く、子供への不十分な医療福祉制度の現実も指摘されています。
****「赤ちゃんポスト」深刻な現実=1400人収容、多くに障害―中国****
育児できない乳幼児を託す中国版「赤ちゃんポスト」が2011年6月、初めて河北省石家荘市に設置され、現在までに全国32カ所に設けられたが、過去3年間で約1400人に上る乳幼児らが収容されたことが国営新華社通信の報道で25日までに分かった。
多数が重度の障害や疾病を抱えており、子供への不十分な医療福祉制度の現実が浮かび上がった。
山東省のメディアなどによると、同省済南市の児童福祉施設の赤ちゃんポストには6月1~6日、42人の乳幼児が捨てられ、このうち5~6日の24時間だけで12人に達した。
5日深夜には熟睡した6歳の女児が突然、車から降ろされ、施設前の路上に放置された。服のポケットには2600元(約4万2000円)が入っていたという。
また別のケースでは女児を捨てる際、「パパを許して」と漏らし、ひざまずいて路上に頭を付けた父親の姿もあった。
中国で赤ちゃんポストは「赤ちゃん安全島(安全地帯)」と呼ばれるが、広東省広州市の施設では今年1月末の運用開始後、計260人超が収容されたものの、施設の受け入れ能力を大幅に上回ったため3月中旬に運用を停止。
新華社電によれば、浙江省衢州市当局者は捨てられる乳幼児のあまりの多さに「このままのペースでは1年でわれわれの施設の子供は100人を超える。収容能力をはるかに超過している」と訴えている。
また赤ちゃんポストに捨てられるのは、脳性まひや知的障害、ダウン症など疾病や障害を抱えた乳幼児がほとんど。
「『赤ちゃん安全島』を、乳幼児を捨てる場所と勘違いしている親」(新華社電)が多いことから、昼間だけ運営したり、監視カメラを備え付けたり、警察と連携して周辺でのパトロールを行ったりする対策を講じる施設も出ている。
赤ちゃんポストは生命をつなぎ留める役割を果たしているが、捨てられる乳幼児の多さ、捨てざるを得ない親の状況などは中国の社会福祉問題の深刻さを示している。【6月25日 時事】
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“3年間で約1400人”というのは相当な数ですが、中国の場合は全国32か所に設けられていること、出生数が日本の約100万人に対し1600万人と桁違いに多いことなども考慮する必要があるでしょう。
【インド:1~10ドルで売られる子供】
インドの場合は1970年代に同様の仕組みが生まれたとのことですが、男児が望まれる社会風潮を反映して、女児が「バスケットベビー」の7割を占めています。
****インドで置き去りにされる「バスケットベビー」****
インドの首都ニューデリーの古い街並みが残る一角に近い、レンガの壁に囲まれた場所に籐のカゴが1つ置いてある。
この小さなカゴには大きな役割がある。望まれずに生まれてきた赤ん坊を受け取るという仕事だ。
カゴの所有者は「パルナ」――ヒンディー語で「ゆりかご」の意味――という団体。このカゴに置き去りにされた子供たちはその後どうなるのだろうか。
パルナの起源はインドとパキスタンが分かれた60余年前にさかのぼる。このとき、大勢の移民と社会的な大混乱が発生し、そのさなかに孤児となった子供たちの面倒をみるために発足したのがパルナの前身となる組織だ。
籐のカゴは1970年代に置かれるようになった。生まれたばかりの赤ん坊が施設の前に置き去りにされることが相次いだからだ。
パルナのプログラムディレクターは「籐のカゴに入れられた最初の子供たちは、今は30代になっている」と話す。
現在、パルナには85人から100人の子どもたちが暮らしている。パルナは寄付で賄われているNGO(非政府組織)のデリー児童福祉協議会(DCCW)の支部組織だ。
ここにやってくるのはカゴに置き去りにされた子供ばかりではない。列車の駅や人混み、宗教施設などで迷子になっていたり、捨てられている子供が警察に連れられてくることもある。(中略)
置き去りにされた乳児の多くが精神的・肉体的な障害をもっている。しかも、大半(70%前後)が女児だ。かつては90%が女児だったという。(中略)
この数年間、カゴに捨てられる乳児の数は減少した。理由は不明だが、パルナのスタッフは子供の人身売買や悪質な養子縁組が増えているせいではないかと疑っている。
DCCW関係者によると、インドの最も貧しい地域では、子供はわずか50~500ルピー程度で売られるという。せいぜい1~10ドルだ。
パルナは独自に養子縁組も行っている。例外もあるが、大概はインド国内で養子先が決まるという。【8月7日 WSJ】
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上記記事で印象的なのは、後半部の“この数年間、カゴに捨てられる乳児の数は減少した。理由は不明だが、パルナのスタッフは子供の人身売買や悪質な養子縁組が増えているせいではないかと疑っている。”という箇所です。
「バスケットベビー」が減少して喜ぶべきかと言えば、そうではなく、もっとおぞましい現実が進行しているようです。
1~10ドルで売られる子供・・・なんとも過酷な現実です。
【タミルナードゥ州では少なくとも毎月1~2人の新生児は捨てられているか、死んだ状態で発見されている】
もともとインドで「赤ちゃんポスト」が推進されたのは、「女の子の赤ちゃん殺し」という残虐な現実があるからだと言われています。
****インドで止まらない女子新生児殺し、タミルナードゥ州の「赤ちゃんポスト」は是か非か ****
インドでは「女の子の赤ちゃん殺し」が収まらない。
女子の新生児はある時は水路やごみ箱に捨てられ、ある時は親に毒で殺され、またある時は生まれる前に殺される。この問題の是非を考える記事をロイターは12月3日、ホームぺージに掲載した。
■救った命は数千!
こうした残虐な行為を防止するため、インド南部のタミルナードゥ州政府は1992年から、“捨てられる運命にある新生児”の世話を親が匿名で同州に任せられる「ゆりかごの赤ちゃん政策」を進めてきた。
親が望まない女子の新生児を福祉施設などが受け入れて育てる。いわゆる「赤ちゃんポスト」のひとつだ。これまでに救った命は数千に上るという。
タミルナードゥ州の中でも、新生児の遺棄がとりわけ深刻なのはセーラムだ。
この地区の児童保護担当者は「女の子の赤ちゃんが水路やごみ箱に捨てられるのはよくあること。赤ちゃんが生きている場合もあるが、すでに死んでいることもある」と話す。「一人目の女の子は生まれても大丈夫。でも、二人目、三人目は殺されてしまうことがある」
ゆりかごの赤ちゃん政策が始まった20年前、親たちは、人目を避けて新生児を施設に委ねに来ていた。だが最近は堂々と渡しに来るという。
施設へ預けられた女子の新生児は「ライフ・ライン・トラスト」と呼ばれる養子縁組に出すシステムに孤児として登録される。
ゆりかごの赤ちゃん政策がスタートして以来、貧しい親やシングルマザーが3700人以上の新生児を預け、このうち3600人以上が中流階級の夫婦に引き取られた、と州政府は発表している。
■新生児の遺棄を後押し?
女の子を身ごもった場合、妊娠中絶もポピュラーな間引き方だ。超音波を使った胎児の性別判定はインドでは違法だが、胎児が女子とわかると多くの親が中絶を選択する。
医学雑誌ランセット・メディカル・ジャーナルは2011年、過去30年でインド全体で1200万の女子の胎児が中絶されたとの記事を載せた。
性別判定を依頼する金銭的余裕がない貧しい地域ではやはり、中絶よりも乳幼児殺しが多くなる。正確な数字は定かでないが、タミルナードゥ州では少なくとも毎月1~2人の新生児は捨てられているか、死んだ状態で発見されている、と州政府や活動家などは明らかにしている。
2013年6月にはタミルナードゥ州ダルマプリで、女子の新生児に毒入りミルクを飲ませ、殺し、遺体を埋めた容疑で父親が逮捕される事件も起きた。
新生児・胎児殺しは、インド人口の男女比を大きく歪めている。1961年は、男性1000人に対する女性の比率は976人だった。ところが2011年は919人にまで減っている。
だがどうして女子の新生児は嫌がられるのだろうか。その主な理由は「ダヘーズ」(結婚持参金)による経済的な圧迫だ、と活動家らは指摘する。
ダヘーズとは、結婚する際に女性側が男性側に金品を贈る習慣のこと。ダヘーズの金額が少ないと新婦が殺される事件も多発している。法律はダヘーズを禁止するが、今もなおこの習慣は続いている。
タミルナードゥ州政府によると、ゆりかごの赤ちゃん政策が実施されている地域では男女比の開きは改善されるなど、成果を残しているという。
だが人権活動家らは「この政策は、赤ちゃんを遺棄することを推し進めている。女の子の赤ちゃん殺しの根本的な解決にはなっていない」と批判する。(田中美有紀)【2013年12月13日 開発メディアganas http://dev-media.blogspot.jp/2013/12/blog-post_13.html】
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圧倒的な貧困、カースト制や「ダヘーズ」などの因習、レイプ事件でも明らかになった男尊女卑の風潮・・・めまいがするようなインドの現実ですが、開発手腕が評価されているモディ首相はどのように立ち向かうのでしょうか?
経済面での成果は時間を要するでしょうが、懸念されてていたヒンズー至上主義の側面を窺わせる出来事の方は早くもいくつか報じられています。
****インド:多言語国家で政権が進めるヒンディー語使用促進****
5月に発足したヒンズー教至上主義政党・インド人民党政権が、ヒンディー語の使用を促進している。
だが、インドは多言語社会で理解できない国民も多いうえ、ヒンディー語はヒンズー教に密接に結びついた言語のため、イスラム教徒や非ヒンディー語話者から反発が上がっている。(後略)【7月30日 毎日】
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****インド:ミャンマー難民動揺 モディ首相、強硬姿勢の恐れ 「誰も助けてくれない」****
ミャンマーで多数派の仏教徒との衝突を逃れインドへ避難した少数派ベンガル系イスラム教徒(ロヒンギャ族)の間で、不安が広がっている。
5月に就任したヒンズー至上主義を掲げるインドのモディ首相がイスラム教徒の移民に強硬姿勢を取るとみられるためだ。
支援者は「(世俗的な)前政権すら難民を不法移民扱いした。モディ政権ではどうなるのか」と懸念する。(後略)【8月2日 毎日】
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