(ウガンダ西部の村で、コンゴ民主共和から国境を渡って来た避難民ら(2018年1月24日撮影)【1月27日 AFP】)
【居座る大統領 今年12月の選挙実施も不透明】
アフリカの資源大国コンゴの果てしない混乱については、これまでも時折取り上げてきました。
*****コンゴの住民虐殺 中央アフリカの民兵組織衝突 イエメンではコレラが蔓延・・・世界の現状****
アフリカ中央に位置する資源大国コンゴでは、カビラ大統領が任期切れを過ぎても“居座り”を続けていますが、そうした政治混乱に加えて、中部・東部では多くの武装勢力が跋扈する状況が続いています。
そのひとつが、4月24日ブログ“コンゴ 中央カサイ州で暴力が横行 住民100万人以上が避難 政府高官・大統領の責任”でも取り上げた中央カサイ州での政府軍と反政府勢力の衝突です。
“政府軍と反政府勢力の衝突”と言うよりは、正確には“両勢力による住民虐殺”と言うべきでしょう。
現地カトリック教会は、3383人が殺害されたと報告しています。(後略)【2017年6月23日ブログより再録】
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年が明けても状況は改善していません。悪化の一途のようです。
カビラ大統領は依然として居座りを続けています。
****デモ隊と治安当局が衝突、7人死亡 コンゴ民主共和国****
アフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)で12月31日、任期が切れた後も大統領職にとどまるカビラ氏(46)の退陣を求めた集会の参加者と治安当局が衝突し、少なくとも市民7人が死亡、約120人が逮捕された。
ロイター通信などによると、デモは教会などが呼びかけ、首都キンシャサなどで実施された。治安当局はデモの実施を認めず、インターネット回線を遮断。一部地区で参加者に発砲したという。(中略)
憲法は3選を禁じており、カビラ氏は任期満了を迎える16年12月までに退陣する予定だったが、「有権者名を更新できない」などの理由で選挙の実施を先送りしている。今年12月に選挙を実施するとみられている。【1月1日 朝日】
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“今年12月に選挙を実施するとみられている”というのも、かなり怪しい状況です。
****<コンゴ民主共和国>混乱深まる 「大統領退陣デモ」活発化****
アフリカ中部の「資源大国」コンゴ民主共和国で、任期切れ後もその地位にとどまっているカビラ大統領(46)の退陣を求めるデモが活発化し、治安部隊との衝突が激しくなっている。
カビラ政権は大統領選の延期を繰り返す一方、市民の不満を治安当局の力で封じ込めようとしており、欧米諸国などが懸念を表明している。
コンゴの憲法は大統領の任期を2期までと定めている。カビラ氏は2016年末に2期目の任期が切れた後も退陣を拒否。与野党は昨年中の大統領選実施で合意したが実行されていない。
今のところ選挙は今年12月に実施が予定されているが、選挙管理委員会は資金不足を理由にさらなる延期も示唆している。
今月21日に首都キンシャサなど各地で選挙の実施を求める抗議行動が行われたが、治安当局は集会などの開催を認めず教会に集まった参加者に催涙ガス弾を発射。少なくとも6人が死亡、68人が負傷し、抗議を呼びかけた教会関係者の拘束も相次いだ。
昨年12月31日のデモでも7人が死亡している。また、国連コンゴ安定化派遣団(MONUSCO)によると、治安当局によって昨年、「超法規的」に殺害された人々の数が1176人に上った。
こうした事態を受け、米国務省は「最も強い言葉で非難する」との声明を発表。旧宗主国のベルギーや欧州連合(EU)なども相次いで懸念を表明した。
AP通信などによると、カビラ大統領は26日、6年ぶりに記者会見に臨んだが「政情不安は存在しない」などと持論を展開。
しかし、次期大統領選への立候補を明確に否定しなかったため、野党はカビラ氏が「(3選を可能にする)憲法改正をもくろんでいる」と批判を強めている。
一方、大統領選を巡る問題とは別に、政府軍と反政府武装勢力の紛争が続く東部の南キブ州でも衝突が激化。24〜26日の3日間で、約7000人の避難民が隣国ブルンジに逃れたといい、治安の悪化が懸念される。
日本の約6倍の国土を誇るコンゴは銅やコバルトなど豊富な天然資源ゆえに紛争が絶えない。1998年に東部を中心に起きた大規模な内戦は周辺国を巻き込んだ国際紛争に発展。2003年に終結したが、紛争関連での死者は約540万人に上った。【1月29日 毎日】
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“6年ぶりに記者会見に臨んだ”というのも“民主共和国”の国名にそぐわない話です。
【東部・中部で続く武装勢力の跋扈、政府軍との衝突 混乱で深刻化する飢餓】
政府軍と反政府武装勢力の紛争が激化している南キブ州では、上記のように大量の難民が発生しています。
****コンゴ民主共和国の戦闘激化、約7000人の避難民 湖を渡りブルンジに****
政府軍と反体制派の戦闘が激化しているコンゴ民主共和国から今月24~26日までの3日間で7000人近い避難民がマットレスやスーツケースなどの家財道具を船に積んでタンガニーカ湖を渡り、隣国ブルンジに入っていたことが分かった。ブルンジ警察が26日に明らかにした。
コンゴ民主共和国東部の南キブ州では政府軍と反体制派の衝突が激化している。
ブルンジ警察によれば、24日以降、政府軍と民兵組織ヤクトゥンバとの戦闘を逃れるために同国からブルンジに渡り、難民として登録した人々は合計6692人に上る。ただし避難民流入のペースは落ちてきているようだという。
ある人権活動家はAFPに対し、「昨日(25日)のタンガニーカ湖は、避難民と彼らの家財道具をぎっしり積んだありとあらゆる大きさの船でほぼ埋め尽くされ、ものすごい眺めでした」と語った。
ブルンジに入った避難民の一人は「生活環境は極めて厳しい」と話した。「大多数の人間が食料や水もなく、トイレもない」【1月27日 AFP】
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コンゴの凄いところは、上記のような西部・首都キンシャサでの大統領退陣要求デモの混乱、東部の南キブ州での武力衝突だけにとどまらず、国内各地で武装組織などによる衝突・混乱が起きていることです。
従前ブログでも取り上げているように、中部のカサイ地域でも政府軍、民兵組織入り乱れての衝突で、危機的状況が生じています。
****コンゴ民主共和国:カサイ地域で320万人が深刻な食糧不足 飢きん発生目前****
国連WFP、ユニセフ(国連児童基金)、FAO(国連食糧農業機関)の3つの国連機関は、コンゴ民主共和国で数十万人のもの人々の命を救うための時間が限られていると厳しい警告を発表しました。
5歳未満児40万人が重度の急性栄養不良に
紛争のために避難を余儀なくされた農民たちは、植え付け期を3期連続して失いました。そのために、人々には食べるものがほとんど残されていません。食糧支援は彼らのニーズに応えきれていません。
カサイ地域で深刻な食糧不足に直面している320万人のうち、12月に支援を届けられたのはわずか40万人です。75万人以上が依然として避難生活を余儀なくされています。
林に隠れ住んでいた63万人近くの人々が焼き払われた村に戻りましたが、食糧生産を再開するための支援を必要としています。地方のコミュニティの90%以上が、農業以外に生きる術をもっていません。(中略)
国連WFPコンゴ民主共和国のクロード・ジビダー事務所長は、「各国によって支援が提供される兆しがあるものの、発生している人的被害の規模の大きさに対して獲得できた財源はまったく不十分です。コンゴ民主共和国政府と国際社会は、カサイ地域での大規模な飢きんの発生を予防するために、あらゆる分野での支援に再び取り組まなければなりません。それが迅速かつ共同に実施されなければ、多くの人が命を失うことになります」と話しました。【1月23日 国連WFPニュース 】
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本来は、大統領居座りなどの政治混乱などを許す状況にはないのですが・・・。
こうした危機的状況にあっても、保身しか考えないような指導者だから今の危機的状況があるとも言えます。
これは地図を見ていての全くの個人的印象ですが、首都キンシャサはコンコ共和国との国境近い西の端にあって、中東部など日本の6倍もある広大な領域を全く統治できていないのではないでしょうか。「資源さえ確保できれば・・・」ということで、統治の意思があるのかさえ疑問です。首都キンシャサは経済成長著しく、建設ラッシュに沸いているそうですが。
【「資源の呪い」が招いた“アフリカ大戦”と現在の混乱】
“今の危機的状況”と書きましたが、コンゴの危機は今に始まった話ではなく、むしろ今は“長年の大乱がようやく収まった平和の時代”とも言えます。
前出【1月29日 毎日】の最後にあるように、“日本の約6倍の国土を誇るコンゴは銅やコバルトなど豊富な天然資源ゆえに紛争が絶えない。1998年に東部を中心に起きた大規模な内戦は周辺国を巻き込んだ国際紛争に発展。2003年に終結したが、紛争関連での死者は約540万人に上った。”という歴史があります。
現在も、各地で武装勢力が跋扈しているのも、豊富な地下資源が資金源となっているからでしょう。また衝突が絶え間なく起こるのも、そうした資源の利権をめぐる争いがあってのことでしょう。
1998年8月から2003年7月にかけて、ツチとフツの民族対立や資源獲得競争が原因で行なわれた“第2次コンゴ戦争”がアフリカの多くの国家の介入を呼び込んだ“アフリカ大戦”となったのも、豊富な地下資源が各国を呼び寄せた結果でしょう。まさに「資源の呪い」の典型です。
それにしても“死者は約540万人”というのは、とんでもない数字です。第2次世界大戦以降の最も犠牲者の多い戦争です。
そんな歴史があると“「超法規的」に殺害された人々の数が1176人に上った”とか、中東部での衝突で発生する犠牲者など、政治・軍指導者には“ごく日常的なもの”にも思えてしまうのかも。
【“無関心”が助長する中東を凌ぐ人道危機】
更に問題は、“アフリカ大戦”で信じられないほどの犠牲者が出たこと、現在も続く衝突・混乱で多大な犠牲者で出ていることが、“アフリカのよくある混乱”としてかたづけられ、世界的にはほとんど注目されていないことです。
中東の混乱は、石油供給の不安定化という影響から、ひろく世界にその危機感が共有されますが、アフリカの奥地で何万人殺されようが、あるいはレイプされようが、国際社会には関係ない・・・と言ったら言い過ぎでしょうか。
****「子ども40万人が餓死する」2018年、“シリアより深刻な”コンゴの人道危機に目を向けてほしい****
かつてノーベル平和賞受賞者のエリ・ヴィーゼル氏は、「愛の反対は憎しみではなく、無関心だ。」と言った。
第二次世界大戦以降に起きた紛争で、最も多くの犠牲者を出しているのはどの国で起きている紛争か、ご存じだろうか。
シリア、イラク、アフガニスタン、パレスチナ、ウクライナ...。そんな答えが頭に浮かんだかもしれない。
正解は、コンゴ民主共和国。第二次世界大戦以降に起きている紛争としては最多である、540万人以上の犠牲者を生み出している。
多くの人にとっては、意外な答えだったかもしれない。なぜなら、「数字」に繋がらないコンゴの惨状が日本で報じられることなどほとんど無いからだ。
世界最多の避難民、子ども40万人の餓死
コンゴ民主共和国では紛争や武装勢力の影響によって、昨年だけでも170万人が避難民となっている。ノルウェー難民評議会は先月6日、「これは巨大危機だ。人々が暴力から逃げるそのスケールはとてつもなく、シリアやイエメン、イラクを凌ぐペースだ」と発表している。
コンゴでは2016年、平均して毎日5000人が家を追われたことになる。
UNICEF(国連児童基金)は先月12日、コンゴ民主共和国南西部カサイで、5歳以下の子ども40万人以上が深刻な栄養失調状態にあり、緊急支援が行われなければ2018年の間にも餓死する恐れがあると警告した。
ユニセフ・コンゴ民主共和国事務所のタジュディーン・オイウェイル代表代理は、「何か月にもわたり多くの家族が厳しい避難生活を強いられていることによって、カサイ地方の深刻な栄養失調や不安定な食料供給がもたらされている」と述べている。
レイプが横行しているコンゴ東部
南西部カサイの治安が悪化する一方で、コンゴ東部は「女性にとって世界最悪の場所」と形容されることもある。毎日のように、数百人もの規模でレイプが横行していることもあるからだ。
コンゴ紛争では、深刻な数の「女性に対する性的暴力の被害」が報告されている。国連人口基金によれば「1998年以降、推定20万人の女性と少女が性的暴力の被害を受けた」と言われる。
対象となるのは成人女性だけでなく、中には、4歳の女の子までもがレイプの被害に遭っている。詳しくは以下の記事「4歳の少女をレイプ、女性にとって最悪の場所-アフリカ最大の紛争コンゴの性暴力を考える」を読んでほしい。
コンゴの人道危機は中東よりも深刻
2018年に入り、コンゴでは1300万人以上もの人が緊急の支援を必要としており、昨年の同じ時期より約600万人も多くなっている。
コンゴでは、2016年12月までに退陣する予定だったカビラ大統領に対する抗議活動が度々起きており、首都キンサシャから離れた地域でも武装勢力が跋扈する原因となっている。
先月6日にBBCが報じた「DR Congo displacement crisis 'worse than Middle East'」(コンゴ民主共和国の避難民危機は"中東よりもさらに悪い")は、この国の惨状がいかに厳しい状況にあるか、そしていかに世界から関心を向けられていないかを物語っている。
シリアやイラクで続く紛争がメディアを通じ私たちに届けられる一方、これほどの惨状が今なお続いているにもかかわらず、コンゴ紛争がメディアに取り上げることは少ない。
日本においては、この紛争の存在すら知らない人がほとんどだろう。もしかしたら、「コンゴ民主共和国」という国自体もそれほど知られていないかもしれない。
かつてノーベル平和賞受賞者のエリ・ヴィーゼル氏は、「愛の反対は憎しみではなく、無関心だ。」と言った。2018年、コンゴで起きている人道危機に目を向けてみてほしい。【1月9日 原貫太氏 ハフィントンポスト】
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