孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ・ガザ地区 衝突で増える犠牲者 アイアンドームに「火炎だこ」 トランプ流「世紀の取引」?

2018-06-08 22:55:59 | パレスチナ

(【6月7日 朝日】白衣で救護活動中に胸を撃たれて死亡したボランティア看護師ラザン・ナジャルさん)

白衣の医療従事女性射殺 イスラエル軍「意図的、直接的に狙った銃撃はない」】
パレスチナ・ガザ地区とイスラエルの境界では、3月30日以来、パレスチナ難民の帰還を求める抗議行動に対するイスラエル軍の実弾発射による阻止行動(イスラエル最高裁は容認)によって、死者は120人にものぼっています。

当初の報道では、イスラエル建国で70万人の難民が出た「ナクバ(大惨事)」を記念する5月15日までデ抗議行動は続く・・・とのことでしたが、「ナクバ」を過ぎた今も終息していません。

今日6月8日は、断食月(ラマダン)の最終金曜日ということで、再び激しい衝突が懸念されています。

****<ガザ東部>大規模デモで軍と衝突恐れ 難民、帰還求め集結****
パレスチナ自治区ガザ東部のイスラエル領との境界近くで8日、パレスチナ難民が故郷に戻る権利を求める大規模デモが行われた。3月30日から続く「帰還の行進」の一環。

イスラエル軍との衝突で60人以上が死亡した5月14日のデモに匹敵する規模とみられ、衝突の激化が懸念される。
 
8日はイスラム暦の断食月(ラマダン)の最終金曜日。ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスはヨルダン川西岸のパレスチナ人に対しても、西岸各地にイスラエルが設置している検問所などでの抗議行動を呼びかけた。
 
3月末以降続く境界デモでは、少なくとも120人のパレスチナ人がイスラエル軍の銃撃によって死亡し、3500人以上が実弾で負傷した。

ハマスなどは「帰還権を含むパレスチナ人の権利を要求し続けることを世界に伝える」ため、今後もデモを続けるとしている。
 
イスラエル軍は、境界に近づかないよう警告するビラをガザ上空から投下し、境界に沿って部隊を配置。イスラエル最高裁は「境界での暴動は長年にわたるハマスとの武力衝突の一環」とする軍の主張を受け入れ、境界デモ鎮圧での実弾使用を容認している。【6月8日 毎日】
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イスラエル軍の実弾を使用した対応には国際的にも批判は多々ありますが、特にパレスチナ側の怒りを掻き立てたのが、救護にあたっていた白衣の医療関係女性が射殺されたことです。

****ガザ医療関係女性を射殺 イスラエル軍、救助活動中****
パレスチナ自治区ガザのイスラエルとの境界付近で1日、パレスチナ人による反イスラエルデモがあり、ガザの保健当局によると、イスラエル軍の銃撃を受けた医療関係者の女性(21)が死亡した。

ロイター通信は目撃者の証言として、女性は白衣を着用し、手を高く上げ負傷者の救出に向かう途中で胸を撃たれたと伝えた。国際社会でイスラエル軍の「過剰な武力行使」への非難がさらに高まるとみられる。(後略)【6月2日 共同】
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この女性だけでなく、救助に当たっていた別の3人も撃たれたとのことで、パレスチナ医療救援協会は声明で「医療関係者への銃撃はジュネーブ条約違反の戦争犯罪だ」と非難、ガザにおけるイスラエルの人道法違反に国際社会が早急に対応するよう訴えています。【6月3日 AFPより】

女性の葬儀には数千人が参加、参加した人々は口々にイスラエルへの報復を誓った・・・とも。【6月4日 産経】

****娘の武器は、白衣だけ。撃つなんて…」 21歳看護師の銃撃死、波紋 ガザのデモ****
パレスチナ自治区ガザ地区で続くイスラエルや米国への抗議デモで、イスラエル軍に撃たれて亡くなった女性看護師(21)に対し、イスラエル軍は5日、「意図的、直接的に狙った銃撃はない」との声明を出した。

撃たれた状況の調査も続けるとしたが、パレスチナや国連など国際社会からは「過剰防衛だ」として非難が強まっている。(中略)
 
心配する(母親の)サブリーンさんに「白衣と(医療従事者を示す)身分証明書が私を守ってくれる。人道支援をしているだけだから大丈夫」と話したという。(中略)
 
「彼女の唯一の武器は白衣だった。デモの現場で人の命を救っていた娘を撃つなんて。国際社会は世界的な人道問題を見過ごさず、中立的な独立したチームによって調査してほしい」(後略)【6月7日 朝日】
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「意図的、直接的に狙った銃撃はない」(イスラエル軍)とのことですが、抗議行動参加者の“足”を狙っているとも。

****<ガザ>「足を銃撃され重傷の男性多い」現地の惨状を報告****
 ◇「国境なき医師団」の医師と看護師、都内で記者会見
パレスチナ難民の帰還を求めるデモが続くパレスチナ自治区ガザで、イスラエル軍との衝突による負傷者を治療した「国境なき医師団」の医師と看護師が6日、東京都内で記者会見し、現地の惨状を報告した。

足を銃撃され重傷を負った若い男性が多く、重い障害が残る恐れがあるといい、暴力の停止と国際社会の支援を求めた。
 
会見したのは、5〜6月にガザの病院で手術を担当した外科医の渥美智晶(ともあき)さん(42)と看護師の佐藤真史(しんじ)さん(49)。

渥美さんは「イスラエル軍はデモを止めるためか、明らかに足を狙って銃撃している。負傷者の多くは骨も含め損傷が激しく、何度も手術が必要で感染症のリスクも高い」と指摘した。
 
佐藤さんは、在イスラエル米国大使館がエルサレムに移転し、デモが激化した5月14日は手術を待つ患者が廊下にあふれていたと報告。「足を撃たれた10歳の少年が手術中、涙を流してコーランを唱えていたのが印象に残っている」と語った。
 
2人は、日本ではガザの問題に対する関心が低いとして「まずは実情を知り、関心を持ってほしい」と呼びかけた。
 
一方、5月にガザの医療機関を訪れた国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の清田(せいた)明宏保健局長も6日、日本記者クラブで会見した。「デモが沈静化しても、障害が残る負傷者のケアや精神的サポートなど医療的ニーズが高い状況は続く」と述べ、国際社会による継続支援の必要性を訴えた。【6月6日 毎日】
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国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の清田明宏保健局長は、イスラエル軍との衝突で多数の死傷者が出ているパレスチナ自治区ガザの現状について「患者が多く、病院の受け入れ能力を超えている。医療体制は崩壊寸前だ」とも指摘しています。【6月6日 共同より】

イスラエル支援で孤立するアメリカ
イスラエルの過剰防衛に対する国際批判はありますが、国連安保理では、例によってアメリカの拒否権で非難決議は否決されています。

採決ではロシア、フランスなど10カ国が賛成したが、米国1カ国が反対、英国やオランダなど残り4カ国は棄権に回ったとのこと。

また、アメリカの提案したハマス非難決議は、賛成は提案した米国だけで、採択に必要な9カ国の賛成票に遠く及ばず、アメリカの国際的な孤立が一段と鮮明になった・・・とも。【6月2日 産経より】

アメリカがこだわるハマス(ガザ地区を実効支配)も、表向きの言動は別にしても、本音ではイスラエルとの衝突が拡大することは望んでいないと思われています。

****<ガザ>「ナクサの日」に誓う占領への抵抗****
 ◇ハマスなど各派の指導者が演説
1967年の第3次中東戦争でヨルダン川西岸やガザ地区などをイスラエルに占領されたことを思い起こす「ナクサの日」(後退の日)の5日、パレスチナ自治区ガザではイスラム組織ハマスなど各派の指導者が演説し、イスラエルの占領に対する抵抗を誓った。(中略)

イスラエル境界でのデモで、ハマスはイスラエルなどに封鎖されたガザ地区の窮状に国際社会の関心を集めることには成功した。

ただ、先月14日のデモで多くの犠牲者を出したこともあり、各派や住民からは「デモをしても実際には何も達成できていない」といった批判や不満も出ている。
 
ハマスはこれまで、イスラエル領へのロケット弾発射など報復攻撃を抑制してきた。だが先月29〜30日には過激派「イスラム聖戦」による多数の迫撃砲弾などの発射を黙認しており、各派の不満を吸収する狙いがあったとみられる。
 
イスラエルのシンクタンク「国家安全保障研究所」(INSS)のコビー・ミカエル上席研究員は「全ての当事者が大規模戦闘への発展を避けるために一定の『衝突のルール』を定めようと努力している」と分析。

「イスラエルもハマスも戦闘は望んでいない。現実的な唯一の代替案はエジプトの仲介によって双方が暗黙の了解に達することだろう」と指摘する。【6月5日 毎日】
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“衝突のルール”・・・・どういう内容でしょうか?

イスラエルに大きな実害が出ない範囲で、ガス抜きのため、ロケット弾・迫撃砲弾数発程度はかまわない・・・とか、デモ参加者の頭・胸は撃たないが、足を狙うのはOK・・・といった類でしょうか?

ガザ地区からロケット弾が発射されると、発射したのが誰であれ、イスラエル軍は“ガザ地区管理責任者”のハマスを攻撃しています。

****イスラエル軍、ハマス施設に空爆 ロケット弾受け報復****
イスラエル軍によると、パレスチナ自治区ガザ地区から2日夜と3日未明、イスラエル領内に向けてロケット弾が少なくとも4発が発射された。

3発は対空防衛システム「鉄のドーム」で迎撃されたが、もう1発は届かなかったとみられ、ガザ地区内に着弾したという。

この攻撃を受け、イスラエル軍は3日、ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスの関連施設8カ所に報復の空爆をした。
 
ロイター通信によると、一連の攻撃でけが人などは報告されていないという。
 
5月29〜30日には、ガザ地区からイスラエル南部に向けて、計約100発の迫撃砲弾やロケット弾が発射された。ガザ地区でハマスと連携する武装組織「イスラム聖戦」がハマスと連名で発射を認めた。

だが、その後のイスラエル軍の報復攻撃を受け、ハマスは「(ハマスもイスラエルも)戦闘停止に合意した」との声明を発表していた。(後略)【6月3日 朝日】
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迎撃率90%を誇るイスラエルの防衛システム「アイアンドーム」ですが、ロケット弾は手製の粗末なものが多いのに対し、アイアンドームは億円単位の費用がかかります。

この軍事費を支援しているのがアメリカで、その結果、アメリカ軍事産業の需要も増えるという見返りもあるようです。

****軍事費の4分の1を提供 「米国」はなぜイスラエルに肩入れするのか*****
トランプ大統領は、選挙期間中、陸軍や海兵隊の規模を拡大し、また海軍のために戦艦を、空軍には戦闘機を増やすと述べ、さらに核兵器の近代化を口にしていた。

そのおかげか、トランプが選挙に勝利すると、ロッキード・マーティン、BAEシステムズ、レイセオンといった軍需産業の株価は軒並み上昇した。

トランプ政権の誕生によって、アメリカとイスラエルの軍産複合体の協力はさらに進んでいくだろう。

2014年、イスラエルがガザを攻撃すると、アメリカはイスラエルのロケット防衛システム「アイアンドーム」に対して2億2500万ドル(およそ230億円)の拠出を決定している。これは、ガザでの死者が2000人を超える中での決定だった。

このガザ攻撃にも、アメリカやイスラエルの軍産複合体の意図があったと言われている。アイアンドームは、イスラエルの軍需産業であるエリスラ社やラファエル社などの製造によるものだが、アメリカの軍需産業の大手レイセオンの部品も使われている。

つまり、イスラエルが起こした戦争はアメリカに利益をもたらす仕組みになっているというわけだ。

アメリカのイスラエルに対する対外軍事融資FMF(Foreign Military Financing)は、メルカヴァ戦車などイスラエル国産の兵器を製造する資金ともなっている。アメリカのFMFによるイスラエルへの資金援助は、イスラエルの軍事費全体の4分の1を構成するようになった。

親イスラエルのトランプ政権はこの傾向に拍車をかけ、アメリカとイスラエルの軍事協力はいっそう進むに違いない。(後略)【2017年3月29日 SmartFLASH】
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そうした防衛システムを誇るイスラエルを悩ましているのが、かつての日本軍の“風船爆弾”をも想起させる「火炎だこ」だそうです。

****火炎たこ」被害相次ぐ=パレスチナから飛来―イスラエル****
反イスラエル抗議デモが続くパレスチナ自治区ガザから、火を付けた布や火炎瓶をぶら下げた「火炎たこ」が飛ばされ、イスラエル側の村で火災被害が相次いでいる。「原始的な技術だが、捕らえるのが困難」(イスラエル軍当局者)なため、対策に手を焼いている。
 
イスラエル側では、ガザからのロケット弾の脅威に普段さらされているが、今回のデモでは火炎たこが農地や森林に落ちて発生した火災に悩まされている。

人的被害は確認されていないものの、消防・救急隊報道官によれば、これまでに約450カ所の火災に対処。「早く対応しないと火がすぐ広がる」ため、臨戦態勢を敷いているという。
 
イスラエル軍は小型無人機(ドローン)を使って、イスラエル領空に入ったたこを「撃墜」している。リーベルマン国防相は4日、「約600枚のたこが飛ばされ、うち400枚の撃破に成功した」と明かした。
 
被害面積は約9平方キロメートル以上。被害総額も100万ドル(約1億1000万円)以上に達するとみられ、ネタニヤフ首相は、パレスチナ自治政府に損害賠償を求める方針を示している。【6月8日 時事】 
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再びトランプ流「世紀の取引」の話も
完全にイスラエル側に立つことを明らかにしたアメリカにパレスチナ問題の仲介は期待できませんが、パレスチナ側に力で現状を認識させることを背景に、トランプ大統領は「世紀の取引」を目論んでいるとも。

****パレスチナ問題(ガザと「世紀の取引」)*****
(中略)ガザ情勢とal qods al arabi net の伝えるトランプ政権の「世紀の取引」案について取りまとめたところ次の通りです。

「世紀の取引」は消息筋から漏れ出た情報とのことで、、勿論確認できる筋合いのものではありませんが、なるほど、、イスラエルの立場からすれば(パレスチナ側さえ受諾すれば)実現可能な和平案ということか?という気はします。

報道の内容からは、「世紀の取引」とは大きく出過ぎたものですが、パレスチナ側が飲めば、サウディや湾岸諸国が莫大な金を払うとでも言うのでしょうか?

いずれにしても流出情報の程度の話ではありますが・・・(中略)

世紀の取引 上記al qods al arabi net の伝えるところ次の通り

・米筋及びイスラエル筋によれば、「世紀の取引」は、これまでのオバマ、クリントン政権が提案していたところに、イスラエルに対する配慮を加えたもので
  解決はイスラエルとパレスチナの2国家方式とする
  イスラエルがユダヤ人の民族国家であることを認める
  パレスチナは非武装国家とする
  エルサレムはイスラエルの首都とするが、同時に1967以前はエルサレム市域ではなかった地域(具体的場所は不明)をエルサレムと呼び、この地域をパレスチナ国家とする。この地域はそもそものエルサレムとは接続していない
  ヘブロンを含む占領地の10%を見返りなしでイスラエルに併合する
  その他両国家で土地の交換を交渉する

  この案は1月に米調停官からアッバス議長に提示され、議長は不満であったが、彼を追い出すことはしなかった
  他方サウディ皇太子は4月に訪米の際、この案を見せられ、同意した 

これが事実であれば、従来想像していたよりは、かなり現実的な案‥‥特にこれが最初の案で、交渉の過程でパレスチナ側が飲みやすいような修正を加えることが想定されているのであればなおさら…ではないかという気がします。

然し、注目されるのは、ヘブロンで、これまでの歴代のイスラエル政府が併合を主張しなかったところを入れてきたのは、矢張り右翼、入植者に対する配慮で、ある意味ではトランプ政権のイデオロギー的側面を反映しているような気がします。まさかこの点は最後まで固執する積りなのでしょうか?

何しろ、これまではイスラエルを抑え、バランスをとる役割を果たしていた米がトランプの下で完全にイスラエル側につき、またサウディ等湾岸諸国もかなり露骨に米国支持を表明していることを考えれば、ある意味ではパレスチナ側は抑え込まれつつあるという状況で、客観的な力のバランスは圧倒的にイスラエルに有利となっている状況ですので・・・

しかし、パレスチナ側としては下手な妥協をするよりは、アラブ、イスラム世界の支援を当てにして、妥協を排して、力比べ、長期の持久作戦の方をとる可能性の方が強い気もします。

ま、いずれにしても、今後現実に米国の「世紀の取引」案が正式に提示され、トランプが強力に双方の妥協をもたらすことができるのか、甚だ興味のあるところです

そもそもトランプにとって、中東和平=パレスチナ問題の政治的解決は、イランの核合意問題やシリア問題その他の中東の一連の問題の中で、どの程度の重要性を有する問題なのか、正直言って良く分かりません)【5月26日 「中東の窓」】
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どの程度の信ぴょう性・現実性のある話かはわかりません。

「世紀の取引」の“噂話”には、2月18日ブログ“パレスチナに関する「世紀の取引」がささやかれるイスラエル・エジプト・アメリカの協調体制”でも紹介した、“パレスチナ人が歴史的なパレスチナをあきらめる代わりに、湾岸諸国からの1000億ドルの支援を得て、シナイ半島に移住し、そこに彼らの国家を作るのをトランプ政権としても認める”といったものもありました。(カネは日本や韓国に出させるという北朝鮮問題にも似ています)

噂話にしろ、トランプ大統領がイスラエルに都合のいい形の決着を考えているのは間違いないようにも思えます。
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