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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  トランプ大統領の不法移民親子引き離しにメラニア夫人が異例の批判的発言

2018-06-18 22:16:57 | アメリカ

(【6月18日 BBC】メキシコから国境を越え米国に不法入国しようとした成人は拘束され、子供は親から引き離され別場所に収容されます。乳幼児を含む子どもだけの収容が増えたことで、トランプ政権はテキサス州の砂漠地帯に子どもたちを収容するテントの仮設住宅地を建設する計画を立てていますが、この地域では、気温が40度にまで上がるとも)

中南米系不法移民 実態とイメージの間には大きなギャップも ことさらに悪いイメージを広めるトランプ発言
トランプ政権の不法移民対策については、下記「トランプは移民問題をどうしたいのか」に詳しく説明されていますが、後半のDACA代替法案が遅れている経緯等については大幅にはしょって、主に前半部分を引用します。

****トランプは移民問題をどうしたいのか****
「メキシコからの移民は麻薬密売人や強姦魔だ」。「米墨国境に壁を作る」。ドナルド・トランプは、2016年大統領選挙の最中から移民に関する様々な発言で注目を集めた。

トランプの発言が注目を集めた背景に人口動態の変化がある。1960年には人口の85%を占めていた白人(中南米系を除く、以下同様)は2050年までには人口の半数を下回ると予想されている。

他方、移民人口は増大している。特に、中南米系は2011年段階で人口の17%と既に黒人(12%)を上回っており、2050年までに人口の3割に達すると予想されている。

近年、世界的に移民問題が大きな話題になっている。多くの国で移民が議論される場合、合法移民受け入れの是非が問題になる。だが、アメリカは一定数の合法移民を受け入れるのを当然と考えており、現在も年間70万人を受け入れている。

アメリカで問題となっているのは不法移民対策である。不法移民をこれ以上増やすべきでないことについては一定の合意があるが、既に1100万人以上存在するとされる不法移民への対応については見解が分かれている。

全員国外退去させるべきという人がいる一方で、それは現実的に困難なので、一部の不法移民に滞在と労働の許可を与え、国籍付与の可能性も検討すべきと言う人もいる。

移民の印象を悪化させるトランプの「動物」発言
中南米系移民が争点となるのは、彼らには従来の移民と違う特徴があると考える人が多いからである。

中南米とアメリカは地理的に近接していることもあり、中南米系には出稼ぎ感覚で来ている移民も多い。外貨獲得を目指す中南米諸国が、アメリカに行った移民に二重国籍取得を促して繋がりを確保しようとしていることもあり、中南米系はアメリカに対して十分な忠誠心を持たないと考えている人もいる。

また、アメリカでは国籍について出生地主義原則が採用されているため、不法滞在中の人の子どもであっても、国内で生まれた者には国籍が付与される。そのようにして産まれた子どもが21歳になれば家族を呼び寄せるのが容易になるため、この制度を活用しようとして不法移民が来ているのではないかとも批判されている。

中南米系が、白人労働者階級の職を奪っているとか、社会福祉政策を悪用していると主張する人もいる。また、アメリカで流通している麻薬の多くがメキシコから流入しているため、中南米系移民が犯罪率を押し上げているという議論もなされている。

実際には、中南米系移民に対する批判は妥当でない所が多い。
歴史的に見て、出稼ぎ感覚で移民してきた人は他にも存在したし、移民の子どもが出生地主義原則に基づいて国籍を取得するのも一般的だった。

白人労働者階級の仕事が減少している主な原因は、産業構造の変化と機械化である。移民は基本的に公的扶助を受給することができず、年金を受給するには10年間の社会保障税の納入が必要なため、社会福祉制度に大きな負荷をかけていない。移民の犯罪率は標準的なアメリカ人と比べて低く、麻薬を持ち込む人はごくわずかである。
 
このように、実態とイメージの間には大きなギャップが存在する。だが、上述のように良くないイメージを中南米系に対して抱く人々が多い以上、トランプ的な発言が支持される可能性がある。

中南米系をめぐるトランプの発言で最近注目されているのは、一連の「動物」発言である。

今月半ば、カリフォルニア州フレスコ郡の保安官がMS-13と呼ばれるギャング団(正式名称はマラ・サルバトルチャ)の脅威について発言したのを受けて、トランプ大統領は、「アメリカに入ってきている、入ってこようとしている連中がいて、我々はその多くを止めさせて、国外に追い出している。奴らがどれだけ悪い連中かわからないだろう。奴らは人間じゃない。動物だ」と発言した。

これは、もともとはギャングについての話だったはずのものを、トランプが移民の問題として提起し直し、移民が犯罪と関係しているとの印象を与えるとともに、彼らを間化した発言として、多くのメディアに取り上げられている。

トランプはしばしば麻薬やギャングの問題を中南米系移民の問題に置き換えて論じることがあり、犯罪に関与した(移民を含む)外国籍の者を頻繁に動物と呼んでいる。このような発言が移民に対する印象を悪いものとしている。

宙に浮いたままのDACA撤回
大統領となったトランプは、大統領選挙中に移民について示した方針を実現しようとしている。だが、アメリカでは大統領には法案提出権がないため、トランプにできるのは、法案作成を議会に依頼することか、既存法規の枠内で大統領令を出すことである。その中で、今日注目を集めているのが若年層向け強制送還延期プログラム(DACA)の取り扱いである。

不法移民問題の中で例外的位置を占めるのが、ドリーマーと呼ばれる人々をめぐる問題である。幼少期に家族に連れられて不法入国した人々は不法移民だが、その責を本人に帰すことの妥当性は低い。

幼少期からアメリカに居住しているため、アメリカ人としてのアイデンティティを持つ人も多いし、英語しか話せない人もいる。

このような人々の救済を目的として、ドリーム法と呼ばれる法案が何度か提出されてきた。DACAは、2012年にオバマ大統領が出した大統領令であり、ドリーマーの一部に滞在と労働を認める2年ごとの更新制プログラムである。

DACAは一定の支持を得ており、69万人が恩恵を受けている。法的に見ると、ドリーマーに滞在許可を与えることは、行政権の行使として容認されるとされている。

全ての不法移民を一斉に強制送還するのは不可能なので、どの人を優先的に送還するかを決める必要があるためである。

だが、強制送還しない人々に労働許可を与えることについては議論がある。今ある法律の運用という枠を超えているため、このようなことを大統領令でやってしまうのは権力分立を否定する行為だと批判されているのである。

 
トランプ大統領は2017年9月に、2018年3月5日から徐々にDACAの執行を停止すると発表した。それと同時に、国境警備強化と引き換えにドリーマーに滞在と労働を許可する政策を法制化することで、ナンシー・ペロシやチャック・シューマーら民主党指導部と合意した。

だが、ニューヨークやカリフォルニアなどの州政府がDACA撤回の取り消しを求める訴訟を提起し、連邦地方裁判所もそれを認めたため、DACA撤回は宙に浮く形となった。

トランプ政権は判決無効を求めて控訴中である。また、4月末に、テキサス、アラバマ、アーカンソー、ルイジアナ、ネブラスカ、サウスカロライナ、ウェストヴァージニアの7州が、DACAの執行を停止するよう、連邦政府に対して訴訟を提起する事態となっている。

DACA代替法案もトランプの言動によって実現せず
DACAをめぐる問題は、トランプ大統領の発言と行動によりさらに混乱している。

先ほど指摘したとおり、昨年9月にトランプはDACA停止を決定する一方で、連邦議会にDACA代替法案の作成を要請している。そして、これまで少なくとも4回、DACA代替法案の実現をめぐる試みがなされているが、いずれもトランプの発言や行動の結果、失敗している。(中略)

中間選挙に向けて不安高まる共和党議員
このような状況を好ましくないと考え、党指導部に反旗を翻した共和党中道派の下院議員がいる。(中略)
 
共和党下院議員の中でこのような動きが行われるのは、移民問題をめぐる一連のトランプ大統領の行動の結果、今年の中間選挙で自らの再選可能性が低くなったと考える共和党議員が存在するからである。

トランプ登場以後、共和党は移民に冷淡だという印象が強まっている。だが、移民が一定程度居住する都市部を選挙区とする共和党議員の中には、親戚や友人の国外退去を回避してほしいと望む有権者の支持をつなぎとめておきたいと考える者が多い。今後、中南米系を中心とする、移民を起源とする有権者の人口比率が高くなっていくことを考えると、その思いは強いだろう。(後略)【5月30日 Wedge】
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【「ゼロ・トレランス」(容赦なし)政策で、子どもと親を引き離す対応に
DACA代替法案がまとまらない状況で、トランプ大統領は不法入国する親たちを全員逮捕し、子どもと引き離すことを認める「ゼロ・トレランス」(容赦なし)政策を4日月から実施しています。

****トランプ氏が求める移民法改正、子供を早期送還へ****
ドナルド・トランプ米大統領は米国に不法入国した子どもについて、早期に強制送還・収容しやすくするために移民関連法を改正するよう議会に要求している。難民申請の条件も厳しくしたい意向だ。

トランプ氏は不法移民の流入に歯止めをかけるため、議会は「抜け穴」をふさがなければならないと主張している。ただこうした提案には民主党の多数の議員と共和党の一部から反対の声が上がっている。トランプ氏の看板政策である「国境の壁」建設よりもさらに実施しにくいだろう。(中略)

トランプ政権は5月、不法に越境した親を拘束・訴追できるように子どもを家族から引き離すと発表した。政権関係者らは、法律が見直されればそうした措置を取らずに済むとしている。

オバマ前政権も家族ぐるみの不法入国者の急増に見舞われ、同じような法改正を提案していた。2014年には家族の施設収容を決定した。

ただ、親と一緒であったとしても子どもを約20日以上拘束することは1997年の和解合意に違反すると連邦裁判所が判断したため、この慣行は打ち切られていた。

だがここへ来て、トランプ政権は議会に97年の合意を覆し、家族の拘束を再開させようとしている。そうしなければ、大人を拘束・訴追するために家族をばらばらにする以外の道はないとしている。(後略)【6月1日 WSJ】
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****米に不法入国した親から引き離された子ども、6週間で2000人に****
米当局は15日、米国に不法入国した親や成人の保護者から引き離された未成年者が、5月末までの6週間で約2000人に上ったと発表した。家族の分断をめぐる統計として今年に入ってから最も包括的なデータを発表する中で明らかにした。

米国土安全保障省報道官は電話記者会見で、期間中、不法入国容疑での訴追を前に米国境警備当局が拘束している成人1940人から、子ども1995人が引き離されたと述べた。

米ドナルド・トランプ政権は先月、米国に不法入国する親たちを全員逮捕し、子どもと引き離すことを認める「ゼロ・トレランス」(容赦なし)政策を発表。それ以降、拘束者が急増しているもよう。

テキサス州の小売り大手ウォルマートのスーパーマーケットだった施設には、約1500人の少年が拘束されている。

子どもの拘束に対して激しい抗議が起こる中、同省当局者は、未成年者らは適切な環境を享受していると主張した。

この当局者によれば、取り締まりで拘束された親は収監された状態で越境行為に対する裁定を待っている。この手続きには数週間かかる可能性があり、その後訴追されることもあり得る。(後略)【6月16日 AFP】
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(共和党内には“犯罪を犯した親から子どもが引き離されるのは当たり前だ”との賛成派もいますが)親と子どもと引き離すということで批判も多いこの政策に関し、トランプ大統領は例によって“責任逃れ”の“根拠不明”な発言に終始しています。

“トランプ大統領は、国境で親から子供を引き離す政策は民主党政権が成立させた法律の問題だとツイートした。しかしAP通信が確認したところ、国境で家族を引き離すことを義務付ける法律は実際には存在せず、トランプ政権が導入した新政策だと判明したという。”【6月8日 BBC】

この主張は今も続いています。

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トランプ大統領は、この政策の根拠となる法律は「民主党から引き継がれたもの」だと批判しているが、どの法律を指しているのかは定かではない。

トランプ氏は16日にツイッターに「民主党は、彼らが作った家族を国境で無理やり引き離す政策を、共和党と一緒に新しい法律を作ることで変えられる!だから11月にもっと共和党議員が選ばれる必要がある。民主党が得意なのは高い税金、高い犯罪率、そして妨害だけだ。残念!」と投稿した。

しかし批判する人々は、親子を別々に収容する政策は、5月にジェフ・セッションズ米法務長官が発表したもので、議会での採決なしに止められるものだと指摘している。【6月18日 BBC】
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なお、“家族が引き離されるケースはオバマ前政権でも確認されていたが、人権活動家によるとその数はごくわずかだった”【同上】とも。

DACA代替法案 共和党穏健案に大統領は賛成?反対?】
与党・共和党からは穏健案・強硬案の双方が提出されていますが、大統領の発言は、これも例によって“日替わりメニュー状態”で、その真意はよくわかりません。

****トランプ米大統領、共和党提出の移民関連2法案を両方支持=報道官***
米ホワイトハウスのシャー副報道官は15日、トランプ大統領は与党共和党が提出し、下院で審議されている移民関連2法案をどちらも支持していると表明した。

法案はそれぞれ穏健、強硬な内容となっており、大統領は先に、穏健な案に反対する立場を示していた。

トランプ大統領はこの日のFOXニュースとのインタビューで、2つの法案のうち「より穏健な案に署名することはしない」と言明。「米国の国境警備をとてつもなく強固にする法案が必要だ」と付け加えた。

この発言を受けてライアン下院議長など下院共和党の指導部は、穏健な案に議員らの支持を取り付ける取り組みを停止。

同案は幼少期に親と米国に不法入国した若者の強制送還を猶予する「DACA」制度の受給者「ドリーマー」を保護し、市民権獲得に道を開く内容となっており、もう1つの法案よりも可決の可能性が高いとみられていた。

ただ、シャー副報道官は文書で、トランプ大統領は、ボブ・グッドラット下院議員(共和党)が提出した強硬な案と下院指導部による穏健な案の「両方を完全に支持」していると説明。どちらも署名するだろうとした。

グッドラット議員提出の法案は、ドリーマーに市民権獲得の機会を提供しない内容となっている。

トランプ大統領はこの日、ツイッターに、「いかなる移民法案も(メキシコ国境沿いの)壁への全面的な予算計上、(不法移民を捕らえてもいったん釈放する)キャッチ・アンド・リリース、ビザ抽選、連鎖移民の各制度の廃止、技能ベースの移民制度への移行を盛り込むべきだ」と投稿した。

共和党議員提出の2法案には野党民主党や移民擁護団体が厳格すぎるとして反発している。両案ともメキシコ国境沿いの壁建設費を予算計上し、永住権を得た移民が祖国から親族を呼び寄せる連鎖移民の下でのビザ配給を抑制する内容となっている。

トランプ大統領は昨年9月、オバマ前政権が導入したDACAの撤廃方針を決定したが、今年3月5日までに議会が代替案を法制化することを認める考えも示していた。期限までに代替案は可決されなかった。【6月18日 ロイター】
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メラニア夫人「米国は心ある統治を行う国家でなくてはならない」】
こうした状況にあって、これまで役割を“ファーストドーター”イヴァンカ氏に譲って、表舞台からは身を引いていた“ファーストレディ”メラニア夫人が異例の政治的発言を行い注目されています。

****親子を引き離す米移民政策は中止を、メラニア夫人が異例の政治的発言****
メラニア・トランプ米大統領夫人は17日、米国に不法入国した移民の子どもを国境で親などの保護者から強制的に引き離すことを認める「ゼロ・トレランス(容赦なし)」政策を中止するよう求めた。メラニア夫人が政治的な発言を行うのは異例。

「ゼロ・トレランス」はドナルド・トランプ政権が導入した厳格な国境警備政策で、5月初めにジェフ・セッションズ司法長官が発表した。難民認定を申請中であってもメキシコ側から不法入国した移民は全て国境で逮捕するというもので、未成年者は不法移民の収容施設に送ることができないため、親などの保護者と引き離すことを認めている。
 
過去6週間で2000人近い子どもが保護者と引き離されたと政府が発表したことを受け、政策への批判が過熱。17日が「父の日」ということもあり、共和、民主両党の議員からも非難の声が相次いだ。
 
トランプ大統領自身は、引き離し政策は中止したいと述べつつ、移民をめぐる危機の責任は野党・民主党にあるとの主張を繰り返している。政策を批判する人々は、トランプ氏自身が招いた状況だと指摘している。
 
こうした中、いつもは政治の領域に踏み込むことのないメラニア夫人が、トランプ政権の政策を批判こそしないものの、移民対策の改善案を共和、民主両党で協議するよう求めたことが明らかになった。
 
メラニア夫人の広報責任者ステファニー・グリシャム氏は、米CNNに対し「メラニア夫人は、子どもたちが家族から引き離されるのを見るのをとても嫌がっている。両党がどうにか協力して、移民政策の改善に成功できるよう願っている」と説明。

「米国は全ての法を順守する国であるべきだが、心ある統治を行う国家でなくてはならないと夫人は信じている」と語った。【翻訳編集】AFPBB News
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“心ある統治を行う国家”・・・・夫のトランプ大統領からは一番縁遠いもののように思えますが・・・。

なお、親子引き離しの問題については、ブッシュ元大統領夫人も批判しています。

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ローラ・ブッシュ氏はワシントン・ポストへの寄稿で、「政府はスーパーマーケットを改築した場所に子どもたちを留め置いたり、砂漠のテントに住まわせようとするなんてことに関わってはいけない」と述べた。

さらに、「この光景は、第2次世界大戦中にあった日系米国人の強制収容所に気味が悪いくらい似ている。強制収容所は米国史上最も恥ずべき出来事の一つだ」と指摘した。【6月18日 BBC】

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