孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

南スーダン  内戦終結に向けた政府・反政府トップ会談は不調 25日にも再会談 深刻化する暴力と飢餓

2018-06-23 20:45:45 | アフリカ

(ベッドで母に抱き上げられ、つらそうに顔をしかめるメアリー・スティマちゃん。その2日後に短い生涯を閉じた。黒ずんだ皮膚は栄養失調の症状の一つだという=南スーダン・ジュバで2018年4月24日、小川昌宏撮影【6月22日 毎日】)

【「私たちの最大の課題である道路整備、地雷除去、学校建設の支援を日本にお願いしたい」】
南スーダンは2011年7月、スーダンから分離独立した後、石油利権などをめぐってキール大統領とマシャル副大統領(当時)が対立し、13年12月に政府軍と反政府勢力が衝突して内戦となりました。

内戦は、両氏が背景とする民族間の抗争ともなっています。(両氏のコントロールの及ばない武装組織間の争いもあるようです)

そうした戦闘以外にも家畜や土地をめぐる争いも絶えず、人口約1200万人のうち約250万人が難民、約180万人が国内避難民になっています。【5月21日朝日より】

周知のように、日本は2012年1月に自衛隊をPKOに派遣、(表向きは“区切りがついた”ということですが)戦闘の激化(これまた周知のように日報隠ぺい等で政治問題となっていますが)により、2017年5月には撤収しています。

せっかくの自衛隊による道路整備も、メンテナンスがなされない状況で劣化が進行しているようです。

****自衛隊が補修した道、今は凸凹、水たまり・・・・ 南スーダン****
「この道路は日本の施設部隊と州政府によって補修された」
 
5月5日、南スーダンの首都ジュバ。飲食店やホテル、米国大使館が立ち並ぶ中心部の道路脇に、自衛隊が補修したことを示す看板が立っている。陸上自衛隊の施設部隊が2013年、この道路のうち約1・8キロ部分を補修したのだ。
 
日本政府は12年1月から国連平和維持活動(PKO)の国連南スーダン派遣団(UNMISS)に自衛隊を派遣。昨年5月25日、「一定の区切りがついた」として完全撤収させた。
 
施設部隊は車道に砂利を敷き詰め、道路脇に側溝を造成。補修前は雨が降るたびに冠水し、車は行き来できなくなったが、補修後は水はけがよくなり、車も通行できるようになった。
 
道路沿いに自宅を構える大学講師のデビッド・ラドさん(37)は「補修前は大雨が降れば自宅に帰るのは難しかった。でも今はそんな心配はない。日本人のおかげだ」と感謝する。
 
だが、完成から4年半が過ぎ、劣化が目立つ。あちこちに凸凹があり、水たまりも残る。側溝にはポリ袋やバナナの皮が捨てられ、水はけは悪くなった。
 
施設部隊が16年に一部補修したジュバと近郊ロコンをつなぐ幹線道路(約56キロ)も凸凹が多い。10センチ以上の段差もあった。
 
UNMISSのトップを務めるデビッド・シアラー国連事務総長特別代表は「南スーダンでは定期的に補修されている道路はほとんどない。これが大きな問題だ」と打ち明ける。
 
自衛隊は延べ約4千人を派遣し、ジュバを中心に活動した。約260キロにわたる道路補修のほか、大学の敷地造成や避難民キャンプのトイレ設置を担った。
 
1年前に撤収した自衛隊の再派遣を望むか。南スーダンのマニャン国防相にそう尋ねると、マニャン氏は「派遣されても宿営地にいて自分たちを守るのであれば、この国のためにならない。私たちの最大の課題である道路整備、地雷除去、学校建設の支援を日本にお願いしたい」と語った。【5月21日 朝日】
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両トップの会談は物別れに
いろいろな意見・考え方がある非戦闘地域を前提とする日本のPKO参加は別にしても、現在の内戦状態が収まらない限り、道路補修などのインフラ整備はもちろん、国民生活の正常化は望めません。

キール大統領とマシャール前第1副大統領の間では、これまでも幾度か和平の試みがなされていますが、長続きしていません。

****<南スーダン>大統領、反政府トップに帰国を呼びかけ****
内戦状態が続く南スーダンのキール大統領が、反政府勢力のトップで南アフリカに亡命中のマシャール前第1副大統領に帰国を呼びかけた。地元ラジオ局が7日伝えた。
 
キール大統領は4日、与党の会合で「マシャール氏を連れてきてほしい。身の安全は保障する」などと述べ、対話する用意があると表明したという。
 
南スーダン政府と反政府勢力の各派は近くエチオピアで3度目の交渉を予定している。【5月8日 毎日】
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これを受けて、20日にエチオピアで両氏が会談することに。

****<南スーダン内戦>政府と反対勢力トップが初の直接会談へ****
南スーダン内戦を巡り、最大の反政府勢力を率いるマシャール前第1副大統領はキール大統領との会談に応じる方針を固めた。会談は今月20日にエチオピアで行われる予定。マシャール氏の報道官が13日、毎日新聞に明らかにした。

政府、反政府勢力トップの直接会談が実現すれば、2016年7月に内戦が再燃して以来初めてとなる。
 
会談は東アフリカの地域機関、政府間開発機構(IGAD)が仲介。IGAD議長のエチオピアのアビー首相から、南アフリカで軟禁状態に置かれているマシャール氏に「トップ会談」に応じるよう要請があったという。【6月14日 毎日】
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これまでの経緯はともかく、若干の期待もあったのですが、やはりうまくいかなかったようです。

****南スーダン和平合意せず トップ会談、非難の応酬****
2013年12月から続く南スーダン内戦を巡り、キール大統領と亡命中の反政府勢力トップ、マシャール前第1副大統領が20〜22日、エチオピアの首都アディスアベバで会談したが、和平合意に達しなかった。スーダンで25日に再会談する予定。AP通信などが報じた。
 
双方は停戦後の権力分担について協議したが、非難の応酬となり、歩み寄りは見られなかった。多数の住民が死亡し、約250万人が周辺国に逃れた人道危機は終わりを見通せない事態となっている。【6月22日 共同】
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暴力・飢餓に脅かされる住民 「なぜ罪のない子供が争いに巻き込まれなくてはならないの」】
両トップが非難の応酬をしている間にも、国民の危機は深まるばかりです。

****南スーダン軍が住民を殺りく 監視団体「無差別に発砲」と非難****
内戦下の南スーダンを拠点にし、東アフリカの地域機構、政府間開発機構(IGAD)のメンバーなどで構成される停戦監視団体「CTSAMM」は1日までに、南スーダン政府軍が無差別に住民に発砲して殺害したり、子どもを焼き殺したりしたと非難する報告書をまとめた。ロイター通信が報じた。
 
報告書によると、約200人の政府軍兵士が2月12日、同国北部の村を襲撃した。助かった住民は「兵士らがあらゆる物と人に向けて無差別に発砲した」と証言。22人が死亡し、72人が負傷したという。
 
2月には別の町を襲い、避難民の住居に火を放ち、子ども4人と大人1人を焼き殺した。【6月1日 共同】
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****<南スーダン>何週間も野草食べ 母「なぜ罪ない子供が…」*****
 ◇WFP現地幹部「支援届かないと多数の子供の命が失われる」
内戦による混乱で深刻な食料難にあえぐ南スーダン。首都ジュバの「アル・サバ子供病院」では、重い栄養失調に陥り、命の危険に直面する子供たちが手当てを受けていた。4月には135人が入院し、17人が亡くなったという。
 
ザンデ・エリアちゃん(5)は病棟の入り口にしゃがみ込み、診察を待っていた。母マリ・ケジさん(30)は怒りを抑えるように語った。「内戦で何も手に入らなくなった。なぜ罪のない子供が争いに巻き込まれなくてはならないの」
 
夫は約4年前、村を襲撃した武装グループに殺された。近所の人々の洗濯を請け負い、生計を立てているが、1週間の収入は200スーダンポンド(約0・7米ドル)。食費を賄うことはできない。

内戦で物価の上昇が止まらず、鶏1羽が2000スーダンポンド(約7米ドル)、主食のキャッサバ芋の葉1食分は50スーダンポンド(約0.2米ドル)が相場。マリさんは6人の子を産んだが、食事や薬を与えることができず、3人を栄養失調やコレラで亡くした。
 
ジュバから北へ約60キロの村では、武装集団の襲撃から逃れてきた別の集落の人々が野宿生活をしていた。食べ物が手に入らず「何週間も前から、このあたりに生えている野草を食べている」という。女性や子どもたちが、たき火にかけた鍋で草を煮ていた。
 
集落を襲ったのは家畜を狙ったグループ。家々は焼かれ、約400世帯が一斉に避難民になった。「このままでは、飢えを待つだけだ」。集落で牧師だったアウグスティオ・マンヤンさん(50)は天を仰いだ。
 
南スーダンは、40年以上続いたスーダンでの内戦を経て2011年7月に分離独立した。そのわずか2年後、キール現大統領と、マシャール前第1副大統領の利権争いをきっかけに政府軍と反政府勢力が衝突。内戦が泥沼化する中、異なる民族間の対立も深まった。
 
全国民の3分の1にあたる420万人が故郷を追われ、うち247万人が難民になった。国連は平和維持活動(PKO)で市民の保護を進めるが、子供や女性までもが殺りくや略奪に巻き込まれている。国連児童基金(ユニセフ)の推計によると約2000人の子供が殺害された。

だが実際の犠牲がどの程度に及ぶかはわからない。農地が廃れて食料が足りず、生き延びた子供の多くも飢餓に瀕(ひん)している。
 
国連の17年のデータによると、食料確保や医療の整備のため必要とされた資金総額は約16億4000万米ドル。実際に集まったのは72%の11億8200万米ドルだった。

国連世界食糧計画(WFP)の現地幹部は、世界の関心が薄まりつつあることに危機感を募らせ、こう指摘する。「南スーダンでは国民の半数が明日の食事さえもわからない状態だ。世界からの支援が届かなければ、多数の子供の命が失われる」

 ◇「海外難民救援金」を募集
災害や戦争、貧困などで苦しむ世界の難民や子どもたちを支援する「海外難民救援金」を募集しています。郵便振替または現金書留でご送金ください。物資はお受けできません。紙面掲載で匿名希望の方はその旨を明記してください。
〒100−8051 東京都千代田区一ツ橋1の1の1
毎日新聞東京社会事業団(電話03・3213・2674)「海外難民救援金」係
(郵便振替00120・0・76498)【6月22日 毎日】
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南スーダンに限らず、いくら支援しても自立するに至らない・・・国際社会には“援助疲れ”もあります。

また、難民・移民問題が欧米で深刻化するなかで、各国は自国第一の“内向き”傾向を強め、対外支援への関心を薄めてもいます。

内戦等の混乱や貧困の問題は当該国の自己責任だとする考えもあるでしょうが、欧米や日本など内戦もない豊かな国に生まれたのは全くの偶然であり、もし自分が南スーダンのような国に生まれていたら・・・と考えれば、また異なる対応もあろうかと思います。

前出記事によれば、トップ会談は25日に再び行われるとされていますので、両トップには賢明な判断を期待します。
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