(中国・武漢の薬局で、防護服とマスクを身に着けて接客する店員(2020年1月25日撮影)【1月25日 AFP】)
【4000万人規模の「封鎖」も、遅きに失した感も】
今日・明日は旅行中で時間もとれないので、気になった記事を簡単に紹介するだけで。
「気になった」と言えば、感染が急拡大する新型コロナウイルス肺炎の話題でしょう。
現状に関する一番新しい情報は以下のように。
****新型肺炎急拡大 中国の死者41人、感染1298人 フランスやオーストラリアでも感染確認****
中国衛生当局は25日、新型コロナウイルスによる肺炎の死者が中国本土で41人になり、感染者はチベット自治区以外の30の省・自治区・直轄市で計1298人、うち重症者が237人になったと発表した。
死者、感染者いずれも前日比で5割以上増加した。フランスやオーストラリアでも初めて感染が確認され、急速に感染が広がっている模様だ。
◇14カ国・地域に拡大
一方、日本の厚生労働省は25日、旅行で東京を訪れた中国・武漢市在住の30代女性の感染が確認されたと発表した。日本国内での感染確認は3人目となる。
中国本土の患者の地域別内訳は、湖北省729人(うち武漢市572人)▽広東省78人▽浙江省62人▽重慶市57人▽北京市41人▽上海市33人▽河南省32人▽四川省28人――などで、武漢市以外でも急拡大した。
中国紙・人民日報によると、武漢市では23病院のベッド計4000床が疑い例を含む新型肺炎患者に使われており、月末までに6000床増やし計1万床を治療にあてる計画だ。
新たに感染が判明した国は、豪州4人▽フランス3人▽マレーシア3人▽ネパール1人。欧州での感染確認は初めてだ。他に香港5人▽タイ5人▽台湾3人▽日本3人▽シンガポール3人▽マカオ2人▽韓国2人▽ベトナム2人▽米国2人――と、中国を含め計14カ国・地域で確認されている。(後略)【1月25日 毎日】
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今後の展開については、やや悲観的な見方も。
****新型肺炎、「規模SARSの10倍以上」「すでに制御不能」見解も****
新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を阻止するため、中国湖北省武漢市が発動した事実上の封鎖措置は24日、2日目を迎えた。
一部メディアやSNSなどから伝わってくる情報は、市内での肺炎の拡散が深刻な状況にあることを示唆している。
2002〜03年に大流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)に対応したことで知られる香港大の 管軼教授は21〜22日に武漢市で現地調査した後、中国のネットメディア「財新」の取材に対し、今回の肺炎の感染規模について「慎重に見積もってもSARSの10倍以上となる」との見解を示した。SARSでは中国で349人が死亡した。
管氏は、市内の市場の衛生状態の劣悪さやマスクの着用を怠っている実態など、住民や政府の防疫意識の低さに驚き、「すでに制御不能だ」と判断して武漢を離れたという。また、封鎖措置を前に市を離れた多くの若者らが「ウイルスを全国各地に運んでいる」と警告し、14日間とされる潜伏期も踏まえ、今月25〜26日の発症者増加に「注意すべきだ」と述べた。(後略)【1月25日 読売】
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封鎖前に多くの感染者が中国各地に散らばった・・・・というのは、間違いないないでしょう。
結果、中国各地で発症が相次いでいますし、今後さらに増加するでしょう。
震源地・武漢では、病院が患者であふれている状況で、昨日ブログでも紹介したように、わずか6日間だか10日間だかで1000床の病院を突貫工事で新たに建設する状況になっています。
****新型肺炎広がる武漢、病院は患者殺到でマヒ状態****
武漢では政府は病院の新設を余儀なくされ、6日間で完成するとしている
新型コロナウイルス肺炎が猛威を振るっている中国・武漢市では、医療施設で備品や病床などが不足しており、患者の受け入れを断らざるを得ない深刻な状況に追い込まれている。
感染者が集中している湖北省では、あらゆる病院がここ数日、ソーシャルメディアで医療備品を寄付するよう市民に訴えている。消費者によるパニック買いで、マスクや除菌ローションなどが店頭から消えているためだ。
武漢の小児病院は23日、ミニブログ「微博(ウェイボ)」に、「医療備品が不足しています。助けてください!!」とのメッセージを投稿した。
中国工業情報化省によると、中央政府は武漢市に対し、医療備品の在庫から防護服や手袋などを送付。財政省は新型肺炎の対策資金として10億元(約160億円)の拠出を表明した。中国国営中央テレビ(CCTV)によると、中央軍事委員会は感染患者の治療に当たっている武漢市内の病院に軍医40人のチームを派遣した。
湖北省の報道官は24日、記者団に対し、医療備品の不足に対処するため、政府省庁は承認手続きを加速していると説明した。
感染拡大により事実上、封鎖されている武漢市では、政府が新規病院の建設を急ピッチで進めており、6日以内に完成するとしている。既存の病院では長蛇の列ができ、病床も不足しているとして、地元保健当局が窮状を訴えている。(中略)
武漢市政府が新型肺炎の対応に当たるため設置した指令室は24日、病院での待ち時間が長いことを認め、感染の有無を調べる検査を加速すると表明した。
武漢市の医療機関が対応に追われている現状は、政府が新型コロナウイルスの脅威を甘くみていたことを物語っている。
今回の新型肺炎では、中国本土で感染者が少なくとも881人、死者が26人出ており、その他10カ国・地域にも広がっている。
医療専門家や一般市民に加え、中国政府当局者の一部でさえも、習近平国家主席の指揮下における官僚主義的な決断力のなさに触れ、一部の対応のまずさを批判している。【1月25日 WSJ】
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こうした状況からすれば、「武漢の患者5000人超か 新型肺炎で北大推計」【1月25日SankeiBiz】といった数字も妥当なものでしょう。
感染は中国国内だけでなく、渡航者が多いアジア各地にも広がっています。中国と密接な関係のあるカンボジア、ラオス、ミャンマーといった国は感染者が報じられていませんが、単に技術的に把握がなされていないというだけの話でしょう。
****アジアに広がる新型肺炎、対策の温度差が生む大感染****
・・・・まだ感染者の報告がない国も安穏としてはいられない。
カンボジアは、多くの中国人労働者がインフラ整備や土木工事に従事しているし、そうした中国人労働者をあてこんだホテル、カジノ、レストランを経営する中国人も多い。そうした中国人が春節で大移動する。ウイルスが国内に持ち込まれる可能性を否定できない。
ラオスやミャンマーにしても、中国企業の進出が著しく在住中国人も多くなっている。
幸いにして現時点では、これらの国では「感染者や感染の可能性のある患者」に関する情報はない。
だがインドネシアの医療関係者はこう指摘する。
「実際に感染に関する情報がないのか、感染者を特定することが医療技術や検査設備の面から難しいからなのかが判然としない。さらに感染に関する情報を公表することに積極的ではないのか、そうした各国の個別の事情も考慮しなくてはならないだろう」・・・・【1月25日 大塚智彦 JB press】
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「封鎖」状態は1100万人武漢だけでなく、近郊都市を含め4000万人規模にも及んでいるとか。
また、武漢では、26日から市内における自動車の通行が制限されることになったようですが【1月25日 AFPより】、すでに「手遅れ」の感も。
****中国の新型ウイルス対策に「遅過ぎ、甘過ぎ」の懸念 「今回は怖い」と専門家****
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、中国政府が武漢(Wuhan)をはじめとする複数の都市で数千万人を対象に移動制限を課すという前例のない試みに乗り出したが、それでも感染拡大を防げるとは思えないと専門家らは警鐘を鳴らしている。
住民たちにわずかな猶予しか与えず武漢封鎖に踏み切ったにもかかわらず、新型コロナウイルスは既に中国内外に拡散した。
香港大学のウイルス専門家、管軼(Guan Yi)氏は、「抑制と予防が最も効果を発揮する時期は過ぎたと思う」「これまで怖いと感じたことは一度もないが、今回は怖い」と語った。
中国は23日、昨年末に重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスに類似した新型コロナウイルスが発生した人口1100万人の武漢で、交通遮断措置に踏み切った。
以来、感染者が移動して他の場所で感染を拡大させることを防ぐため、近隣の都市でも相次いで交通遮断措置が取られ、居住する都市に封じ込められた人は4000万人を超えた。
にもかかわらず死者は増え、遠くは米国でも感染者が確認されたことで、中国政府の対策は遅過ぎ、甘過ぎるのではないかとの懸念も生じている。
封鎖直前に武漢を脱出した管氏は、24日に始まった春節(旧正月、Lunar New Year)を前に、既に膨大な数の人々が武漢を出てしまったのではないかと指摘する。彼らはウイルスを潜伏させたまま、「武漢を出た」可能性があるという。
新型コロナウイルスに感染してから発症するまでに数日間かかることもあり、中国内外で健康を奪う時限爆弾をばらまいているようなものだ。【1月25日 AFP】
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【当局幹部の「隠蔽」「危機式の欠如」も】
武漢における初動段階では、単に「遅れ」だけでなく、「隠蔽」もあったようです。
****武漢市、流行初期にかん口令「医師にできたのはマスク着用勧めることだけ」****
中国の有力誌・中国新聞週刊は24日、新型コロナウイルスによる肺炎の感染者が拡大している湖北省武漢市で、肺炎の流行が始まった昨年末、市当局が事実の公表を抑えていたことを示唆する医師の証言を伝えた。
武漢協和医院の医師が、同誌の取材に匿名で応じた。「流行が始まったばかりの時期、武漢市の方針は消極的だった」と指摘し、病院側から「許可を得ずに公共の場で感染状況を語ったり、メディアの取材を受けてはならない」と通知されていたと明らかにした。
市が肺炎の流行を初めて公表したのは昨年12月30日だった。この医師はかん口令の期間中は「医師にできたのは患者に繰り返しマスク着用を勧めることだけだった」と振り返った。
市トップらに対してはこれまでも、情報公開や対応の遅れが指摘されていた。湖北省共産党委員会の機関紙・湖北日報の張欧亜記者は24日、中国版ツイッター・微博への書き込みで市トップの対応を批判し、「交代を希望する」と主張した。
武漢市の党委書記や市長らトップは、上級組織の省党委にも名を連ねる地元の高級幹部にあたる。党機関紙記者が正面から批判するのは極めて異例だ。書き込みはまもなく削除された。(後略)【1月25日 読売】
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地方政府幹部の危機感の欠如も明らかになっています。
****武漢当局対応に市民ら怒り 「封鎖」前に音楽会と米紙****
24日付の米紙ウォールストリート・ジャーナルは、新型コロナウイルスによる肺炎が発生した中国・武漢市で、市の「封鎖」直前まで当局幹部が春節(旧正月)到来を祝うコンサートに出席するなど緊張感に欠けた対応に終始し、市民らの怒りを買っていると伝えた。
19日には市内で、1万以上の家族を集めた当局主催とみられる春節前の宴会も開かれていた。中国の医療関係者は「感染拡大期にこのような宴会を開くのは基本的常識に欠ける」と批判した。
今月、市の最高幹部が年次政策会議を開いた際にも、肺炎は議題になかった。【1月25日 共同】
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こうした状況で“シンガポールの「S・ラジャラトナム国際研究院」のシニアアナリスト、ジー・ヤン氏は、「特にカネとコネがある人々は急いで逃げようし、おそらく脱出に成功するだろう」と指摘した”【1月25日 AFP】といった話が出てくると、いかに権力に従順な中国人民でも怒りが噴出するのではないでしょうか。
もっとも、中国当局の対応を高く評価する人も。
****トランプ氏、新型肺炎で中国の対応評価=米国で2人目感染、63人検査****
トランプ米大統領は24日、中国・武漢で多発している新型コロナウイルスによる肺炎について、ツイッターに「中国は封じ込めようと懸命に頑張っている」と投稿した。その上で、中国当局による「努力と透明性」を高く評価し、「米国民を代表して習近平国家主席に感謝を伝えたい」と書き込んだ。(後略)【1月25日 時事】
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【こんなときこそロボット活用】
恒例の大晦日「紅白歌合戦」では・・・
****中国版“紅白歌合戦”で新型肺炎の特別企画「がんばろう中国」*****
新年を旧暦で祝う中国では25日が元日で、大みそかにあたる24日夜、国営の中国中央テレビでは恒例の中国版“紅白歌合戦”が生放送されました。
ことしの番組では、新型コロナウイルスの感染が広がる中、最前線で活動している医療従事者の様子が急きょ、特別企画で伝えられました。 ステージ上の大型モニターに防護服を着た医師らが治療に当たる姿が映し出される中、キャスターたちは「私たちは絶対に勝つ。がんばろう武漢、がんばろう中国」などと呼びかけていました。【1月25日 NHK】
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「がんばろう」の絆もいいですが、アメリカでは役立ちそうなロボット技術も。
****新型ウイルス患者の診察にロボットを使用 米国****
米国で最初に新型コロナウイルスへの感染を診断された男性が、主にロボットによる診察を受けていることが分かった。
ワシントン州エバレットにあるプロビデンス地域医療センターの感染症部門責任者、ジョージ・ディアス医師によると、このロボットは聴診器や大型スクリーンを搭載し、医師によるバイタルサインの測定や男性とのコミュニケーションを助けているという。
ディアス氏は「看護職員がロボットを動かすことで、我々がスクリーン越しに患者を観察し、話しかけられるようになっている」と説明。ロボットの使用で感染者との接触が最小限に抑えられていると語る。(後略)【1月25日 CNN】
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市中では品薄のマスクが値上がりしていることは報じられていますが、下記のような話も。
これも、中国らしい話でしょうか。
****新型肺炎 中国本土で患者1300人近く “使用済みマスク販売”で捜査****
・・・・ところが、マスクをめぐって、ある動画が中国で物議を醸している。
段ボールに入っていたのは、たくさんの「使用済みのマスク」。
撮影している女性は、男らがマスクを回収して再び売ろうとしていると追及している・・・・【FNN PRIME】
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