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(軍政の指導者ミン・アウン・ウライン総司令官の誕生日である7月3日、ミャンマーのマンダレーで、クーデターに反対する人々が抗議の意を示す旗と三本指を掲げてデモ活動を行った【10月3日 JBpress】)
【ASEAN特使受入れを拒む軍政 ASEAN内部には苛立ちも】
前政権と国軍側の2名の国連大使が並存しているミャンマーですが、国連総会の一般討論演説については、演説を控える代わりに民主派の国連大使の地位を保つという米国と中国の合意がなされたことで、前政権によって任命されたチョー・モー・トゥン国連大使は演説を見送りました。
同大使はその「合意」を認めたうえで、来年9月まで1年間続く会期中には「ミャンマーの人たちのために発言する機会は多くあるだろう」との認識を示していましたが【9月28日 産経より】、国連総会の委員会で発言することになったようです。
****軍統治反対のミャンマー国連大使 国際社会へ支援訴えることに****
ミャンマーで、軍による弾圧によって市民に多数の犠牲が出る中、軍の統治に一貫して反対してきたチョー・モー・トゥン国連大使が近く、国連総会の委員会で発言し、軍の統治を認めず抵抗する市民を支援するよう国際社会に訴えることにしています。
ミャンマーでは、軍による市民への弾圧が続いていて、現地の人権団体によりますと、ことし2月のクーデター以降4日までに、1158人の市民が犠牲になりました。
さらに先月、民主派勢力が発足させた「国民統一政府」が市民に自衛のための戦闘を呼びかけたことから、軍と市民との間で武力衝突も相次ぎ、双方に多数の死傷者が出る事態となっています。
こうした中、ニューヨークの国連本部では、前の政権に任命され軍の統治に一貫して反対してきたチョー・モー・トゥン国連大使が近く、国連総会の委員会で発言することになりました。
軍は、すでに別の国連大使を任命したとしていますが、現時点で各国の代表権を決める国連の信任状委員会の結論が出ていないことから、チョー・モー・トゥン大使が引き続きミャンマーの代表とされています。
チョー・モー・トゥン大使をめぐっては、先に暗殺計画が発覚し、アメリカの警察などが捜査する事態となっていますが、大使は改めて国際社会に対し、軍の統治を認めず抵抗する市民を支援するよう訴えることにしています。【10月5日 NHK】
さらに先月、民主派勢力が発足させた「国民統一政府」が市民に自衛のための戦闘を呼びかけたことから、軍と市民との間で武力衝突も相次ぎ、双方に多数の死傷者が出る事態となっています。
こうした中、ニューヨークの国連本部では、前の政権に任命され軍の統治に一貫して反対してきたチョー・モー・トゥン国連大使が近く、国連総会の委員会で発言することになりました。
軍は、すでに別の国連大使を任命したとしていますが、現時点で各国の代表権を決める国連の信任状委員会の結論が出ていないことから、チョー・モー・トゥン大使が引き続きミャンマーの代表とされています。
チョー・モー・トゥン大使をめぐっては、先に暗殺計画が発覚し、アメリカの警察などが捜査する事態となっていますが、大使は改めて国際社会に対し、軍の統治を認めず抵抗する市民を支援するよう訴えることにしています。【10月5日 NHK】
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一方、ASEANの外相会議には国軍側の外相が出席していますが、ASEANの特使決定から約2カ月がたつにもかかわらず、国軍側は依然として受入れを拒否しています。
事態の仲介を目的とした特使である以上、ASEAN側は国軍だけでなく民主派との接触(具体的には、アウン・サン・スー・チー氏との面会)を求めており、そのことに国軍側が難色を示しているようです。
なお、特使には、8月4日の外相会議で、議長国ブルネイのエルワン第2外相が任命されています。
****ASEAN外相会議、ミャンマーの和平に向けた取り組みに失望の声****
東南アジア諸国連合(ASEAN)は4日、外相会議を開いた。
軍政下にあるミャンマーが合意した和平計画の履行を巡り、各国の外相から懸念の声が上がった。今月下旬に開くASEAN首脳会議に国軍トップが出席することを懸念する声も出た。
インドネシアのルトノ外相は、会議後の会見で「大きな進展がみられない。国軍は特使による試みに前向きな反応を示していない」と述べ「大半の国が失望を表明した」と述べた。
シンガポールのバラクリシュナン外相は、特使がミャンマーで直面した課題についてASEAN加盟国に説明したと述べ、ミャンマー国軍の最高意思決定機関である国家統治評議会(SAC)に対し協力するよう訴えたと説明した。
マレーシアのサイフディン外相はツイッターに、進展がなければ、今月下旬のASEAN首脳会合に国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官が参加することが難しくなると投稿した。
ASEAN首脳会議にミン・アウン・フライン氏の参加を認めないべきだとする提案がなされたどうかは不明。【10月5日 ロイター】
インドネシアのルトノ外相は、会議後の会見で「大きな進展がみられない。国軍は特使による試みに前向きな反応を示していない」と述べ「大半の国が失望を表明した」と述べた。
シンガポールのバラクリシュナン外相は、特使がミャンマーで直面した課題についてASEAN加盟国に説明したと述べ、ミャンマー国軍の最高意思決定機関である国家統治評議会(SAC)に対し協力するよう訴えたと説明した。
マレーシアのサイフディン外相はツイッターに、進展がなければ、今月下旬のASEAN首脳会合に国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官が参加することが難しくなると投稿した。
ASEAN首脳会議にミン・アウン・フライン氏の参加を認めないべきだとする提案がなされたどうかは不明。【10月5日 ロイター】
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ただ、ASEAN内部も、ミャンマー同様に軍事クーデターで実権を掌握したタイ政権、軍政が頼りとする中国に極めて近いカンボジアやラオス、国内人権問題への干渉を嫌うベトナムのように、ミャンマー軍政に融和的な国もあって、ミャンマー軍政への対応には温度差があるのが実態。
国軍側がスー・チー氏とASEAN特使の面会を認めるとは考えにくいなかで、特使派遣を含む暴力の即時停止、人道支援の提供など「五つの合意」(ミャンマー国軍のミンアウンフライン最高司令官も交えて4月24日に開かれたASEAN首脳会議で合意)は形骸化し、ASEANの存在意義も薄れていきます。
2003年から5年にわたりASEAN事務局長を務めたシンガポールのオン・ケンヨン氏は5月の講演で、国軍が特使受け入れに反対する場合には強い対応を取るべきだと主張。「ASEANには資格停止や追放の規定がないと言われるが、やりようはある」とも述べていますが【6月1日 朝日より】、なかなかそうした毅然とした対応がとれないところがASEANのASEANたる所以でしょうか。
マレーシア外相が今後開催予定のASEAN首脳会議からミャンマー軍政代表を排除する可能性に言及したのも、そうしたASEANの現状への焦りが現れているともとれます。
*****マレーシア、ASEANからのミャンマー排除を提案 解決の道筋見いだせぬ加盟国****
(中略)今回のマレーシア外相の「ミャンマー首脳の排除の可能性への言及」はこうしたASEAN内の焦りや手詰まり感を反映したものといえるが、どこまで実現の可能性があるかは極めて不透明だ。
そうしたASEAN内の今後の対応を見極めたうえでミャンマー軍政もASEAN特使への対応を明確にするものとみられている。
ASEANは内部の各国による綱引きと同時にしたたかなミャンマー軍政との駆け引きも求められるという難しい立場に追い込まれ、域内連合体としてミャンマー問題の解決に向けた調停、介入は依然として先の見えない状況にあるといえるだろう。【10月5日 大塚 智彦氏 Newsweek】
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【軍政の為替管理奏功せず、通貨チャットは暴落を続ける】
ミャンマー国内での国軍統治は、うまくいっていません。
経済活動の根幹となる為替管理も混乱。
****ミャンマー国軍、為替相場の管理策を撤回 二重相場で混乱、通貨急落****
クーデターで国軍が権力を握ったミャンマーで、国軍の統制下にあるミャンマー中央銀行が為替相場の管理強化策を撤回した。クーデター後の混乱で起きた通貨チャットの急落への対応だったが、実勢レートとの二重相場が生じ、かえって混乱が深まっていた。
中銀は9月10日、8月上旬に出していた管理変動相場制への移行の指示を「撤回する」とホームページ上で発表した。国軍の報道官は、現在の為替は「市場レートを反映している」と述べ、変動相場制に戻したことを認めた。
管理変動相場制を採用していた間、中銀は1ドルを1600チャット台半ばから1730チャット台に定め、この値から上下0・8%の範囲内で取引するよう命じていた。
だが、自国通貨への信用は高まらず、ドルを手元に置く市民が増加。両替商は実勢レートとの二重相場で商売を続け、現地メディアによると、実勢レートは史上最安値の1ドル=2020チャットにまで下落した。
現地の金融関係者は「管理変動相場制に移行してもドル不足が解消されず、二重相場も進んだため撤回したのだろう」とみる。
ミャンマーは2011年の民政移管後に、固定相場制から管理変動相場制に移行。16年から政権を担ったアウンサンスーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)政権が実質的な変動相場制を採用し、長く続いた二重相場は解消に向かっていた。
だが、今年2月のクーデターを機に、それまで1ドル=1300チャット台で推移していたチャットは急落。国軍は何とか相場を安定させようと、8月から管理変動相場制を復活させていた。【9月17日 朝日】
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上記の管理強化策撤回後も混乱は拡大しているようです。
****チャット暴落、1ドル=2500超え*****
ミャンマーの通貨チャットが暴落を続けている。市中の両替商の米ドルの販売レートは28日午後までに1米ドル=2,500チャット台に突入したもようだ。前日比で約3割の下落となる。同日のミャンマー中央銀行の参考レートは1米ドル=1,755チャットで、乖離(かいり)が一段と進んだ。
最大都市ヤンゴンの両替商では28日午前中から、1米ドル=2,200チャット台をつけ、その後も下がり続けた。独立系放送局「ビルマ民主の声(DVB)」英語版のツイッターへの投稿によれば、28日午後2時時点のレートは同2,500チャット台に達した。闇市場では2,700チャットにまで下落したとの情報もある。(中略)
中銀は規制撤廃後も断続的にドル売り介入を続けているが、ここにきてチャット安に歯止めが効かない状況に陥っている。【9月29日 NNA】
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【「兵士や警官の寝返り増加」とのことだが・・・】
国内治安も、軍政に対抗するために民主派が組織した「国家統一政府(NUG)」が9月7日、国民に対して武装抵抗による「一斉蜂起」を呼びかけたことで、不安定感を増しています。
そうした状況で、民主派に“寝返る”兵士や警官も増加しているとも。
****「市民に銃口向けられない」ミャンマーで兵士や警官の寝返り増加****
混迷が続くミャンマーで、軍政による実弾発砲を伴う弾圧方針に疑問を抱いた兵士や警察官が、軍や警察を離脱する事例が増えているという。そればかりか、中には民主勢力側に寝返って軍と戦うことを選択するケースもあるようだ。
報道によると9月27日までの過去2週間で兵士、警察官約450人が民主政権側の武装組織に寝返るか、寝返る意向を示して機会をうかがっていることが分かった。
こうした事態に対して軍政側も駐屯地や軍施設などからの外出を厳しく制限したり、外部からの訪問者に対する規制を強めたりするなどの対応策に出ており、軍内部でも焦燥感と危機感が高まっているようだ。
■ 呼び掛けに応じる形で軍や警察を「離脱」
軍政に対抗するために民主派が組織した「国家統一政府(NUG)」は9月7日、国民に対して「全世界は軍が公営住宅、宗教施設、病院、学校を占拠し、人々を脅し、逮捕し、殺し、私有財産を略奪し、村を燃やすなど、非人道的な戦争犯罪を絶えず行っていることを知っている」として、武装抵抗による「一斉蜂起」を呼びかけた。
その呼びかけの中にこんな一節もあった。
「ミン・アウン・フライン国軍司令官に抑圧されてきた全ての兵士、警察官、公務員に警告する。出勤、活動を停止して、国軍司令官と軍政を攻撃せよ」
つまり、兵士や警察官に対し、現在の職場・任務を放棄して、NUGによって組織された武装市民による「国民防衛隊(PDF)」への参加、つまり“寝返り”を呼びかけたのだった。
(中略)この数字と情報は、NUG関係者や警察などを離脱して軍政に抵抗するため「不服従運動(CDM)」に参加している治安組織のメンバーらが明らかにしたものとされ、今回の453人を合わせると、2月1日以降に軍・警察組織を離脱した兵士・警察官の合計は約3000人に上るという。
この3000人の中には、「国民防衛隊(PDF)」や国境周辺地域の少数民族武装集団に合流し軍政と戦う道を選択した兵士・警察官の他に、隣国インドなどに脱出・避難したケース、さらに地下や地方に逃れて潜伏生活を送っているケースも多く含まれているとしている。
またNUGなどによると、今回離脱が明らかになった453人の兵士や警察官のうち、約50人がすでにPDFに合流して、市民とともに銃をとって軍と対峙する前線に展開しているといい、残る約400人も軍部隊や警察組織から警戒監視の目を逃れて安全に離脱する機会を探っているという。
■ 広がる厭戦気運を軍も警戒
このような兵士や警察官の「寝返り」情報に関しては、RFAの照会に対し軍政側がこれまでのところ無回答のために、その真偽・信ぴょう性は最終的には確認されるには至っていない。
ただRFAによれば、事態を重く見た軍は最近、部隊の駐屯地や兵士が家族と居住する軍施設から兵士や家族の外出を厳しく制限するようになったとの匿名の軍関係者の証言を伝えている。こうしたことからも、報じられている数字はある程度実態を反映したものと見られている。
このRFAの報道によれば、兵士やその家族が外出許可証を入手できるのは病院への通院など健康上の理由だけで、その場合でも所持できるのはわずかの衣類だけで、日帰りが義務付けられるようになったという。
また外部の人の訪問も厳しく制限され、商人の出入りも厳しくチェックされるようになり、兵舎での生活環境も息苦しいものに変化しているとしている。
一方、民主派組織は、軍や警察を離脱した兵士・警察官に対して、必要であれば当座の資金を提供したり、場合によっては潜伏先、避難先を準備したりするなど手厚い保護を提供しているようだ。こうした保護によって、さらなる「寝返り」「厭戦気分拡大」を促す努力が続けられている。
■ 治安部隊の死者増加も一因か
9月7日のNUGによる国民への「一斉蜂起」「武装闘争開始」の呼び掛け以降、ミャンマー各地で軍施設の破壊や軍の車列への爆弾攻撃さらに、駐屯地などへの攻撃が激化しており、それに伴い兵士や警察官、さらに市民に紛れ込んだ「ダラン」と呼ばれる当局のスパイの死者も増えている。
軍政側は兵士や警察官の正確な死者の統計を明らかにしていないが、「ダラン」はこれまでに100人以上が反軍政の市民らによって「国民の裏切り者」として殺害されているとの報告もある。(中略)
こうした軍側の死者が増えていることも、兵士や警察官の間に「現在命令で実施している市民への弾圧が果たして正しい任務なのか」という疑問を生じさせる一因になり、それが軍や警察内部での離脱行動や厭戦気運に影響を与えている、との見方がNUGからは指摘されている。
■ 武装化と組織化を急ぐ市民側
9月27日、独立系メディアの「ミャンマー・ナウ」はNUGが軍と直接交戦している武装市民組織「PDF」からの訴えに応じる形で武器や装備の供給を急ぐ考えを示したと伝えた。
前線での武器不足を早急に補うと同時に各都市で組織されているPDF相互の密接なネットワークの構築による組織化で情報交換や連携した作戦の実施、さらには各地の少数民族武装勢力とのさらなる協力関係強化で軍との対決姿勢をさらに強める方針を示した。
こうした一連の動きにより、ミャンマー情勢はさらに混迷を深めることは確実で、今後さらに軍・警察と武装市民や少数民族武装勢力との戦闘が激しくなることは確実な情勢となっている。【10月3日 大塚 智彦氏 JBpress】
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武力に関する限り国軍側の優位は圧倒的であり、まともに渡り合って民主派側が事態を改善できる可能性は極めて小さいように、個人的には感じていますが、そうした状況を覆す唯一の道が、上記のような“寝返り”で国軍側の態勢が崩れることでしょう。
ただ、そこに至るまでには、453人云々はまだまだ“桁違いに”少なすぎるのが実態であり、「国家統一政府(NUG)」の呼びかけた「一斉蜂起」の実効性には懐疑的です。
もっとも、強権支配を強める国軍のもとで、他にどんな方法があるのか?と問われると答えに窮します。
冒頭ASEANの対応に見るように、国際社会をあてにすることもできませんし。