(2021年9月24日/リビア、首都トリポリ、暫定政府に対する不信任決議案が可決されたことに抗議する人々【9月25日 kkk】)
【12月24日 内戦を抜けて新たな国造りに向かう大統領選挙と議会選挙の予定】
カダフィ政権が「アラブの春」で倒れた後、東西勢力の内戦状態が続く北アフリカ・リビアについて取り上げたのは、今年4月26日ブログ“リビア・イエメン 内戦状況下での市民による新しい取り組み 女性起業家も”が最後のようです。
ずいぶん間隔があいているのは、この間あまり目だったニュースがなかったためです。
4月26日ブログでも触れたように、ようやく暫定統一政府が成立して、「これから・・・」という話になりそうですが、なかなかそうはならないのがリビアの現実。
そのリビアでは12月24日に新たな国造りの土台となる大統領選挙と議会選挙が予定されています。
これまでの経緯などについては、以下のようにも。
****10年続いたリビア内戦終結へ 平和は確立されるのか****
5月15日、カダフィの独裁の後の10年の混乱を経て、ようやくリビアに単一の暫定政府が成立した。リビアを立ち直らせるチャンスが訪れている。
ここ半年ほどの経緯は、およそ次の通りである。
2020年11月にチュニジアのチュニスで会合した「リビア政治対話フォーラム」(国連の主導で設立されたリビアの地域的あるいは分野別の利益を代表する勢力・派閥の代表者74名で構成された組織)が合意したロードマップには、新たに統一的な暫定政権を設けること、暫定政権は今年12月24日に実施されるべきこととされた大統領選挙と議会選挙の準備を取り進めることが規定された。
暫定政権は大統領評議会(大統領と二人の副大統領)および国民統一政府(首相、二人の副首相、その他閣僚)から構成されると定められた。今年2月5日、同フォーラムは暫定政権を構成するメンバーを選出した。
次いで、3月10日、アブドゥルハミド・ダバイバ首相が率いる内閣を議会(東西の対立を抱えている)が承認し、5月15日に新内閣が発足した。これまで対立して来た、国際的に承認されたトリポリのリビア国民統一政府(GNA)と、ハフタル司令官率いる東部のリビア国民軍(LNA)は、平和裏に権限を移譲したのである。
これまで相対立し争って来た勢力が単一の暫定政権に合意出来たことは特筆すべきことである。LNAを含め国内の諸政治勢力とこれに連携する軍事組織、およびそれぞれの支援勢力を有する諸外国も少なくとも表面的には支持の姿勢である。
実業家のダバイバが大物政治家を差し置いて首相に選ばれたことは驚きであったらしいが、(カダフィ時代の腐敗の匂いは引き摺っているが)いずれの方面とも話が出来るとされる彼が首相であることは助けとなっているようである。
他方、彼はトルコに近いようであり(5月初め、トルコのチャウショール外相はリビアを訪問して会談した)、また東部のミスラータ出身でもあり、ハフタルとの関係はどうかという問題もあろう。
しかし、リビアの前途はとてつもなく多難である。政治的・地理的に分裂し、国民が日常生活に窮する国で、軍や中央銀行を含め分断した政府機構を一つにまとめる必要がある。休戦(10月以来概ね維持されている)が維持されねばならない。国連が設定した1月23日の期限を無視して今なお外国軍隊と傭兵が存在し、彼等の策謀の危険は去っていない。
ハフタルのLNAは現在、ロシア、UAE、エジプトが支持しており、2019年4月から2020年6月にかけてトリポリを奪取しようとして失敗したが(トランプ政権も暗黙裡に侵攻を支持するような姿勢を見せていた)、これが大変な殺戮を招くこととなった。
LNAの侵攻を食い止めたのはトルコの大量の軍事援助である。リビアの和平プロセスにとり最も手に負えない問題は、合意を無視して数万人の外国兵が未だにリビアに存在すること、特にトルコ軍の存在である。
5月8日には、トルコ軍とその傭兵に撤退を要請した暫定政府のナジラ・アル・マンゴーシュ外相に対し、民兵が彼女を探してトリポリのホテルを急襲するという事件もあった。
いずれにせよ、米国をはじめ西側は、リビアがロシアとトルコの食い物にされるのを防ぐまたとない機会を逃すべきではない。
米国はこれを機にリチャード・ノーランド(駐リビア大使)をリビア担当特使に任命した。これは、公式にはGNAを承認しながらハフタルのトリポリ侵攻を支持するようなそぶりを見せたトランプ政権の出鱈目なリビア政策を清算し、米国がリビアの政治プロセスに真剣に関与するというメッセージを発することになろう。
しかし、事態がどう転ぶかは分からない。既に草案ができている憲法を成立させ、選挙法を整備し、予定通り12月24日に選挙を行えるかについて、まだ確かなことは言えないであろう。【6月9日 WEDGE】
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これまで、西のリビア国民統一政府(GNA)を支援してきたトルコと、東のハフタル司令官率いるリビア国民軍(LNA)を支援してきたロシアなどが、軍隊・傭兵を送り込んでおり、その撤退が進んでいないことで、つねに戦闘再開の危険が存在しています。
【予定どおりに選挙を行えるのは不明】
“予定通り12月24日に選挙を行えるかについて、まだ確かなことは言えない”・・・上記記事は6月9日ですから、それも当然かもしれませんが、今に至ってもよくわかりません。
一応、9月時点の情報では、東の武装勢力を率いてきたハフタル司令官が大統領選挙に出馬するようだ・・・とのことでした。
****リビアの大統領選挙****
(中略)アラビア語メディアは、リビア国司令官と称するhaftara 将軍が、22日付けの命令で、23日以降彼の権限を東部軍管区参謀長に移管し、彼は9月23日から12月24日の間軍務から離れると公表したと報じています。
どうやらこれは、リビア国会(トブルクにあり東部地区の権力源)が、先日選挙を12月24日とすると決定し、その前の3月間軍職にあったものは、大統領候補の資格がないと決定したことに対応するためのものの由
何しろ、このhaftar将軍というのが、政治的軍人の典型と言おうか、昔の中国の軍閥宜しく、アラブ諸国(特にUAE,、エジプト)のみならず、ロシア米仏等の間を駆け回りその支援を得ては、リビア内戦を煽り扇動してきた人物だが、政治的な遊泳術に比べたら軍事的才能はさっぱりで、トリポリ攻略戦でも大敗を喫しているという人物で、彼が大統領選に出るということは、リビアも遂にそこまで堕ちたかと言う気もするが、これまでの長いリビア内戦の経緯に鑑みれば、一つの区切りになるのかという気もします。
何しろ、このhaftar将軍というのが、政治的軍人の典型と言おうか、昔の中国の軍閥宜しく、アラブ諸国(特にUAE,、エジプト)のみならず、ロシア米仏等の間を駆け回りその支援を得ては、リビア内戦を煽り扇動してきた人物だが、政治的な遊泳術に比べたら軍事的才能はさっぱりで、トリポリ攻略戦でも大敗を喫しているという人物で、彼が大統領選に出るということは、リビアも遂にそこまで堕ちたかと言う気もするが、これまでの長いリビア内戦の経緯に鑑みれば、一つの区切りになるのかという気もします。
しかし上記メディアによれば、リビア国会の中にも、議長が評決もしないで、選挙法を決めたことに対して、無効とする反対意見もあるとのことで、リビアの悲劇(喜劇?)はまだまだ続きそうです。【9月23日 「中東の窓」】
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9月21日には、東部に本拠を置く議会(代表議会のことか)が、暫定首相の不信任案を可決し、“ドベイベ首相は、選挙で選ばれた議員に権力を引き継ぐまで辞任しないと誓い、衆議院の不信任決議を却下した。”【9月25日 kkk】との政治混乱も。
そうした状況で、議会選挙は来年1月に延期されるのでは・・・との報道も。
****リビア議会選は来年1月か 東西対立で延期***
東西内戦の停戦を受け暫定統一政府が統治しているリビアで5日、東部勢力で構成する代表議会が、統一議会の選挙を大統領選から1カ月後に実施するとの考えを示した。AP通信が伝えた。西部勢力の立場は不明。
リビアでは12月24日に大統領選と議会選が見込まれていたが、議会選が来年1月になる可能性が出てきた。(後略)【10月6日 産経】
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下記記事によれば、“選挙を行う法的枠組みが未だ整っていない”というのが現状のようです。
(なお、下記記事のタイトルの意味は不明です)
****リビアでカダフィ一族の復権はあるのか****
リビアでは昨年11月に国連主導の下で、新たな統一的な暫定政権を設けること、そして、この暫定政権は今年12月24日に実施されるべきこととされた大統領選挙と議会選挙の準備を取り進めることが合意された。
暫定政権は去る2月に成立した。相対立し争う勢力が単一の暫定政権に合意出来たこと自体、特筆すべきことであり、12月の選挙を経て最終的な解決を目指す段取りがともかくも整ったことは、リビア情勢にやっと希望を持たせるようにも思わせた。
しかし、12月に予定通り選挙が行われるのか? その結果として事態は安定化に向かうのか? 全く不透明である。さまざまな報道があるが、情勢は混沌としているようだ。
そもそも、選挙を行う法的枠組みが未だ整っていない(60日以内に法的枠組みを整えるとの期限があったがそれはとうに過ぎた)、あるいは選挙法についてコンセンサスが存在しないようである。
9月初めにトブルク所在の代表議会(House of Representatives)の議長アギーラ・サーレフは大統領選挙法を可決させた。しかし、ライバル機関と目されるトリポリ所在の高等国家評議会(High State Council)は協議にも与っていないとして承認を拒んでいる。
国連は、選挙が行えないよりは好ましいとして、少々無理でもこの選挙法で選挙を行いたい構えのようであるが、危険が伴う。
そもそもリビアのような分断された国の選挙では明確な多数派は構成されにくく、敵対する側は敗北を認めず、選ばれた大統領は弱体ということになりかねないが、選挙法にコンセンサスがなければ、危険は一層大きく、国の分断と混迷を深める危険があろう。
一方、議会選挙法は代表議会において未だ審議中らしく、成案を得るに至っていない。
大統領選挙にはサーレフは出馬するつもりなのであろう。彼が成立させた大統領選挙法との平仄を合わせるつもりであろうが、彼は議長の職を退いたとの報道もある。
同じ東部を地盤とするとはいえ、サーレフは、「リビア国民軍(LNA)」を率い「リビア国民統一政府(GNA)」に抵抗してきたハリファ・ハフタルの排除を試みているように見える。
ハフタルは出馬して勝てば良し、負ければリビア国民軍の司令官に戻る(現在は公式には司令官を退いている)だけということであろう。【10月21日 WEDGE】
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もうすぐ11月という時点で、“議会選挙法は代表議会において未だ審議中らしく、成案を得るに至っていない”ということでは、なかなか12月24日選挙実施というのは難しいようにも思えますが・・・
****リビア首相、12月24日選挙実施を支持****
リビアのアブドゥル・ドベイバ首相は21日、国連が支援する和平計画に想定されているように、国政選挙を12月24日に実施することを支持した。
首相はトリポリで行われたリビア安定化会議で、2011年にNATOが支援する反乱によりムアンマル・カダフィ政権が崩壊して以来の長期にわたる危機を終わらせることは可能だと述べた。【10月22日 ARAB NEWS】
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選挙実施を支持・・・本来は候補者が出そろって、選挙戦がスタートしている時期ですが・・・。
選挙が予定どおり行われるかも不明ですが、問題は、仮に選挙を行っても、(おそらく東西勢力が大統領選挙、議会選挙に出てくるのでしょうが)負けた方が選挙結果を認めて、その後の統一国家運営に協力する・・・とは到底思えないことです。
【移民・難民の無差別大量逮捕 追い詰められる移民・難民】
統一的な政権が機能していないリビアで、現在どういう統治がおこなわれているのか、市民生活はどうなっているのか、まったく想像できないのですが、かねてより、リビアは欧州を目指す移民・難民の出発点となっており、その移民・難民を食い物にする業者の無法がまかり通っているという話は聞きます。
移民・難民を苦しめているのは悪質業者だけではないようです。
****リビア:首都トリポリで大規模な無差別逮捕――数千人が拘束され、医療を受けられず放置される人も***
リビアの首都トリポリで、10月1日に行われた移民・難民の無差別大量逮捕によって、収容センターに拘留された移民・難民の数が、その後5日間で3倍以上に激増したと、現地で活動する国境なき医師団(MSF)が確認した。
治安の悪化で、MSFが市内で毎週行っている移動診療は中断を余儀なくされ、逮捕を免れた人も外出を恐れ、医療機関受診をためらう状況が続く。
市内3カ所の収容センターで医療活動を行っているMSFは当局に対し、弱い立場にある移民・難民の大量逮捕を中止したうえで、収容センターに不法に収容されている人びとの解放と人道目的でのリビア出国を認め、他国での再定住に向けた国際便の即時再開を求めている。
無力な人びとへの暴力
トリポリ市全域では、この3日間で少なくとも5000人の移民・難民が政府の治安部隊によって拘束された。自宅を襲撃され、捕らえられた人の多くは、性暴力を含む激しい暴力を受けたとも報じられている。国連によると、移民の若者の1人が死亡し、少なくとも5人が銃に撃たれて負傷したという。
襲撃を受けた1人、アブドさん(仮名)は「武装した覆面の治安維持部隊員によって、家が襲撃されました。両手を縛られ、家の外に引きずり出され、荷物や大事な書類をまとめる時間が欲しいと必死に頼みましたが、聞き入れられませんでした。収容センターに連行される途中に、私は小銃で頭を殴られ大けがを負い、足を叩かれて骨折した人もいました。その後、医師が手当てをしてくれましたが、覆面をした男たちに車に乗せられ、気が付いたときにはアル・マバニ収容センターにいたのです。4日間をそこで過ごし、無力な人びとが武器で殴られるのを目の当たりにしました。4日目になんとか脱出できました。」と話す。
逮捕された人びとは国営の収容センターに送られ、清潔な水や食料、トイレもほとんどない、不衛生でひどい過密状態の場所に閉じ込められた。逮捕されたときにうけた暴力により、大勢の人が救急医療を必要としているはずだとMSFは見ている。
リビアでMSFのオペレーション・マネジャーを務めるエレン・バン・デル・ベルデンは「私たちは治安部隊が、さらに多くの社会的弱者の身柄を意味もなく拘束し、非人間的かつ過密状態に収容するといった強硬手段に訴えるのを目の当たりにしています」と話す。
襲撃を受けた1人、アブドさん(仮名)は「武装した覆面の治安維持部隊員によって、家が襲撃されました。両手を縛られ、家の外に引きずり出され、荷物や大事な書類をまとめる時間が欲しいと必死に頼みましたが、聞き入れられませんでした。収容センターに連行される途中に、私は小銃で頭を殴られ大けがを負い、足を叩かれて骨折した人もいました。その後、医師が手当てをしてくれましたが、覆面をした男たちに車に乗せられ、気が付いたときにはアル・マバニ収容センターにいたのです。4日間をそこで過ごし、無力な人びとが武器で殴られるのを目の当たりにしました。4日目になんとか脱出できました。」と話す。
逮捕された人びとは国営の収容センターに送られ、清潔な水や食料、トイレもほとんどない、不衛生でひどい過密状態の場所に閉じ込められた。逮捕されたときにうけた暴力により、大勢の人が救急医療を必要としているはずだとMSFは見ている。
リビアでMSFのオペレーション・マネジャーを務めるエレン・バン・デル・ベルデンは「私たちは治安部隊が、さらに多くの社会的弱者の身柄を意味もなく拘束し、非人間的かつ過密状態に収容するといった強硬手段に訴えるのを目の当たりにしています」と話す。
収容所の劣悪な環境と続く暴力
10月4日と5日、MSFは逮捕された人びとが送られた、シャラ・ザウィヤとアル・マバニという市内2カ所の収容所の訪問に成功した。
シャラ・ザウィヤ収容センターの想定収容人数は200~250人だったが、少なくとも550人が同じ部屋詰め込まれ、その中には妊婦や新生児がいるのも目撃した。約120人が1つのトイレを共有し、独房のドアの近くには尿の入ったバケツが並んでいた。食事が配られると、収容された女性たちがこの状況に抗議する騒ぎが起きた。
アル・マバニ収容センターでは、本来飛行機を入れるための格納庫や独房があまりにも過密で、中にいた男性は腰を下ろすこともできない状況だった。
アル・マバニ収容センターでは、本来飛行機を入れるための格納庫や独房があまりにも過密で、中にいた男性は腰を下ろすこともできない状況だった。
独房の外では、数百人の女性や子どもが、日陰も仮住まいもない野外で拘束されていた。収容された人の中には、3日間何も食べていないという男性や、1日1回、パン1枚とプロセスチーズ3個だけを受け取るのが常だという女性もいた。MSFは、何人かの男性が意識不明の状態で、緊急治療を必要としているのを発見した。
アル・マバニを訪問した際には、拘束された移民・難民のグループが脱出を試みているところも目撃。しかし、このグループは激しい攻撃を受けていた。至近距離で2回の激しい銃撃の音が聞こえ、それから男性らは無差別に殴られた後、車に押し込められ、どこかへ連れていかれてしまった。
アル・マバニを訪問した際には、拘束された移民・難民のグループが脱出を試みているところも目撃。しかし、このグループは激しい攻撃を受けていた。至近距離で2回の激しい銃撃の音が聞こえ、それから男性らは無差別に殴られた後、車に押し込められ、どこかへ連れていかれてしまった。
収容施設での医療活動
(中略)「収容センターで身柄を拘束する人の数を増やすのではなく、意味のない収容をやめ、このような危険で居住に適していない施設の閉鎖に動くべきです」とバン・デル・ベルデンは話す。
「これまで以上に移民・難民は危険にさらされて生活しています。出国しようにも選択肢はごく限られているので、リビアに閉じ込められたも同然です。今年に入ってから2度も人道援助目的の出国便が正当な目的なく差し止められたのですから」【10月7日 国境なき医師団】
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選挙の実施が、こういう世界が良い方向に向かうスタートとなるのか・・・。