孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国の日本に対する印象が急激に悪化という世論調査 

2021-10-20 23:24:51 | 中国
(日中両国民の相手国に対する印象 【10月20日 毎日】)

【日本に良くない印象 昨年の52.9%から66.1%と13.2ポイントも増加】
今日、各メディアが一斉に報じているのが、日中の相手国への印象を問う世論調査結果で、中国国民の日本に対する印象が大幅に悪化した件。

****相手国への国民感情さらに悪化=日本人の大半、米中「どちらにもつくべきでない」―日中世論調査****
2021年10月20日、非営利シンクタンク言論NPO(代表:工藤泰志)は、中国国際出版集団と共同で実施した「第17 回日中共同世論調査」結果を発表した。それによると、中国国民の日本に対する意識がこの1年で急激に悪化。「良くない印象を持っている」人の割合は7割近くに達した。一方、冷え込んでいた日本国民の対中意識に改善はなく、中国へのマイナス印象は9割を越えた。

こうした中、米中対立の影響下でも日中両国民とも世界・アジアの平和維持や経済発展に向けた日中協力への期待が大きいことが明らかになった。また米中対立の中での日本の立ち位置について、日本国民の55%が米中の「どちらにもつかず世界の発展に努力すべき」と回答した。

中国国民で日本に対する「良くない印象(どちらかと言えばを含む)」を持っている人が昨年の52.9%から66.1%と13.2ポイントも増加した。

中国国民の日本に対する「印象」が悪化に転じるのは、尖閣諸島での対立が表面化した2013年以来8年ぶり。また中国人で「現在の日中関係」を「悪い」と考える人は、2016年以降、改善傾向にあったが、5年ぶりに悪化に転じ、昨年の22.6%から42.6%と20 ポイントも増加した。「良い」と見る人は昨年の22.1%から半減し、10.6%に落ち込んだ。この悪化幅は、2013年の尖閣諸島ショック後の調査に次ぐものとなった。

一方、冷え込んでいた日本国民の対中意識に改善はなく、中国へのマイナスの印象は9割を越え、現状の日中関係を「良い」と思う人は2.6%に落ち込んだ。この結果、両国の国民意識は調査が始まった2005年ごろの厳しい水準に戻り始めている。

日本国民では、中国に「良くない」という印象を持っている人は今年も改善傾向はなく、90.9%に達した。現在の日中関係を「悪い」と考える日本人は昨年の悪化以降、改善しておらず今年も54.6%と半数を超えた。

中国国民の回答で「日中関係の発展を妨げるもの」として最も増加したのは「中日両政府の間に政治的信頼関係がないこと」で、29.3%と昨年から10.4 ポイント拡大した。

日本の印象を良くないとする理由では、「侵略した歴史をきちんと謝罪し反省していないから」を挙げる人が77.5%と突出している。加えて、「一部の政治家の言動が不適切だから」が21%と昨年の12.3%から8.7ポイントも増加した。

今回の世論調査では、お互いの軍事的な脅威だけが議論され、国民間に不安がある中で政府間の外交が機能せず、さらにコロナ過で国民間の直接交流がないこと、また歴史認識問題が再び中国で話題になっていることなどが明らかになった。

こうした中で、世界経済の安定した発展と東アジアの平和を実現するために、日中両国はより強い新たな協力関係を構築すべきだと考えている中国人は、70.6%と7割を超え、日本人でも42.8%と最も多い回答となった。

さらに、日中両国やアジア地域に存在する課題の解決に向けて、日中両国が協力を進めることについて、日本人の56.5%、中国人の76.2%が「賛成」している。

さらに、米中対立の影響が日中関係にも及ぶ中での、日中協力のあり方について、日本人の33.7%、中国人の37.9%が「米中対立の影響を最小限に管理し、日中間の協力を促進する必要がある」と回答。これに、「米中対立と無関係に日中の協力関係を発展させる」(日本人11.1%、中国人10.5%)を選んだ人を加えると、日本人の4割、中国人の半数近くが米中対立下でも日中協力を促進すべきだと考えていることが明らかになった。

また、米中対立下の日本の立ち位置について、日本国民の55%が、日本は米中の「どちらにもつかず世界の協力発展に努力すべき」と考えている。

この調査は「第17回 東京−北京フォーラム」(10月25〜26日)の開催に先立ち実施された。日本側の世論調査は、日本の18歳以上の男女を対象に2021年8月21日から9月12日まで訪問留置回収法により実施された。有効回収標本数は1000。

中国側の世論調査は中国側の世論調査は北京・上海・広州・成都・瀋陽・武漢・南京・西安・青島・鄭州の10都市で18歳以上の男女を対象に同年8月25日から9月25日にかけて調査員による面接聴取法により実施された。有効回収標本は1547。

◆工藤泰志代表は20日の発表記者会見で日中世論調査結果について次のように述べた。

今回の世論調査で注目すべきは、中国人の対日印象や、現状の日中関係への意識がこの1年で急激に悪化したことである。2012年に尖閣諸島をめぐって対立した時ほどの決定的な悪化ではないが、変化幅はそれに次ぐ急激なものである。

中国側の意識の変化は、日中関係をめぐる多くの課題で中国側の認識を後退させている。これに対して日本人の意識は昨年の悪化から変わらず、強く冷え込んだままである。双方共に今後の日中関係に関しても悲観的な見方が強まっており、両国の国民感情は注意を要するゾーンに入ったと言える。

私たちが懸念しているのは、この「印象」と「日中関係」に対する今年の両国民の意識の水準は、日中関係が最も困難な時期とされ、多くの若者が中国で暴動を起こした2005年の水準にほぼ並んだということにある。この時に私たちの日中世論調査も始まったが、残念なことに状況は振り出しに戻りつつある。

これらの調査結果は、来年の日中国交正常化50周年に向けて、政府間の行動や民間の取り組みに新しい対応を突き付けているように思う。【10月20日 レコードチャイナ】
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【意外な結果という印象も】
ここ数年は、中国側の対日本印象が改善しているのに対し、日本側の対中国印象が悪いままで改善しないという“非対称性”が明らかになっていましたが、今回結果では、その中国側の対日本印象が急激に悪化した点が特徴です。

個人的には、非常に意外な結果でした。
毎日、国際面のニュースをチェックしていますが、中国の対日印象に関する記事では、従来通り日本に好意的なものが少なくなく、最近そんなに刺々しくなったという感じはありませんでした。ここ数日の記事でみると・・・

“「日本=悪」とする教育を次世代にも施すべきか・・・中国人の疑問”【10月17日 Searchina】
“中国人たちが和気あいあい「みんなが日本好きになったきっかけは?」”【10月18日 Searchina】
“愛国者なのに日本に魅力を感じてしまう! 中国ネット民の反応は・・・”【10月18日 Searchina】
“なんて優しいんだ! 日本の女性に「細やかな優しさ」がある理由=中国”【10月19日 Searchina】

まあ、この手の記事は、日本の読者が喜びそうな事柄を敢えて選んでいるという面もあるでしょうし、また、もともと対日感情で問題があるのは“当たり前”で、そうした中で“意外性”のある日本に好意的な事柄がニュースになりやすいという面もあるのかも。

それにしても、ここ1年、対日感情が急激に悪化したという印象は、上記のような記事を含む日中関係の記事からはうかがえませんでした。

“日本に「良くない」印象を持つ理由としては、「中国を侵略した歴史についてきちんと謝罪し反省していない」が77・5%で最も多かった。昨年から最も増加したのは「一部の政治家の言動が不適切」で、昨年の12・3%から21・0%に増加している。”【10月20日 産経】

“一部の政治家の言動”云々が何をさすのか定かではありませんが、尖閣や靖国に関して中国側を怒らせるような言動は毎度のことで、ここ1年急速にそういうものが増加した・・・というイメージもなにのですが。

また、“コロナ過で国民間の直接交流がない”【前出 レコードチャイナ】ことが、改善傾向をストップさせたということはわかりますが、悪化を加速させた理由になるのか?

【反日感情の高まりを指摘する向きも 背景に愛国主義か】
中国側の対日印象の推移を詳しく見ると、「良くない印象」は2013年調査をピークに大きく改善してきましたが、一昨年は改善ペースが鈍化し、昨年は横這い・・・と一昨年あたりから変化の兆しは見てとれます。

やはり根底には“歴史認識問題が再び中国で話題になっていること”【前出 レコードチャイナ】、更にその背後にある、習近平政権のもとで進む愛国主義的傾向があるようにも思われます。

10月15日ブログ“中国 習近平主席の語る民主主義とは・・・ 中国政治の実態は・・・”でも取り上げた記事ですが、そうした現在の中国で高まる反日的な気分を示すものも。

****反日感情の高まりか? 中国で日本人学校に対する反発の声****
中国では最近、日本に絡んだネット炎上事件が頻発している。靖国神社で記念撮影した中国人俳優が激しいバッシングを受け、事実上の芸能界追放となったことは記憶に新しく、日本関連のことは何でも問題視されているかのようだ。

中国メディアの百家号はこのほど、日本は「100年前にも中国に学校を建設していた」とし、日本人学校に警戒しなければならないと主張する記事を掲載した。

記事の中国人筆者が言う「100年前に存在していた日本の学校」とは、1901年に上海で設立された「東亜同文書院」のことだ。特に、「東亜同文書院」の学生が卒業前に中国各地へ散らばって旅行に行き、地理や文化、天気など様々なことを調査して学校に報告していたことを問題視し、「これは典型的なスパイ養成学校だった」と主張した。

実際のところ、「東亜同文書院」は日中友好協力の基礎を固めるための人材育成が目的で設立されたが、上記のような旅行と調査報告を行っていたことを「スパイ行為」と疑う中国人はいまだに少なくないようだ。

「東亜同文書院」は、終戦のため廃止されたが、記事の中国人筆者は東亜同文書院に絡めて上海にある日本人学校を問題視した。上海日本人学校では基本的に日本人だけしか受け入れていないと指摘し、「日本はここでスパイを養成しているに違いない」と根拠のない主張を展開している。

さらに、中国の土地に建てた学校に中国人が入れないのは「中国人に対する侮辱」であり、完全封鎖された学校内で何を教えているかも分からないというのは、「非常に恐るべきこと」だと読者の不安を煽った。

そして、「中国に建てた学校なのに中国教育部の管理を受けないのはなぜか?中国の法律に従わなくて良いのか?」と疑問を呈し、「中国に建てた学校では中国政府の管理を受けるべきで、校内では中国国旗を掲揚し中国国歌を歌うべきだ。それが受け入れられないなら中国から出ていくべき」と独自の主張をしている。

最近の中国では日本に絡むことに対する風当たりが強くなってきており、ネット上の意見を見ていても反日感情が徐々に高まっていることが感じられる。【10月15日 Searchina】
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15日ブログで取り上げたときは、“ネット上の意見を見ていても反日感情が徐々に高まっていることが感じられる”という指摘に、“そうなの?”という感じもありましたが、今回調査を見ると、上記記事の指摘があたっていたようです。

また、日本人としてはあまり自覚もないのですが、中国側には“日本はいつも中国を敵視している”という見方もあるようです。

****日本はどうして常に中国を叩きたがるのか=中国メディア****
中国のポータルサイト・網易に10日、「日本はどうしていつもわが国に圧力をかけようとするのか」とする記事が掲載された。
 
記事は、日本について「古くより東洋世界において最も不安定な要素だった。自分が強くなったと感じた途端、中国大陸に攻め込み、なおかつ中国大陸の発展をどうにかして妨げようとするのだ」と主張。近代にその傾向が顕著となり、第2次世界大戦で惨敗を喫したにもかかわらず、現在も日本の中国に対する姿勢は変わっていないとした。
 
そして、今世紀に入って急速かつ大規模な発展を遂げて国力の強化を実現した中国はすでに日本に対して非常に大きな国力の差をつけており、「そもそも同じレベルで論じることのできる国どうしではなくなった」にもかかわらず、日本はなおも中国に対して囲い込みを仕掛け、圧力を加えようとしているとの見解を示した。その一方で、日本はロシアの発展を阻害するような行動には「出ようとしない」と伝えている。
 
その上で、日本が中国とロシアで態度を変えており、中国に対しては高圧的な姿勢を保っている理由について「日本が中国に打ちのめされていないからだ」と考察。日本を「弱者をいじめ、強者に媚びる典型的な国」とし、日本が歴史の中で打ちのめされた相手に対しては強い畏敬を抱き、圧力をかけたり報復したりする勇気を持たない一方で、中国には打ちのめされたと認識していないため、現在に至るまで「自分は中国より強い」と考え続け、中国の台頭に納得がいかず、中国を懲らしめようとし、戦って勝てると「思い込んでいる」と論じた。【10月13日 Searchina】
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「弱者をいじめ、強者に媚びる典型的な国」という対日観は昔からあるものですが、愛国主義の高まりのなかで、そういう認識がこれまで以上に強調されるようにもなっている・・・・のでしょうか。

【日本側の 対中国印象の「悪さ」の高止まりは? 待ち望まれる人的交流】
以上、中国側の対日感情の急激な悪化を問題視してきましたが、日本側の極端に高止まりした対中国感情の悪さも本来問題とすべきでしょう。

もちろん、中国側の尖閣などでの行動が原因ではありますが、それにしても・・・という感も。
中国だけでなく、韓国に対しても同様でしょう。ことさらに近隣国への刺々しい感情をもたらすものが日本社会の中に存在するのかも・・・という視点もあっていいのかも。

コロナ禍でタコつぼに身をひそめるような内向き社会がもたらすものでしょうか。
より長期的視点で言えば、「失われた30年」とも言われるような「停滞社会」に蔓延する淀んだ閉鎖的な空気でしょうか。

日中双方の淀んだ空気を少しでも清浄してくれるものとして、観光を含めた人的交流の再開が望まれます。

コメント
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