孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  政治的分断で頭打ち状態にあったワクチン接種率、バイデン政権は義務化で向上目指す

2021-10-30 23:50:37 | アメリカ
(10月4日 ニューヨークで行われたワクチン接種義務化への抗議デモ【日テレNEWS】)

【アメリカ ワクチン接種義務化け 各国でも同様の動き】
出遅れた日本の新型コロナワクチン接種率も2回接種完了者が10月29日時点で全人口の71.2%、1回接種者が77.2%と、ようやく社会全体の感染レベルを抑えるほどに高まってきました。

ワクチンの効果に関しては様々な記事・情報がありますが、副作用リスクよりはるかに大きいベネフィットが期待できるというのが一般的理解でしょう。

“ワクチン未接種の成人、コロナ感染死のリスクは11倍高め 米CDC”【10月17日 CNN】
未接種者が陽性診断を受けるリスクは6倍で、入院を迫られるリスクは約19倍だったとのこと。

ただ、ワクチンを接種したくないという者も一定に存在しますので、更に接種率を高めるためには対策も必要になります。

特に、アメリカでは10月14日“ブラジル・米 マスク・ワクチンは政治的分断雄の象徴 地域的に分断を示すカリフォルニアとテキサス”でも取り上げたように、ワクチン・マスクが政治信条とリンクするような状況にもなっており、ワクチン接種が頭打ち状態にもなりました。
一方で、感染力の強いデルタ株によって、感染が再び拡大する状況にも。

そのため、バイデン大統領はワクチン義務化に踏み出しました。

****米、企業もワクチン接種義務化=連邦職員は全員対象に***
バイデン米大統領は9日、国民向けに演説を行い、100人超の従業員を抱える企業に対し、従業員に新型コロナウイルスのワクチン接種か、毎週の感染検査を受けさせることを義務化する方針を明らかにした。また、すべての連邦職員にワクチン接種を義務付ける。感染力の強いデルタ株の流行で新規感染者が再び増加する中、未接種者への働き掛けを強化する狙いがある。
 
バイデン氏は演説で「(ワクチン接種は)自由や個人の選択の問題ではなく、自分や周りの人々を守ることだ」と強調。ワクチンに否定的な市民らに接種を呼び掛けた。米国の労働者の3分の2に当たる1億人が今回の措置の対象になるという。
 
米政府高官によると、企業が従わなかった場合、最高1万4000ドル(約150万円)の制裁金が科される。ロイター通信によると、航空機などでのマスク着用義務違反に対する制裁金も最高3000ドル(約33万円)に引き上げる。【9月10日 時事】
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首長が民主党のニューヨーク市やカリフォルニア州では、更に踏み込んだ対応も。

****NY市、職員全員にコロナワクチン接種義務付けへ=WSJ***
米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は20日、ニューヨーク市が、市の職員全員に対し、新型コロナウイルスワクチンの接種を義務付けると報じた。

デブラジオ市長が20日発表する。10月29日までに最初のワクチン接種を受けない職員は失職の可能性があるとしている。【10月20日 ロイター】
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アメリカ同様に、世界各国でワクチン接種を義務化する流れが強まっています。
当然ながら、強制されることへの反対も噴出しています。

****接種義務化、急ぐ各国 米・仏・加・ロ…乗客や接客業にも コロナワクチン****
新型コロナウイルスワクチンの接種率が米国などで頭打ちになるなか、各国で接種の義務化が広がっている。義務化で一定の効果は出ているが、反発も起きており、ワクチンが対立の火種にもなっている。

 ■教職員95%接種経験 NY市
ニューヨーク(NY)市の小学校教員、ロザンヌ・リッツィさん(55)が新型コロナのワクチンを接種したのは、米国でワクチンの接種が始まって9カ月半たった10月1日だった。
 
リッツィさんは、昨年11月に新型コロナに感染。「抗体がある。必要ない」と信じ、ワクチンを打ってこなかった。
 
市は教職員のワクチン接種義務化を8月23日に発表した。ワクチン接種を拒んだ教職員は無給の休職扱いになる。「米国では、生まれながらにして一定の自由が与えられている」とリッツィさんは話す。だが、住宅ローンや生活費を払うため、「ためらいながら、不本意ながら」接種した。
 
市によると、義務化が施行された10月4日時点で、95%の教職員が少なくとも1回の接種を終えた。義務化の発表後だけで接種数は4万3千回に上った。デブラシオ市長は20日、警察や消防を含む全ての市職員に義務化の対象を広げた。
 
カリフォルニア州はより踏み込んだ措置に出ている。1日、対面授業を受ける全ての児童や生徒にワクチン接種を義務づける方針を発表した。対象となるのは5~18歳の児童・生徒。8月には全米初となる教師らへの義務化なども打ち出しており、9割近くの学校が対面授業に戻っている。
 
接種率を高めるため、ワクチンの義務化を導入する国は相次いでいる。
 
ロイター通信などによると、フランスでは医療関係者や高齢者施設などの職員に、10月半ばまでに接種を完了するように義務づけた。

カナダ政府は10月、ワクチン未接種の職員を無給の休暇にし、飛行機や電車、船の乗客にも接種を義務化すると発表。

ロシアでは、モスクワ市が接客を伴う業種の企業に対して、従業員の80%以上にワクチンを受けさせることを義務化。12月1日までに1回目、来年1月1日までに2回目を接種するように求めている。
 
一方、義務化をしていない日本はワクチンの承認や確保が遅れたが、6月ごろから接種プログラムが軌道に乗り始めた。接種を完了した国民の割合は9月に米国を追い抜き、先行した多くの国が伸び悩むなか、現在は7割を超えた。

 ■「強制」に反発、デモ相次ぐ
ワクチンの義務化は対立も生んでいる。
 
全米各地でデモが起きているほか、NY市では一部の教職員が反発し、複数の訴訟も起きている。また、テキサス州では共和党のアボット知事が11日、州内においてワクチンの義務化を禁じる知事令を発令。アボット氏は新型コロナワクチンの効果は認めつつ、「強制されるべきものではない」としている。

欧州でも義務化をめぐる反発の声が各地で上がっている。

フランスは今夏から、ワクチンの接種証明か陰性結果を記録した「衛生パス」を導入。現在では映画館や飲食店、長距離列車の利用、通院などに必要で、「事実上の強制だ」として3カ月以上、毎週末の反対デモが続く。当初、20万人以上が参加した規模からは縮小したものの、今月23日にはなおデモに4万人が参加した。ワクチンを接種した人からも「自由の侵害だ」という声が出ている。
 
イタリアでは、今月15日にすべての職場で接種証明か陰性結果の提示を義務づけたことから、北西部の港町ジェノバで港の一部を封鎖する反対デモが起きた。

 ■離職懸念、ためらう企業も
米経済界はワクチンの接種率が高まれば経済が活性化すると期待する。
 
バイデン政権は9月、従業員100人以上の企業に対し、ワクチン接種か陰性証明を毎週提出させることを求める計画を発表。自社で感染が拡大すれば人手が足りなくなる恐れもあり、政権の方針を受けて義務化に踏み切る企業が相次ぐ。
 
義務化で最も恩恵を受ける業界の一つが航空業界だ。コロナ禍で世界の航空会社が大幅な乗客減に苦しむ中、米航空大手3社は既に国内線の売上高が2019年の7~8割まで回復した。11月8日にはワクチン接種を条件に外国人の入国が認められるため、国際線の回復に期待する。
 
航空会社以外にも義務化する企業が増えている。米メディアによると、バイデン政権の方針発表後、ゼネラル・エレクトリック(GE)やIBMなどが従業員に接種を義務づけた。
 
一方、テキサス州など接種率の低い地域に事業拠点を持つ企業には、義務化をためらう企業も多い。訴訟リスクがあるほか、人手不足の中で退職者が相次ぐことを警戒しているためだ。
 
テキサス州オースティンで複数のホテルを経営するビジャイ・パタールさんは、接種自体には賛成だが、従業員の自由を尊重したいとして義務化には反対だ。未接種の従業員には毎週検査させるという。パタールさんは「従業員の一部は接種を拒否している。義務化による離職も心配だ」と話した。【10月29日 朝日】
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【接種をあくまで拒む者は失業の危機】
義務化された場合、何らかの理由でどうしても接種したくない者は失業ということにもなります。

****米各地でワクチン未接種者が失業危機、州や企業の義務化加速が背景****
米国各地で、新型コロナウイルスワクチンの未接種者が職を失う恐れが出てきている。州や自治体、民間企業の間でワクチン接種を義務化する動きが広がっていることが背景にある。

直近ではワシントン州立大学が18日、フットボールチームのヘッドコーチとアシスタント4人を解雇した。州のワクチン接種要求に従わなかったためだ。このヘッドコーチは今月、宗教上の理由から接種義務の適用免除を申請していた。

シカゴやボルチモアなどでは数千人の警察官や消防士が、数日中に接種完了を報告するか定期的な陰性証明の提出を求められている中で、失業の危機にさらされている。

シカゴの場合、ライトフット市長と警察官の組合がこの問題を巡って対立。組合側は、市職員へのワクチン強制に反対の姿勢を打ち出した。1万2770人に上る市職員のうち、15日の期限までに接種完了を報告しなかったのは3分の1ほどで、その一部は休職処分となった。

ライトフット氏は18日、「基本的にこれは命を救うという話に尽きる。安全な働き場所の生み出せる機会を最大化するということだ」と述べ、ワクチン強制に反対している組合を「反乱をけしかけている」と強い口調で非難した。

航空機大手ボーイングの従業員ら約200人は15日、同社が12月8日までに12万5000人の従業員にワクチン接種を要求したことに対する抗議活動を開始した。この要求は、バイデン政権が連邦政府と取引がある企業に発出した命令に基づいている。

これとは別に、バイデン政権が100人以上を雇用する民間事業所に適用するためのワクチン接種命令の施行細則も間もなくまとまる見通しだ。これにより連邦政府職員、政府取引企業と合計すると、米国の労働者のおよそ3分の2に当たる1億人前後がワクチンを接種しなければならなくなる。

既に医療業界では解雇の動きが広がっている。ワクチンを接種せずに仕事を辞めた看護師や医療従事者はロイターに、米国で使用されている3種類のワクチンについて長期的なデータがまだそろっていないことへの不安を、どうしても看過できなかったと打ち明けた。【10月20日 ロイター】
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“ワクチンについて長期的なデータがまだそろっていないことへの不安”・・・私個人としては、そういうリスクと未接種で感染するリスク、その結果周囲に感染を広げるリスクとの合理的評価を欠いているようにも思えるのですが。

未接種者の多くは「義務付けられたら仕事やめる」との考えのようですが、そうした話と実際に辞めるかどうかはまた別問題のようです。

****ワクチン未接種者の72%、「義務付けられたら仕事やめる」 米調査****
米国で実施された新型コロナウイルスワクチンに関する意識調査で、接種を受けていない人の大多数が、職場で義務化されれば仕事をやめると回答した。

意識調査は米シンクタンクのカイザー・ファミリー財団が実施した。それによると、ワクチン未接種の労働者のうち37%は、もしもワクチン接種か週に1度の検査のいずれかを強要されたら仕事をやめると回答。ワクチン接種が義務付けられ、検査の選択肢を与えられない場合は72%が仕事をやめると答えた。

バイデン政権は、従業員100人以上の企業などに対して従業員のワクチン接種または定期的な検査を義務付ける職場安全規定を起草している。この規定は全米の労働者の3分の2に当たる約8000万人に適用される見通し。

今回の調査で接種を義務付けられれば仕事をやめると答えたワクチン未接種の労働者が、もしその言葉を実行に移した場合、労働者の5〜9%が離職することになる。

ただし、意識調査で仕事をやめると答えたワクチン未接種の労働者の多くは、その言葉を実行に移さない可能性がある。

ワクチン義務化に踏み切った米ユナイテッド航空などの大手企業は、ほぼ全従業員がルールに従ったと報告している。

調査対象となった成人の24%は、ワクチン義務化を理由に仕事をやめた知人がいると回答した。一方、勤務先のワクチン義務化をめぐって実際に仕事をやめたという人は、ワクチン未接種の成人の5%のみ。仕事をやめたという人が米国の成人に占める割合は1%にとどまった。

調査は10月14〜24日にかけ、米国の成人1500人あまりを対象として電話で実施された。【10月29日 CNN】
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【共和党系各州からの「訴訟の嵐」 接種率は一定に上昇】
こうした義務化に対し、共和党の首長の州では反対が強く、テキサス州では共和党のアボット知事が10月11日、州内においてワクチンの義務化を禁じる知事令を発令しました。

更に、予想されたことではありますが、義務化を進める連邦政府を提訴する「訴訟の嵐」が現実のものとなっています。

****テキサス州と10州連合、バイデン政権を提訴 ワクチン義務化に反対****
米テキサス州は29日、バイデン政権が連邦政府の契約業者に新型コロナウイルスワクチンの接種を義務づけたのは違憲だとして、同政権を相手取り訴訟を提起した。

ミズーリ州司法長官室はこの数時間前、連邦政府の契約業者や契約職員へのワクチン接種義務づけを巡り、同州など10州がバイデン政権に対する訴訟を起こしたと発表していた。

バイデン大統領は9月、連邦職員や大規模雇用主、医療関係者を対象とする包括的かつ厳格なワクチン規則を発表。共和党主導の州からはこれに対して法的に争う動きが相次いでいる。バイデン氏はワクチン接種の義務化を、現在や将来の感染拡大を封じる重要な手段と位置づけている。

ミズーリ州司法長官室の声明によると、同州のシュミット司法長官とネブラスカ州のピーターソン司法長官が中心となり、アラスカ、アーカンソー、アイオワ、モンタナ、ニューハンプシャー、ノースダコタ、サウスダコタ、ワイオミングの各州とともに訴訟を起こした。

この訴訟はミズーリ州東部地区の連邦地裁に提起されたもので、バイデン氏の命令は調達法や調達政策法に違反し、州の規制権限を奪うものだと指摘。行政手続法に対する手続き上および実体上の違反などにも当たると主張している。

これとは別に、ジョージア州のケンプ知事は29日、アラバマやアイダホ、カンザス、サウスカロライナ、ユタ、ウェストバージニアの各州の当局者とともにワクチン義務化に反対する訴訟を起こす意向を明らかにした。

フロリダ州のデサンティス知事も28日、同州タンパでバイデン政権を相手取った新たな訴訟を提起したと発表していた。

ワクチンの義務付けは12月8日から実施される。
ホワイトハウスはデサンティス氏の発表を受け、「ワクチン義務化は有効だ」と反論。バイデン氏には接種を義務づける権限があるとしている。【10月30日 CNN】
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おそらく最高裁まで行けば、現在の判事の構成からして連邦政府は敗訴すると思われますが、バイデン政権としては、こうした「訴訟の嵐」が起きることは当然に想定はしていたことでしょう。

すでに義務化の流れによって接種率は上昇しているようですから、それだけでも効果はあったとの判断でしょうか。

****バイデン「ワクチン義務化は奏功」と評価 米国民の未接種者なお6600万人****
バイデン米大統領は14日、新型コロナウイルスワクチン接種の義務化が奏功しているとしつつも、まだワクチンを接種していない6600万人の接種促進に向け引き続き注力する必要があると述べた。

ホワイトハウスの新型コロナ対策調整官を務めるジェフ・ザイエンツ氏は13日、政府機関や企業によるワクチン接種義務化によって、国内のワクチン接種率が20%ポイント超上昇したと明らかにした。

バイデン大統領は「夏に開始したワクチン義務化が奏功している」と強調。同時に「ワクチン未接種者は6600万人まで減少したが、なお容認しがたいほど高水準にとどまっている」とし、「ここで諦めることはできない」と述べた。(後略)【10月15日 Newsweek】
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