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(ビットコインが法定通貨になったエルサルバドル【8月10日 BUSINESS INSIDER】)
【各国で導入される中央銀行デジタル通貨】
****デジタル通貨も「周回遅れ」の日本 今さら「新一万円札」の時代錯誤****
途上国が中央銀行デジタル通貨(CBDC)を開発、発行する動きが急展開している。
ナイジェリア中央銀行が十月一日からデジタル通貨の試験運用を始めたほか、ガーナ、モロッコ、ブータンなども発行に向け動いている。中米のエルサルバドルはCBDCではないが、仮想通貨のビットコインを法定通貨に採用した。
主要国では中国がCBDCの実用化の先頭を走り、研究段階にとどまる先進国を引き離し、新たな国際送金、決済の枠組みで途上国に強い影響を与えつつある。
こうした潮流に対して、日本は新一万円札紙幣の印刷を開始するなどデジタル化への逆走、暴走で世界を唖然とさせている。
ナイジェリアは通貨「ナイラ」のデジタル版となるCBDCの「eナイラ」の運用を開始。スマートフォンのアプリにeナイラをチャージして店舗での支払い、スマホ問での送金、振り込みなどに使う計画。
リアル通貨との併用になるため、「中央銀行の通貨管理や金融政策に変わりはない」とナイジェリア政府は表明しているが、新規の紙幣の発行は抑制すると関係者はみている。
ナイジェリアがCBDCの導入に動いた理由は大きく三つある。
第一に、国民のうち銀行口座(モバイル口座含む)を保有する人の比率が約四〇%にとどまり、金融サービスを利用できない国民が過半である一方、銀行が店舗、ATM網を整備する投資負担に耐えられないためだ。
第二に、スマホ・携帯は人口千人あたり九百十台と高い普及率に達しており、スマホを使った送金、支払いアプリの利用が広がっていること。
第三に、海外で働くナイジェリア入からの本国送金が年間百七十二億ドル(一八年)と外貨収入の柱となっており、送金手数料の引き下げが国民にとって重要な課題となっているためだ。
「金融包摂」という視点
「電気料金のお支払いはエアテル・マネーで」アフリカ南東部の小国、マラウイの首都リロングウェの目抜き通りの看板や雑誌でみかける広告だ。
エアテルはインドに本拠を置く携帯電話会社で、契約者数は世界第六位。インド、バングラデシュ、スリランカなど南アジアにとどまらず、アフリカ十五力国に進出しているが、収益源は通話・データ使用料だけではなく、モバイル決済の「エアテル・マネー」の手数料。
アフリカの大半の国では銀行やコンビニでの振り込みが難しく、庶民はエアテルの店舗や取扱店で事前に一定金額をスマホ・アプリにチャージし、公共料金や買い物の支払いを行う。
アフリカでは二〇〇七年にケニアの「M-PESA(エムペサ)」がモバイル・マネーを開始、各地に広がった。今やモバイル・マネーが最も普及した決済インフラとなっている。
日本はSuicaなど交通系ICカード、PayPayなどQRコード決済、d払いなど携帯電話会社の一括請求型など一見、多様なモバイル・マネーが普及しているようにみえるが、交通機関、Eコマース、コンビニなど店舗支払いなど得意分野がバラバラに分かれており、すべての支払い需要に応えられるモバイル・マネーは存在していない。
さらに日本は、現金が最大の決済手段という世界でも特異な状況にある。紙幣を印刷、硬貨を鋳造し、輸送・保管・警備・流通・回収するためのコストは概算で年間二兆円を超える。
人口が二億人を超えるナイジェリアが同じように国内で必要とする紙幣などを用意するコストは国内総生産(GDP)の四~五%との見方がある。また、ナイジェリアの国土一千平方キロメートルあたりの銀行店舗数は五店舗、ATM台数は二十台と両方ともに日本の二十分の一しかない。
ナイジェリアや同水準の途上国がこれからリアルの紙幣、硬貨をベースにした金融インフラを構築することは、コスト的に不可能といってよい。そのために各国がCBDCに急激に傾斜しているわけだ。
もうひとつ見逃せないのはSDGsで主要なテーマの一つとなっている「金融包摂」である。
零細な農民、手工業者、小売業者などが仕入れや商品売り上げの決済をするにはモバイル決済が最も便利である一方、モバイル決済で受け取ったモバイル・マネーは法定通貨ではないため、二次利用できる範囲は限られる。
顧客からモバイル・マネーで支払いを受けても、従業員への給与や税金の支払いには使えない。海外送金も困難だ。CBDCであれば無限に二次利用を重ねていくことができる。「CBDCは途上国経済の救世王」との見方が世界に広がっている。
エルサルバドルが今年九月、ビットコインを法定通貨にした理由はやや異なる。
ビットコインは世界で広く取引されるが、支払いに利用できる商品・サービスや場所は限られている。世界でいち早くビットコインを法定通貨にすれば、ビットコインを使ったエルサルバドルの不動産、株式への投資、商品の購入が活性化することへの期待からだ。
仮想通貨とCBDCはブロックチェーン技術を使万点では共通性があるが、中国は仮想通貨が自由な資金移転につながるとみて、九月二十四日、禁止措置を発表した。(後略)【「選択」10月号】
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日本の中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する取り組みについては以下のようにも。
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これまで、「発行の予定はない」としていた日本においては、2020年7月発表の「骨太の方針」の中でCBDCについてふれ、「日本銀行において技術的な検証を狙いとした実証実験を行うなど、各国と連携しつつ検討を行う」としています。
それを受けて、直後の同月20日には、日本銀行内に「デジタル通貨グループ」が設置されました。【三井住友カードHP】
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中央銀行デジタル通貨(CBDC)もビットコインなどの仮装通貨もデジタル通貨ではありますが、国家管理の面では正反対の性格も。
****仮想通貨とは何か?****
仮想通貨とは、国家に依存せずに流通する、非中央集権的な通貨です。日本円にしろ米ドルにしろ、国家の中央銀行が発行する通貨は、その価値を国家が保証しています。つまり、国のお墨付きがあるというわけです。
それゆえに、経済が安定していて信頼のある国家の通貨は国際市場でも高値になりますし、反対に経済が不安定な国家の通貨は、価値が低かったりします。
しかし、仮想通貨は、基本的にあらゆる国家や組織の管理を受けない通貨であり、需要と供給のバランスによって、その価値が決まります。【同上】
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“仮想通貨は、基本的にあらゆる国家や組織の管理を受けない通貨”ということで、マイニングが世界でも最も多く行われていた中国では禁止となっています。
こうしたデジタル通貨の流通拡大にIMFは懸念を示していますが、その対象は主にビットコインのような仮装通貨でしょうか。
下記記事で「クリプト化」という耳慣れない言葉が出てきますが、日本で「仮装通貨」と呼ばれるものは、一般的には「クリプトカレンシー」と称され、クリプトは「暗号」の意味です。
“地域経済の「クリプト化」”・・・エルサルバドルで懸念されているような、国家・中央銀行の監視・管理がなされず、証拠を残さず不正なマネーのやり取りが可能になるような事態をさしているのでしょうか・・・。
****新興国でのデジタル通貨台頭、金融安定脅かす恐れ=IMF****
国際通貨基金(IMF)は1日、新興市場国におけるデジタル通貨の台頭が地域経済の「クリプト化(クリプトイゼーション)」を招き、為替・資本規制を弱体化させ、金融安定を脅かす恐れがあるとの認識を示した。
中米エルサルバドルでは9月、暗号資産(仮想通貨)ビットコインが法定通貨となったほか、ベトナムやインド、パキスタンなどでも利用が急速に拡大している。
IMFは、不健全なマクロ経済政策や中銀に対する低い信認、非効率な決済システムなどが、新興国におけるドル化(ダラーライゼーション)を加速させ、デジタル通貨普及の要因にもなっていると指摘。
「ドル化は、中銀による効果的な金融政策運営を妨げ、銀行や企業、家計のバランスシートにおける通貨のミスマッチを通じ金融安定リスクにつながる」と警鐘を鳴らした。
さらに、デジタル資産が脱税を助長する可能性があり、「クリプト化」が財政政策に脅威をもたらす恐れもあるとの認識を示した。【10月2日 ロイター】
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【エルサルバドルがビットコインを法定通貨にした理由】
中米エルサルバドルがビットコインを法定通貨にした背景には、マイニングのアドバンテージと米ドル依存から脱却があると指摘されています。
****存在感増す仮想通貨 エルサルバドルは法定通貨、中国はサービス禁止…その未来は?****
仮想通貨(暗号資産)に国家権力が「関与」する事例が相次いでいる。中央アメリカのエルサルバドルが世界で初めて仮想通貨のビットコインを法定通貨に採用することを決定したかと思えば、中国の中央銀行が仮想通貨の関連サービスを全面的に禁止すると発表した。
両国の対応はまるで正反対だが、いったい仮想通貨の世界で今、何が起きているのか。今後の見通しも含めて解説する。
仮想通貨とはインターネット上で送金や決済ができる電子データで、法定通貨の円やドルなどと交換できる。
法定通貨のように中央銀行が発行、管理するのではなく、仮想通貨は「ブロックチェーン」という技術を使って、送金や決済に関わる複数のコンピューターで管理し、偽造を防ぐ仕組みだ。
国家による「裏付け」がなく、価格が乱高下することもある仮想通貨の賛否が割れる中、エルサルバドルは9月8日、仮想通貨の一つであるビットコインを法定通貨に加えた。元々の法定通貨であるアメリカ・ドルと並び、2通貨体制となった。
ビットコインを法定通貨にする「旗振り役」だったブケレ大統領は「利便性が向上し、経済的メリットがある」と強調する。
国民の7割が銀行口座を保有しておらず、まともな金融サービスを受けることができていない。
一方で、海外から同国への送金額は、国内総生産(GDP)の2割に達するほど大きな割合を占める。背景には、多数の国民がアメリカで出稼ぎし、本国の家族らに送金している実態があり、送金コストが安い仮想通貨を利用すれば国民のメリットが大きいし、送金額が増えて経済が活性化する可能性もあるというわけだ。
ただ、この政策には国民からの反発も大きい。世論調査では国民の3分の4以上がビットコインの法定通貨採用に懐疑的という結果で、多くの国民は引き続き米ドルを使用することが予想されている。
このように、世間一般のエルサルバドルに対する評価は「危ない実験をしている新興国」、だろう。
仮想通貨は価格が1日で10%上下、1年間では数倍にも数分の1にもなることがある。それを国家の法定通貨にしようとしているのだから無理はない。
実際、正式に法定通貨となった9月8日、ビットコインの価格は17%も下落した。これは投資家がブケレ大統領の政策について、その実効性と持続性に疑念を持っており、エルサルバドルがビットコインの値動きに振り回された挙句、結局は法定通貨から外すという未来を予想しているのだろう。(中略)
国民からは多くの反発があり、国の信用力も右肩下がり、今のところ福音はないように思える。しかし同国には仮想通貨を法定通貨とする真の狙いは二つある、と筆者は考える。
一つは、自国での「マイニング(採掘)」である。マイニングとはコンピューターの計算によって仮想通貨を新規発行することである。
前述のように、エルサルバドルはこれまでアメリカ・ドルを法定通貨としてきた。それまでは独自通貨コロンがあったが、価格が不安定なため2001年にドルに切り替えたのだ。
外貨を法定通貨とした国にとって、通貨の発行は「かなうことのない夢」であったろう。だが、仮想通貨であればマイニングによって発行が可能となる。外貨を購入するのではなく、マイニングによって仮想通貨を「生産」し、国家資産として積み上げ、財政を安定化することもできる。ブケレ大統領はそう考えているのではないだろうか。
実際、エルサルバドルはマイニングによって有利な条件を持っている。マイニングは膨大なコンピューターによる計算が必要で、そのためにはコンピューターを稼働させる電力が必要だ。エルサルバドルには23の火山があり、地熱発電によって電力は潤沢だ。実際、ブケレ大統領は国営の地熱発電会社にマイニングの計画を立てるよう要請している。
もう一つの狙いは、アメリカ・ドル依存からの脱却だと、筆者は推測する。アメリカ・ドルだけが法定通貨の場合、通貨に関する全ての権限はアメリカのコントロール下に置かれ、同国の政治や経済の影響を大きく受けることになる。
アメリカとの関係が悪化した場合、そもそもアメリカ・ドルを使用できなくなる可能性もある。通貨を「使わせてもらっている」以上は無言の主従関係にあるといっても過言ではなく、貿易や国交で対等に交渉できるわけがない。
米ドル以外の法定通貨を持てばその「呪縛」から解放される可能性がある。(後略)【10月1日 GLOBE+】
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前政権がアメリカに保有していた資産が凍結されたアフガニスタンでも、タリバンはアメリカの影響を排除するために仮想通貨を法定通貨に採用するのではないかとの臆測が広がっているそうです。【上記記事より】
イスラム原理主義のタリバンと仮想通貨・・・なかなかシュールな組み合わせです。
【もっと生臭い“裏事情”も】
話をエルサルバドルに戻すと、ビットコイン導入の背景としては、もっと生臭い“裏事情”も。
****国民猛反対でもエルサルバドルが「ビットコイン」を法定通貨にした裏事情***
今年9月、世界で初めてビットコインを法定通貨として正式に採用し話題となったエルサルバドル共和国。しかしその裏には、権力者たちの良からぬ思惑も存在しているようです。
今年9月、世界で初めてビットコインを法定通貨として正式に採用し話題となったエルサルバドル共和国。しかしその裏には、権力者たちの良からぬ思惑も存在しているようです。
今回の無料メルマガ『出たっきり邦人【中南米・アフリカ編】』ではエルサルバドルの首都サンサルバドル在住の日本人著者・ピンクパールさんが、同国がビットコインを国として認める真の目的を暴露しています。
当国・エルサルバドルのニュースが世界中を一瞬ですが騒がせました。なんと、バクチの対象で実体のない暗号通貨であるビットコインを国の公式通貨として認めたのです。しかも、指定のアプリをインストールして登録すると、30ドル分を進呈するというのです。
はっきりいって、大義名分なんか嘘っぱちです。
一応、銀行口座を持てない国民の、アメリカからの送金を受け取る窓口として、手数料が爆安のビットコインを使えるようになんてアナウンスしています。しかしですね、これを発表した途端に、ビットコインは17%も下落したのですよ。
価値の変動幅が定まってないうえに、実体のない暗号通貨を国として認めると、今後はマネーロンダリング(以下、マネロンと表記)が追えなくなるということです。
これまで、過去の大統領や国の機関のトップは、退任後に、軒並み国のカネの横領で裁判にかけられています。ビットコイン使うと、これが証拠も残さずに横領やり放題、ってことになるのですよ。
国は国民に30ドルという餌を最初に撒き、指定のアプリを使わせて、個人番号(日本のマイナンバーに相当)により出入金を把握できます。これで、アメリカからの送金を丸裸に出来るって寸法です。
ただ、ビットコインを扱う業者や口座は世界中に存在します。これを現政府高官の連中が使って横領したカネをマネロンしたら…、そう、退任後に摘発される可能性が限りなくゼロになるのです。これこそが暗号通貨・ビットコインを国として認める目的なのですよ。(後略)(『出たっきり邦人【中南米・アフリカ編】』より一部抜粋)【10月7日 ピンクパール氏 MAG2NEWS】
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ありそうな話ですが・・・どうでしょうか?
いずれにしても、ビットコインは極めてハイリスクな投資商品というイメージ。それを法定通貨に・・・というのは難しい面がありそうです。