孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  習近平3選をめぐる権力闘争 ゼロコロナ対策による経済減速への不満が習批判へ

2022-06-15 23:34:24 | 中国
(【5月20日 livedoor NEWS】 5月18日、雲南省を視察する李克強首相 このときのノーマスクがゼロコロナ批判として話題になっています。屋内では着けているようですが。)

【共産党大会を見据えた権力闘争 李克強首相を担ぐ党長老・重鎮も】
最近、中国の政治状況でよく取り沙汰されているのが、3選が確実視されている習近平国家主席に対し、経済の減速、コロナ対策、ウクライナ情勢などを理由とした反対勢力の抵抗が強まっているという件。

より具体的には、ひと頃影がまったく薄れていた李克強首相が復権し、習近平主席との間で綱引きが行われているという話。もっとも、中国共産党の権力闘争というのは外部からはよくわかりませんが・・・・。

****習近平、3選に暗雲か。権力闘争&重鎮から異論噴出でピンチ、問われる中国経済失速の責任****
この秋に行われるとみられている中国共産党大会。日程がはっきりしない原因は、習近平国家主席の3選が盤石ではないことが影響しているといいます。(中略)

中国共産党大会の時期でわかる、習近平の安泰度合い
(中略)現時点で中国共産党大会の日程について、中国国営メディアは「今年後半に開く」としか伝えていない。
香港紙の明報は、4月11日付の紙面で「11月開催の見通し」と伝えているが、仮にこれが事実であれば、これまで確実と見られてきた習近平総書記の3選は100%とは言い切れなくなる。(中略)

景気の減速に歯止めがかからない中国
習近平指導部に揺らぎが生じかねない背景はいくつかある。1つは、習近平総書記の3選に、かつて共産党の重鎮だった朱鎔基元首相らから異論が出ている点だ。

不動産大手、IT企業などへの締め付けが主な理由で、習近平総書記の政策が中国経済の減速を招いているとの声は根強い。

恒大集団のデフォルト危機で知られるようになった不動産バブルの崩壊は日増しに深刻化し、住宅価格の下落が止まらない状態だ。この元凶が習近平指導部の政策にあるというわけだ。

事実、4月27日付の英国紙、フィナンシャルタイムズは、中国共産党幹部の間で不動産企業への締め付けを継続するかどうかで意見が対立している、と報じている。 

政治局常務委員の韓正(江沢民派)、政治局委員の胡春華(李克強派)と、政治局委員の劉鶴(習近平の側近)との間で対立があるというのである。単に政策に関する考え方の相違というよりは、共産党大会を見据えた権力闘争の感が強い。

もう1つは習近平指導部による「ゼロコロナ政策」の余波だ。
(中略)上海をはじめ北京でも行われた「ゼロコロナ政策」で、個人消費などの経済活動は大きな打撃を受け、何より市民の間で度が過ぎた政策に対する不満が充満する事態を生じさせている。(中略)

習近平にとって悩ましいウクライナ情勢
(中略)ただ、習近平総書記にとって誤算だったのは、強大な軍事力を誇るロシアがウクライナの善戦を許していることだ。しかも、欧米諸国が手をたずさえ、ここまで大掛かりにウクライナへの軍事支援、ロシアへの経済制裁を実施することは想定外だったろう。

また、アメリカのバイデン大統領が、5月23日、岸田首相との会談で「台湾有事の際は軍事介入する」趣旨の発言をし、翌日のQuad(日米豪印4か国の枠組み)首脳会合で連携強化を打ち出したことについても、「インド太平洋地域に新たなNATOができた」と映ったのではないだろうか。

特に欧米の結束は中国にとって最も望まない事態である。
中国にとってロシアは、アメリカなど西側陣営に切り込んでいく先兵であり、欧米のロシアに対する対応を見て、台湾統一のシナリオを描く腹積もりだったはずだ。

それが、ロシアの疲弊と欧米諸国の結束を見せつけられ、習近平指導部の中でも、「ロシアを支援する派」と「ロシアから距離を置く派」に割れたため、現在はひとまず中間を進んでいるというのが筆者の見立てである。

しばらくは実質的にロシアを支援しながら、国際世論上はロシアとの一体化を避ける作戦を続けることになるのではないか。(中略)

ここで中ロ関係を見直せば、習近平外交の否定につながり、3選に反対する声が高まりかねない。
習近平総書記からすれば、ロシアとウクライナ、どちらが勝利しようと、ロシアがこれ以上疲弊せず、しかもプーチン体制はそのまま続くことがベストなのだ。(後略)【6月5日 清水克彦氏 MAG2NEWS】
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****ほくそ笑むプーチン。米中の内政事情で泥沼化するウクライナ戦争****
(中略)
一方で中国ですが、ここへ来て習近平派と李克強派の政争が、悪い意味で拮抗してきているようです。

「上海のロックダウンは終了」(李)
「いやいやゼロコロナは継続、全員検査は再開」(習)

「中国企業の海外での上場を再度認める」(李)
「いやいや滴滴の上場廃止は予定通り」(習)

「コロナによる失業や、ゾンビ企業対策に公的資金注入」(李)
「いやいや富裕層への攻撃も続行」(習)

というような感じで、両派の政策が全く矛盾するような形で繰り出されているという印象です。そこから透けて見えるのは、「両派の政争は夏を超えて秋まで続く」というイヤなシナリオです。

次期指導部が決まれば、その指導部は現実に直面しますから、可能な政策は狭いゾーンの中での意思決定になります。ですが、ここへ来て、非現実的なもの、中国経済を停滞させるような性格のものも含めて、奇妙な政策がコロコロと繰り出されているのは、その全てが政争に絡んでいるからだと思います。(後略)【6月15日 冷泉彰彦氏 MAG2NEWS】
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【焦点となっているゼロコロナによる経済減速 今更退けない習氏】
ゼロコロナ対策で中国経済が減速していることが、集団指導体制から習近平一強体勢に移行しつつある習氏への権力闘争の争点となっています。

****習近平政権のほころびが見える中国経済の損傷****
エコノミスト誌5月24日号は「習近平はどのように中国経済を損傷しているか、柔軟性を欠く政策が実用主義を圧倒している」との社説を掲げ、習近平の政策を批判している。

社説の主な観察点は次の通りである。

(1)毛沢東の死後、中国共産党は国家統制と市場改革を混合した現実的なアプローチをとってきたが、いま中国経済は危険な状況にある。

(2)直近の問題はゼロコロナ政策だ。2億人以上が制限下の生活を強いられ、経済はふらついている。小売り、工業生産、輸出量、いずれも減った。

(3)習近平の一連の経済政策の背後には、党が指導すべしというイデオロギー上の熱意がある。罰金、新しい規制、粛清の嵐は、国内総生産(GDP)の8%を占める活力あるテク産業を停滞させた。GDPの20%を占める不動産セクターの取り締まりで、住宅販売は4月前年比47%も落ちた。

(4)この40年間で初めて、成長に不可欠な民間セクターの自由化改革が行われていない。

(5)多くの企業がサプライチェーンを中国から遠ざけるようになっている。中国の企業が2030年代にはいくつかの産業を支配するかもしれないが、西側は中国産品輸入により用心深くなっている可能性がある。

この社説は、今の中国の状況を経済面から批判的に描写したものであるが、かなり的を射ていると考えられる。中国経済の今年の成長目標は5.5%前後とされているが、この達成は難しいのではないかと思われる。

政府の大規模な公共投資で成長率を底上げする可能性はあるが、ゼロコロナ政策、それにともなうロックダウン、それに習近平の民間部門への締め付けと、経済の党による指導強調などは非効率な政府部門の肥大化につながるように思われる。

そのうえ、社説では触れられていないが、高齢化と少子化の人口構成の変化が与える影響も考えなければならない。

ワンマン支配の禍根を残す可能性
習近平のワンマン支配の欠点が目立ってきている。鄧小平が集団指導体制を重視し、最高指導者の任期制を導入したのを習近平はひっくり返しているが、将来に大きな禍根を残すように思われる。

ロシア共産党の歴史を見ると、共産党というものは独裁になる傾向が強い。トロツキーがスターリン体制を批判して、「プロレタリアート独裁のプロレタリアートは前衛である共産党にとって代わられ、共産党はその中央委員会にとって代わられ、中央委員会は書記局にとって代わられ、書記局は書記長にとって代わられる」と述べたが、これはなかなかの卓見であったし、事実そうなった。

鄧小平が個人崇拝を排し集団指導を言ったのは、共産党のそういう傾向を踏まえた優れた見解であったと思うが、習近平はこの鄧小平の考えを否定してきている。残念なことであると同時に、習近平の中国には適切なブレーキがないことを踏まえ、相当な注意をもって対峙していく事が必要であると思われる。【6月15日 WEDGE】
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ゼロコロナ政策の成功に自らの指導力や政治的遺産、そして政権の正統性を結び付けてしまった習近平主席としては、今更政策変更できないという事情があります。政策変更は「失敗」を意味し、それは自らの指導力や政権の正統性を否定することになってしまいます。

状況はかつての毛沢東主席の「大躍進」政策の悲劇的失敗にも似ているいますが、その経験で言えば、習近平主席が「大躍進」政策失敗のときの毛沢東主席と同様の手法で危機を乗り越えるのでは・・・・との指摘も。

****お手本は毛沢東──「ゼロコロナ批判」で、ますます意固地になる習近平****
<「自分への圧力が強ければ強いほど、私の決意は固くなる」。秋の共産党大会で異例の3期目を目指す習に李克強首相らが「異論」を唱え始めた。しかし、歴史が繰り返されるのであれば、経済回復した段階で切られる>

上海に、遅すぎる春が来たようだ。新型コロナウイルスの新規感染者を「ダイナミック」に完封するという「ゼロコロナ」政策の下、2カ月以上も続いたロックダウン(都市封鎖)が、6月初めにようやく解除された(ただし、まだ感染の疑いなどで「隔離」中の人が何万人もいる)。

だが、習近平(シー・チンピン)国家主席が喜ぶのはまだ早い。オミクロン株による感染拡大は各地で続いており、自慢の「ダイナミック・ゼロコロナ」政策にはほころびが目立つ。

いつロックダウンが来るか分からず、先が見えないから中国経済は落ち込んでいる。しかも中国共産党の第20回党大会を数カ月後に控えた今、李克強(リー・コーチアン)首相を含む有力者がゼロコロナ政策の有効性への疑問をほのめかし始めた。

この政策への異論を外国人ジャーナリストに語る財界人や公衆衛生の専門家もいる。中国語の外国メディアには、習が党総書記の続投(3期目)を諦めるのではないかという観測も流れている。詳細は不明だが、指導部内が割れている可能性もある。

中国の場合、特定の政策について意見の対立が表面化するのは、党内に権力争いがある証拠だ。共産党の指導部と長老は昔から、党大会の前には北戴河(河北省の避暑地)に集まって事前の調整を行ってきた。その日程はぎりぎりまで明かされないが、たいてい8月に開かれる。そして今回は、そこで「ゼロコロナ」政策の評価が問われる。

具体的には、ゼロコロナ政策が経済の停滞を招いたと李が主張して習を牽制し、後継首相に自分の腹心を据えようとする(あるいは自身の続投を求める)可能性が指摘されている。

党大会までに習が権威を回復し、あっさり3期目を手に入れる可能性はある。もちろん本人はそのつもりでいる。だが中国共産党の歴史に照らすと、そのためには事前に、自分の続投に異議を唱えそうな党幹部や知識人、財界人の口を封じる必要がある。

現時点で、堂々とそんな発言ができるのは旅行予約サイト最大手トリップ・ドットコムを率いる梁建章(リアン・コンチャン/ジェームズ・リャン)など、ほんのわずかな人だけだ。彼らを黙らせ、思想統制を強化すれば、みんな、おとなしくなる。

撤回できないゼロコロナ
今の習は身動きが取れない。ゼロコロナ政策の代償が恐ろしく高いことは承知している。だがこの政策の成功に自らの指導力や政治的遺産、そして政権の正統性を結び付けてしまった以上、今さら放棄はできない。それでは失敗を認めることになる。

それに、この政策を打ち切ることには現実的なリスクが伴う。党内で広く周知された調査報告によると、ゼロコロナを解除した場合は高齢者を中心に150万人超の死者が出る可能性がある。そんな事態は受け入れ難い。

しかも投資や消費に関する経済指標は劇的に悪化していた。だから習は5月5日に党政治局の常務委員全員を集め、ゼロコロナ政策への支持を確認させた。会議後の発表文にはこうある。
「ダイナミック・ゼロコロナ政策を揺るぎなく堅持し、この政策をゆがめ、疑い、否定するような言動とは断固として闘う」

習としては、この「揺るぎなき」声明で支持をまとめたいところだった。しかし現実には、ゼロコロナ政策を「ゆがめ、疑い、否定するような言動」が加速された。

まず、李克強の出身母体である共青団(中国共産主義青年団)の関係者が米ウォール・ストリート・ジャーナル紙に、今の李には理性の声があると語った。

そして現に、李は5月の会議で習と対照的なスピーチを行った。習はコロナウイルス根絶の必要性を強調するだけだったが、李は経済問題を語り、コロナには触れなかった。ある参加者に言わせれば、李は「全く異なるアプローチ」を見せたことになる。

また中国の公衆衛生当局者の中にも、身の危険を覚悟でゼロコロナ政策に異議を唱える人がいる。
やはり5月に、地方レベルの衛生当局幹部2人が匿名を条件に英医学誌ランセットの取材に応じ、こう語っている。
「今のゼロコロナ政策に異論を唱えれば罰せられる。今の上層部には医療専門家の意見に耳を傾ける者がいない。正直言って屈辱的な状況だ」もう一方の幹部も、ゼロコロナは「費用対効果が悪い。みんな知っている」と語った。

毛沢東の手法を教訓に
中国政治の歴史を振り返れば次の展開、とりわけこの夏の北戴河会議で起きそうな事態の筋が読める。

1959年7月のこと。毛沢東は工業化と農業の集団化を掲げて「大躍進」政策を進めていたが、その結果は悲惨だった。それで当時の国防部長・彭徳懐は毛に私信を送り、政策の再考を促した。彭は「大躍進」を毛の「偉大な業績」と評して敬意を示しつつも、地方官僚が無能なので経済的に「かなり大きな損失」が生じていると進言した。

しかし毛は、この手紙を建設的な批判ではなく、自分への挑戦と見なした。だから党指導部が集まった直後の廬山会議で、毛は彭の手紙を参加者に見せ、賛否を問うた。そして彭を「右派」と糾弾し、その支持者たちを逮捕した。

当時の毛沢東と同様、今の習近平も軍と治安当局を掌握している。だからライバルに対して圧倒的に有利だ。党大会の前に習の続投を阻むシナリオを描きたければ、夏の北戴河会議が最後のチャンスとなる。だが毛の教訓に学んだ習は間違いなく強力に反撃し、早いうちに異論反論の芽を摘むはずだ。

あるいは、経済情勢が安定するまで、何カ月か待つという手もあり得る。この点でも「大躍進」政策の事例が有益な参考になる。

異論を封じた後も、毛は「大躍進」を続けた。経済は一段と混乱し、餓死する人も多かった。結果、劉少奇や鄧小平など、大躍進政策の行きすぎに反対する現実的な指導者たちの影響力が増し、毛の権力基盤は再び危機にさらされることになった。

このとき毛は、自分の招いた経済危機が通りすぎるのをひたすら待ち、その後に反撃に出た。そして劉少奇が「独立王国」を築こうとしていると糾弾し、鄧小平が自分抜きで会議を開いていると非難して排除した。言うまでもないが、こうした権力争いが後の文化大革命につながったのだ。

今回も同じパターンが繰り返されるとすれば、習は経済が回復するまで李らの改革派に経済運営を任せ、回復の兆しが見えた段階で彼らを切るかもしれない。

ゼロコロナ政策に異議を唱える中国政府の関係者や医療専門家は、世論の圧力と経済の現実によって最高指導者の習が考え方を変えてくれる可能性に懸けている。国外の投資家や企業も、そうなってほしいと願っている。

だが中国政治の歴史は、彼らの期待が裏切られる可能性が高いことを示している。
かつて、習は言ったものだ。「自分への圧力が強ければ強いほど、私の決意は固くなるのだ」と。【6月13日 Newsweek】
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【「李昇習降」か「引蛇出洞」か 決着は「北戴河」会議】
一方、李克強首相については、マスクを着けずに地方視察する姿が、習近平氏のコロナ対策への批判だといったことも言われており、官製メディアも李克強首相の言動を取り上げる機会が増えているとか。
「李昇習降」といった言葉も取り沙汰されているようで・・・。

しかし、習近平氏がそうした動きに目立った反撃をしていないのは、反対勢力を隠れている場所からおびき出す戦略「引蛇出洞」ではないか・・・との見方もあるようです。

部外者には何ともわからない権力闘争ですが、7月末から8月初めにかけて党長老らも参加して開かれる「北戴河」会議で方向が見えてくると思われます。
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