孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  ゼロコロナの就職氷河期 1076万人の高等教育機関卒業生が労働市場へ

2022-06-26 21:58:15 | 中国
(広西チワン族自治区の就職活動イベントに参加する大学生たち(2021年10月31日撮影)【1月22日 東方新報】)

【ゼロコロナの混乱で文革後最低の2%成長】
世界経済を牽引してきた中国経済が「ゼロコロナ」政策による経済混乱も影響して、文革後最低の成長率2%といった、かつてない低レベルになりそうな予測がなされています。

****中国の経済成長率、文革後最低の2%で46年ぶりに米国下回る可能性****
米国政府系メディアのボイス・オブ・アメリカは21日、中国の2022年経済成長率は2%にまで落ち込む可能性があると報じた。その場合、1976年に文化大革命が終結してからの最低水準で、46年ぶりに米国の経済成長率を下回るという。

米メディアブルームバーグの経済研究組織であるブルームバーグ・エコノミクスは19日、中国の22年経済成長率が、政府の公式目標値である5.5%を大きく下回り、2%にまで低下する可能性があるとする予測を発表した。ただし、その他の機関がこれまでに発表した予測値は4%−4.5%程度だ。

ブルームバーグ・エコノミクスは極めて厳しい予測の理由について、中国政府はさまざまな景気刺激策を打ち出しているが、厳格な感染症対策を堅持しているために相殺されてしまうとの見解を示した。

中国では1976年9月に毛沢東が死去し、同年10月に毛沢東の妻の江青ら文革四人組が逮捕されたことで、10年間に渡って続いた文化大革命が終了した。中国共産党は78年に政策の中心に経済建設を据えることで、改革開放がスタートした。それ以降は多くの年で、中国経済は10%以上の成長率を達成した。

仮に今年(2022年)の成長率が2%に落ち込めば、中国が新型コロナウイルスの流行に初めて見舞われた20年と、天安門事件により中国が西側諸国にさまざまな制裁を受けた影響が強くでた1989年と90年の成長率も下回り、文革終了後あるいは改革開放が始まって以来の低水準になる。

中国の2021年第4四半期(10−12月期)の経済成長率は4%で、米国の同期の5.5%に及ばなかった。

ただし22年になり中国で感染が再び急速に拡大して都市封鎖の事例が増え、サプライチェーンが寸断されたことで、米国には大きなインフレ圧力が発生した。また米国で中央銀行として機能する連邦準備制度(FRB)も利上げの度合いを強めており、米国でも景気後退が発生する可能性は否定できないとされる。

経済体として世界第1と第2の規模である米中両国の今年の経済成長がどうなるか、改めて注目されている状況だ。【5月24日 レコードチャイナ】
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ただ、仮に2%程度といった文革後最低のレベルになると、この秋に三選を実現するとされている習近平国家主席の権威が大きく揺らぎますので、そういった場合でも“なんだかんだの方法”を用いて、4%程度の数字が公表されるのでしょう。

と言うか、すでにゼロコロナによる経済減速の傾向は現れていますので、その評価をめぐって指導部内部で「李昇習降」ともいわれるような「習近平三選」をめぐる権力闘争が行われている・・・とも指摘されています。(中国共産党内部の権力闘争は外部からはよくわかりませんが)

足元5月の状況で見ると、生産動向を示す工業生産は4月に2年ぶりにマイナスとなりましたが、5月は予想外に持ち直したようです。しかし、個人消費や不動産関連は相変わらず低調のようです。

****中国の工業生産、5月は予想外に増加-消費者の慎重姿勢は続く****
中国の工業生産は5月に予想に反して増加した。一方、新型コロナウイルス感染対策の制限措置が消費者心理の重しとなる中で、不動産市場の低迷は続き、小売売上高もなお減少するなど、強弱が入り交じる結果となった。
  
5月の工業生産は前年同月比0.7%増。市場予想中央値は0.9%減少、4月は2.9%減だった。小売売上高は前年同月比6.7%減少。予想は7.1%減、4月は11.1%減っていた。調査ベースの失業率は5.9%へと低下したものの、若年層の失業率は18.4%に上昇し、過去最悪を記録した。(中略)

上海市では一部のコロナ規制が5月に緩和された。工場が徐々に操業を再開し、物流面の障害も和らいだが、定期的なコロナ検査など厳しい防疫措置がなお消費者の活動を妨げている。

モルガン・スタンレーの中国担当チーフエコノミスト、邢自強氏はブルームバーグテレビジョンで、「成長率が底入れし、持ち直しは始まったばかりだ」と指摘。「これはまだ非常に不完全であり、平坦な回復ではないが、最悪期は過ぎたという印象だ」と述べた。(後略)【6月15日 Bloomberg】
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【特に若者で深刻な失業問題 今年の高等教育機関卒業生は1076万人】
共産党指導部としては悩ましい問題が多いでしょうが、社会の安定性を損なう恐れがあるのが失業率の増加。
特に、上記記事でも“18.4%に上昇し、過去最悪を記録”と指摘されている若者の失業率が注目されます。

中国では、経済成長率の目標値などは、「雇用を満たす」という最大目標を達成するために逆算して計算されるとも言われますが、その肝心の雇用が揺らいでいます。雇用は政府・党の責任ですから、それは日本など以上に政治責任に直結します。

****中国版就職氷河期突入か 続くゼロコロナの弊害****
中国の政治、経済にとって最重要課題である雇用の確保に黄信号が灯っている。特に若年層の失業率は18.4%と、調査開始以来最悪となった。習近平総書記が続投を狙う党大会が秋に控えるなか、中国は厳しい状況に追い込まれている。

中国にとって雇用確保は最大の使命
中国経済の減速が続いている。2021年全年の経済成長率は8.1%という高成長を記録したものの、四半期別で見ると第3四半期は4.9%、第4四半期は4%と急ブレーキがかかった。今年第1四半期は4.9%と回復傾向を見せたが、そこで直面したのがオミクロン株の流行だ。

上海市のロックダウンは3月末から2カ月以上にわたり続いた。現時点でも感染ゼロは達成できておらず、日常的なPCR検査の義務化や一部地区の封鎖など、日常生活を取り戻したとは言いがたい。上海市以外の地域でも感染が散発しており、強力な感染対策は経済低迷につながっている。

中国政府は今年の成長目標を5.5%と設定しているが、世界の調査会社は達成困難だとみている。ブルームバーグ・エコノミクスは2%、ゴールドマンサックスは4%に予測値を引き下げており、成長目標との乖離は大きい。

もっとも「そもそも成長目標とはなんぞや」と不思議に思っている方も多いだろう。経済は生き物であり、アクシデントはつきもの。成長目標が達成できなくても仕方がない、毎年毎年目標を達成できるほうが不思議ではないか。目標を作っては帳尻合わせしているだけではないか、と。

当然の疑問だが、中国の成長目標はむやみに決められているものではなく、雇用の必要性から決定されている。毎年、全人代(全国人民代表大会、日本の国会に相当)で経済目標は発表されるが、セットで発表されるのが都市新規就業者数目標だ。むしろ雇用確保が主であり、この目標を達成するために経済目標が設定されていると言っても過言ではない。

2010年代初頭には「保八」(8%成長死守)が盛んに議論された。8%を割り込めば、十分な雇用が容易できず、これを不満に思った人民が政府批判の姿勢を強め、ひいては中国社会の安定が損なわれる……とまで極端な議論が展開されていた。いささか乱暴な話ではあるが、雇用確保が中国にとってどれだけ重要なのかを示すエピソードではある。(中略)

若者の雇用は経済トレンドで乱高下
近年の失業率(都市調査失業率)の推移を下図(省略)示した。
新型コロナウイルス流行初期の20年2月の6.2%が最悪だったが、今年4月には6.1%とほぼ同水準に迫っていた。

そして、世代別失業率を見ると、若年層の失業がきわめて深刻であることがわかる。

(出所)国家統計局のデータをもとに筆者作成 

25~59歳の失業率には大きな変動はないが、16~24歳の失業率は経済トレンドの変化に激しく反応し、乱高下してきた。現在は18.4%と過去最悪の値を示している。
 
若年層失業率の高さは中国の雇用習慣とも関連している。日本のような新卒一括採用の雇用習慣がないため、卒業時点では職を見つけられず、インターンをしながら仕事を探す人も珍しくない。彼らは景気が悪化すれば速やかに解雇されてしまう、不安定な存在だ。

若年層失業率の調査は20年5月に始まったため、新型コロナウイルスの影響がもっとも深刻だった20年2月のデータはないものの、当時と同等かそれ以上に悪化している可能性が高い。若年層の雇用で見るならば、中国は今、新型コロナウイルス流行後で最悪の時期にあるわけだ。

しかも、5、6月は中国の卒業シーズンであり、卒業生たちが労働市場に参入してくる。今年の高等教育機関(大学、大学院及び高等専門学校)卒業生は1076万人、史上初めて1000万人の大台を突破した。

高卒での就労者なども含めると、約1600万人が新たに労働市場に参入すると想定されている。目標通りの1100万人の雇用創出に成功したとしても、差し引き500万人が職にあぶれる計算だ。もし雇用創出が目標から半減すれば……、1000万人が職を得られない計算となる。(中略)

就職支援する進路先は……
中国政府も雇用確保に四苦八苦しているが、最も効果がある景気回復は新型コロナ対策とトレードオフの関係にある。コロナ対策を緩和すれば経済活動は回復するが、感染者は増加する。

習近平総書記が「ゼロコロナ政策は動揺せず」と発破をかけている以上、一定数の感染者を許容するウィズコロナ的対策に転じることも難しい。インフラ投資や不動産投資奨励を進めるが、景気が一気に好転することは考えづらい。

そうした中、よりミクロな雇用対策も行われている。中国共産党の下部団体にあたる、中国共産主義青年団(共青団)は6月、「大学生の雇用10万人サポート」との目標を打ち出した。

仕事を見つけられずにいる「非名門大学の低所得世帯」を対象とし、各地域の共青団幹部が直々に企業を訪ね、職を探してくれるという。すでに4万1000人の職探しに成功しており、最終的には5万人を目標としている。

10万人サポートと銘打っている以上、さらに5万人の職を探さなければならない。経済成長が遅れた西部地区で教員や行政職につく西部計画、農村の農業・教育・医療・救貧事業を支援する三支一扶プロジェクトのスタッフ、そして団地の公共サービス・スタッフなどで埋め合わせるという。

西部計画や三支一扶プロジェクトは学生の多くが参加を嫌がってきたが、大学院進学時に奨学金をもらえるなどのアメをぶらさげることでどうにか参加者を確保してきた。団地スタッフは仕事をやめた中高年の仕事で、エリートたる大学卒業生の仕事ではないと見られてきた。

共青団だけではなく、政府による雇用促進プロジェクトは数あるが、提示されるのはあまり人気のない進路が大半というわけだ。

エリート層にも波紋が
大学生以上に「こんなはずじゃなかったのに」という落胆を感じているのは、大学院修了者かもしれない。大学定員の増加に伴い大学生の希少価値は失われてきたが、院卒ならばエリートとしてよりよい就職を得られると考えられてきた。

しかし、その一方で大学院定員も年々増加が続いている。21年の定員は117万7000人。過去10年でほぼ倍増という急増を示している。特に20年には修士課程の定員が一気に18万9000人も引き上げられた。これも雇用対策の一環だが、不景気を回避したはずの20年修士入学組は、今年もっと厳しい雇用環境に直面するという予想外の事態に見舞われている。

この不景気のなか、高学歴の院卒であっても就職希望の〝ランク〟を引き下げる動きが広がっているという。中国全土で話題となったのが浙江省麗水市遂昌件政府の職員公募だ。
24人の採用者のうち23人が院卒だった。しかも上海交通大学や西安交通大学など名門校の出身者ばかり。「こんなすごい学歴の持ち主が県レベルの地方政府に就職するなんて!」という驚きが広がった。

「最初は驚いたが、気持ちは理解できる」と話すのは、天津市在住の知人だ。修士課程1年生の息子の進路に日々頭を悩ませているという。来年、大学院を修了する予定だが、今年の就職浪人組も多く残ることから就職戦線は厳しいことは間違いないという。海外留学してさらに学歴を積み増すことも考えているが、「数年後に景気が好転しているかどうかも確信が持てない」のだとか。

中国は23年に予定されていたサッカー・アジアカップの開催を返上したが、ゼロコロナ対策とそれに伴う消費低迷は少なくとも来年までは続く可能性が高い。米国の景気後退や中国不動産市場の低迷などのマイナス材料も多く、先行きは楽観視できないのも理解できる。

数年にわたり就職難が続く就職氷河期世代の誕生が危惧されている。【6月18日 WEDGE】
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****中国の大学新卒者、空前の就職難 ゼロコロナが拍車****
 ジェニー・バイさんは、北京のあるインターネット企業の厳しい面接を4回もくぐり抜け、最終的に内定を勝ち取った優秀なコンピューター科学専攻の10人の大学生の1人だった。

しかし、5月になってこの企業から内定取り消しを通告された。新型コロナウイルスの感染拡大や中国経済全般の悪化が理由だ。この点に今年1080万人と過去最高となった中国の大学新卒者が直面している大きな問題がある。

今月卒業したバイさんは「心配だ。就職先を見つけられない場合、どうすれば良いか分からない」と不安を隠せない。ただ、内定を取り消された企業名については、今後もその企業と良好な関係を維持したいと明らかにしなかった。

<若者の失業率は18.4%>
中国経済は昨年の不動産市場の冷え込みや地政学的問題、当局によるハイテク、教育など幅広い産業への締め付けで既に減速していた。そこに追い打ちをかけたのが、新型コロナウイルスを徹底的に封じ込める「ゼロコロナ政策」と言える。

一方で、数十年来で最悪の状況となった労働市場に、ポルトガルの全人口を上回る規模の中国の大学新卒者が、一斉に参入しようとしている。足元の若者の失業率は、全世代の3倍以上で過去最高の18.4%に達している。

こうした就職できない若者の大量発生が、中国社会にどう影響するかは全く読めない。

中国が何十年も高成長を続けてきた後で、職探しに苦労するという事態は、せっかく高等教育を受けてきた若者にとって全くの想定外だ。

社会の安定を最優先に考える共産党指導部にとっても、特に今年は習近平国家主席の続投が秋に正式に決まろうかという局面で、若者の雇用不安が起きるのはあまりにも間が悪い。

北京大学のマイケル・ペティス教授(ファイナンス)は「(中国の)政府と人民が交わした社会契約では、人民が政治に参加しない代わりに、生活水準が年々向上すると保証されている。だから、懸念されるのはいったんこの保証が崩れれば、契約の他の部分も変わらざるを得なくなるのではないか、という点にある」と述べた。

<ハイテク雇用が大幅縮小>
李克強首相は、大学新卒者の雇用確保が政府の最優先課題だと明言している。実際、新卒者向けにインターンシップ枠を設けている企業には、他の一般的な雇用支援措置を差し置いて補助金が支給される。

一部の地方政府は、起業する新卒者に低利の融資を提供。いくつかの国有企業は、民間で余剰化した非熟練雇用の一部を吸収する見通しだ。

総合人材サービス企業・ランドスタッドの広域中華圏マネジングディレクター、ロッキー・チャン氏は、中国の非熟練雇用市場は2008─09年の世界金融危機時よりも悪化しており、新規雇用は昨年比で20─30%減ると見積もっている。20年にわたって求人業務に携わってきた同氏は、今年はこれまで見てきた中で市場が最も低調だと指摘した。

大手求人サイト、智辯招聘によると、予想給与水準も6.2%低下するとみられる。

最近まで中国の大学新卒者の大量採用してきたのが、ハイテクセクターだった。ところが、業界全体では今、雇用を縮小する動きが広がっている。

インターンネットサービスのテンセント(騰訊控股)から電子商取引のアリババまで、多くの大手IT企業は規制当局の取り締まり強化のあおりで、大規模な人員削減を強いられた。ハイテクセクター全体で今年、何万人もが職を失った、と5人の業界関係者がロイターに明かした。

上海を拠点する人材管理サービスの許姆四達集団が4月に公表したリポートを見ると、ハイテク大手約10社のほぼ全てが最低でも10%の人員を減らし、動画配信の愛奇芸などさらに削減幅が大きくなったケースもあった。

教育サービスも当局からにらまれた業界の1つで、やはり何万人も解雇した。最大手の新東方教育科技集団は6万人の削減を発表している。

逆に新規採用の動きは鈍い。テンセントの人事部門幹部の1人は、「数十人」の新卒者採用を検討中と話した。以前の同社は年間に約200人を採用していた。

人材紹介会社ロバート・ウォルターズのジュリア・ジュー氏は「インターネット企業は多くの雇用を減らしている。今、彼らに採用資金があるなら、新卒者よりも経験者を選んでいる」と説明した。(中略)

中国では大学を出た後、しばらく仕事がないまま過ごす若者は企業側から歓迎されないのが普通だ。多くの家庭もそれを不運とみなすより「一家の恥」と考える。

かといって学士号を得ながらブルーカラーの仕事に就くというのも社会的に認められにくいため、大学院などの研究職に応募する人数が過去最高に上ったことが、公式統計から確認できる。

昨年大学を卒業したビセンテ・ユーさんは、その暮れにメディア企業での仕事を失って以来、再就職できていない。貯金は1─2カ月の家賃と生活費を賄える程度。不安感や不眠症と向き合う毎日で「父親には二度と家に帰るなと言われた。私の代わりに犬を育てた方がましだったという言葉も浴びせられた」とやつれた様子で語った。

ユーさんが夜間に訪れるのがソーシャルメディア。そこには同じ境遇の若者が集う。「私のように、仕事が見つからない人たちばかりで、それが多少慰めになる」という。【6月25日ロイター】
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