孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  ガソリン価格高騰に苦慮するバイデン大統領

2022-06-17 23:36:58 | アメリカ
(【5月27日 ALJAZEERA】1ガロン(約3.8ℓ)当たり5ドルというのは全国平均で、高いカリフォルニアは平均6ドル そうなると日本より高いという異例の事態  ワシントン・ポストによれば、ガソリン価格があまりにも高いため、思うように給油ができないドライバーが増加し、道路で立ち往生するケースも多くなっているとのこと)

【(満タンにするのに)前は80ドル(約1万円)くらいだったけど、30ドル(約4000円)上がった」】
新型コロナ禍後の需要回復、供給・物流対応の遅れ・混乱、ウクライナ情勢などで世界的にエネルギー・食料品などの価格が上昇する傾向にありますが、日本も上昇傾向は同じです。

****4月の物価上昇率、7年ぶり2%超 エネルギー価格高騰で****
総務省が(5月)20日発表した4月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が101.4となり、前年同月比2.1%上昇した。

消費増税の影響があった15年3月(2.2%)以来、7年1カ月ぶりに2%を超えた。資源高で電気代やガソリン価格などエネルギー関連が大きく上昇した。原材料高で食料品も上がった。

2%は、日銀が目標としてかかげている。米欧も同様の水準をめざしている。物価がこのペースで安定して上がることで、企業収益の拡大や賃上げにつながり、経済が活性化する好循環が生まれると考えられている。

日本の場合、物価上昇圧力は弱く、外的要因に左右されやすい。上昇率が2%に達するのは、消費税を8%に上げた14年4月からの1年間を除くと、世界的な資源高だった08年9月以来、13年7カ月ぶりとなる。

今回、生鮮食品も含む総合指数が2.5%上がった。消費増税の影響があった時期を除くと、1991年12月以来の高い上昇率になった。(後略)【5月20日 日経】
*******************

近日中に発表される5月の数字は、おそらくもっと高くなるのではないでしょうか。
ただ、その意味合いはともかく、欧米に比べるとだいぶ上昇は緩やかです。

****5月の米消費者物価、前年比8・6%上昇 40年ぶり伸び率更新****
米労働省が10日発表した5月の消費者物価指数は前年同月に比べて8・6%上がり、約40年ぶりの高さを記録した3月の上昇率8・5%を超えた。

燃料費が再び上昇し、食料品など幅広い品目で値上がりした。米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレを抑え込むため、金融引き締めを急ぐ可能性がある。(後略)【6月10日 産経】
*****************

****ベーグル&コーヒーが“2500円” 物価高騰で27年半ぶり大幅利上げ アメリカ****
アメリカの中央銀行にあたるFRB(=連邦準備制度理事会)は、約27年半ぶりに0.75パーセントの大幅利上げを決定しました。食料品などの記録的な物価上昇に歯止めはかかるのでしょうか。
   ◇
(中略)ベーグルのサンドウィッチにコーヒーを足した値段が19ドルと、一食でなんと、日本円で2500円以上するようになったのです。その理由は、原材料の値上げでした。

小麦粉の価格高騰などで、1.4ドルだったベーグル単体の値段も、少しずつ値上げしました。15日も、さらに値上げに踏み切り、急きょ、赤いペンで書き足して1.75ドルから1.95ドルになりました。(中略)

アメリカの消費者物価指数は、先月、前の年の同じ月に比べて8.6%上昇しました。中でも高騰が著しいのがガソリンで、48.7%も上昇しました。

ガソリンスタンド客  「(満タンにするのに)前は80ドル(約1万円)くらいだったけど、30ドル(約4000円)上がった。これは高い」

アメリカでは、物価が上昇するインフレに歯止めがかかりません。そこで、アメリカの中央銀行にあたるFRB(=連邦準備制度理事会)が打ち出したのが、通常の上げ幅の3倍にあたる0.75%という、政策金利の大幅な利上げです。
FRB パウエル議長  「労働市場は非常にひっ迫し、インフレ率はあまりに高すぎるため、政策金利を0.75%引き上げた」
この規模の利上げは、1994年11月以来、約27年半ぶりです。

市場関係者は「インフレの先行き不透明感は払拭(ふっしょく)できない」としていて、金融緩和を続ける日本とアメリカの間で金利差が広がることで、円安がさらに進む可能性があるとみています。
松野官房長官は「日本経済や世界経済にどのような影響が生じるか、引き続き注視する」としています。【日テレNEWS】
******************

ガソリン価格については下記のような状況で、6月の消費者物価指数も更に上昇しそうです。

******************
(消費者物価指数上昇の)牽引要因の一つと言われているのはガソリン価格で、アメリカ自動車協会の数字では、5月のガソリン価格は1ガロン当たり平均4.37ドル。

これ、トランプ政権時は2.5ドルから3ドルのものがここまで上がり、前年比で言うと48.7%上昇、そして今6月10日現在では、1ガロン当たり5ドルに迫っています。と言うことは6月のCPIも更に悪化する、という可能性を示唆しています。【6月17日 MAG2NEWS】
*******************

【中間選挙を控えるバイデン大統領 プーチン大統領や大手石油会社をやり玉に】
これまでも何回も書いているように、苦戦が予想されている中間選挙を控えるバイデン大統領にとって、車社会アメリカにおけるこのガソリン価格の上昇がウクライナ情勢などより有権者の暮らしに直結し、選挙結果を左右する非常に厄介なものになっています。

バイデン大統領の支持率も物価上昇によって低下傾向にあります。

****バイデン氏支持率39%、3週連続低下で過去最低迫る=ロイター/イプソス調査****
14日公表のロイター/イプソス調査によると、バイデン米大統領の支持率は39%と3週連続で低下し、5月に記録した就任以来最低の36%に迫りつつある。不支持率は56%だった。

バイデン氏の支持率は昨年8月からずっと50%を下回ったまま。このままでは11月8日の議会中間選挙で与党・民主党が上下両院の少なくとも一方で多数派を失う恐れがある。

民主党員のバイデン氏支持率は昨年8月が約85%だったが、今回は74%まで下がった。野党・共和党の同氏支持率は11%と、8月からほとんど変わっていない。

今年に入ってバイデン政権に打撃を与えているのは、ロシアのウクライナ侵攻に伴うガソリン高や新型コロナウイルスのパンデミックの影響が尾を引くサプライチェーン(供給網)混乱を背景とした物価の高騰だ。

トランプ前大統領の最低支持率は2017年12月の33%だった。【6月15日 ロイター】
*******************

バイデン大統領は、今のインフレの責任から逃れるために「ロシア・プーチンのせいだ」「大手石油会社が悪い」とさかんに主張していますが・・・やや“苦し紛れ”の感も。民主主義に害をなす“ポピュリスト的な手口”との指摘も。

****高インフレの米国 苦し紛れで大手石油会社を槍玉にあげたバイデンを危惧する理由****
(中略)インフレ抑制を最重要課題として中間選挙に臨む構えのバイデン大統領にとって最悪の展開だ。手詰まり感は否めず、10日の演説で「プーチンのせいで物価が上がり、米国は打撃を受けている」と訴えたが、苦し紛れの言い訳のように聞こえてならない。

バイデン政権にとって最も頭が痛いのは、車社会の米国にとって生活必需品といえるガソリンの価格が連日のように過去最高値を更新していることだ。米国の平均ガソリン価格は11日、史上初めて1ガロン(約4リットル)当たり5ドル(約670円)台となり、1年前に比べて約6割も高くなった。

インフレが続くと今後どのような影響が出てくるのだろうか。
経済学者はインフレの悪影響を過小評価するきらいがあるが、一般の人々はインフレを毛嫌いする傾向が強い。「インフレは自分たちの経済状態を悪くし、将来の計画を立てにくくなる」と考えるからだ(英誌エコノミスト4月23日号)。

「血液」を売る中流家庭
インフレ懸念で米国の消費者景況感は急激に悪化している。
米ミシガン大学が10日に発表した6月の消費者態度指数(速報値)は50.2となり、前月から8.2ポイント低下した。2ヶ月連続の低下で、統計開始の1952年以来最低の水準となった。46%がインフレを景況感悪化の理由に挙げ、特に「ガソリン高騰が重荷だ」と回答している。5月の米国の失業率は3.6%と歴史的低水準となっており、本来なら消費者景況感は落ち込まないはずなのだが、高インフレが足を引っ張った形だ。

物価の上昇が賃金の上昇ペースを上回り、実質賃金が目減りしていることも関係している。米国の時間当たり実質平均賃金は今年3月までの1年間で3%近く低下した。

バイデン政権はウクライナに武器を供与し、戦争を長引かせようとしているが、このことが災いしてインフレが激化、景気が急激に悪くなりつつある。

バイデン大統領は8日夜のABCのトーク番組で「インフレは我々の存在を脅かす災いの元だ」と述べたように、インフレは米国の人々の生活を脅かし始めている。直撃を受けているのは政府からの支援策が期待できない中間層だ。

米国では約700万円の年収で安定した暮らしを送っていた中流家庭がインフレで生活費が不足し、血液中の血漿(けっしょう)を売らなければならない状態に追い込まれているという(6月3日付クーリエ・ジャポン)。(中略)

インフレが生む「憎悪の炎」
インフレの影響は経済面にとどまらない。心理面での影響も見逃せない。人々のインフレに対する意識、特に忌避感が高いことから、インフレ対策にはポピュリズム的な要素が紛れ込みやすい。

ガソリン価格の高騰に対する不満が渦巻く中、バイデン大統領は10日のロサンゼルスの演説で「エクソンモービルなどの石油会社はガソリン価格の高騰につけ込んで『神』よりも儲けている」と批判した。

ガソリン価格が高騰しているのは、需要の回復過程でウクライナを侵攻したロシアへの制裁や精製能力の逼迫などの要因が重なったからだが、バイデン大統領は政権への批判をかわすため、あえて大手石油会社をやり玉に挙げたのだ。

米国人の3人に2人が「インフレを悪化させているのは悪徳企業が便乗値上げをしているせいだ」と考えていることを意識した発言だったのかもしれないが、「非常に軽率であり、後顧の憂いを残すのではないか」と筆者は危惧している。「巨悪を名指して糾弾し、人々の歓心を買う」という物言いはポピュリストの常套手段だからだ。

「インフレは民主主義を衰退させる」との指摘がある(6月6日付日本経済新聞)。
インフレは一部の者だけが恩恵に浴する事態を生み出す。困窮した人々の不満は高まるばかりだが、政府がインフレがもたらす不平等を是正する有効な手段を持ち合わせていないことが多い。

このため人々の不満が政治への不信に変わるのが常なのだが、このような政治状況下で最も活躍するのはプロパガンダを駆使するポピュリストだ。彼らが人々の憎悪の炎をかき立てればかき立てるほど、社会に深刻な分断が生まれる。その結果、民主主義が麻痺してしまうというわけだ。

極端な例としてしばしば取り上げられるのは第1次世界大戦後のドイツだ。ハイパーインフレに見舞われたドイツでは「お金と同様、自分も無価値になってしまった」と人々が絶望し、その後のファシズムの台頭を招いたというのが定説だ。

米国が当時のドイツのような苦境に陥るとは思わない。だが、金融政策など従来のやり方でインフレを抑制することができず、功を焦るあまりバイデン政権がポピュリスト的な手口を多用するようになれば、機能不全が囁かれる米国の民主主義は危機的な状態になってしまうのではないだろうか。【6月17日 藤和彦氏 デイリー新潮】
*******************

単に石油大手をやり玉にあげるだけでなく、緊急会合に招集して対応を求めています。

****米エネルギー長官、製油業者との緊急会合招集 ガソリン高騰巡り****
米エネルギー省は16日、グランホルム長官が製油業者との緊急会合を招集したことを明らかにした。ガソリン価格の高騰について協議する。

バイデン大統領は15日、石油会社への書簡でガソリンの供給を増やしていないと非難した。

エネルギー省によると、会合では「企業が製油能力と製油量を拡大し、ガソリン価格を近く引き下げる方策について協議」する。

ガソリン価格は原油高を背景に1ガロン(約3.8リットル)=5ドル以上と過去最高値に上昇。
業界団体は設備稼働率94%と、フル稼働に近い状態で生産していると反論している。【6月17日 ロイター】
****************

選挙対策と言うか、有権者に対し何かしているポーズを示さないと・・・といったところでしょうか。輸出制限の話も。

****ホワイトハウス、燃料輸出制限を検討-ガソリン価格高騰で****
米国で1ガロン当たり5ドルを超えたガソリン価格の抑制に苦慮するバイデン政権当局者は、燃料輸出の制限を検討している。

事情に詳しい複数の関係者が匿名を条件に話したところによると、ガソリンとディーゼル燃料の輸出制限を巡る議論が最近行われており、バイデン大統領は石油会社の利益急増に批判を強めている。輸出制限が検討されているが、石油製品の完全な禁輸にまでは及ばないという。(後略)【6月17日 Bloomberg】
******************

ただし、これは“禁じ手” 
“バイデン大統領はウクライナでの戦争のあおりを受ける欧州の同盟国のエネルギー供給確保を支援する方針を繰り返し示している。米国が欧州向けディーゼル燃料輸出を制限すれば、ロシア産依存からの脱却を図る同盟国との新たな摩擦が生じかねない。アナリストによれば、輸出制限は長期的にガソリン価格を押し下げない可能性が強い。”【同上】

【中東歴訪でサウジアラビアなどに石油増産を働きかける予定】
より本質的なところでは、産油国が増産しないと今の石油高価格状態は改善しない・・・ということで、人権に関して問題も多い最大産油国サウジアラビアや、あるいは強権支配国家ベネズエラなどへの働きかけも行っていることは、6月7日ブログ“アメリカ・バイデン大統領  原油増産に向けて「人権」では問題国のサウジアラビアとの関係改善模索”でも取り上げました。 

****米バイデン大統領が来月、初の中東歴訪へ サウジでGCC=湾岸協力会議に出席 原油増産を働きかけか****
アメリカのバイデン大統領が来月、サウジアラビアなど中東諸国を初めて歴訪することが発表されました。

ホワイトハウスによりますと、バイデン大統領は来月13日から16日までの日程で、イスラエルとパレスチナ自治区のヨルダン川西岸、サウジアラビアを訪問します。

サウジアラビアではアラブ諸国が加盟するGCC=湾岸協力会議に出席し、エネルギー問題や食糧問題への対応などを話し合う予定で、アメリカでガソリン価格が高騰し政権への批判が高まる中、原油の増産を働きかけるものと見られます。

バイデン政権は人権問題などをめぐりサウジアラビア政府を強く批判していて、ムハンマド皇太子らとの会談の行方が注目されます。また、ヨルダン川西岸ではパレスチナのアッバス議長とも会談する予定です。【6月15日 TBS NEWS DIG】
********************

ただ、サウジアラビアとの関係改善は、人権問題を重視する立場からは“裏切り行為”ともみなされます。

****米大統領のサウジ行きに批判殺到 首都に「カショギ通り」****
バイデン米大統領の7月のサウジアラビア訪問計画に国内外から批判が殺到している。人権活動家らはムハンマド皇太子の関与が疑われるサウジ人記者殺害事件を不問に付すことになりかねないと反発。米首都のサウジ大使館前の道路は今月、記者の名前を冠した「ジャマル・カショギ通り」と命名され、事件にも改めて注目が集まっている。
 
「バイデンは世界の人権を守るという約束を放棄した。恥を知れ」。ノーベル平和賞を受賞したイエメンの人権活動家タワックル・カルマンさんは15日、サウジ大使館前で開かれた命名板の除幕式で声を張り上げた。【6月17日 共同】
******************

こうした人権重視勢力はバイデン・民主党政権を支える勢力のひとつですが、今は「人権よりガソリン」というのが中間選挙を控えたバイデン大統領の本音かも。

なお、国際市場への石油供給増加が見込めるイランについては、核合意再建協議が難航しています。

あと、石油生産については下記のような話も。

****リビア産油、日量10万─15万バレルに急減 反トリポリ派の妨害で****
リビア石油省報道官は14日、同国石油生産量が現在日量10万─15万バレルしかないと明らかにした。昨年の実績は日量120万バレル超だった。西部の首都トリポリにある暫定政権のドベイバ首相辞任を要求するグループが石油生産・輸出施設に侵入して妨害活動を続けていることが背景。

報道官によると操業停止によって輸出収入を1日当たり7000万─8000万ドル失っている形。同国最大油田は先週に一時操業を再開したが、再び停止した。立てこもりグループは操業停止する油田をさらに増やす動きにも出ている。(後略)【6月15日 ロイター】
****************

リビアが日量120万バレル超に回復すれば・・・とも思いますが、リビアの政治混乱が収まる見込みはありません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする