孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中央アフリカの混乱拡大  フランスは介入姿勢を強める 

2013-10-21 21:40:51 | アフリカ

(中央アフリカ 戦闘を避けて移動する人々 “flickr”より By UNHCR UN Refugee Agency http://www.flickr.com/photos/25857074@N03/9707384417/in/photolist-fMNTbR-fuonF3-fUE6D6-fUFuk8-fUE6hf)

キリスト教徒主体の旧政権支持派がイスラム教徒主体の新政権の支配に抵抗を続ける構図
その国名が示すようにアフリカ中央部に位置する中央アフリカでは、今年3月に反政府武装勢力の連合体「セレカ」が首都バンギを制圧するなど、混乱が続いています。

****中央アフリカ:衝突が激化…新旧政権、宗教の溝****
アフリカ中部・中央アフリカ共和国で新旧政権の武装勢力同士による衝突が激化し、旧宗主国のフランスは国連安全保障理事会決議による安定化策を模索する一方、駐留仏軍の増派を決めるなど軍事介入の姿勢も強めている。

新政権はイスラム教徒、旧政権はキリスト教徒が中心で、宗教対立の様相も呈しており、事態は緊迫化している。

 ◇仏軍が増派方針
中央アフリカでは今年3月末、反政府武装勢力「セレカ」が首都バンギに侵攻。ボジゼ大統領は国外に脱出した。以降セレカの支配が強まり、指導者ジョトディア氏は暫定大統領就任を宣言して新政権が発足、8月に大統領就任式を挙行した。

中央アフリカは中・南部を中心にキリスト教徒が人口の約50%を占め、北部中心のイスラム教徒は約15%。
キリスト教徒主体の旧政権支持派がイスラム教徒主体の新政権の支配に抵抗を続ける構図で、事態は宗教対立に発展しつつある。

9月初旬には西部ボッサンゴアでキリスト教徒武装集団とセレカが衝突し、市民約100人が死亡。今月も南部バンガスー、西部ギャガで相次いでキリスト教徒武装勢力とセレカが交戦し、70人以上が死亡した。

事態を重く見たフランスはファビウス外相が13日にバンギを訪問し「現在410人の仏軍兵力を年末に向け増強する」と明言。派兵規模は最大1200人に達する見通しだ。

現地ではセレカによる略奪行為も深刻化しており、ファビウス外相は「略奪がこれ以上続いた場合、より大規模で迅速に対応する」と仏軍の早期介入も示唆した。

10月の国連安保理で、中央アフリカで展開予定のアフリカ連合(AU)による平和維持部隊を増強する方針が決まった。仏政府は、国連平和維持活動(PKO)への移行などを目指し、11月の安保理決議採択に向け理事国に協力を求めているが、難航。並行して独自の増派準備を進めている形だ。

ボジゼ氏は3月、セレカの侵攻を受け仏政府に支援を求めたが、仏政府は現地駐留部隊を動員しなかった。
しかしその後、治安の悪化が深刻化し、本格的な事態収拾に乗り出した。【10月21日 毎日】
********************

中央アフリカの混乱は以前からのもで、“05年にジョトディア氏が率いる組織などが北部で反政府武力闘争を開始。各組織は07年に政府と和平合意したものの、昨年12月セレカとして再蜂起し、北部の諸都市を制圧。今年1月に政府とセレカは連立政権を樹立したが後に決裂した。”【4月11日 毎日】という経緯を経て、セレカ政権樹立という今年3月以降の展開となっています。

アフリカ連合(AU)はセレカによる政権奪取を認めず、中央アフリカの参加資格の停止を決めています。アメリカもセレカには「正統性がない」と非難しています。
国連安保理も、中央アフリカでは「法と秩序が崩壊している」と懸念を表明しています。

****中央アフリカ、反政府勢力の支配で崩壊の危機=国連***
国連のシモノビッチ事務次長補(人権担当)らは14日、反政府勢力が4カ月前に権力を掌握した中央アフリカ共和国について、「崩壊の危機にある」と警告した。

最貧国の1つでもある中央アフリカは、反政府勢力セレカが権力を掌握しボジゼ大統領が同国を脱出して以来、混乱状態が続いている。アフリカ連合(AU)は今月、国民の保護や情勢安定化、政府統治の回復のため、平和維持部隊の増強を発表した。

国連特使を務めるBabacar Gaye氏は、AUが経済面や技術面で支援を要請しているとし、安全保障理事会に要請に応じるよう提言したと述べた。

特使やシモノビッチ事務次長補は、危機解決にはAUの部隊だけでは足りないとの見方を示した。事務次長補は、治安確保と国民の保護には大規模の部隊が必要だとし、外国の反政府勢力が中央アフリカに流入することも防ぐ必要があると述べた。

安保理は声明で、中央アフリカでは「法と秩序が崩壊している」とし、同国の治安情勢に深い懸念を表明。情勢安定のためにあらゆる選択肢を検討するとした。

国連のバレリー・アモス人道問題担当事務次長は、中央アフリカが破綻国家になる可能性があると指摘。国民約460万人が情勢危機の影響を受け、このうち160万人は緊急支援を必要としていると説明した。【8月15日 ロイター】
*****************

セレカが少年兵を戦わせている疑惑も報じられていますが、アフリカにおける多くの衝突では、戦闘を行う両勢力が同様の行為を行っている・・・というのが一般的です。

あくまでも「フランスの国益」】
旧宗主国フランスは、以前から治安維持活動支援の一環として250人を駐留させていましたが、3月末からの混乱拡大で300人規模の増派を行い、首都空港を確保しています。

しかし、マリのイスラム過激派南進に素早く反応して積極介入したときと比べると慎重姿勢でのぞんでいます。
***********
だが、任務は現地在住の自国民1200人の安全確保に限定。内政不介入の姿勢で暫定政権への支持も表明していない。
仏が慎重姿勢である理由は▽1月に軍事介入した西アフリカのマリより周辺地域の仏権益が少ない▽イスラム教徒人口が少なくイスラム過激派の温床となる可能性が低い−−などだ。【4月11日 毎日】
***********

フランスのオランド大統領は、2012年12月27日、「ボジゼ政権を守るために仏軍がいるのではない。仏国民やフランスの権益を守るために駐留している。内政干渉はしない。そういう時代は終わった」と述べています。
そうした慎重姿勢をとってきたフランスが、より介入を拡大させる姿勢を強めているというのが冒頭記事です。

アフリカはフランス植民地支配の中核にあった地域であり、今現在も「大国」フランスの基盤となっている“核心的利益”に関わる地域であること、フランスはアフリカ旧植民地国と疑似家父長制的「共同体」関係とも言える特殊な結びつきを依然として維持し続けている唯一の国であること、フランスの対アフリカ政策の目的は①「大国」としての勢力圏の維持 ②経済的利益の追求にあること・・・などは、1月12日ブログ「フランス  西アフリカ・マリの混乱に軍事介入 フランスにとってのアフリカ」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130112)でも取り上げました。

****アフリカに軍事介入するフランスの論理****
・・・・フランスは過去半世紀の間、アフリカに対して最も頻繁に軍事介入してきた国だ。軍事超大国アメリカが世界規模で追求してきた軍事戦略を、アフリカの旧植民地に特化して進めてきた国。それがフランスだと言えるかもしれない。

アメリカはソマリアのアルカイダ系組織掃討のため今世紀に入ってからジブチを軍事拠点とし、最近になってニジェールに無人攻撃機の基地をつくる計画を本格化させている。
だが、アメリカは長年、アフリカ大陸に米軍基地を置いてこなかった。2008年10月に新設された「米アフリカ軍司令部」も、司令部はドイツにある。

かつて大英帝国としてアフリカ東部・南部を中心に広大な植民地を有していたイギリスも、現時点で兵士を駐留させている国はケニアとシエラレオネだけである。

これに対してフランスは、旧フランス領植民地だったガボン、コートジボワール、セネガル、チャド、ジブチの5カ国に基地を置く。また、1998年にいったん基地を閉鎖した中央アフリカには現在、首都バンギの空港に250人のフランス兵を駐留させている。

さらにフランスは、多数のアフリカの国々と軍事協力協定や二国間防衛協定を締結している。フランス語圏アフリカの政治動向に詳しいアジア経済研究所の佐藤章アフリカ研究グループ長代理が2010年に発表した論文「フランスの軍事政策とアフリカの紛争」によると、1990年代半ばの時点で28カ国との間にこうした協定があった。(中略)

フランスのアフリカへの軍事介入の歴史をまとめた一覧表を見て改めて気づくのは、その時々のフランスの政権が「フランスの国益」になると判断した時にのみ介入を決断したに違いないという、当たり前の事実である。

介入は後に称賛されたものもあれば、失敗に終わったものもあったに違いない。成否の判断が今なお判然としないものも多いだろう。

フランスにとっての国益に基づく介入が、被介入国の民衆の不利益になったケースも多々あるに違いない。
90年代初頭、ルワンダに派兵してフツ人主体政権を支援したことは、後に100万と言われる犠牲者を生んだ大虐殺の伏線になったとして、フランス政府は国内外から強い批判を浴びた。
一方、今回のマリ介入のように、介入先のマリの庶民から歓迎されているケースもあるだろう。

だが、いずれの場合にせよ、介入の是非を決断した時点の最終的な判断基準はフランスの国益に照らされたものであり、被介入国の国益が最優先されたことはない。

当たり前と言われればそれまでだが、国益に基づいて軍事介入の是非を判断する機会自体が60余年にわたって存在しない国に住む者にとっては、国際政治の冷徹な現実を再認識する良い機会である。

なぜなら、「フランス」と「アフリカ」の関係を「アメリカ」と「日本」に置き換えると、この冷徹な現実の持つ意味の重さを痛感するからだ。
アメリカは「日本を防衛することがアメリカの国益に資する」と判断すれば、東アジアの紛争に介入するだろう。だが、アメリカが「紛争への介入はアメリカの国益に反する」と判断するような事態が出現したら、日本はどうなるのだろうか。フランスのアフリカへの軍事介入を遠くから見ながら、私はそういう頭の体操をしている。【2月23日 白戸圭一氏 フォーサイト】(http://www.fsight.jp/14818
******************

中央アフリカへの介入姿勢をフランスが強めているのは、これ以上の混乱を放置することは家父長フランスの威信を傷つける・・・ということでしょうか。

十分に機能しないアフリカ連合
一方、混乱収拾の中核となるべきアフリカ連合(AU)は、下記のような緊急部隊創設といった話もありますが、現実問題としては、加盟国の財政上の問題もあって軍事的対応力を発揮できていません。
資金面では、パトロンというか“盟主”的存在だったリビア・カダフィ大佐の失脚で更に厳しくなっているという話もあります。

****アフリカ連合、紛争対応のための緊急部隊創設へ****
アフリカ連合(AU)は27日、アフリカ大陸で起きる紛争に即座に対応できる緊急部隊を創設すると発表した。

AUは10年前、アフリカ大陸5地域から徴集した各国の兵士や民間人から成る3万2500人規模の「アフリカ待機軍」発足に向けた取り組みを開始したが、その準備はほとんど前進していない。
運用開始のめどが立っているのは5地域のうち2つのみだ。

エチオピアの首都アディスアベバで2日間にわたり行われたAU首脳会談後の会見で、議長国エチオピアのハイレマリアム・デザレン首相は「AU加盟国のほぼすべての国が即時対応できる軍事力を持つことで合意した」と語った。

ラムタネ・ラマムラAU平和安全保障委員は記者団に対し、「これは、待機軍が完全に運用可能になるのを待つ間の暫定措置だ。その間、あちこちで危機や、憲法に反する政権交代、大規模な人権侵害が起きる可能性が高い。そのため、責任という面から見れば、完全な道具が使えるようになるまでわれわれは待ってはいれない」と語った。
同委員によれば、この緊急部隊には、南アフリカ、ウガンダ、エチオピアが派兵を申し出ているという。

AUは、昨年3月にマリで兵士らが起こしたクーデターへの対応の遅れを非難された。アフリカ大陸の中でも比較的安定した民主主義政権を保持していたマリだが、このクーデターを機にイスラム過激派が北部を掌握。旧宗主国のフランスは今年1月、過激派掃討のための軍事介入に踏み切った。【5月28日 AFP】
***************

アフリカ連合(AU)については、財政面から軍事的対応がとれないという話以上に問題なのは、その現状維持姿勢ではないでしょうか。

AUがセレカによる政権奪取を認めないのは、セレカの政治姿勢の問題でもなく、旧ボジゼ政権の統治の良し悪しでもなく、とにかくどんな悪辣な政権であってもそれを力で倒すことは認めないという現状維持姿勢によるものでしょう。
AU加盟国の多くが自国内に人権や民主化で問題を抱えていることもあって、人道などで国際批判を浴びる国の指導者を支持する傾向があります。

****AU首脳会議:国際法廷の現職首脳訴追に反対****
アフリカ連合(AU、54カ国・地域)は12日、エチオピアの首都アディスアベバの本部で首脳会議を開催し、国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)などの国際法廷が現職首脳を訴追することに反対する意見をまとめた。
人道に対する罪に問われたケニヤッタ・ケニア大統領の審理が来月始まるなど、アフリカの人ばかりが訴追されている状況に反発した形だ。

AP通信などによると、会議では首脳の在任中は訴追されないようにすべきだと結論づけた。また、ケニヤッタ氏の審理を延期するよう国連安全保障理事会に求める方針も決めた。

2003年の開設以来、ICCが進めてきた20件の訴追手続きはすべてアフリカを対象としており、アフリカ各国からはICCへの反感が高まっている。

スーダンのバシル大統領は、ダルフール紛争を巡り民間人殺害などへの責任を問われ、ICCが逮捕状を発付。ケニヤッタ氏は07年の大統領選直後の暴動への間接的な加害責任を問われた。ルト・ケニア副大統領も同様の疑いで訴追され、すでに審理が始まっている。

英BBCによると、AU議長のハイレマリアム・エチオピア首相は「ICCが我々に科した不公正な扱いはまったく容認できない」と強く批判した。【10月13日 毎日】
*****************

アフリカ連合(AU)の側には、人道などの問題でアフリカだけが狙い撃ちされている・・・という不満があるようです。

うまくいっていることはニュースにならず、悪い事例のみがニュースとして世界に流布されるという情報の偏りはあるにしても、アフリカの統治でうまくいっている事例というのは聞く機会が少なく、内戦や政治混乱の話ばかりを目にするのは残念なことです。

****アフリカ指導者対象の「イブラヒム賞」、今年も受賞者なし****
アフリカの優れた指導者を対象に、個人に与えられる賞では世界最多の賞金を授与する「イブラヒム・アフリカ指導者業績賞」(モ・イブラヒム賞)が、今年は過去5年間で4度目の「適格者無し」となったことが14日、発表された。

モ・イブラヒム財団は、ロンドンで開いた記者会見で、「慎重に検討した結果」、2013年度の受賞者はいないという結論に達したと発表した。

通信業界で富をなしたスーダン生まれのモ・イブラヒム氏が2007年に創設したこの賞は、賞金として500万ドル(約4億9000万円)が10年間に分割して支払われる他、それ以降は年間20万ドル(約2000万円)が一生涯支払われる。また、受賞者が支援する活動に対して、さらに年間20万ドルが10年間支払われる。

受賞の対象になるのは、民主的な選挙で選出され、卓越した指導力を発揮した任期満了後3年以内のアフリカ人指導者。創設以来これまでに受賞したのは3人だけで、その他に南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領とデズモンド・ツツ元大主教が特別賞を受賞している。【10月15日 AFP】
***************

なお、イブラヒム賞の受賞者3人とは第1回(2007年) ジョアキン・アルベルト・シサノ モザンビーク元大統領、第2回(2008年) フェスタス・モハエ ボツワナ元大統領、そして第5回(2011年) ペドロ・ピレス カーボベルデ前大統領です。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

イタリア  元ナチス軍人への責任追及 90歳でも、死んでもなお

2013-10-20 22:26:02 | 欧州情勢

(ローマ郊外で、プリーブケ受刑者の遺体の到着に合わせスローガンを叫ぶ支持者 【10月16日 毎日】)

第2次世界大戦中のナチスに関与した人物への追及は、当人が現在は高齢になっている今も続けられており、しばしば話題になりますが、下記記事もそのひとつ。
90歳の元ナチ軍人が終身刑となった・・・というもの。

****90歳元ナチ兵に終身刑=捕虜117人虐殺に関与―イタリア****
イタリア・ローマの軍事裁判所は18日、第2次世界大戦中のナチス・ドイツによるイタリア兵虐殺に関与した元軍人、アルフレッド・ストーク被告(90)に終身刑を言い渡した。ANSA通信が伝えた。

虐殺事件は、世界的なベストセラー小説「コレリ大尉のマンドリン」のモデルともなった。

ストーク被告は1943年、ギリシャのケファロニア島に駐留していたイタリア軍がドイツ軍との戦闘で降伏した後、少なくとも117人の捕虜虐殺に関与したとして裁判に掛けられた。戦闘では約5000人のイタリア兵が殺害されたとされる。【10月19日 時事】
********************

ギリシャ・ケファロニア島での出来事はよく知りませんが、ニコラス・ケイジが主演した映画「コレリ大尉のマンドリン」の解説によると、以下のとおりです。

****************
第二次世界大戦下のギリシャ、ケファロニア島。中立のギリシャは攻撃されていたアルバニアでイタリアに勝利しますが、同盟国のドイツが報復し、ギリシャはドイツに降伏。ケファロニア島はイタリアとともに統制されることになります。(中略)

イタリア軍のコレリ大尉は、マンドリンを背負ってケファロニア島にやってきます。プライドの高いドイツ人に対し、イタリア軍は歌を歌ったりバカンスを楽しんだり。連合軍に早く降伏して、イタリアに帰ることを望んでいたりもします。(中略)

ケファロニア島は、実権を握るドイツ軍、駐留するイタリア軍、そして島民であるギリシャ人の三者が共存することになります。

しかし、イタリアは先に降伏し、島から撤退することになりますが、ドイツ軍に武器の提供を迫られ、また、無事イタリアに帰国することができないと悟り、ギリシャ人のパルチザンに武器を提供し、ドイツ軍と対峙します。しかし、破れ、銃殺されることになります。【http://homepage1.nifty.com/mt_hayashi/corelli.html
*******************

降伏後のイタリア軍がドイツ軍と戦闘を行ったというのも初めて知りました。
イタリアの戦意の低さ、ドイツとの気質の差なども窺えます。

脱税事件で有罪が確定したベルルスコーニ元首相(77歳)は、70歳以上の高齢のため、禁固刑のかわりに社会奉仕活動か自宅軟禁が選択できるそうですが(同氏は社会奉仕活動に従事する見通しと報じられています)、元ナチスの戦争犯罪については、90歳の老人でも終身刑として収監されるのでしょうか?自宅軟禁となるのでしょうか?

いずれにしても、元ナチスの犯罪については、90歳老人の終身刑どころか、死後も糾弾の手は緩められません。
100歳で死去したナチス戦犯の埋葬ができずに話題となっています。

****ナチス戦犯の埋葬先見つからず、葬儀で衝突も イタリア****
イタリアのローマで先週100歳で死去したナチス戦犯、エーリヒ・プリーブケ受刑者の遺体の引き取り先が決まらず、埋葬できない状態となっている。

第2次世界大戦中にナチス親衛隊(SS)の将校だったプリーブケ受刑者は、1944年にローマのアルディアティーネ洞窟でユダヤ人75人を含む335人が虐殺された事件に関与したとされ、戦後に逃亡したアルゼンチンから95年にイタリアへ引き渡された。

98年に終身刑の判決を受けたが、高齢のためローマ市内の担当弁護士宅で拘禁されていた。

■法王庁が教会での葬儀を禁止、ひつぎに唾も
11日にプリーブケ受刑者が亡くなると、ローマ法王庁(バチカン)はローマ市内のカトリック教会での葬儀を禁じる異例の禁止令を出した。

イタリアにあるドイツ軍墓地への埋葬も、戦時中の死者ではないため拒否された。

折しもローマ市は、1943年に市内のユダヤ人居住区からユダヤ教徒の市民1000人以上がナチスに連行され、うち16人しか生還しなかった事件から16日で70年目を迎えようとしていた。追悼式ではイグナシオ・マリオ市長が「(同じく)虐殺に積極的に関与した人物の葬儀を認めることはできなかった」と述べた。

こうした背景を受け、15日に超保守派のカトリック団体がローマ近郊で行おうとしたプリーブケ受刑者の葬儀には数百人が抗議に集まり、「暗殺者」などと叫んで霊柩車を蹴ったりつばを吐きかけるなど混乱が起きた。

抗議デモ参加者と、集会を開こうとしたネオナチ信奉者が衝突したことから警察が葬儀の中止を命じ、ひつぎは車で運び去られた。伊ANSA通信によると、ローマ近郊の空軍基地に保管されているという。

■ドイツ、アルゼンチンでも受け入れ拒否
ローマ県のジュゼッペ・ペコラーロ知事は16日、プリーブケ受刑者の出身国であるドイツ当局に接触を図っていると述べたが、ドイツ外務省報道官は「非公式な接触のみ」で、遺体をドイツに送還したいという「正式な要請はイタリア側から受けていない」と述べている。

またプリーブケ受刑者の出生地である独ベルリン郊外ヘリングスドルフの市長報道官は独rbbラジオに、遺体の受け入れを拒否すると語った。

プリーブケ受刑者自身はアルゼンチンにある妻の墓の隣に葬られることを望んでいたが、アルゼンチン政府が遺体の受け入れを拒んでいる。

政府や自治体が拒否する理由の1つには、埋葬場所がネオナチ信奉者の「聖地」となる可能性を恐れていることがある。

イタリアの法律では、遺体の扱いに関する決定は直系の相続人が下さなければならない。しかしANSA通信によれば、米国とアルゼンチンに住む息子2人はイタリア当局に自分たちの意思について連絡もしていないという。

■「遺言ビデオ」に謝罪も悔悛もなし
一方、プリーブケ受刑者の弁護を担当したパオロ・ジャキーニ弁護士は17日、同受刑者の「遺言ビデオ」を公開した。

アルディアティーネ洞窟での虐殺に関する謝罪や悔悛の言葉は一切なく、抵抗し殺害されたイタリア人パルチザンの非を責めさえする内容だった。

1944年に起きたアルディアティーネ洞窟でのナチスによる虐殺は、ドイツ軍兵士33人をパルチザンが殺害したことに対する報復だった。ナチスは殺されたドイツ軍兵士1人につきイタリア市民10人を殺害。さらに洞窟に迷い込んだ5人も含め、計335人を殺害した。

プリーブケ受刑者は訛りの強いイタリア語で「彼ら(パルチザン)は、報復があることを分かっていて(ドイツ軍を)攻撃した。われわれ(ナチス)による報復が、革命の引き金になると思っていたのだ」と語っている。

また処刑の命令はナチスの総統アドルフ・ヒトラーから直接下されたもので、拒めば自分が撃たれる側になり「非常に恐ろしいことだった」とは述べたが、犠牲者の遺族らへの謝罪の言葉はなかった。【10月18日 AFP】
*******************

“ローマ法王庁(バチカン)はローマ市内のカトリック教会での葬儀を禁じる異例の禁止令を出した”というのも、死んでしまえば善人も悪人も・・・と考えがちな日本人には、やや意外な感があります。
戦時におけるバチカンとナチスの関係は微妙なものがあったようですが、ここではパス。

ドイツ・欧州にあっては、ヒトラーやナチスという犯罪行為の責任を追及すべき対象が明確化、あるいは単純化されていますが、日本にあってはそこが曖昧で、なんとなく“もう済んだこと。昔の話”とされがちでもあります。
敢えてそこに触れることは自虐的、最近では更に反日的ともされる風潮もあります。糾弾されるべき過ちはなかった、不当に非難されているという認識も強まっているようです。
いつまでも収まることのない中国や韓国の日本批判も、そういうところに根差すように思われます。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

旧ソ連諸国の独自の動き 圧力をかけるロシア

2013-10-19 22:03:29 | ロシア

(青色がEU加盟国 オレンジが東方パートナー諸国 【ウィキペディア】)

【「ロシア離れ」に輸入制限で圧力
旧ソ連のウクライナやモルドバは、東方拡大を進めてきたEUと、勢力圏再構築を狙うロシアの思惑がぶつかり合う場ともなっています。
経済的には、EUが自由貿易協定(FTA)をこれら国と締結しようとしているのに対し、ロシアは現行関税同盟の拡大版「ユーラシア連合」を計画しており、その影響力を駆使してEU接近を阻止しようとしています。

****露VS旧ソ連諸国「通商戦」 EUとのFTA締結阻止躍起…輸入制限し圧力****
旧ソ連のウクライナやモルドバが欧州連合(EU)との自由貿易協定(FTA)締結に近づいているとの見方が強まり、ロシアがこれを阻止しようと躍起になっている。

ロシアはウクライナなどを自らが主導する「関税同盟」に取り込みたい考えで、両国からの輸入を制限して圧力をかけるなど、事態は“通商戦争”の様相を呈している。

ロシアとウクライナの間では8月中旬、ウクライナからのロシア向け輸出がほぼ全面的に停止した。露税関がウクライナ産品に差別的な手続きや検査を課し、政府間の協議で事態が正常化するまでの約1週間、国境地帯に大量の商品が滞留して多大な損失が出た。

また、ロシアの保健当局は今月、モルドバの特産品であるワインに許容値を超える有害物質が混入しているとし、輸入を禁止した。

ロシアとベラルーシ、カザフスタンの旧ソ連3カ国は、域内自由貿易と域外への共通関税を柱とする「関税同盟」を形成している。旧ソ連諸国の再統合を目指すプーチン露政権はこれを他国に拡大し、共通の経済・通貨政策を伴う「ユーラシア連合」を2015年にも発足させたい考えだ。

一方、ウクライナとモルドバ、グルジアの3カ国は、EUとのFTAを含む連合協定(AA)締結を目指しており、早ければ11月の首脳会合で調印にこぎ着ける可能性が出ている。

プーチン露大統領は、近隣諸国がEUとの関税障壁を取り払った場合、「関税同盟の国々は保護措置について考えざるを得ない」と発言、ウクライナなどからの製品輸入のストップが警告的な行動であることを強くにおわせた。

ロシアの「ユーラシア連合」構想も、域内大国のウクライナが加わらねば、経済統合の効果が乏しくならざるを得ない。ロシアはウクライナへの天然ガス供給価格を引き下げることも提示し取り込みを狙う。

一方のウクライナは輸出の約4分の1がロシア向けで、市場からの締め出しは経済が低迷するウクライナにとって大きな打撃となる。

欧州委員会のバローゾ委員長は11日の演説で、EUとの関係強化を目指す国々の「自主的な選択」を制約する試みは受け入れられないと述べ近隣諸国へ圧力を強めるロシアを批判した。

ロシアの強硬姿勢がウクライナの態度を硬化させている側面もあり、旧ソ連諸国をめぐる欧露の攻防は正念場を迎えている。【9月17日 産経】
***************

EUが目指す東欧への統合の深化、旧ソ連諸国の政治・経済改革を具体化していく枠組みが「東方パートナーシップ」という、EUとアルメニア、アゼルバイジャン、グルジア、モルドバ、ウクライナ、ベラルーシとの間の連合協定です。

この「東方パートナーシップ」の首脳会議が11月下旬にリトアニアで予定されています。
バルト三国のひとつリトアニアは「ロシア離れ」を促す旗振り役とも言われ、ロシアはEU議長国でもあるリトアニアに対し輸入制限で圧力をかけています。

****ロシア:EU議長国への乳製品禁輸で波紋****
ロシアが今月上旬、欧州連合(EU)の現議長国リトアニアからの乳製品輸入を禁止し、波紋が広がっている。

リトアニアは、ウクライナなど旧ソ連3カ国のEU接近を具体化させる11月下旬の「東方パートナーシップ首脳会議」の開催国で、「ロシア離れ」を促す旗振り役。

EU側では今回の動きについて、ロシアの圧力策との見方が強い。旧ソ連諸国への影響力拡大を巡る両者間の確執が浮き彫りとなった格好だ。

ロシア政府が7日、リトアニアからのチーズなどの輸入を予告なしに禁止し、1週間以上が経過した。保健当局はあくまで「品質と衛生上の問題」とする。露メディアによると、リトアニアの乳製品は輸出量の8割がロシア向けとされ、小国のメーカーにとっては大きな痛手だ。

リトアニア政府は対抗措置として、世界貿易機関(WTO)への提訴も示唆。EUの執行機関・欧州委員会は「EUは食品の安全性には世界一厳しい基準を適用している」と間接的にロシアを批判した。

つばぜり合いの背景にあるのが、11月28、29日に開かれるEUの東方パートナー首脳会議だ。
2009年以来3回目で、ロシアと中央アジア諸国を除く旧ソ連の6カ国が参加する。

議題はEUとの関係強化や各国の民主化。今回は、ウクライナが、EU加盟への第一歩とされる「連合協定」を締結する見通しだ。さらにグルジア、モルドバも連合協定交渉を始めるとみられる。

自らの勢力圏とみなす旧ソ連諸国の相次ぐEU接近に、ロシアは内心穏やかではない。プーチン大統領は8日、記者会見で「ウクライナ政府が決定前に我々と協議することを希望する」と強調した。

この問題に詳しいロシアのジャリーヒンCIS(独立国家共同体)諸国研究所副所長は「ウクライナのEU接近は経済的動機からではなく、(安全保障面も含む)政治的動機によるもので、ロシアは歓迎できない」と指摘している。【10月16日 毎日】
********************

ウクライナ:ティモシェンコ前首相を事実上の釈放
「オレンジ革命」でロシアと袂を分かったウクライナは、ロシアとの強い経済関係が存在する一方で、しばしば「ガス戦争」を引き起こしてきました。
2010年2月には「親欧米」のティモシェンコ前首相を退け、「親ロシア」のヤヌコビッチ氏が大統領となり、ロシアとの関係改善が進んでいましたが、ここにきてEU接近を見せています。

しかし、EUは、ヤヌコビッチ大統領がティモシェンコ前首相を投獄したことを露骨な政敵排除として強く批判しており、ウクライナのEU接近の障害となっていました。

****ティモシェンコ前首相釈放へ ウクライナ、EU加盟に布石****
ウクライナのヤヌコビッチ大統領は18日までに、獄中にある政敵のティモシェンコ前首相(52)をドイツでの病気治療を名目に事実上釈放する方針を示した。

「親ロシア」とされていたヤヌコビッチ政権は欧州連合(EU)との統合路線にかじを切っており、11月末にも、EU加盟の前段となる連合協定(AA)を締結したい意向。EU側は、その前提条件として、ティモシェンコ氏の釈放を求めていた。

フランス通信(AFP)によると、ウクライナ議会で多数派を占める連立与党は18日、ティモシェンコ氏の海外での治療を可能にする法案を提出。ヤヌコビッチ大統領は「法案が可決された場合には署名する」と述べており、ティモシェンコ氏が出国する流れは、ほぼ確実になった。

ティモシェンコ氏は背中の痛みを訴えて治療を受けており、ドイツが受け入れを打診。ただ、大統領はティモシェンコ氏の刑の扱いについて具体的に言及しておらず、EU側との協議の行方には不明点も残る。

ティモシェンコ氏は2004年、ウクライナに親欧米政権を誕生させた「オレンジ革命」の立役者。10年の大統領選では僅差でヤヌコビッチ氏に敗れ、11年に職権乱用罪で禁錮7年の実刑を言い渡された。この判決は、国内外から「政敵排除」と猛批判されてきた経緯がある。

ヤヌコビッチ政権は11月末、リトアニアで行われるEUとの首脳会合で、自由貿易協定(FTA)を柱とするAAの締結にこぎ着けたい考えだ。EU側は、ティモシェンコ氏の収監問題が最大の障害としており、政権は「治療出国」の妥協策で切り抜けを図りたいものとみられる。

ウクライナをめぐっては、同国のEU接近を阻止したいロシアが、自国の主導する「関税同盟」への加入を要求して圧力を強めている。
今夏にはロシアの税関が一時、ウクライナ製品の輸入を事実上禁止する措置もとった。ウクライナがEUとの協定を締結した場合、ロシアとの関係は相当の悪化が予想される。【10月19日 産経】
********************

ティモシェンコ前首相も、2015年に行われる大統領選前に国外に出て政治生命が絶たれることは本意ではありませんが、EU統合の好機を逃すべきではないとして「提案を受け入れる」と明言しています。
このまま獄中にいるよりは、政界復帰の可能性がまだ見込めるということでしょう。

ベラルーシ:中国接近でロシア牽制
ロシアと「関税同盟」を結ぶベラルーシのルカシェンコ大統領は、「欧州最後の独裁者」と、その強権体質が欧州から強く非難されています。
ただ、「スラブの兄弟国」ロシアとの関係も順調ではなく、ルカシェンコ大統領はロシアを牽制して中国接近の動きも見せています。

****ベラルーシ、中国に急接近 経済危機背景 「国家再建へ唯一の選択肢****
旧ソ連のベラルーシに対し、中国が影響力を強めている。ベラルーシのルカシェンコ大統領は今月中旬に中国を訪れ、15億ドル(約1500億円)相当の経済投資協定に署名。首都ミンスクでは「欧州最大」の中国工業団地の建設計画が始動した。

経済危機に悩むベラルーシがロシアに資金援助を断られ、中国へ接近した形だ。ロシアとベラルーシは「スラブの兄弟国」として緊密な関係にあるだけに、中国の進出ぶりはロシアをいらだたせそうだ。(中略)

欧州連合(EU)加盟国に隣接するベラルーシへの大規模進出は、「中国にとっての欧露両市場への橋頭堡(きょうとうほ)になりうる」(専門家)とも指摘される。早速、自動車大手の「浙江吉利控股集団」は、ベラルーシ国内で大型乗用車を合同生産することで合意した。

「欧州最後の独裁者」とも呼ばれるルカシェンコ大統領の下、ベラルーシは企業の操業停止、従業員の給料未払いなどの深刻な経済危機にあえぐ。

最大の支援国だったロシアは、国有企業の民営化といった改革の遅れなどを理由に今年、資金援助の継続を拒否した。
巨額融資の支払期限を今秋に控え、「中国との経済協力は国家再建のための唯一の選択肢」(露有力紙)だった。

ベラルーシの苦境に乗じた中国のしたたかな戦略といえるが、専門家は「ベラルーシは中国カードを切ることでロシアを振り向かせ、中露両国からさらなる援助を引きだそうとしている」とも指摘する。

中国は近年、中央アジア諸国への進出が著しく、カザフスタンの貿易高は昨年、ロシアを抜いて中国が1位になった。旧ソ連という“裏庭”で中国が影響力を強めていることに、「プーチン政権は懸念を抱いている」(外交筋)ともいわれる。【7月31日 産経】
*****************

旧ソ連諸国も活路を見出すのに必死です。経済的な将来性、政治的な束縛などを考えると、そうそうロシアの言うことをきいている訳にもいきません。
プーチン大統領をもってしても、ロシアが旧ソ連諸国をたばねるのはなかなか難しそうです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ドイツ  東西を隔てる「心の壁」

2013-10-18 21:57:14 | 欧州情勢

(6月1日 極右政党「ドイツ国家民主党(NPD)」のデモンストレーション “flickr”より By Martin Juen http://www.flickr.com/photos/40507091@N02/8926727362/in/photolist-eAPP3s-eAL16P-eAPztf-eALP4i-eALfcH-eALqnc-eAKYCP-eAPBqJ-eAPZGE-eAPAt5-eALAaz-eAPdgE-eAKZdM-eALxYB-eALVyk-eALhg8-eALMEM-eALH28-eALoD8-eALwSP-eAPmGQ-eALxra-eAnQEY-eAnUmJ-eAnLH1-eAJMaK

【「ベルリン市民の頭の中にはまだ壁がある」】
ドイツでは、9月22日投開票された総選挙でメルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(同盟)が大勝して、メルケル首相の3期目続投を確実としています。

選挙にも勝利し、経済も順調で、いまやドイツの、と言うより欧州の「女王」とも言える圧倒的存在感を示すメルケル首相ですが、中道左派・社会民主党との大連立に向けて動き出していることは、報道でよく目にするところです。

もうひとつ、最近ドイツ関連で目にするのが、なぜか旧東ドイツの話題です。

1989年のベルリンの壁崩壊、そして1990年のドイツ再統一から23年が経過しますが、旧東ドイツの経済水準引き上げは十分な成果をあげておらず、失業率も西に比べて高い水準にあることは、従来から指摘されています。

****女王”メルケルも崩せなかった「壁」…ドイツに残る課題****
ベルリン北東部にある大規模な住宅団地。さまざまな色調の建物が並ぶなか、手入れが行き届いた庭にはブルーベリーが実り、バルコニーを飾るペチュニアが秋晴れの空に映えていた。

住民男性によると、団地は旧東独時代の建築。東西統一後、改修が最近まで続いた。「統一後の1990年代初めは極右がうろついていたが、今は見ない」。男性はビールを片手に静かな休日を過ごしていた。

統一後のドイツにとり旧東独再建は大きな課題だったが、今では旧東ベルリンでも瀟洒(しょうしゃ)な建物が目立ち、ずいぶん発展した。男性の言葉にも、ようやく訪れた落ち着きがうかがえた。

ただ、気がかりもある。先の総選挙では「女王」とも呼ばれるメルケル首相が圧勝し、ベルリンで旧西地域の選挙区をほぼ抑えた。だが、旧東地域4選挙区で勝ったのは旧東独政権党の流れをくむ政党だった。

その選挙区の境界は「ベルリンの壁」にほぼ沿う形で、メディアは「ベルリン市民の頭の中にはまだ壁がある」と伝えた。旧東西の生活水準が同じになったと考える旧東独市民は3割未満との世論調査もある。

10月3日、23回目の統一記念日。旧東独育ちの男性に意見を聞こうと「日本の新聞記者なのですが…」と切り出した。すると男性はためらいを見せ「じゃあね」と去った。【10月17日 産経】
********************

東の不満に巣食う極右勢力
下記記事は、旧東ドイツももう少し危うい現状をレポートしています。
旧東ドイツでは、縮まらない西との格差、西への屈折した感情などを背景に、若者らを中心に暴力的な極右勢力が拡大しているとのことです。

****三期目メルケルの憂鬱 のしかかる「東独」という宿題****
ドイツ総選挙は、アンゲラ・メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)の独り勝ちに終わった。

三期目に入るメルケル政権は、欧州政策の行方ばかりが注目されるが、最大の懸案は依然、首相の出身地である旧東独地域の振興である。
再統一から二十三年、二百兆円の投資を経ながら、経済低迷と人口減、ネオナチの闇が国の東部を厚く覆っている。

選挙戦終盤の九月半ば、ライプツィヒの歌劇場前で、騒動が起きた。ネオナチ政党「ドイツ国家民主党(NPD)」のトラック「旗艦D号」が広場に到着すると、待ち構えた反ネオナチ活動家たち数百人から怒号が飛んだ。
この後、ネオナチと反対派は市内各地を追いかけっこし、旧市街は終夜騒然とした。

この前週には、ホルガー・アプフェルNPD党首らネオナチ幹部が、バイエルン州の小都市で集会を組織した。ここにも反対派が駆けつけ、警官隊とともに三つ巴のにらみあいになった。ネオナチが消火器を取り出し、通行人に消火液を浴びせかけたところで、一斉逮捕。幹部たちは、警察署内で記念撮影をしてフェイスブックに投稿し、愚かしい騒動をPRに使った。警察署内にシンパがいたのは間違いない。

「表向きには活動を封じ込められているが、ネオナチはこの状況を楽しみ、既成政党に単独で闘うアウトローというイメージを浸透させようとしている。連邦議会選はどうあれ、彼らはすでに金城湯池を見出した」と在ドイツ特派員は言う。

その場所は、首都ベルリンを含め、かつてドイツ民主共和国(東独)に属した六州である。
ネオナチの浸透浸透ぶりを表すのが、地方自治体選挙だ。ドイツでは、連邦を構成する州政府・議会に強い権限がある。NPDは二十一世紀に入って、旧東独地域で躍進を続け、メクレンブルク・フォアポンメルン、ザクセンの両州では、過去二度の州議会選挙で議席を獲得した。
他州でも、議席獲得に必要な五%に迫る。旧西独では概して得票率が〇%台~一%台だ。

両州では市町村議会にも進出し、NPD幹部は「市会議員」の肩書でにわか名士になった。農村部では、得票率以上にネオナチの力が強い。
ここにくすぶる若者は、NPDに駆り出され、反対派や移民に対する暴力の先兵役になる。幹部が行政や警察当局ににらみを利かせるので、末端の暴力は野放しだ。
アジア系料理店は頻繁に襲われ、反ネオナチ家庭の子供たちは、学校でイジメにあう。

「旧東独はよそ者への警戒感が非常に強く、住民たちは貝のごとく黙る。ネオナチ支配の実態は外部に伝わらない」とは、旧東独に詳しいドイツ人記者だ。

動員の切り札は、サッカー・フーリガンである。
暴れたい若者たちを組織して、スタジアム外から発煙筒、爆竹で騒ぎ、敵のサポーターを襲う。暴力があまりにひどいので、サッカー界では、「観客を閉め出す『幽霊試合』にすべき」との案も検討された。(中略)

東西の心の壁は強く残る
旧東独を吸収合併した旧西独は、無策だったわけではない。
それどころか、再統一後の二十年間で一兆三千億ユーロを、経済・社会プログラムに費やしてきた。現在でも毎年、円換算で十兆円近くが投じられる。

円換算で二百兆円もの巨額資金が、人口一千六百万人ほどの地域に流れ込んできた。一人当たりの国内総生産(GDP)で見ると、旧東独は旧西独の八割程度まで上昇した。ただ、国営企業が総倒れになった後は、新たな産業基盤が生まれず、多国籍企業の進出はほとんどない。西からのカネで食いつないでいるだけだ。

昨年の失業率は、東(一一・九%)が西(六・六%)のほぼ二倍。最も好調なバイエルン、バーデンビュルテンベルク両州の四%台と比べると、ほぼ三倍だ。
貧困層は、ベルリンを含む東全体では一九・五%で、西の一四%を上回る。

経済学者のゾエ・キューンは、「起業家精神が欠落していて、新規企業がほとんど生まれない」ことを不振の原因に挙げる。共産主義独裁の後は、西の政府が面倒を見てくれたので、自主独立精神が根付かなかった。大学町イエナのように、ハイテクベンチャーが生まれているのは極めてまれだ。

何よりも旧東独の人が「ここはダメ」と見切りをつけた。再統一後の二十年間で、一千八百万人超だった旧東独人口のうち、一割が西に移動した。その六割以上が三十歳以下の若者で、三分の二が女性だった。

旧東独は「若い女性のいない場所」になり、女性が男性の四分の三しかいない地区もある。キューンは「移動可能な人はすべて移住する」と予測する。

政・財界はがっちり西が押さえる。メルケル首相以外では、中央政界に東の出身者はほとんど見当たらない。首都ベルリンを含む旧東独六州では、二州の首相が西出身。逆に西の州首相で、東の出身者は皆無である。
ダイムラー、シーメンスといった有力企業幹部は、西の出身者で占められている。

こうした構造は、東に屈辱感、隷属感を生む。アレンスバッハ研究所の昨年の調査では、東西の人間に「大きな違いがある」との回答は八割にのぼった。

西では「共産主義体質がDNAに刻み込まれている」と見られるため、東の人は出身地を語りたがらず、マスコミや研究機関ではその傾向が強い。東西の心の壁は本物の壁崩壊から二十三年を経て、なお強く残る。

メルケル首相は過去八年間、この問題に取り組んできただけに、いまさら奇策はない。

それどころか、任期中にネオナチ地下組織「NSU」の三人組が、西も含めたドイツ各地で、トルコ人を中心に十人もの連続殺人事件を起こしていたことが分かり、極右の監視・捜査体制立て直しが急務になった。
捜査当局は、トルコ人犠牲者が出るたびに、「トルコ人犯罪組織の抗争」など見立て違いを繰り返した。

三期目のメルケル政権は、真の統合という目標のはるか手前で、極右の暴力と東独の貧困に、対症療法を迫られている。【選択 10月号】
******************

極右政党「ドイツ国家民主党(NPD)」については、5月6日ブログ「ドイツ 社会に根深く存在し続けるネオナチズムの影」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130506)でも、非合法化の動きなどについて取り上げました。

“中央政界に東の出身者はほとんど見当たらない”なかで、メルケル首相一人が東出身なのは興味深いところです。
彼女の並外れた資質によるものなのでしょう。

もちろん、東の人々の資質が西に劣るとかいったことは全くありません。
むしろ、“旧東ドイツの子供は西よりも優秀”という報告もあります。

****ドイツ:旧東独「理系頭脳」で西を圧倒****
旧東ドイツの子供は西よりも優秀? ドイツの義務教育9年生(14〜15歳)を対象にした理数系科目の全国テストで、全16市州のうち旧東独5州の生徒の成績が上位を独占した。1990年の東西ドイツ統一から20年以上経過した今も、所得やインフラ面で旧東独の苦戦が続くが「理系」の頭脳では西側を圧倒した。

 ◇テストで上位独占…冷戦期の国家主導教育が影響か
テストは昨年、ベルリンのフンボルト大学教育制度質的開発研究所が全国4万4000人を対象に数学、物理、生物、化学の4科目で実施。今月結果が公表された。

ドイツはかつて東西に分断されたベルリン市、旧東独5州、旧西独10州の計16市州で構成。このうち、旧東独5州は全科目で上位6位以内に入った。特に、ザクセン州は全て1位。旧西独はバイエルン州などが科目によって上位に入るのみで、大半は平均点以下。

同研究所のハンス・アナント・パント教授は、独紙に「東独では数学や科学が重視され、その教育を受けた世代が今、教壇に立っているのが大きい」と指摘。冷戦期に西側への対抗上、国家主導で教えた科学技術への関心が、地域に根付いているとみられる。一方、移民が多い旧西独では、ドイツ語が苦手な子供も多く、授業の理解が進んでいないとの分析もある。

同研究所はドイツ語や英語、数学の全国テストは過去にも実施したが、理数系科目に絞った試験は初めて。経済協力開発機構(OECD)が今月発表した世界24カ国・地域を対象とする「国際成人力調査」の平均点ランキングでは、調査対象の「読解力」「数的思考力」「IT(情報技術)活用力」の3分野で、ドイツは11〜16位と平均前後だった。【10月17日 毎日】
********************

理論物理学・分析化学の研究者であったメルケル首相も、理数科重視の東ドイツで育ったひとりです。

【「“心の壁”を過大評価すべきではない」】
現在の東の停滞は、“共産主義独裁の後は、西の政府が面倒を見てくれたので、自主独立精神が根付かなかった”という東特有の風土の問題、現実問題として産業基盤がなく能力を生かせる機会が少ないため、多くの人材が西に流れてしまうということ・・・など、うまく歯車がかみ合っていないことから起きているように見えます。

同じ言語・文化・歴史を共有するドイツ人でありながら、“心の壁”を突き崩して融和を実現することには大きな困難があるようです。

ましてや、世界の多くの紛争を抱える国では、民族が異なったり、互いに殺しあった過去を抱えていたり・・・といった、東西ドイツに比べて遥かに厚く高い壁が存在しますので、国民和解が進展しないのも無理ないところです。
だからといって、あきらめる訳にはいきませんが。

ただ、ドイツの“心の壁”を過大視するのも一面的な見方です。
2010年10月4日ブログ「ドイツ 東西統一から20年 克服しつつある“心の壁” しかし、新たな“壁”も」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20101004)でも取り上げたように、基本線としては壁を克服する方向にあると思われます。

“統一時の外相ハンス・ディートリヒ・ゲンシャー氏は「東の40年の重荷を乗り越えるのに時間はかかるが、かなりの部分は成し遂げられた。『心の壁』を過大評価すべきではない」と話した。”【2010年10月4日 朝日】

やや心配なのは、人々の“心の壁”を煽り、不満を増幅させるような政治勢力の存在です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アメリカ  ギリギリでデフォルト回避 来年2月に先送り

2013-10-17 22:48:15 | アメリカ

(9月7日 オバマケアに反対するティーパーティーの人々 “impeach”とは“政治家・官僚などを(官職に関する不正で)弾劾[告発, 告訴]する”との意味だそうです。 “flickr”より By Marc Langsam http://www.flickr.com/photos/29671464@N02/9696545663/in/photolist-fLRkcM-gdRgKa-ghcCU9-fQKeC4-geFFfn-geHuqT-gumMix-ge1ekU-gmorfD-fW9en2-gGYwQa-gpLKGh-gjdjnn-gGcGhq-gH9RDv-gGYwPD-gGYwZD-gH6Z4s-gruwk9-grE7RL-ggWRD4-fPrvEz-fPnpQ5-gchpHZ-fW6R3t-fPZW3g-gcot8w-fNsEX8-gem2N7)

【「米国は少しばかり間抜けに見える」】
アメリカの債務不履行(デフォルト)も危惧された債務上限引き上げ問題は、周知のように期限とされた17日を目前にギリギリで回避されました。
もっとも、“来年2月7日まで”という“問題先送り”ですが。

併せて、1月15日までの暫定予算が認められ、連邦政府機関閉鎖(シャットダウン)の方も、一応回避されました。

この問題は多くのメディアがこぞって論評していますので、ここで取り上げるまでもないのですが、これまでの“中締め”(最終決着ではなく)として、また、「いいかげんにしろよ!」ということで、今日もこの話題です。

****米債務上限:引き上げ法案を上院下院可決 デフォルト回避****
米議会上院下院は16日夜(日本時間17日朝)、連邦政府の債務上限引き上げと、政府機関再開のための暫定予算を盛り込んだ法案を可決した。

上限引き上げの期限は17日に迫っていたが、連邦政府のデフォルト(債務不履行)などの危機は土壇場で回避された。オバマ大統領だ署名し法案が成立する見通しだ。

法案は上院与野党間の合意に基づき提出された。来年2月7日まで債務上限を引き上げて新たな借り入れができるようにするほか、1月15日までの暫定予算を認め、一部閉鎖中の政府機関を再開させる内容。上院は採決の結果、81対18の賛成多数で可決された。

野党共和党が多数を占める下院では、オバマ大統領が進める医療保険改革法の見直しを求めるなど、共和党内になお強硬意見も強かった。ただ、下院432人のうち200人を占める民主党の賛成に加え、共和党の穏健派など一部が賛成に回り、285対144の賛成多数で可決した。

オバマ大統領は上院での可決後、ホワイトハウスで声明を読み上げ、「法案が届けばすぐにでも署名する」と表明した。
国立公園など閉鎖中の政府機関は17日にも再開し、一時帰休となっていた職員も職場に復帰する見通しだ。

米財政問題を巡っては、共和党が医療保険改革法の見直しを求めてオバマ政権と対決姿勢を示し、暫定予算が成立しなかったため、10月1日から一部の政府機関が約17年ぶりの閉鎖に追い込まれた。

また、17日までに議会が16・7兆ドルの債務上限を引き上げなければ、連邦政府は新たな借り入れができなくなり、過去の債務の利払いなどができなくなるデフォルトに陥る恐れがあった。

デフォルトが発生すれば、金融市場の混乱などで世界経済に影響が及ぶことが懸念されていたが、当面の間、危機は回避される。【10月17日 毎日】
******************

オバマケアを潰すためならアメリカ経済、ひいては世界経済が混乱に陥ろうがかまわないといわんばかりの共和党保守強硬派、ティーパーティーに引きずりまわされ、世界経済を人質にとったチキンレースのような展開で、アメリカ政治の機能不全をあらわにした今回騒動でした。

“ブルッキングス研究所のシニアフェロー、バリー・ボスワース氏は「米国は少しばかり間抜けに見える」と述べるとともに、「米国は経済問題の扱い方を他の国にアドバイスできるという考えだが、こんなことが起きているのでは世界は米国の言うことを本気にしないだろう」と付け加えた。”【10月17日 ウォール・ストリート・ジャーナル】

共和党の頑なな姿勢へ批判的な世論の高まりもあって、レッドライン直前で共和党も譲歩しました。
今回妥協案に下院共和党からも数十名の賛同者が出て可決できたあたりで、最後の一線で良識が保たれた感があります。

与野党対立の原因 オバマケア
民主党長年の懸案事項であり、オバマ政権1期目の数少ない、しかし歴史的な成果でもあるオバマケアについては、基本線は変えずに微修正で落ち着きました。
オバマケアの簡単な概略を整理すると以下のとおりです。

****オバマケア、微修正決着****
与野党協議を長引かせていた最大の原因は、オバマケアを巡る根本的な路線対立だ。米国を史上初の債務不履行(デフォルト)の危機にさらしてまで、与野党が折衝を続けていたのはどうしてなのだろうか。

米国には、65歳以上の高齢者向け(メディケア)と低所得者向け(メディケイド)をのぞいて、大きな公的保険はない。多くの米国民は勤務先を通じて、民間の医療保険に入っている。

だが、民間保険は値段が高く、従業員に保険を提供できない中小企業も多い。このため、米国民約3億人のうち無保険者は約5千万人に上り、長い間、米国の社会問題になってきた。

当初、オバマ政権は、全国民を網羅できる公的保険の導入を目指した。しかし、お金がかかりすぎることなどから、民間の保険会社に、無保険者に対しても手頃な値段の保険を提供させる路線に転換した。

製薬業界や医療機器などへの増税で財源を確保し、個人や中小企業に、保険加入のための補助金も出すことにした。その代わり、個人には加入義務を課し、加入しない場合は罰金を科す。

こうした内容の医療保険改革法は、民主党が上院、下院とも制していた2010年に成立。1960年代以来の大改革で、10年間で1・3兆ドル(約128兆円)の政府支出が必要といわれる。
この制度で、無保険者約5千万人のうち約半数が保険に入れるようになるといわれている。

だが「個人の権利」を重視する共和党側は、オバマケアは「個人への過剰介入で、米国の建国の精神に反する」と猛反発。製薬業界など大企業の支持もバックに制度の骨抜きに必死だ。

オバマケアはすでに段階的な運用が始まっているが、個人への加入義務が生じるのは来年1月からだ。そのための予算をどうつけるのかは制度の根幹を揺さぶるだけに、与野党の争いが激しくなっている。

共和党は、今回の与野党協議でまず「来年1月からの本格運用の1年間先送り」を提案。オバマ政権は、制度の抜本修正には断固反対する姿勢を崩さず、最後は微修正に落ち着いた。【10月17日 朝日】
*****************

アメリカ国内を二分したオバマケアですが、その導入を成果として戦った大統領選でオバマ大統領が再選されたことで、実行に移していくことへの大筋の国民的判断がなされたと言えます。

ティーパーティーに引きずられる共和党
妥協の障害となった共和党保守強硬派の頑なな姿勢の背景には、下院選挙区割りが共和党に有利なように設定されており、たとえ今回騒動に対する一般国民の批判が強まっても、予備選挙で影響力を持つティーパーティーの支持を得て党内の候補者になりさえすれば本選挙(来年の中間選挙)では勝てる、逆に、ティーパーティーに支持されないと本選挙に進めない・・・という選挙実態があると指摘されています。

****米国:共和党「分裂状態」あらわ…債務不履行回避****
米連邦政府のデフォルト(債務不履行)危機は16日夜、回避され政府機関の再開も決まった。抵抗を続けた野党・共和党は支持率が低下し、党内の「分裂状態」もあらわとなった。保守強硬派「ティーパーティー(茶会)」系議員に引きずられた結果だが、共和党議員には、来年の中間選挙を見据えれば、強硬姿勢を貫いた方がいいとの発想がある。

「我々はいい戦いをした。勝てなかっただけだ」。下院共和党を束ねるベイナー議長は16日、地元オハイオ州のラジオ番組で「敗北宣言」した。

上院共和党は、与党・民主党と事態打開に向けた法案作りを進めたが、茶会系議員の発言力が強い下院は、医療保険改革(オバマケア)の修正にこだわり、意見集約に失敗。上院の穏健派を中心に「無駄足だ」(マケイン上院議員)などと、異論が噴出していた。

下院は、オバマ政権1期目の2010年中間選挙で、オバマケア反対や大型景気対策への反対を訴えた茶会が大きなうねりとなり、共和党が歴史的な勝利をおさめた。

その後に実施された10年に1度の下院の選挙区割り見直しでは、共和党が主導し、同党に有利となるよう調整。支持率が悪化しても影響を受けにくい。

米選挙分析機関クック・ポリティカル・リポートは、来秋の中間選挙で共和党が既に過半数の218議席までわずか7議席に迫っていると予測。共和党地盤の議員にとって、重要なのは中間選挙より年明けごろに本格化する同党候補者を決める予備選となっている。

そこで恐れられているのが茶会だ。民主党と対決せず妥協的だと見なされれば、資金力豊富な茶会に別の候補者を立てられかねない。昨年は、共和党穏健派のルーガー上院議員(当時)が、予備選で茶会の全面支援を受けた新人に負けた。穏健派議員の動きが鈍いのは、このためだ。

ベイナー議長ら指導部も茶会系議員の意向を無視できない。
共和党について、ニューヨーク大のダニエル・アルトマン教授は8日の米外交専門紙フォーリンポリシー(電子版)で「共和党は今や二つの党の連立だ。(茶会系という)約50人の下院議員と数人の上院議員しかいない少数派が、第1党と同じような権力をふるっている」と解説した。【10月17日 毎日】
*****************

【「次回はぎりぎりでの解決とならないことを願う」】
今回の妥協が休戦協定的な“問題先送り”に過ぎないことは言うまでもなく、“(下院共和党を束ねる)ベイナー氏は「オバマケアに対抗していく。闘いはまだ続く」と合意のそばから「戦闘再開」を宣言した。かりそめの休戦協定すら意味を失い、財政協議の迷走が米国と国際社会を再び危機に突き落とす懸念はぬぐえない。”【10月17日 産経というのが実情です。

オバマ大統領は「次回はぎりぎりでの解決とならないことを願う」と述べていますが、どうでしょうか?
上述のような選挙実態、債務上限を議会が決定するという現行システムが変わらない以上、年明けにはまた同じような騒動が繰り返されることになります。

年中行事のように繰り返される財政問題によって、ワシントン発の世界経済危機を心配しないといけない日本を含めた世界各国にとってはいい迷惑です。

また、インドネシアで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議などについてオバマ大統領が欠席を余儀なくされたことで、アジア太平洋の米同盟国の間で、アメリカのアジア重視戦略への疑念、アメリカの影響力低下と中国の台頭への懸念が高まっています。

“米国は突出した経済大国として、第2次世界大戦以来、世界の金融システムの土台の役割を果たしてきた。しかし、観測筋は今、ワシントンでの財政面での機能不全によって米国の権威はひどく傷つき、海外で物事を成し遂げるその能力は限定的なものになったと見ている。”【10月17日 ウォール・ストリート・ジャーナル】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

フランス  日曜営業・ネット販売への規制  政治で進む右傾化

2013-10-16 22:58:33 | 欧州情勢

(パリのシェイクスピア・アンド・カンパニー書店。“本の販売だけでなく、1万冊の蔵書を持つ英語文学専門の図書室も併設している(閲覧のみ)。この書店はまた無一文の若い書き手に宿を貸すことで知られており、「タンブル・ウィード」の愛称で呼ばれるこれらの若者は毎日数時間、店の手伝いをすることで食い扶持を得ている。”【ウィキペディア】
写真は“flickr”より By Ed Hagelstein http://www.flickr.com/photos/17890903@N03/5058238186/in/photolist-8GYMZd-9W53bg-8rtGu3-cxwpud-cxwmUC-cxwkRs-cxwjZm-cxws3L-cxwo8h-cxwqH5-8GPhb4-8ThCT6-8iqRZj-fbzZWA-9ieXeo-czji8E-8GYPyG-fM92Bc-8QwqyD-9UPUF3-8b1VX8-8b1VRt-9uE1bf-f3c5F4-9rNDfr-akAqgg-dWg6Pp-fNSQSU-eHZthT-aCBbbr-a8RNch-a8NWAP-c5L5bo-azuCwJ-8FkmrW-dUdZGz-bU4TGt-g1c1n4-cEhckf-g1bX9k-cEhcgs-g1bELc-g1bMQd-g1bHkm-g1bJYm-g1bC6T-g1bw3j-g1bZFe-8xLR2L-adhgxk-cyjFZQ )

【「少なくとも週に1日は家族と一緒に過ごせるということは非常に重要だ」】
ヨーロッパの多くの国ではキリスト教の安息日の伝統もあって、日曜日は勤務・営業を法律で規制している国が多いようです。

宗教的な理由だけでなく、労働者の権利保護、家庭生活優先、あるいは短時間に集中して営業することでコストを減らしたい営業サイドの思惑なども絡んでいます。

フランスもそうした日曜営業が禁止されている国のひとつですが、最近では見直しの声も上がっているようです。

****日曜はダメ?日曜営業解禁に割れる仏世論****
フランスを訪れる外国人が頭をかしげることの一つが、法律で小売業などの日曜営業が禁じられているため、日曜日に買い物ができないことだ。この法律に今、当のフランス国民も疑問を投げ掛け始めている。

フランスの法律では、企業は従業員に午後9時から翌朝午前6時まで勤務するよう依頼することはできるが、厳しい条件を満たす必要があり、あくまで例外的な場合に限られる。
小売業者は観光地や人口密集地に立地していれば日曜日も営業することはできるが、厳しい条件がある。
日曜日に精肉店などの食料品店は午後1時までしか営業できない。

■労働者側が日曜出勤を望む時代
フランスでここ数週間、飲食店以外の店舗に深夜と日曜の営業を原則禁じる現行法を支持する判決が相次いだことから、この問題が議論を呼んでいる。
日曜にも働きたいという労働者たち、経済的に困難な状況にある今、現行法は古臭く時代に合っていないと怒っている。

緊縮財政と経済成長の両立を約束したフランス社会党政権は、これまでのところ、日曜を休日とする現行法を支持している一方、国営郵便局の元トップを登用して現行法の問題点を調べさせ、11月末までに提言を出すよう求めている。

中道右派の野党・国民運動連合(UMP)のパリ市長候補、ナタリー・コシウスコモリゼ氏は、現行法は世界で最も多くの人が訪れる都市パリに大きな損失をもたらしていると批判した。(中略)

日曜に買い物をするというパリ在住のエリザベス・アルマーニ(Elisabeth Armani)さんは「人に働く権利を与えないなんて、国として恥ずかしい。失業問題もあるのに」と語った。(中略)

■政治的立場を超えて日曜解禁に反対の声も
中国から米国まで、日曜営業や24時間営業は多くの国でかなり一般的だ。欧州諸国でもスペインやポルトガル、イタリアではユーロ圏金融危機の余波で規制を緩和した。

しかしフランスでは毎週日曜、または日曜に時々働く人は労働者の約30%だ。法律では、日曜労働は労働者本人の意思によるものでなければならず、また日曜に働いた場合の賃金は通常の50%増しにすることが定められている。

近代フランス文化における日曜の位置付けに関する歴史書の著作があるロベール・ベック氏によれば、カトリック色の濃いフランスのこの法律の由来は、1898~1906年に各地の大都市で続いた大規模な労働者デモにある。
この時期のデモの結果できた法律が、日曜を義務休業日と定めた。当時も「教会と労働組合は反対し、企業家は賛成していた」という。

フランスの多くの家庭は今でも、日曜日に家族そろって昼食を取ることをとても大切にしている。「カトリック・エコノミスト協会(AEC)」のジャンイブ・ノーデ会長は、規制を緩和すれば仕事が増える方向にはなるだろうが、経済成長における日曜の買い物の効果を定量化するのは難しいと述べ、個人的な考えだとした上で、子どもやバランスの取れた家族生活の方が重要で、日曜営業解禁には反対だと語った。

ノーデ氏と同じように日曜営業解禁に反対する政治家たちもいる。中道政党・民主運動のフランソワ・バイル議長は「商売が最優先にされない日が週に1度は必要だというのは、進んだ文明の考え方でもある」と言う。

政党連合・左翼党のリーダー、ジャンリュック・メランション 氏も「少なくとも週に1日は家族と一緒に過ごせるということは非常に重要だ」と述べている。【10月12日 AFP】
***************

日本では、コンビニなど24時間営業・365日無休の店舗の増大、正月のスーパー・大規模店舗の営業などは一般化しているように、利便性を求める声がますます強まっています。
当然、フランスでもそうした声はあります。

また、労働者の権利と言っても、安定した職・賃金を得ている者と、生活に困窮している者・職を求めている者では立場が異なります。
労働組合の主張が、一部労働者の既得権益保護になりがちなことはフランスも同様でしょう。

ただ、「商売が最優先にされない日が週に1度は必要だというのは、進んだ文明の考え方でもある」「少なくとも週に1日は家族と一緒に過ごせるということは非常に重要だ」というのも理解はできます。

多くの規制緩和の問題同様、メリット・デメリット双方がある話で、悩ましいところです。

****仏国民の7割、日曜日の商店営業を希望****
フランス人の7割が商店の日曜営業を望んでいる。
調査機関Ifopが無料紙メトロの委託で実施した世論調査で明らかになった。

フランスでは1906年に制定された法律により、個人営業の食料品店など一部の小規模事業者や観光地区を除く大半の小売店は日曜営業が禁止されている。

今回の調査では、全体の69%が商店の日曜営業に賛成と回答。72%は、そのための法改正を望むとしている。

また特別手当付きで日曜勤務を打診された場合、71%が「勤務する意思がある」と答えた。
この割合は2007年と比べると12ポイント、2008年と比べると4ポイント上昇している。

Ifopはこれについて、「債務危機による経済情勢の悪化のほか、失業率の悪化や購買力の低下により、日曜労働に対する国民の意識が変化している」と分析する。

フランスでは先週、ホームセンターチェーン「ルロワ・メルラン」と「カストラマ」に対し、日曜営業を禁止する判決が下された。違反した場合は1店舗につき1日当たり12万ユーロの罰金が科されるが、2社はこれに反発し、パリと近郊の14店舗の日曜営業を強行している。

レゼコーの委託で世論調査機関CSAが実施した別の世論調査によると、国民の8割が「政府はルロワ・メルランとカストラマに日曜営業を許可すべき」と答えている。【10月7日 NNA.EU】
******************

街の本屋さんは文化遺産
フランスにおける規制の話題がもう1件。
フランス議会の下院は10月3日、アマゾンを中心としたネット書店業者に対し、書籍を割引販売して、無料配達するというサービスを禁止する法案を全会一致で可決しています。

****米アマゾンに打撃、仏で無料配送禁止の新法 ****
フランス国民議会は、オンライン書店による顧客への無料配送を禁止する法案を可決した。市場支配力を高めるインターネット小売り最大手の米アマゾン・ドット・コムから、経営不振にあえぐフランス国内の書店を守ることが狙いだ。

この措置を提案したフィリペティ仏文化・通信相は3日、アマゾンは書籍価格を規制するフランスの法律の抜け穴をかいくぐって、無料配送を提供していると主張。「ダンピング(不当廉売)戦略」の疑いがあるとして同社を非難した。

同氏は国民議会において、「彼らがひとたび支配的な地位に就き、フランスの書店網を一掃すれば、配送料を引き上げる可能性が高い」と指摘した。

この新法は上院の承認を待つ段階。市場支配力の不当行使により、現地での優位性を増すとされる米ネット企業に対して、フランスが取った最新の措置となる。

■超党派で新法を支持
オランド大統領率いる社会党は、オンラインサービスを規制するよう欧州連合(EU)に働きかけている。さらに米グーグルや米フェイスブック、アマゾンなどのネット企業に対し、彼らの顧客がいる国々で課税することに国際的合意を得ようとしている。

米国の商品や企業の脅威からフランスの文化的資産を保護しようと、議会では超党派で取り組む。全主要政党が新法を支持しており、書籍の単一固定価格から5%までの値引きを認めた1981年の法律に追加される見通しだ。

一方で、アマゾンは新法を批判する。書籍価格を引き上げる措置は仏消費者の購買力に打撃を与え、インターネットで買い物をする消費者への冷遇になると述べている。

同社は「最も深刻な影響は、消費者に提供するサービスや品ぞろえ、そしてネットに事業を依存する小規模出版社に及ぶ」と指摘する。【10月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 日経より】
****************

個人的には普段アマゾンをよく利用しており、その結果、本屋さんに足を運ぶことはほとんどなくなりました。
無料配送もさることながら、商品の選択範囲が既存の本屋さんとは比べものになりません。
また、サイトの口コミ情報などで、本の内容が推測できるのも助かります。

****仏議会がアマゾン狙い撃ち 「割引&無料宅配」を禁じた“真の理由****
・・・・フランスでは1981年施行の「ラング法」によって、書籍に関しては、活字文化や街の本屋さんを守る意味などから、商品供給元が販売店に対し、販売価格を指定して、それを守らせるという「再販制度」を認めるとともに、販売時の割引率も最大5%に制限しています。

ところがフランスの議会報告書によると、国内の全書籍の売り上げに占めるネット通販の割合は、2003年は3・2%だったのに、2011年には13・1%、昨年は17%と年々急増。その一方、全書籍の売り上げは昨年、対前年比で4・5%もダウンしていました。

この数字から明らかなように、街の本屋さんの売り上げがネット書店によってどんどん圧迫されているのです。しかしそれも当然でしょう。ネット書店は定価の5%引き販売は当たり前。それに加えて送料まで無料なのですから、そちらに流れる消費者を止めるのは極めて困難です。

ちなみにフランスの人口は約6500万人ですが、現在、街の本屋さんは2000店~2500店。人口約6200万人のイギリスが1000店であることを考えると、人口比で見れば他国に比べてまだまだ多い方だといいます。
(後略)
******************

“米国の商品や企業の脅威からフランスの文化的資産を保護しよう”ということのようですが、消費者が便利で良質なサービスを求める動きを法的に規制しようというのは無理があるように思えます。

不人気のオランド大統領 勢いが増す国民戦線
フランスの政治面では、オランド大統領の不人気が目につきます。

****オランド仏大統領の支持率、過去最低に****
フランスのフランソワ・オランド大統領を支持する人の割合が、4人に1人未満に低下し、過去最低を記録したことが分かった。

統計調査会社イプソスが仏誌ルポワン向けに今月行った調査によると、オランド氏の支持率はわずか24%で、同社が1996年に仏大統領支持率の月例調査を開始して以来、最低となった。

オランド政権ではこのところ、少数民族ロマ人への対応をめぐる政権内部での意見分裂や、誤った失業率の発表といった失態の露呈が相次いでいた。

一方、ロマ人を「国境の外へ戻すべき」と発言して各メディアをにぎわせたマニュエル・バルス内相は、仏政治家の中で最高の56%の支持率を獲得した。

右寄りで一貫する有権者らを見据えた立場を取っていることが、人気上昇の大きな要因になっているとみられ、バルス氏を将来の大統領候補とする呼び声も徐々に高まっている。【10月15日 AFP】
******************

フランスで“右寄り”と言えば、極右政党国民戦線を率いるマリーヌ・ル・ペン氏がいます。
先の大統領選挙では18%の得票率を獲得して存在感を示しましたが、その勢いは衰えておらず、社会党や国民運動連合を超える数字も出ているようです。

****仏地方補選で極右勝利****
フランス南西部ブリニョールで13日、地方議会補選の決選投票が行われ、即日開票の結果、極右・国民戦線(FN)候補が得票率53.9%で勝利を決めた。
事実上の小選挙区制で行われた選挙での勝利は、FN支持の広がりを改めて印象づけた。

補選決選投票は、FN候補と国政最大野党の右派・国民運動連合(UMP)候補との間で争われた。6日の第1回投票で敗退した左派陣営は、決選投票でUMP候補への投票を支持者に呼び掛けたが、FN候補が8ポイント近い大差をつけた。

FNのルペン党首は2012年の大統領選で、極右候補としては過去最高となる18%の得票率で3位に入った。

また、今月発売の週刊誌に掲載された世論調査では、14年5月に予定される欧州議会選の投票先として24%がFNを挙げ、UMPや国政与党の社会党を抑えて首位となっている。【10月14日 フランス ニュースダイジェスト】
*******************
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アフガニスタン  女性、少数派ハザラ人の社会進出 変化と抵抗

2013-10-15 21:25:10 | アフガン・パキスタン

(ハザラ人の子供たち “flickr”より By Mennonite Central Committee http://www.flickr.com/photos/40695573@N04/8661156004/in/photolist-ecmFVW-9fAU8b-9mpABq-9fiYhd-aw53bB-cmGx91-cmsQQ5-cmtGSs-cmGaaC-cmsSEL-au5pYr-cmG6jw-e8bUFH-cmGoyG-cmsQAw-cmGPQU-8VMxRt-cmGSAA-cmGB19-cmG7Es-cmGB7s-cmsU5f-cmGS8A-cmsSsU-cmG8D5-dGvVaC-cmsVq3-cmsUZE-cmsUTd-cmGQty-7Bejd2-cmGVHS-9jCXcB-82SPEs-cmG8xL-cmG38W-cmGaFL-eHnwwn-cmGwvA-cmGxtU-cmGcs1-cmGoGd-cmGwzo-cmGxio-cmGdaA-cmGBvN-cmtELW-cmGBUS-9BBJ1Z-cmG6hU-cmG6mS)

女性が発言力と地位を得るにつれ、彼女たちは新たな脅威にさらされている
アフガニスタンからの14年末までの米軍撤退を控えて、14年末以降の米軍一部残留をめぐるアフガニスタン政府とアメリカの裁判権などを巡る交渉が行われていること、タリバンの勢力が再び拡大しつつあることなどは、昨日14日ブログ「アフガニスタン 14年末以降の米軍一部存続へ向けて協議 裁判権の判断は持ち越す」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20131014)で取り上げました。

昨日ブログの最後に触れたように、何かと批判が多いカルザイ政権ですが、タリバン抜きの政治体制のもで女性の社会進出や、少数民族の権利拡大などでは、一定に前進も見られます。ただ、当然に抵抗もあります。
女性の権利を極端に制限した旧タリバン政権にみられるように、アフガニスタンでは女性の権利・社会進出・教育が制約されてきました。
現在の体制のもとで女性の社会進出は一定に前進はしましたが、それだけに旧価値観からの抵抗・風当たりも強くなっており、“転換点”を迎えているとの指摘もあります。

****アフガニスタン:女性権利の犠牲者 今度は女性警官****
アフガニスタンで最上級職の女性警察官が殺害された。同国の女性の権利を推進する上で、新たな後退となった。

ネガー警部補(38歳)は9月15日、反体制色の強いヘルマンド州の首都ラシュカルガーの警察本部付近でオートバイに乗った2人組みに銃で首を撃たれ、翌朝、病院で亡くなった。
彼女は女性の権利の支援者として積極的に発言し、女性や少女に対する暴力に異議を申し立てていた。

アフガニスタンでは昨年、彼女の前任者やインド人作家、女性省の最高幹部2人など、社会的に知られた女性たちが、殺された。最近では、女性議員がタリバンの人質となった。ここ数年で、女性の権利運動は大きく進展した。そして今、転換点にあると言えるだろう。

以前より多くの女性が権威のある地位に就き、教育の機会も増え、女性や少女を暴力から守る新しい法律が作られた。

しかし、女性が発言力と地位を得るにつれ、彼女たちは新たな脅威にさらされている。何人かの女性の権利擁護者は、報復を恐れて再び自主規制を始めているという。

アムネスティは、要職にある女性への襲撃が拡大し、女性や少女への暴力が日常化していることに、国内外の指導者たちが慣れつつあることを懸念している。

女性の権利を守り、推進するために、もっとできることがあるはずだ。カルザイ大統領は2009年、女性に対する暴力根絶法を大統領令によって制定した。
しかし、規定の多くはいまだ履行されておらず、また、この法律全体を廃止しようとする動きさえもある。

アフガニスタン当局は国際的な支援のもと、女性の権利を守るために全力を尽くすべきである。具体的には、女性に対する暴力根絶法の全面的履行および確実に実施されるよう当局関係者全員の訓練などを行なう必要がある。

アフガニスタン独立人権委員会によると、近年、女性に対する暴力は全国的に「まん延し、増加の一途を辿っている」という。過去一年以上にわたり、アフガニスタン全土、特に農村地帯で女性や少女に対する殴打、誘拐、殺害が報告されている。彼女たちは、配偶者や親戚、治安部隊員、タリバンを含む武装グループなどから、時には白昼公然と襲撃を受けている。

ネガー警部補の殺害をはじめとした女性への暴力犯罪は、迅速かつ徹底的に調査するべきである。そして犯罪に関与した者は、死刑を排除した上で公正な裁判にかけられるべきである。【9月16日 アムネスティ国際ニュース】
**************

女性の教育・権利に目を向ける機会としては、イスラム武装勢力に抗して女子教育を訴えるマララさんのノーベル平和賞というのは絶好の機会でしたが、周知のように残念な結果となっています。

社会全体の風潮・価値観を変えていくためには、政治家や当局の強い意志と指導力が求められますが、あまり期待できない状況のようです。

大学や政治の舞台で急速に力を増すハザラ人 他民族からの警戒感も
普段あまり取り上げられる機会の少ない、少数民族ハザラ人に関する興味深い記事がありました。
パシュトゥン人やタジク人が多数を占めるアフガニスタンにあって、ハザラ人は人口比で1割程度の少数派で、宗教的にシーア派が多く、モンゴロイドで顔つきも異なることなどから、長く差別的な劣後した地位におかれ、虐殺も経験してきました。

“(パシュトゥン人の)タリバンがよく口にするのはこんな言葉だ。「タジク人はタジキスタンへ帰れ、ウズベク人はウズベキスタンへ帰れ、そしてハザラ人はゴリスタンへ帰れ」。ゴリスタンとは墓場のことだ。
実際、タリバンは(バーミアンの)石仏を破壊した当時、(ハザラ人が暮らす)ハザラジャートを包囲して村々を焼きはらい、人の住めない土地にしようとしていた。”【2008年2月号 ナショナルジオグラフィック日本版】

しかし、最近は教育の場や政治において進出が進んでいるそうです。
ただ、そのことは多民族からの反発・警戒も呼び起こします。

****被差別の民、民主化の光 アフガン、奴隷の歴史背負うハザラ人****
アフガニスタンには日本人と似た顔立ちをしたハザラ人と呼ばれる少数派の民族がいる。
長く抑圧されてきたが、混乱の時代を経て12年前に登場したカルザイ政権の民主化により、大学や政治の舞台で急速に力を増している。誰もが平等にチャンスを持つ社会の誕生が、追い風になった。

 ■機会平等の社会生かす 高等教育、進学に熱意
アフガン中部のダイクンディ州カディル地区は、首都カブールからバスで48時間。ハザラ人が住む辺境の地だ。小麦やスモモの栽培で生計を立てる零細農家の長男、アブドル・ガニさん(20)は1年前、父に言い渡された。
「カブールに出て勉強しなさい。どんなに生活が苦しくとも、必ずおまえを支える。だから必ず良い成績で大学に合格しなさい」

それから父は隣国イランへ渡り、日雇い労働者となった。息子は学校を中退し、カブールの下宿で同郷の6人と相部屋の下宿生活を送りながら予備校に通う。仕送りは月に5千アフガニ(約9千円)。
「両親にとって、この金額を仕送りするのはとても苦しいと思う。交通費も惜しいから合格するまで村には帰らない」と心に決めている。

ガニさんが通う予備校はカブール南西部のハザラ人が多く住む地区にあり、生徒数は約4千人。冬休みの3カ月間はさらに約7千人のハザラ人が地方から短期講習に加わる。アブドル・アリ校長は「地方の子は基礎学力が低くても、親の期待と犠牲をよく知っていて、熱意が違う」と言う。
近くにはハザラ人富裕層が支援する宿泊所が多く、予備校には困窮する生徒への学費免除制度もある。

アフガニスタンは人口約3300万人。ハザラ人が占める割合は1割程度とみられる。1973年に倒れた王制の時代から現在まで支配民族として君臨してきたパシュトゥン人(約4割)、北部に多いタジク人(約3割)に及ばない。

それが近年、大学進学では民族比率の逆転が起きている。最高学府のカブール大学では、ハザラ人学生がすでに3割以上に達している。ハザラ人で社会学科4年のイシュハク・アリ・ラセクさん(23)によると、学科の同級生88人のうち69人がハザラ人だ。

今春の国立大学統一入試では、住民のほとんどがパシュトゥン人で反政府勢力タリバーンの活動が活発なカンダハル州(人口約110万)の合格者は918人。一方、ハザラ人がほとんどのダイクンディ州(人口約40万)からは3304人。首都があり人口で10倍近いカブール州の半分に迫る躍進ぶりだった。
ラセクさんは「長く抑圧され、貧しいハザラ人にとって、開かれた唯一の道は学問の道だから」と話す。

他民族からの警戒感を反映した動きも出ている。高等教育省は最近、国立大学進学枠を全国一律の選抜方式から、民族比率が反映されやすい州ごとに割り当てる方式に変える方針を出した。
この方針は結局、閣議で否決されたが、海外留学枠については全国一律の成績順から今年、州ごとの割り当てに変更された。

 ■政界でも勢力拡大
ハザラ人の進出は、議会の勢力分布にも表れている。州ごとの中選挙区制で行われた2010年の下院選の結果、現在はハザラ人が定数249のうち2割強の51議席を占める。

象徴的なのが、ハザラ人とパシュトゥン人が混住する中部ガズニ州だ。人口の45%程度とされるハザラ人が11議席中9議席を占めた。
治安が悪いパシュトゥン人居住地の投票率は低く、特に女性は、タリバーンや宗教保守派の圧力でほとんど投票に行かなかったという。一方、ハザラ人の地域では女性も含めた投票率が非常に高かった。

ハザラ人当選者の一人、ムハマド・アリフ・ラフマニ議員は「ハザラ人にとって、選挙は権利回復の手段そのもの。民主主義への期待や信頼が高い。来年の大統領選では、どの候補者もハザラ人の票を無視できないだろう」と指摘する。

高まる政治力を背景に、カブール南方のワルダック州では、王制時代の優遇政策で地主化していたパシュトゥン人遊牧民から、ハザラ人の農民が土地を取り戻すなど、権利回復の動きも起きている。

 ■国外に逃れ、近代思想持ち帰る 歴史家アスカル・ムサビ氏
もともと中部の山岳地帯を中心に住んでいたハザラ人の苦難は19世紀末のパシュトゥン人首長アブドルラフマンの時代に始まった。アフガン統一の過程でハザラ人が起こした反乱をきっかけに、ハザラ人の6割以上を殺害または国外追放し、奪った土地をパシュトゥン人に与えた。

アフガンの2大民族、パシュトゥン人とタジク人はイスラム教スンニ派が主体でコーカソイド(白色人種)なのに対し、ハザラ人はシーア派が多く、モンゴロイド(アジア系)で顔つきが異なる。

パシュトゥン至上主義を掲げたアブドルラフマンは「もしハザラ人というロバがいなかったら、人はもっと働かなければならない」と、使役用のロバになぞらえてさげすんだ。1920年代に奴隷制度が廃止されるまで使用人として売買され、それが現在まで続く差別の原因となった。

その後、70年代にできた社会主義政権時代に差別は緩和されたが、90年代後半にタリバーンが政権の座につくと、状況が悪化した。スンニ派への改宗を拒むハザラ人の虐殺が横行し、山間部に逃れたハザラ人は大量に餓死した。

カルザイ政権下でハザラ人は初めて、第2副大統領を出す国内第3勢力として認められるようになった。苦難の時代に同じシーア派のイランや世界各国に移り住んだ世代が帰国し、近代的な考えを持ち帰ったことも、民主化の時代で繁栄につながっている。【10月11日 朝日】
*****************

なお、ハザラ人が差別的な境遇にあり、虐殺の対象ともなっているのは、隣国パキスタンでも同じです。

****パキスタン:ハザラ人虐殺―世界はなぜ黙り込んでいるの*****
この10年間で、バロチスタンの首都クエッタでは、多くのハザラ人が矢面に立たされ残酷に殺された。ハザラ人は、過激派イスラム原理主義者や、市街地を徘徊する宗教組織によって民族襲撃のターゲットになっている。(中略)

ハザラ人は、様々な統治者による数多くの民族浄化の企てに直面し、アフガニスタンでの集団殺戮から逃亡し、イランやパキスタンなどの周辺国に移住した。

ハザラ民族の多く(およそ70万人)は、パキスタンで最も大きな州バロチスタンのクエッタにバローチ人やパシュトン人と共に暮らしている。昨今ではおよそ 700人ものハザラの人々が残酷にも射殺され、何千もの人が生涯治らぬ障害を負わされた。(中略)

これらのテロ組織は、匿名で攻撃しているのではなく、ハザラ民族殺戮時の悲劇的な映像のビデオを公開したり、民族に恐怖心を持たせるための公開状を送っている。

宗教活動を禁止されたテロ一派、LeJはハザラ民族に対し公開状を送りつけ、その中で「ハザラ人は殺す価値があるんだ。我々はパキスタンからこれらの汚れた人たちを一掃するだろう。」と語っている。昨今このような恐怖により、多くのハザラ人が国外逃亡している。

パキスタン政府と国連は明らかにこの野蛮な行動と、少数派の無力な人々に向けた差別に対処する気もないようだ。人々は、銃やその他の攻撃的な手段によって脅かされるのではないか、と日々心配せず、生活をしたいと望んでいるだけなのに。(中略)

人権保護の擁護者であり、若者の自立支援に従事するユースワーカー(若者の自立支援に従事)でもあるAbdul Hekmathは、On Line Opinionで下記のように語っている。

ハザラ民族の苦境は世界には見えていないのかもしれない。なぜなら、彼らはニュースのヘッドラインには掲載されないからだ。
しかし、クエッタで繰り広げられているのは、パキスタンのみせかけの平和とは裏腹の大量虐殺だ。ハザラ人たちは世界に手を伸ばし、人権団体や、政府そして平和を愛する人々に、手遅れになる前に行動してほしい、と望んでいる(後略)【2012年6月25日 グローバル・ボイス】http://jp.globalvoicesonline.org/2012/06/25/14094/
*****************

今後に向けた最初のステップ、来年4月の大統領選挙
アフガニスタンにおける前向きの変化も見られる女性の問題にしても、少数派ハザラ人の問題にしても、旧来の価値観が強いタリバンが今後どのような政治的位置を占め、どのような姿勢でのぞむのかによって決定的に左右されます。

もちろんタリバン云々以前に、現在のアフガニスタン政府がどのような方向性を見せるのかも重要です。
来年4月、カルザイ大統領の後継を決める大統領選挙が行われます。

****カルザイ氏後継、届け出20人超に アフガン大統領選****
アフガニスタンで来年退任するカルザイ大統領の後任を決める大統領選の立候補の受け付けが6日、最終日を迎え、20人以上が届け出た。投票は来年4月。閣僚経験者らがひしめき合い、混戦が予想される。

主な候補者は、カルザイ氏が擁立に動いたラスル前外相、前回大統領選で決選投票に進んだ野党党首アブドラ元外相、遊牧民系指導者のガニ元財務相、イスラム原理主義政党党首のサヤフ前下院議員ら。カルザイ氏の兄カユム・カルザイ氏も届け出た。

カルザイ氏は憲法で3選が禁じられ、今回は立候補できない。国際社会との協調や民族融和を図る一方、治安悪化や汚職の蔓延(まんえん)を招いたカルザイ路線継承の是非が争点になる。(カブール)【10月7日 朝日】
***************
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アフガニスタン  14年末以降の米軍一部存続へ向けて協議 裁判権の判断は持ち越す

2013-10-14 22:01:30 | アフガン・パキスタン

(10月12日 アフガニスタン・カルザイ大統領とアメリカのケリー国務長官 “flickr”より By U.S. Department of State http://www.flickr.com/photos/9364837@N06/10233577223/in/photolist-gAiKYB-gAitLD-gAicuw-gAi8sG-gzCpYK-gzBwfB-gy5GJZ-gtyoBy-gtyoJC-gtyEEn-gtxW7P-gA8bg8-gypvkb-gA8Fwk-gAiMfh-gA7yMm-gA7Ffb-gA7CmA)

ロヤ・ジルガを1カ月以内に招集して最終判断
アフガニスタンでは国際治安支援部隊(ISAF)の14年末までに撤退しますが、完全に米軍がいなくなったときアフガニスタンの治安がアフガニスタン治安部隊だけで維持できるのか懸念もあります。
アメリカは、米軍の一部を残すための協議をアフガニスタン・カルザイ政権と行っていますが、米兵の犯罪を裁く裁判権の問題はクリアされていません。

****米軍駐留継続へ部分合意 アフガン、裁判権は留保****
米国のケリー国務長官は12日夜、訪問先のアフガニスタンでカルザイ大統領と会談し、将来的に米軍を残すための協定締結へ向け一部で合意した。
ただ、米国が求める米兵の裁判権の問題では合意できず、最終判断はアフガンの伝統的な国民大会議「ロヤ・ジルガ」に委ねることになった。

米政府は2001年の対テロ戦開始以来、アフガンの治安を担ってきた国際治安支援部隊(ISAF)の任期が切れる来年末以降も、米軍の一部を残すため、前提となる安全保障協定についてアフガン側と1年近く交渉してきた。

アフガン側は、国境紛争を抱える隣国パキスタンを念頭に「第三国から侵略を受けた場合の米国による防衛義務」などを盛り込むよう要求。
米軍の作戦による市民の巻き添えに対し、主権侵害だと反発を強め、米政権内では完全撤退の可能性も検討されてきた。

ケリー氏は11日夜に首都カブールを電撃訪問。カルザイ氏と一昼夜にわたり、断続的に会談を続けた。記者会見でカルザイ氏は、第三国からの攻撃への対応や作戦中の主権の尊重などポイントを列挙したうえで、「ある種の合意に達した」と評価。ケリー氏も「これまで協議を続けてきた問題は解決した」と語った。

ただ、米側が駐留の前提条件としている、罪を犯した米兵に対する裁判権の放棄について、カルザイ氏が「アフガン政府の権限を越えている」として判断を留保。他の合意内容も含め、ロヤ・ジルガを1カ月以内に招集して最終判断を仰ぐ方針を示した。

ロヤ・ジルガの代表は国会議員や地方代表らで、国会内では野党を含め米軍の駐留継続を求める声が強い。ただ、03年に米軍が軍事介入したイラクでは、裁判権の問題で国会承認が得られず、米軍が11年に完全撤退した経緯もある。

最盛期に10万人まで達したアフガン駐留米軍は撤退が進み、5万人程度に半減している。15年以降の駐留規模や年数など協定の詳細は明らかになっていない。

治安が悪化しているアフガンでは米軍が完全撤退した場合、国連や日本などの援助活動が困難になるとの見方がある。中国やロシア、イラン、パキスタンなど周辺国も米軍駐留の行方を注視している。

米軍の完全撤退を求める反政府勢力タリバーンとの和平交渉は開始が遠のく可能性がある。【10月14日 朝日】
****************

なお、この件に関して【朝日】は“部分合意”という見出し表現ですが、【産経】は“大筋合意”、【毎日】は“最終合意できず”と微妙にニュアンスが異なります。

“罪に問われた米兵の訴追権を米側が持つことについて、アフガン国内では「主権侵害」との反発が強い。ケリー長官は会見で、「米兵の訴追方法は(米軍が駐留する)日本や欧州ですでに確立している。アフガニスタンだけを特別視することはできない」と述べ、理解を求めた。”【10月13日 毎日】とのことですが、日本でも米兵の犯罪が起きると裁判権のあり方が大きな問題になります。
まして誤爆による民間人犠牲などで反米感情が強いアフガニスタンでは・・・ということで難題です。

内向き志向が強まるアメリカでは、アフガニスタンがゴネるなら完全撤退すればいい・・・という声も強まるでしょう。
記事にもあるように、イラクではこの問題でアメリカは完全撤退することになりました。

カルザイ大統領としては、アメリカに妥協しずらい事情もあります。
“アフガンでは過去、クーデターや内戦の混乱のさなかに何人もの指導者が「外国の手先」との烙印(らくいん)を押されて処刑、殺害されている。カルザイ氏は自らの判断で譲歩すれば、来年の大統領退任後に自身への反発が強まりかねないことを警戒していると指摘される。”【10月14日 産経】
ロヤ・ジルガに判断を預ける形で、自らの関与はできるだけ減らしたい意向のようです。

アメリカにとっては、「第三国から侵略を受けた場合の米国による防衛義務」も難題です。
隣国パキスタンはアフガニスタンを自らの影響下に置くことを欲しており、そのためにタリバンとの関係も維持していると見られています。インドと関係が近いと言われるアフガニスタン政府とは確執もあり、将来アフガニスタンとパキスタンが衝突する可能性もあります。
「防衛義務」の規定によっては、そのときアメリカはパキスタンと交戦する事態に巻き込まれることにもなります。

アメリカは汚職・不正が蔓延し、治安も維持できてない、また、何かとアメリカを批判することも多いカルザイ政権の統治能力に以前から不信感を持っており、カルザイ大統領は国民に強い反米感情を政権維持に利用したい思惑があります。

そうした両者の不信感もあって、米軍駐留継続は難しい交渉となっています。
タリバンとの和平交渉においても、アメリカとカルザイ大統領が主導権を争っているような面もあります。
最近の下記事件なども、両者の間がしっくりいっていないことの表れではないでしょうか。

****米軍、タリバン幹部拘束=アフガン当局から横取り****
米国務省のハーフ副報道官は11日の記者会見で、パキスタンの反政府勢力「パキスタン・タリバン運動」(TTP)の幹部ラティフ・メスード容疑者を米軍が拘束したと明らかにした。TTP指導者ハキムラ・メスード容疑者の腹心だという。

ハーフ氏は、いつ、どこで拘束されたかなど詳細は明かさなかった。しかし、ワシントン・ポスト紙は10日、アフガニスタン当局者の話として、アフガン政府の車列で同国東部を移動していたラティフ容疑者を米軍部隊が無理やり連れ去ったと報じた。

アフガン情報機関はラティフ容疑者を和平協議の交渉役にしようとし、数カ月に及ぶやりとりの末、同容疑者が情報機関要員との面会に同意。その会合に向かう途中で連れ去られたという。米軍の介入を知ったカルザイ・アフガン大統領は激怒したと同紙は伝えている。【10月12日 時事】 
*******************

拡大するタリバンの勢力
一方、タリバン側の動向については、アメリカの増派を伴う大規模作戦で一時抑え込まれたその勢力がまた拡大しつつあるとも報じられています。

****タリバーン、勢力じわり****
アフガニスタンでは、米軍主導の国際治安支援部隊(ISAF)が来年末の任期切れを前に撤退作業を進めている。しかし、敗走したはずのタリバーンはじわじわと勢力を広げる。

首都カブールと第2の都市・南部カンダハルを結ぶ国道は、01年末のタリバーン政権崩壊後、復興の目玉として米国、日本などが資金を出して修復工事が行われ03年に完成。しかし、間もなくタリバーンの影響下に入った。国連や国際NGOの車がほとんど入れない危険地帯となったままだ。

ここを走るのは、住民にとっても命がけだ。国道の中間地点にあるガズニ州出身のカブール大学の男子学生サディキさん(25)はこの道をバスで帰省する際、2回に1回はタリバーンの検問に遭うと証言する。

「タリバーンは政府関係者を捜して殺す。彼らが嫌う思想を学んでいるという理由で学生も敵と見なしている。学生証はもちろん、本を持っているだけでアウト。携帯電話を見つけるとわざわざ登録されている番号にかけ、持ち主の素性を確認する念の入れようだ」

故郷の村では最近、バスから連れ去られた男性の遺体が見つかった。鼻と耳が切り落とされ、「政府と通じた者はこういう運命が待っている」と警告文がはられていた。

 ■地元警察の死者増加
ISAFに代わりタリバーンとの戦闘や治安維持の前面に立つようになったのは、アフガンの国軍や警察だ。計35万人でタリバーンの兵力の10倍程度とみられるが、自爆テロやゲリラ攻撃を繰り返すタリバーンに苦戦を強いられている。

民間団体「アイカジュアルティーズ」のまとめでは、年間500人を超えていた外国部隊の死者数は昨年402人、今年は8月までに122人と減少した。一方でアフガン内務省によると警察官の死傷者は今年既に1500人を超えた。

犠牲者の大半は、地方警察官と呼ばれる地元採用組だ。アフガンでは03年から軍閥配下の兵士の武装解除が進み、日本政府も1億ドル以上を拠出。約6万人から武器を回収し、職業訓練を施して社会復帰させた。

しかし、農村部でのタリバーンの勢力拡大に対抗するため、村人に再び武器を与え警察組織の一部とする制度が10年に導入された。地方警察官は一部の州でタリバーンとの戦闘で成果をあげる一方、住民への暴力行為が頻発。南部を中心に集団でタリバーンに寝返る例も報告されている。

米国やカルザイ政権は来年末以降も米軍の一部を残すかどうか協議している。タリバーンとの和解も模索するが、合意に至らぬまま時間切れが迫る。(カブール=武石英史郎)【9月11日 朝日】
******************

西部ヘラートのアメリカ総領事館も襲撃を受けています。

****アフガニスタン:米国総領事館襲撃 タリバンが犯行声明****
アフガニスタン西部ヘラートで13日、武装集団が米国総領事館の入り口を襲撃し、治安部隊と交戦した。現地からの報道によると、アフガン人警官2人と警備員1人が死亡、約20人が負傷した。在カブール米国大使館によると、総領事館の職員は全員無事という。旧支配勢力タリバンが犯行声明を出した。

アフガニスタンでは来年末までに米軍など駐留外国軍が任務を終了し、撤退することになっている。だが、タリバンは、首都カブールや国内南部や東部だけでなく、これまで比較的安全とされた北部や西部での攻撃を強めている。アフガン戦争は来月で開戦から12年になるが、治安情勢は厳しさを増している。

ヘラートでは2011年に駐留外国軍からアフガン軍・警察に治安権限が移譲された。だが、今回の襲撃を受け、駐留米軍が総領事館に配備された。【9月14日 毎日】
*****************

何かと批判が多いカルザイ政権ですが、タリバン抜きの政治体制のもで女性の社会進出や、少数民族の権利拡大などでは、一定に前進も見られます。ただ、当然に抵抗もあります。
また、タリバンとの和解が成立しないまま時間切れで米軍撤退となったとき、タリバンの復権という話になると、情勢はまた一変します。

本当は、そのあたりの話をするつもりでしたが、前置きが長くなったので明日以降の別機会に。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アメリカ  近づく債務上限引き上げ期限 機能麻痺した米議会 17日以降何が起こるのか?

2013-10-13 23:01:48 | アメリカ

(9月24日 医療保険改革法関連予算の打ち切りに向け、審議妨害のための21時間に及ぶ長時間演説を行う共和党ティーパーティー系のテッド・クルーズ上院議員。演説と言っても、児童文学作家ドクター・スースの絵本を読んだり、テレビ番組の話をしたり・・・というものですが。日本の牛歩戦術みたいなものです。http://www.freewoodpost.com/2013/09/25/ted-cruz-jesus-died-to-save-himself-not-enable-lazy-followers-to-be-dependent-on-him/)

オバマ大統領、下院共和党の“6週間”案を拒否
オバマ大統領・与党民主党と野党共和党の対立が膠着しているアメリカでは、周知のように2014会計年度暫定予算案が成立せず政府機関の一部閉鎖(シャットダウン)が続いていますが、その影響は世界規模になると危惧されている債務上限引き上げ問題の期限とされる10月17日が近付いています。

下院で多数を占め、オバマ大統領の核心施策である医療保険制度改革に反対する共和党側は、6週間の短期に限った上限引き上げを認めるかわりに、支出削減のための財政協議機関設置を求める提案を行っていましたが、オバマ大統領はこれを拒否してるようです。

****米大統領、財政協議で下院野党案拒否 上院が焦点に ****
オバマ米大統領が野党共和党との財政協議で、ベイナー下院議長の譲歩案を拒否したことが12日明らかになった。

共和党が多数を占める下院との協議は行き詰まり、連邦債務の上限引き上げと政府機関の再開に向けて焦点は上院に移った。与野党の上院トップは同日会談し、協議を本格化させた。

米株式市場が取引を始める週明け14日までの妥結を目指すが、合意の見通しは立っていない。債務上限引き上げの期限とされる17日が迫り、与野党間の溝が埋まらなければ金融市場の世界的な動揺が予想される。

ベイナー議長ら下院共和党指導部は譲歩案で、債務上限を6週間分だけ引き上げ、政府機関も再開させる代わりに、社会保障関係費の削減を柱とした超党派による財政協議の機関設置を求めた。

米メディアによると、ベイナー議長は12日の議員会合で、オバマ政権側が譲歩案の受け入れを拒否し、交渉は停止したと説明した。オバマ氏は上限引き上げの期間が短いことなどに難色を示していた。

与党民主党のリード院内総務は、共和党のマコネル院内総務との会談後に「48時間以内に合意したい」との考えを表明した。

上院は12日の審議で、債務上限を来年末まで無条件で引き上げる法案の採決に向けた手続きを進めようとしたが、採決に至らなかった。オバマ大統領はリード氏ら上院民主党指導部と会談し対応を探った。【10月13日 日経】
*****************

共和党上院においては、“現在の資金水準で政府を6カ月間程度再開させ、各省庁に減額された資金での業務遂行を調節する柔軟性をより多く与えることを柱としたスーザン・コリンズ上院議員(メイン州)の提案について細部の詰めを行った。いずれにしろ、この上院案は医療保険改革に盛り込まれた医療機器への課税の廃止または延期を求め、1月末まで債務上限を引き上げる内容となっている。”【10月12日 ウォール・ストリート・ジャーナル】といった案の検討も報じられています。

オバマ大統領は“6週間”案に乗り気だとも当初報じられていました。
医療保険制度改革を骨抜きにするような支出削減協議をセットにした短期間の上限引き上げでは、問題をほんの少し先送りするだけであり、共和党側に“譲歩した”実績を与えることになる分だけ、オバマ大統領にとってはデメリットが大きいように思えます。


債務上限問題・・・何か起きるか、はっきりしたことは誰も分からない
毎度のアメリカ財政問題ですが、シャットダウンの問題と、債務上限引き上げが認められないことによる債務不履行(デフォルト)について、概要を整理したのが下記記事です。

****政府機関閉鎖より怖いデフォルトの足音****
米財政 債務上限引き上げに失敗すれば世界経済は計り知れないダメージを受ける

1日に始まった米連邦政府機関の一部閉鎖と、17日に迫る連邦政府の債務上限問題。2つの問題は混同されがちなので、ここで少し整理しておこう。

政府の一般歳出には義務的経費と裁量的経費がある。義務的経費は制度的に支出が義務付けられている経費で、基本となる法律が変わらない限り支出される。社会保障給付などの公的扶助費は義務的経費の一部だ。

これに対して、裁量的経費は政策的な判断で見直しができ、毎年議会の承認が必要だ。議会が合意できないときは、前年度と同水準の暫定予算を執行する「継続予算決議」が採択されるのが普通だ。
今回政府機関の閉鎖が起きたのは、この継続予算決議が採択されなかったためだ。

共和党優位の下院は、医療保険制度改革法(オバマケア)の施行を妨害する継続予算決議を採択し、民主党優位の上院は、妨害部分を取り除いた決議を採択して下院に送り返してきた(アメリカの議会は上下両院の議決が異なるとき、どちらかが優越するという決まりがない)。

こうして期限内に継続予算決議が採択されず、裁量的経費が払えなくなり、政府機関の閉鎖が始まった。
ただし行政管理予算局(OMB)が事前にマニュアルを配っていて、必要最低限の業務(刑務所の運営や空港業務など)は継続されている。
つまり政府の閉鎖は問題だが、とんでもないことにはならないよう(例えば受刑者が刑務所から出てきたりしないよう)手段が講じられている。

だが、債務上限問題は違う。3つの危険な選択肢 連邦政府の債務残高が上限に達したら、政府は債務不履行
(デフォルト)に陥る、とよく言われる。
だが実のところ、何か起きるか、はっきりしたことは誰も分からない。なぜならそんなことは今までに一度も起きたことがないからだ。

通常、財務省は議会に言われた額の小切手を切り、議会に言われた税金を集め、その差額を借金(国債の発行)で賄う。ただし借金できる額は、法律で上限が設けられている。だから17日に手元資金がなくなったら、財務省は歳出と歳入の差を埋める資金を借りられなくなる。

このとき取り得る選択肢は、基本的に3つある。
1つ目は、バラクーオバマ大統領が政府の支払い義務は債務上限に優越すると判断して、国債発行を命じること。
2つ目は、オバマが財務省に一部の債務の支払いを命じること。
3つ目は一切の支払いをしないことだ。

一般に、第3の選択肢を選んだ場合、アメリカの国債(金融市場では最も安全な投資対象とみられている)は利払いがストップして、世界の金融市場は大混乱に陥ると考えられている。

第1の選択肢を取った場合でも、市場は最終的にデフォルトに陥る可能性が高いと見なし、激しく動揺するだろう。一方、財務省には債務の順位を決めるルールがないから、第2の選択肢も現実的ではない。

政府債務が上限に達したら、誰が何をするべきなのかも、はっきりしない。OMBのマニュアルもない。ただ恐ろしく不確実な時代がやって来る。

政府機関の閉鎖はいろいろな不便を生じさせるが、70年代と80年代にはよくあった。連邦政府の職員には給料が支払われないからワシントンでは一大事だったが、長引かない限り国全体を揺るがすことはない。

債務上限の突破はまったく別の問題だ。世界の金融市場は大パニックに陥り、世界的な恐慌が起きるのは確実、とまでは言えないが、そうならないとも言い切れない。何か起きるかは誰にも分からない。それはある意味で一番恐ろしいことだ。【10月15日号 Newsweek日本版】
*************

ティーパーティー:債務上限を引き上げなくても経済と市場にとって大惨事にはならない
債務上限問題は“未知の領域”であり、何が起こるのか誰もはっきりわからない・・・ということで、一連の財政問題で激しく抵抗している共和党の保守強硬派であるティーパーティー議員は、“言われているようなデフォルトは起きない、大統領側の脅しに過ぎない”としています。

****デフォルトの脅威にも動じないティーパーティー****
ティーパーティーの支援を受けている共和党のティム・ヒュールズキャンプ下院議員は落ち着いた様子で、連邦議会が来週末までに米国の債務上限を引き上げられなかった場合に生じかねない米国の債務デフォルトの脅威を一蹴する。

「ウォール街がこうした米国債の取引でカネを稼いでいるのは分かっているが、一般市民はどうか? 一般市民には何の影響も与えない」。カンザス州西部の平野部を選挙区とするヒュールズキャンプ議員は本紙(英フィナンシャル・タイムズ)にこう語った。

同議員は政府の歳出を削減する必要性に言及して、「一般市民が最も気にしているのは長期的な構図、つまり、10月17日に何が起きるかではなく、今後10年間で何が起きるかということだ」と言う。

「債務返済を優先すれば、デフォルトは避けられる」
ヒュールズキャンプ議員は、10月17日以降、米国は資金が枯渇してすべての支払い義務を果たせなくなると繰り返し警告していることについて、ジャック・ルー米財務長官をほとんど嘲っている。

こうした支払い義務は様々で、債務の利払いから年金給付、請負業者への支払いまで含まれる。
「脅し作戦は明らかに、あまりうまくいかなかった」と同議員は言う。「財務長官の言葉を真に受けるのは難しい」

バラク・オバマ大統領は、見返りの条件を付けずに政府の債務上限を引き上げる「クリーン」な法案を求めている。これに対する共和党の反対論を動かす要素の1つは、債務上限を引き上げなくても経済と市場にとって大惨事にはならないという、保守派の間で広く浸透している見方だ。
彼らは、財務省は難なく他の支払い義務より債務返済を優先して、デフォルトを回避できると主張している。

オバマ政権、民主党議員、共和党の一部の主流派議員と多くの財界リーダーはこうした判断を、よくても慢心、最悪の場合は無謀だとして退ける。

財務省はまだ、10月17日以降の非常事態計画を明らかにしていない。だが、共和党の保守派を除けば、財政をうまく管理し、返済リスト上で国債保有者を他の債権者より優先させる政府の能力を試す意欲はほとんどない。
一部の請求書が未払いのままになれば、債務返済が滞る前に市場が急落し始める恐れがあるからだ。

共和党のジョン・ベイナー下院議長ですら、10月6日に、債務上限を引き上げられなければ、深刻な市場崩壊と景気後退につながりかねないという懸念に同意すると語った。

しかし、多くの共和党議員は、そうした見方にますます懐疑的になっている。「財務省のデフォルトという話はナンセンスだ。私の見るところ、オバマ大統領はあれほど賢いのだから、いざとなれば賢明になるだろう」。共和党のジョー・バートン議員(テキサス州選出)は今週、CNBC放送でこう語った。

同議員は10月17日以降の影響を、「全額支払わなければならない請求書もあるが、一部だけ支払う請求書もある」家計のやりくりの問題と比較してみせた。「債務の利払いはきちんと払わねばならないと思う。社会保障の給付金も払わねばならないだろう。だが、エネルギー長官の出張費を全額払う必要はないと思う」

今週公表されたピュー・リサーチの世論調査では、共和党を支持する有権者の過半数――54%――が、10月17日の期限を過ぎても大きな問題は生じないと考えていることが分かった。これに対し、危機を回避するためには債務上限の引き上げが不可欠だと考える共和党支持者は36%だった。

全体的には、米国人の47%が期限内に債務上限を引き上げることが重要だと考えているのに対し、39%が期限を越えても問題ないと考えていた。

10月17日以降どうなるか・・・
10月17日以降の状況――この日に米国政府の手元資金は300億ドル前後になる――に関する最も詳細な分析の1つは、シンクタンクの超党派政策センターがまとめたものだ。

同センターの試算では、120億ドルの社会保障費が給付期限を迎える寸前の10月22日から、政府は資金が足りずに一部の支払いが滞る可能性があるという。
債務については、60億ドルに上る最初の大きな利払いが10月31日に待ち受けている。
550億ドル前後の支払いをカバーしなければならない11月1日までには、米国はほぼ確実に一部の支払いが滞っているという。【10月10日 フィナンシャル・タイムズ】
*******************

一言で言えば、「大統領、財務省がなんとかするさ。大した問題にはならない」という話ですが、なんとかできなかった場合どうするのか?・・・世界経済をリードする立場にありながら、非常に無責任な見識です。
問題が起きそうだという不安感が広がるだけで、市場は大きく混乱します。
“「金融市場が凍結し、ドルが急落して金利が急騰し、世界中に悪影響が波及する」とした上で「2008年の金融危機(リーマン・ショック)以上の不況に陥るおそれがある」(アメリカ財務省報告書)”【10月4日 朝日】

麻生太郎財務相「デフォルトになれば米国債が紙くずになる」】
米国債の債務不履行がおきそうだという懸念から市場が混乱すれば、大きな被害を受けるのは、中国と並んで米国債を大量保有する日本です。

****110兆円保有の米国債は? 日本にも暗い影 10日からG20****
米政府債務問題をめぐり、国内でも経済への悪影響を懸念する声が出始めている。

日本の米国債保有額は7月末で1兆1354億ドル(約110兆1338億円)。中国に次ぐ世界2位の規模だ。
財務省によると、平成23年度末の外国為替資金特別会計に占める外国債の金額は、前年度比9兆7245億円増の64兆4339億円で、米国債がかなりの割合を占めるとみられる。三菱東京UFJ銀行など3メガバンクだけでも計約8兆円程度の米国債を保有しているもようだ。

今後、米議会が債務上限の引き上げで合意できず、米国債のデフォルト(債務不履行)や利払いが滞る事態になれば、損失リスクを回避しようと投資家が米国債を売り浴びせ、価格が下落(金利は上昇)する可能性がある。
この場合、日本でも国の債券運用益が減少するほか、銀行は多額の含み損を抱えるおそれがあり、「影響は非常に大きい」(麻生太郎財務相)。

動揺は金融商品にも広がる可能性も。市況の好転で銀行や証券会社では投資信託の販売が伸び、特に高利回りの新興国を投資対象とした投資信託が人気だが、米国債が不安定になれば「投資意欲そのものが大きくそがれる」(大手証券)。米国債で運用する米ドル建ての生命保険も、金融市場が動揺し、円高に巻き戻せば、受け取る保険金が減り、資産形成に思わぬ影響が出る可能性がある。

一方、生命保険各社は資産運用で戸惑いが広がる。生保各社には、資産の一部を国債より利回りが高い米国債に振り向ける動きが出ているが、米国債の変動率が高まれば、投資対象としての魅力が薄れるため、「運用益を確保したくても、投資先がなくなる」(運用担当者)との警戒感が強まっている。【10月7日 msn産経】
****************

10日開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、世界を揺るがすアメリカの財政不安に関心が集中しました。

****G20 危機感を共有 正念場****
・・・・
「米国の危機は世界の危機だ」
「デフォルトに陥れば、世界経済は深刻なダメージを受ける」
国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事、カナダのフレアティ財務相、フランス中央銀行のノワイエ総裁ら、G20に参集した各国・国際機関の要人は、異口同音に米国へ強い警告を放った。

とりわけ米国債を大量に保有する日本や中国にとって、万一にもデフォルトすれば深刻な影響が出る。
麻生太郎財務相は、米議会との調整を急ぐルー米財務長官と膝詰めで会談し、「米国だけの問題ではない」と危機感を直接訴えた。
麻生氏は「みな考えていることはほぼ同じ。デフォルトになれば米国債が紙(くず)になるのだから」と、会議場に張り詰めた緊張感を表現した。(後略)【10月12日 産経】
***************

【「共和党に非がある」53%
“10日に公表された世論調査では、茶会の主張を支持する回答者の割合は過去最低の21%を記録した。”【10月13日 産経】ということで、ティーパーティーの強硬姿勢が広く一般に支持されている訳ではあります。

しかし、共和党議員にとっては、共和党内の予備選挙を勝ち抜くためには、ティーパーティーの支持が必要という現実もあります。

“共和党の次期大統領候補と目される有力議員らが、医療保険改革(オバマケア)に反発する草の根保守運動「ティーパーティー(茶会)」との距離感を探っている。茶会の支持は党内での候補者選びを勝ち抜くために不可欠である半面、茶会の強硬路線に対する世論の反発は根強い。茶会に接近し過ぎれば支持基盤拡大が妨げられる懸念もあり、対応に苦慮しているようだ。”【同上】

一般国民はこの混乱について、共和党の姿勢に厳しい目を向けています。
****米政府機能停止「共和党に非」53%…世論調査****
オバマ米大統領と野党・共和党の対立で新年度予算が成立せず、米政府機能が一部停止している問題について、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルとNBCテレビは10日、「共和党に非がある」と回答した人が53%に上るとの合同世論調査を発表した。

「オバマ大統領に非がある」と回答したのは31%、「双方に非がある」は13%で、国民が共和党への批判を強めている実態が明らかになった。【10月12日 読売】
**************

医療保険制度改革については、その実績を問う形でオバマ大統領が再選されたことで、国民によってとりあえずの方向性が示されています。
にもかかわらず、予算、アメリカ経済、ひいては世界経済を人質にとって抵抗する共和党保守強硬派の対応は議会制民主主義の常道を逸脱したものです。

ティーパーティー議員が今後対応を改めることは期待できません。
上記のような世論動向を踏まえて、共和党内部で良識ある選択ができる議員が出てくることを期待します。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国・台湾  政治対話に向けた動き

2013-10-12 22:41:41 | 東アジア

(中台間を結ぶ高速旅客船「海峡号」 http://www.nhjd.net/thread-3083-1-1.html)

【「(中台の政治問題は)子々孫々に先送りすべきでない」】
中国が国家主権および領土保全の観点で最重要課題とみなす核心的利益には、台湾、チベット、新疆ウイグル、南シナ海、尖閣諸島などの問題がありますが、なかでも台湾の帰属は現国家成立の経緯からどうしても譲れない問題です。
台湾からすれば、中国との関係は国家の存亡そのものになります。

****台湾:中国軍が「20年に台湾への侵攻能力完備」と報告書****
台湾国防部(国防省)は8日、2013年版「国防報告書」を発表した。

報告書は中国軍について「2020年には台湾への全面的な侵攻能力を完備する」と警鐘を鳴らした。前回(11年)の「20年までに台湾への大規模作戦が可能」とした表現から、さらに踏み込んだ。

報告書では、中国の軍備拡張に伴う戦力強化を挙げ、「『台湾は中国の核心的利益であり、武力使用を放棄しない』と中国は強調しており、中台間に軍事衝突の危機はなお存在する」と指摘した。

昨年の中国の国防費は1064億ドルと台湾の約10倍で、ハイテク兵器やサイバー攻撃部隊の技術力が向上。戦闘機やミサイル部隊を沿海部に配備し、台湾に向けたミサイルは1400基余りに上るという。

また、海軍の遠洋進出や陸海空軍による合同上陸訓練を展開していると指摘。無人機などによる偵察能力の強化も挙げている。【10月8日 毎日】
******************

もちろん、中国にとって台湾進攻は軍事的作戦としての問題以外に、台湾をバックアップするアメリカとの関係もあって容易に動けるものではありません。

武力侵攻の可能性は潜在的圧力として常に残しつつも、先ずは経済的な関係を強め、やがては政治的な統一問題へと進み、将来は香港のような「一国二制度」的な対応で台湾を取り込んでいこう・・・というのが現実的な中国の対応となっています。

中台は1949年の分断後、当局間の直接協議は行われていません。
台湾では「海峡交流基金会」、中国では「海峡両岸関係協会」という「民間」の窓口が開設され、93年に初めて双方の窓口機関の「民間」トップ同士が会談し、窓口機関を通じた間接協議が行われています。
08年の国民党政権成立によって、一時中断していた両者の接触が再開・加速しています。

周知のように、台湾で国民党・馬英九政権が成立して以来、台湾は経済的活路を中国に求めており、その経済関係は急速に深まっています。

これまでは政治的な統一に関する問題については、台湾国内世論の反発もあって台湾・中国双方とも深入りは避けてきましたが、ここにきて、政治レベルでの関係強化を模索する動きも表面化してきています。
先のAPECでは、中台の両「官庁」トップの初顔あわせが実現しました。

****APEC:中国と台湾が急接近 政治レベル交流の可能性も****
インドネシア・バリ島で開催中のアジア太平洋経済協力会議(APEC)を舞台に中国と台湾が急接近した。

中国の習近平(しゅう・きんぺい)国家主席は6日、台湾代表の蕭万長(しょう・ばんちょう)前副総統と会談。中国で台湾政策を担当する張志軍(ちょう・しぐん)・国務院台湾事務弁公室主任と、台湾で対中政策を主管する王郁※(おう・いくき)・大陸委員会主任委員(閣僚)も同席し、中台の両官庁トップも初めて顔を合わせた。

新華社通信によると、習主席は「一つの中国」の枠組みを前提としつつ「両岸関係で処理が必要な問題については双方の担当部門が会談してもよい」として、対話の強化に意欲をみせた。「(中台の政治問題は)子々孫々に先送りすべきでない」とも呼び掛けた。

また、張主任は会談終了後、王主任委員に「訪中を歓迎する」と語りかけ、閣僚級の交流を提案した。中国と台湾の交流はこれまで民間団体を窓口にする形を取っており、今回の会談を機に政治レベルでの交流に格上げされる可能性もある。

台湾の馬英九(ば・えいきゅう)政権は、来年中国で開かれる予定のAPEC首脳会議の場を利用し、中台首脳会談を実現したいとの思惑があるとみられる。一方、中国側にも、馬政権の融和姿勢を背景に台湾政策を一段と進める狙いがありそうだ。 ※は王ヘンに奇 【10月8日 毎日】
*****************

注目される来年の北京APEC
中国は、“中国が主催国として北京で開く来年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、政治対話に応じることを条件に台湾の馬英九総統を招待すると示唆した”【10月8日 産経】とのことで、議長国として習近平主席が主導権を握る来年の北京APECで、国際社会に統一工作の進展を誇示する狙いが指摘されています。

来年中国で開かれる予定のAPEC首脳会議が重視されるのは、以下のような中台の微妙な事情もあります。

****北京APECにらむ****
・・・・背景には、台湾の馬英九(マーインチウ)政権のもと、関係改善が進んだ事情がある。
馬氏は中台関係の改善で歴史に名を残そうとしていると見られている。
中国にも改善を政治対話につなげたい思惑がある。「中華民族の復興」を掲げる習氏は両岸問題に精通し、関係進展への意欲は強いとされる。

関係者が注目するのが、来年の北京APECでの中台首脳会談の可能性だ。APECは経済体の集まりとされ、台湾も1991年から「中華台北」として加わる。ただ、総統は首脳会議に出られず、経済閣僚や元高官が代表を務めてきた。

中国は台湾と「国と国」の関係との印象を与えるのを嫌い、第三国での首脳会談は受け入れない方針。
台湾では首脳会談だけのために総統が訪中すれば、「中国の一部と認めた」と批判されかねない。
APEC代表としての馬氏の訪中は、双方が受け入れやすいとの見方が出ている。

ただ、会談実現へのハードルが高いのも事実だ。今回、王氏と張氏の単独会談は中国側の反対で実現しなかった。中台が対等と受け止められるのを恐れたと見られる。代表会談でも「首脳会談について話はしなかった」(蕭氏)という。

首脳会談に踏み切れるほど台湾の対中感情が好転しているかもはっきりしない。環境が整わないまま会談すれば強い批判が噴出する恐れも。馬氏の支持率は低迷し、世論を二分するこの問題を動かす力はない、との見方もある。【10月7日 朝日】
*****************

今後、中台政策当局間で定期会合
当然、この問題は台湾側では重大な関心と警戒を呼んでいます。

****官職で呼び合い」台湾評価 内政混乱 前進は困難****
APEC首脳会議を利用する形で、台湾と中国双方の政策部門トップである台湾の王郁●・行政院大陸委員会主任委員と、中国の張志軍・国務院台湾事務弁公室主任が初めて対面し言葉を交わしたことを台湾メディアは大々的に報じている。

今回の顔合わせでは互いに「主任」「主委」(いずれも閣僚級)と官職の肩書で呼び合い、張氏は「次は大陸で会いたい」と王氏に中国訪問を呼びかけた。

台湾の馬英九政権は2008年の政権発足以来、経済を軸に対中関係改善を進めてきた。
今回、台湾を「不可分の領土」とする中国が、台湾の担当者を官職の肩書で呼んだことは、台湾の「互いの統治権を否定せず関係を前進させるべきだ」の主張に沿うものと台湾側は歓迎。台湾メディアは「重大突破」と報じた。

しかし野党は「統一への加速」と強く反発している。

来年の北京APECに馬総統が出席し、中台首脳会談の実現につながる布石との見方も浮上する中、台湾では6月に締結した、中台相互の市場を開放するサービス貿易協定の立法院(国会に相当)での承認も進んでいない。

立法院長(国会議長)の司法干渉疑惑を機に内政は混乱し、民放世論調査では馬政権の支持率は11%と就任以来最低レベルで推移している。

来年末には統一地方選も控えているため、「野党の反発の中、中台両岸の政治対話の飛躍的な前進は困難」(与党・中国国民党幹部)との見方が根強い。●=王へんに奇 【10月8日 産経】
*******************

なお、“立法院長(国会議長)の司法干渉疑惑を機に内政は混乱”云々については、いささか国民党内部の「コップの中の嵐」的な騒動ですが、手打ちがなされたとも報じられています。

****台湾:馬総統と立法院長が和解の握手? 「双十節」式典で****
馬英九総統は10日、辛亥革命を記念した「双十節」の式典で、司法介入疑惑を巡り自ら辞任を迫った王金平・立法院長(国会議長)と笑顔で握手を交わした。台湾メディアは、激しい対立が続いてきた両氏の和解の証しではないかと注目している。

王氏と馬総統は式中、5回も笑顔で握手。周美青・総統夫人をはさんで座り、笑顔で言葉を交わし、声を掛け合って一緒に帽子をかぶる姿もみられた。式後、王氏は「氷がないのだから破るものもない」と語り、両者は対立していないことを強調。式場に入る前にも2人で何度も握手したことも明かした。

国民党から党籍剥奪処分を受けた王氏だが、党籍維持確認を求めた仮処分で下級審が維持を認め、馬総統は5日に最高法院(最高裁)に再抗告しないと発表。王氏は任期中、院長にとどまることが確実となった。【10月10日 毎日】
*********************

話を中台関係に戻すと、台湾の国民党・馬政権は、中国側の誘いを受け、政策当局間の定期会合を行っていく意向のようです。

****台湾「中国当局と定期会合」 政治対話踏み込みか****
台湾当局で対中政策を担当している行政院大陸委員会の王郁●(=王へんに奇)主任委員(閣僚級)は11日、中国の対台湾政策当局との間で今後、定期会合を行いたいとの意向を表明した。

王氏は、アジア太平洋経済協力会議(APEC)が開かれていたインドネシアのバリ島で、中国の国務院台湾事務弁公室の張志軍主任(同)と中台の主管当局高官として初顔合わせしたが、帰台後の同日の会見などで「(中国側との)相互訪問は一度きりにしない」と述べた。

双方が政権を認め合っていない中台だが、民間が中心だった経済交流のみならず、今後は当局間の直接交渉によって政治的な課題に踏みこむ可能性がある。

一方、中国側の張氏は同日、上海市内で開かれた中台政治関係について討議する初の「両岸平和フォーラム」の席で、「政治対立は棚上げが可能だが、いつまでも完全に回避できない」などと強調し、台湾側に政治対話に応じるよう求めた。張氏は王氏の大陸訪問を歓迎する意向も示した。中国は経済交流をステップに中台統一をめざしている。

台湾側の王氏は、張氏との主管当局のトップとしての初対面で、それぞれ「主委」「主任」との官職で呼び合ったことも強調。中台の高官や当局者は互いを「先生」など役職抜きで呼び合うのが通常で中国側があえて官職を容認して、台湾側に政治対話で譲歩を求めたとみられる。【10月12日 産経】
*****************

難しい「現状維持」】
政治的レベルでの統一工作を進めていきたい中国側の意向は明瞭ですが、その流れに乗る台湾・国民党政権の考えにはよくわからないところもあります。

経済・政治において中国と台湾では影響力に差がありすぎます。接近すればするほど、両者間の引力は台湾を中国の中に取り込む形で強く作用します。
将来的に香港のような「一国二制度」で吸収されることを是としている者は多くはないでしょうが、関係を強化しながら台湾が望むような距離で、互いの主権を認め合うような形で止めるのは相当に難しいように思えます。
官職で呼び合ったことを喜んでいる場合ではないように思えるのですが・・・。

台湾の希望は「現状維持」が多いと言われていますが、「現状維持」のためには高度な政治的配慮が必要とされます。

****習近平体制でさらに不透明になる中台関係 ****
・・・台湾の人たちの間では、このような状況下で、二つの相反する傾向が見られるようになっている。
「自分たちは台湾人であり、中国人ではない」と考える台湾人はアンケートでは着実に増えている。
そして、大多数(61%)は「現状維持」に賛成し、「独立」賛成が15%、「統一」賛成が10%である。 

他方、一つの注目すべき最近の調査によれば、52%という高い数字の台湾人たちが、台湾は将来中国に統一されることになるだろう、と予測している。

つまり、台湾の人たちの望む台湾の姿と彼らの予測する将来図は分裂的状況を示していることになる。
一方では、台湾人のアイデンティティーを固め、当面、現状維持を続けることを希望しつつ、他方、中国への依存度の大きさ、中国の強大な影響力の前に不安感にとらわれつつあることを示している。(後略)【7月15日 岡崎研究所 WEDGE】
******************

台湾の人々自身が、「現状維持」の難しさはよく認識しているようです。

****高速旅客船:台北と中国結ぶ「海峡号」が就航****
台北と中国福建省平潭(へいたん)島を結ぶ高速旅客船「海峡号」(6556トン)が就航した。中台間の旅客船で台北便は初めて。

中国は同島で貿易やハイテク産業などの「総合実験区」構想を進め、台湾に「共同開発」を呼びかけている。
2011年には平潭−台中便が就航しているが、主要都市・台北への就航で、中台交流が加速するとみられる。

台北便は週2便で、約170キロを約3時間で結ぶ。定員750人。第1便は9日、台北郊外の台北港に到着し、中国の団体旅行客ら約330人が降り立った。【10月11日 毎日】
****************
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする