藤沢周平さんの時代小説を読んでいますが、そこに描かれた江戸時代の藩のことに関心を持ったので、関連した本書を読んでみました。藤沢周平が描く「海坂藩」のモデルは、庄内藩(別名は鶴岡藩)です。
表紙
(大まかな目次)
第1章 藩の基礎知識
幕藩体制と大名統制、年貢収入に頼る藩経済の仕組み
第2章 藩の運命を決めた関ケ原大戦
西軍側の改易減封は九十三家、石高にして六百三十万石
第3章 お家騒動と改易・減封
江戸時代の二百六十年で二百藩以上が消滅
第4章 藩政改革の成功と失敗
銀主を確保し利益をあげた薩摩藩、越荷方を設置した長州藩、海運業を目論んでいた土佐藩
第5章 世間を騒がせた驚きの事件簿
幕藩体制の崩壊を予感させた三方領知替え
第6章 江戸時代の藩教育
水戸学の発信地となった弘道館、生徒の自主性を重んじた致道館
第7章 幕末動乱と戊辰戦争で揺れる藩
新政府に転じた譜代大名・彦根藩、佐幕派をことごとく粛清した徳川慶勝(尾張藩)
第8章 廃藩置県による藩の終焉
薩長のクーデターによる藩の消滅
(感想など)
エピソードを中心とした記述で、わやりやすく、面白い本でした。第4章では、藩政改革に成功したところが、徳川幕府倒幕、新政府の主人公になっていくので、経済力の差が、そのまま力の差になっていることがよくわかりました。
幕末の戊辰戦争で、新政府側につくか、徳川幕府側につくかで、お家存続に向けて、各藩の内部で抗争まで起きていた事実を、新たに知りました。所領を新政府に安堵されたものの、薩長の主導により、廃藩置県となるので、結果論ですが、抗争の当事者が気の毒に思えました。
小説のモデルともなった庄内藩ですが、1775年には藩政改革に商人を登用し、改革を成功させ、1840年に幕府から下された越後長岡への転封命令が領民の反対により破棄されることになったり、藩校の致道館(1805年設置)では、生徒の自主性を重んじる教育を行うなど、ユニークで、驚きました。
【藩の実力格付けランキングが掲載されています。】
これがなかなか面白かったです。本書には、300位まで掲載されています。江戸城控間の区別が、大名の格付けを浮き彫りにしていて、目を惹きました。
1位は加賀藩、2位は薩摩藩。
3位から5位(5位は二つ)まで。第4位の佐賀藩が意外に上なので驚きました。尾張藩は、幕末に、いち早く新政府側についた藩なので、御三家といっても、それぞれですね。
鶴岡藩(庄内藩)は、第25位です。米沢藩は第19位で、この二つの藩は、藤沢周平さんの小説のモデルともなっています。
信濃(長野県)は小藩ばかりだったので、ようやく第32位に松代藩が出てきます。なお、庄内藩の酒井家は、松代から庄内に入っています。それに同行して、松代から足軽200人がいった(200人町という地名があるそうです)とか、寺院が移転していったとかで、かすかにつながりもあったようです。
(著者略歴)
庄内藩もそうですし、鶴岡の大山地区の天領の件。そして秋田県の矢島藩(四国生駒藩のお家騒動から)など、藩のことに興味を持ち始めていました。
早速読んでみます。
この本ですが、新書ということもあってか、あまり深みはありませんが、江戸期の幕藩体制の概略を知るには、便利な本だと思いました。
東北各地の藩についても、ふれていて、特に奥羽列藩同盟の話など、わかりやすく書いてあり、歴史や時代小説に興味のある人なら一読してもよいかと思いました。
藤沢周平さんの小説をまたまた読んでいます。映像のあるものは、借りてきて観ていて、ちょっとはまっています。
コメントありがとうございます。