安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

カル・ジェイダー  CAL TJADER STAN GETZ SEXTET

2013-09-29 11:05:38 | ヴァイブ、オルガン他

長野県(信州)には、蕎麦を食べさせるお店はたくさんありますが、美味しいお店に出会うことはそうありません。最近、伊那市郊外にある「こやぶ竹聲庵(こやぶちくせいあん)」というお店に連れて行ってもらったのですが、そこで、久しぶりに美味しい蕎麦に巡り合いました。木立に囲まれたお店のたたずまいも情緒があって、人気店だという評判にも納得がいきました。日本の地名を冠した曲が収録されている作品。

CAL TJADER (カル・ジェイダー)
CAL TJADER STAN GETZ SEXTET (Fantasy 1958年録音)

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カル・ジェイダー(1925~1982年)は、多才な人で、デイブ・ブルーベック・トリオでは、ドラムスを、ジョージ・シアリング・バンドでは、ヴァイブとパーカッションを担当し、その後は自らラテン色の濃いグループを結成して活躍し、膨大な録音も残しました。その作品群の中で、スタン・ゲッツと共演したこのアルバムは、多くのジャズファンに支持されているのではないでしょうか。僕も、ほがらか寛ぎタイムに時々取り出します。

メンバーですが、カル・ジェイダー(vib)、スタン・ゲッツ(ts)、ヴィンス・ガラルディ(p)、エディ・デュラン(g)、スコット・ラファロ(b)、ビリー・ヒギンズ(ds)。サンフランシスコのジャズ・クラブ「ブラックホーク」へスタン・ゲッツが出演した時をとらえて録音されたもので、ラファロとヒギンズは、その出演時のメンバーです。この二人の初期の録音の一つにも当たります。

曲は、ヴィンス・ガラルディ作「Ginza Samba」(訳すと「銀座サンバ」かな)、スタンダードが3曲で、「I've Grown Accustomed to Her Face」(彼女の顔に慣れてきた)、「For All  We Know」、「My Buddy」、カル・ジェイダ―の自作が3曲で、「Crow's Nest」、「Liz-Anne」、「Big Bear」と全7曲。ガラルディは、曲を提供するとともに、ピアノの方でも意外とハードなプレイをしていて貢献しています。

ジェイダ―(vib)の柔かな音色のヴァイブ、ゲッツ(ts)のややクールなテナーが心地よく響きます。1曲目の「Ginza Samba」は、アップテンポで、ジェイダー、ゲッツと快心のソロが続き、思わず体を揺すりました。バラードの「I've Grown Accustomed to Her Face」、「For All We Know」はロマンチックです。後者における、スコット・ラファロ(b)の伴奏を聴くと、後年の活躍が暗示されているような気がします。活気のある「Crow's Nest」では、ゲッツがこれでもかのスインガーぶりを発揮し、ラファロのソロも力強い。

【こやぶ竹聲庵】

住所:長野県伊那市大字西箕輪与地6563
電話:0265-78-9966   営業:11:00~14:00 夜は完全予約制 (水曜定休)

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             駐車場から門を経てお店に入ります。

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                    お店の正面

   Koyabuzarusoba201309    Koyabunishinsoba201309 
            ざるそば                         にしんそば


チャーリー・マリアーノ CHARLIE MARIANO QUARTET

2013-09-25 21:50:09 | アルト・サックス

23日(月)の午後時間がとれたので、愛知県芸術劇場コンサートホールで開催された、広上淳一指揮京都市交響楽団の第4回名古屋公演を聴きに行きました。曲目は、デュカス「魔法使いの弟子」、ロドリーゴ「アランフェス協奏曲」、リムスキー=コルサコフ「スペイン奇想曲」、ラヴェル「ボレロ」でした。管楽器のソロも多く、楽団の力が試される曲ばかりですが、広上淳一のダイナミックな指揮と、京響の弦のアンサンブルのよさに、至福の時間を過ごしました。強力なアルト・サックスです。

CHARLIE MARIANO (チャーリー・マリアーノ)
CHARLIE MARIANO QUARTET (BETHLEHEM 1955年録音)

  Charliemarianoquartetcd    

チャーリー・マリアーノ(as)は、いろいろな音楽を手掛けた人ですが、西海岸で活躍していた頃に録音した諸作は、どれも輝いています。1980年代後半にスペインのフレッシュ・サウンド・レーベルが復刻したLPによって、ようやく僕はベツレヘムの諸作を聴くことができましたが、艶やかで豊かなサウンド、フレーズにおけるスリル、テンポのよさなど、今聴いても色褪せません。現在ではCDが容易に入手できます。

メンバーは、チャーリー・マリアーノ(as)、ジョン・ウィリアムス(p)、マックス・ベネット(b)、メル・ルイス(ds)。マリアーノは、録音当時スタン・ケントン楽団に所属していたせいか、同僚のマックス・ベネットとメル・ルイスを起用しています。ジョン・ウィリアムスは、地味ながらスインギーなプレイをしていて、少し印象を改めました。

曲は、スタンダードが、「Johnny One Note」、「The Very Thought of You」、「Smoke Gets In Your Eyes」(煙が目にしみる)、 「King For A Day」、「Darn That Dream」、「I Heard You Cried Last Night」、マリアーノの自作が「Floormat」と「Blues」で、全8曲。テンポの速いものと、遅いものがあり、ワンホーン編成だけに彼の名手ぶりをこれ一枚で堪能できます。

マリアーノ(as)の美しい音による熱いプレイに圧倒されます。「Johnny One Note」は、アップテンポで快適にスイングし、ベース、ドラムスも力強い。「The Very Thought of You」は、珍しくミディアムテンポで演奏されています。特筆すべきは、次に記したバラード2曲の素晴らしさです。「Smoke Gets In Your Eyes」では丁寧にプレイしていきますが、チャーリー・パーカーからの影響も感じさせます。「Darn That Dream」は、ソロのはじめこそ長めの音符を吹きますが、細かな音でフレーズを作り、情熱的に歌いあげます。

【京都市交響楽団名古屋演奏会】

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      Aichikengeijutugekijounaibu
       愛知県芸術劇場コンサートホール(ほぼ満席になりました)


ウェイン・ショーター SPEAK NO EVIL

2013-09-22 10:06:11 | テナー・サックス

先日、仕事の打ち合わせのために信州大学農学部(長野県上伊那郡南箕輪村)に行ってきました。中央道伊那インターの近くにあるキャンパスは、実習農場や演習林があって広々としていて、清々しい気分になりました。農場で獲れた農産物やそれらを使った農産加工品の販売コーナーがあったので、山ぶどうワインとイチゴジャムを買ってきました。ホロ酔いになりながら聴いたアルバム。

WAYNE SHORTER (ウェイン・ショーター)
SPEAK NO EVIL (BLUE NOTE 1964年録音)

  Speak_no_evil

30年近く前、出向して東京で生活しているときに、レコード店巡りをよくしていました。新宿西口のトガワに寄った際、輸入盤中古LPの「SPEAK NO EVIL」があったので、購入しようと手が出たのですが、印刷されたキスマークを誰かがつけた汚れだと勘違いして、取りやめにして、「ADAM'S APPLE」の方を買いました。笑い話ですが、そんな誤解をしてしまうようなユニークなデザインです。僕が知らなかっただけですが、キスマークが入っているジャケットはこれくらいではないでしょうか。

メンバーは、ウェイン・ショーター(ts)、フレディ・ハバード(tp)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)。エルヴィンは前作からの引き続きですが、ハンコックとカーターというマイルス・デイヴィス・バンドの同僚を初めて起用しています。エルヴィンは、重みのあるビート感を出し、あとの二人はフレッシュなプレイで、ショーターの楽曲に相応しいリズム陣になっています。

曲は全てウェイン・ショーターのオリジナルです。「Witch Hunt」、「Fee-Fi-Fo-Fum」、「Dance Cadaverous」、「Speak No Evil」、「Infant Eyes」、「Wild Flower」の6曲ですが、CDには、「Dance Cadaverous」の別テイクが収録されています。曲名だけ見ても、当時彼が関心を持っていた、黒魔術や西洋伝説からインスパイアされていることがわかります。宇宙的、神秘的といったムードがショーターの曲、演奏には現れますが、既にここでもそんなところが出ています。

それぞれの曲のラインが長く、モーダルな響きが聴かれ、ショーター(ts)のソロは大きくとらえていてメロディアスです。「Speak No Evil」では、2管による長い音を使ったテーマの背後でハンコック(p)が刺激的なピアノを弾いています。スローな「Infant Eyes」では、テナー・サックスでなければ表現できないような意表をつくテーマやソロフレーズが現れます。「Dance Cadaverous」や「Wild Flower」は抒情的でもあり、ショーターの書く曲には、不思議な魅力があります。

【信州大学農学部】

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       看 板

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農 場 (胡椒類、青い網がかかっているところは葡萄のナイアガラ)

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ユリノキ並木

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         中まで赤いイチゴで作ったジャム           山ぶどうワイン(製造は五一ワイン)


メリッサ・モーガン UNTIL I MET YOU

2013-09-18 21:48:37 | ヴォーカル(L~R)

飯田市の単身赴任宅マンションの一階にあった洋菓子店が閉店して、数ヶ月間空室だったのですが、新たに洋菓子店「HOTA PASTRY」が入居しオープンしました。地方都市の中心市街地に新たに開店するのはあまりないだけに、嬉しいことです。僕は甘いものも好きなので、協力する気持ちも込めて、ケーキを買ってきました。ほどよい甘さで美味しく、たまに購入することにします。甘さも含んだ歌声を聴きます。

MELISSA MORGAN (メリッサ・モーガン)
UNTIL I MET YOU (TELARC 2009年録音)

  Untilimetyoumelissamorgan

メリッサ・モーガンは、1980年ニューヨーク生まれですが、彼女のホームページによると現在はロサンゼルスを中心として活躍しています。2004年のセロニアス・モンク・コンペティションで準決勝に進み、知られるようになり、2007年には富士通コンコードフェスで来日しています。これは、好きな曲が多く収録されているので購入しましたが、歌唱の方もジャズヴォーカルらしいもので、素敵なアルバムです。

メンバーですが、メリッサ・モーガン(vo)、ジェラルド・クレイトン(p)、ジョー・サンダース(b)、ケヴィン・カナー(ds)、ランディ・ナポレオン(g)、クリスチャン・スコット(tp)、ティム・グリーン(as)、ベン・ウェンデル(ts)、フランシスコ・トーレス(tb)。伴奏は、ピアノ・トリオ+ギターのカルテットが中心ですが、そこに管が加わるなど曲によって編成を使い分けています。

曲は、スタンダードとブルース・ナンバーです。「Save Your Love For Me」、「Is You is or is You Ain't My Baby」、「Until I Met You」(Corner Pocket)、「He Loves Me I Think」、「The Lamp is Low」(灯りほのかに)、「Cool, Cool Daddy」、「A Sleepin' Bee」、「Yes, I Know When I've Had It」、「I Wonder」、「I Just Dropped By To Say Hello」、「The More I See You」、「Devil May Care」の13曲。「Save Your Love For Me」にはナンシー・ウィルソン、「I Just Dropped By To Say Hello」にはジョニー・ハートマンが素晴らしい歌を残しています。

メリッサ・モーガンは豊かな声でソウルフル、ブルージーに歌っています。バックの伴奏も含めて、なかなかよいです。全体にナンシー・ウィルソンに近い感じですが、スローテンポの「Save Your Love For Me」は、メリッサとしても快心の出来だろうと思います。ベイシー楽団の有名ナンバー「Until I Met you」、スインギーな「The Lamp is Low」、バックのリフも楽しいブルース「Cool, Cool Daddy」、静かなバラード「I Just Dropped By to Say Hello」など他の曲も聴きどころがあります。新作が待たれる歌手。

【HOTA PASTRY】
住所:長野県飯田市本町1-15 トップヒルズ本町1階
電話:0265-24-2763
営業:10:00~19:30 定休日:火曜日

    Hotapastrytempogaikan

    Hotapastrycake1    Hotapastryshucream
      写真がよくありませんが、ムース、シュークリームとも美味しい。


マイルス・デイビス SEVEN STEPS TO HEAVEN

2013-09-15 12:39:30 | トランペット・トロンボーン

今月(2013年9月)号のジャズ批評誌の特集が、マイルス・デイヴィスだったので、買って読んでみました。いまなぜマイルスを取り上げるのか、よくわかりませんが、年代順にアルバムを並べ、最新のデータを整理してあるので資料としても便利そうです。マイルスの音楽は、ジャズの古典といっていいものですが、とりわけハードバップからモード時代にかけては、どれも気にかかる演奏ばかりです。その中から親しみを感じているものを。

MILES DAVIS (マイルス・デイビス)
SEVEN STEPS TO HEAVEN (COLUMBIA 1963年録音)

  Seven_steps_to_heaven

掲げたジャケットは、国内盤LPのものですが、いま部屋で聴いているのは、コロンビア・レーベルのアルバム20枚を集めたボックス・セット「THE PERFECT MILES DAVIS COLLECTION」の中の一枚です。輸入盤ですが、このセットが5000円台で買えるのですから、ありがたいことです。ブラック・ホークのライブなど入っていないものもありますが、ハードバップ、モード、エレクトリックとマイルスの音楽の変遷をたどることができます。

これは、2つのセッションを収録してあり、ロサンゼルスとニューヨークで録音されています。前者のメンバーが、マイルス(tp)、ヴィクター・フェルドマン(p)、ロン・カーター(b)、フランク・バトラー(ds)。後者は、マイルス(tp)、ジョージ・コールマン(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムス(ds)。バンドの再編成期における録音ですが、後者の新メンバーのリズム陣は、これ以降大きな成果を挙げていきます。

ロサンゼルス録音の曲目はスタンダードで、「Basin Street Blues」、「I Fall in Love Too Easily」、「Baby, Won't You Please Come Home?」、「Summer Night」。ニューヨーク録音は、「Seven Steps To Heaven」、「So Near, So Far」、「Joshua」です。ヴィクター・フェルドマンの書いた2曲、「Seven Steps To Heaven」と「Joshua」は、スタッカートを生かしたメロディで、マイルス・グループで頻繁に演奏されることになります。フェルドマンの名前は、この2曲でジャズ史上に永遠に残るのではないでしょうか。

ロサンゼルスの方は、マイルス・デイビス(tp)のミュートによるバラード演奏で、音色が変化するところも聴きものなので、いいオーディオ装置がほしくなります。「Seven Steps To Heaven」と「Joshua」は、フェルドマンが、まるで新メンバーを想定して作ったかのような曲です。前者のテーマ部におけるトニー・ウィリアムス(ds)のドラミングが決まっています。ジョージ・コールマン(ts)のプレイも、ハンク・モブレイの後継のようで、好みです。過渡期といわれることもありますが、やはり素晴らしいアルバム。

【ジャズ批評2013年9月号、マイルス・ボックスセット、ビル・コール著「MILES」】

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 ジャズ批評2013年9月号 

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THE PERFECT MILES DAVIS COLLECTION (CD20枚組です。)            

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マイルス・デイビスについては、多くの書籍が出されていますが、ビル・コール著「MILES」(晶文社刊)を久しぶりにパラパラと読んでみました。