安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

ジャクリーヌ・ピータース A SLOW HOT WIND

2010-04-25 21:41:10 | ヴォーカル(E~K)

「春は名のみの風の寒さや 谷のうぐいす歌は思えど」という歌詞の歌「早春賦」は、作詞者の吉丸一昌が大正時代の初期に長野県安曇野を訪れ、穂高町(現在、安曇野市穂高)の雪解け風景に感銘を受けて詩を書いたとされています。穂高川のほとりに歌碑が立てられて毎年4月29日には早春賦音楽祭が催されます。今夜のアルバムは、熱い風の方で「A Slow Hot Wind」です。

JACQUELINE PETERS (ジャクリーヌ・ピータース)
A SLOW HOT WIND (WARNER BROS. 録音年不詳)

 Aslowhotwindjacquelinspeters_2           

ジャクリーヌ・ピータースについては、ジャケ裏のライナーによる情報程度しかわかりませんでした。モデルで出発し、その後Richard Maltby Orchestraのバンド・シンガーとなり、独り立ちした後は、シカゴのMr.Kelly'sやハリウッドのJerry Lewis Club、マンハッタンのLiving Roomなどに出演。テレビにも、The Phil Silvers ShowやSteve Allen Showに出たとあります。

Milton DeluggとWilliam Staffordによる編曲で、弦も用いて全体にムーディーですが、ところどころにフルートやミュート・トランペットのソロも入ります。彼女は、声量もありそうですが、コントラルトの声で丁寧に歌い、ささやくような感じもよくて、バラード系統のものに似合いそうです。

収録曲は、「Blue Prelude」、「Goodbye」、「Help A Good Girl Go Bad」、「A Slow Hot Wind」、「I Enjoy Being A Girl」、「Just You, Just Me」、「This is New」、「Nobodey's Heart」、「I Fall in Love Too Easily」など美女に相応しい曲も入っています。タイトル曲「A Slow Hot Wind」はヘンリー・マンシーニ曲、ノーマン・ギンベル詞によるものです。

夜のリラックスタイムに相応しく、歌の方もスローなものが印象に残り、ゴードン・ジェンキンス作の「Good-Bye」、今ではスタンダードの「The End of The World」(この世の果てまで)、ちょっとブルージーな「Help A Good Girl Go Bad」そして「A Slow Hot WInd」となかなか聴かせてくれました。

【早春賦と早春賦まつり】

「早春賦」の作曲は中田章(中田喜直のお父さん)ですが、このメロディーは、モーツァルトの歌曲「春への憧れ」と似ていることで有名です。モーツァルトも民謡を題材にしているともいわれています。ともあれ、「早春賦」は、武満徹がギターのために編曲を行ったほどで、やはり、詞、曲ともによいものだと思います。
安曇野市では毎年早春賦まつりが開かれます。

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4月29日に安曇野市穂高の早春賦の歌碑のところで行われます。コーラスやインディアンハープの演奏があります。(詳しくは安曇野市のホームページをご覧ください)


ジョルジュ・アルバニタ BIRDS OF PARADISE

2010-04-18 11:12:10 | ピアノ

全国から骨董商が集まる骨董展(即売会)に父が行きたいというので、たまには親孝行だと松本市の名鉄ショールームに両親を連れて行きました。掛け軸や刀剣などが実家にはありますが、今では絵の方がいいらしく購入したのは花を描いた小型の油絵でした。値段が高くなかったし、骨董に全く興味のない僕も賛成でした。絵画ならフランスかということでG・アルバニタです。

GEORGE ARVANITAS (ジョルジュ・アルバニタ)
BIRD OF PARADISE (Carrere 1988年録音)

 Birdofparadise

ジョルジョ・アルバニタは、活動歴の長いフランスのピアニストです。1970年ごろには、それまでのパウエル路線から変身して、モード路線のフレッシュな演奏を行ったこともありました。しかし、その後はまた元のスタイルに近づいていきました。

多数の作品がありますが、50年代のものや、88年のこの作品も見逃せません。本作はソロで演奏される曲が6曲も入っているのが特徴です。あとの10曲は長年組んでいるアルバニタ(p)、ジャキイ・サムソン(b)、シャルル・ソウドレ(ds)のトリオで演奏されます。

ソロでは、「Lullaby of Birdland」、「Ain't Misbehavin」、「Bird of Paradise」、「Memories of You」、「Here's That Rainy Day」、「A Flower is a Lovesome Thing」が演奏され、トリオでは「Un Poco Loco」、「Au Privave」、「Willow Weep For Me」、「Nardis」、「Off Minor」、「Rockefeller Center」など。

「Un Poco Loco」や「Rockefeller Center」では、トリオの一体感が感じられます。ピアノソロの「Here's That Rainy Day」や「A Flower is a Lovesome Thing」では抒情性を醸し出し、「Lullaby of Birdland」や「Memories of You」などでは力強い右手を中心としたプレイが飽きさせず、この作品は彼のソロプレイを聴くためにあるかのようです。

ホームページに、ジョルジュ・アルバニタ(ピアノ)を掲載しました。時間があればご覧ください。モダンジャズやヴォーカルを聴こう ジョルジュ・アルバニタ

【購入した絵】

 Nishiokahanagakubuchinashi

 購入した西岡清史の絵。小品です。


サラ・ヴォーン SASSY SWINGS THE TIVOLI

2010-04-11 20:32:53 | ヴォーカル(S~Z他)

いささか旧聞に属しますが、作家のロバート・B・パーカーが今年の1月18日に亡くなりました。彼はハードボイルド作家として、私立探偵スペンサーが主人公のシリーズなどで知られています。また、作品には、ジャズのスタンダード・ナンバーがよく登場します。僕は、パーカーの小説は何作も読んでいますが、今日、本棚の片隅に彼の本を見つけたので、ブログに取り上げました。今夜は彼を偲び、彼が大好きだというサラ・ヴォーンの歌声を聴きます。

SARAH VAUGHAN (サラ・ヴォーン)
SASSY SWINGS THE TIVOLI (Mercury 1963年録音)

 Sassy_swings_the_tivoli

ロバート・B・パーカーは、インタヴューに応えて、サラ・ヴォーン、ジョニー・ハートマン、キャロル・スローンを好きな歌手として挙げています。とりわけサラ・ヴォーンは大好きだと語っています。C・スローンを聴こうかと迷ったのですが、彼が大好きだというサラにしてみました。

サラ・ヴォーンには、マーキュリーレーベルに「at The London House」、「at Mister Kelly's」という有名なライブ作品がありますが、デンマークはコペンハーゲンのティボリ劇場におけるこのライブも軽やかで楽しさに溢れる作品です。伴奏は、カーク・スチュアート(p)、チャールズ・ウィリアムス(b)、ジョージ・ヒューズ(ds)で、スチュアートがリズミカルな伴奏をつけています。

曲目(LP)は、「Won't You Come Home ,Bill Bailey」、「Misty」、「What Is This Thing Called Love」、「Lover Man」、「Sometimes I'm Happy」、「I Feel Pretty」、「Tenderly」、「Sassy's Blues」、「Polka Dots And Moonbeams」、「I Cried For You」の12曲ですが、「Sassy's Blues」はクインシー・ジョーンズが彼女のために作った曲で、スキャットで演じられます。

乗りのよさが彼女の特徴の一つですが、最初の「Won't You Come Home, Bill Bailey」からのりのりで、続く「Misty」では、ピアノのスチュワートも途中で歌い出します。バラードの「Tenderly」、急速調の「I Cried For You」など充実ぶりが窺われます。「I Feel Pretty」のワルツタイム部分の可愛らしい歌いぶりが意外性もあり魅力的。

【特別解説付きLP ハードボイルド】

 Hardboiledlpomote  Swingngdickhardboiled  Robertbparkerinterview 

CBSソニーレコードから、「ハードボイルド」というLPが出され、チャンドラー、ハメット、パーカー、ハミルらハードボイルド作家が作品に用いたジャズ曲が収録されています。12曲収録のオムニバスですが、「I Left My Heart In San Francisco」(トニー・ベネット歌)をはじめとした名曲がどの作品に登場したかという解説がついています。付属のブックレット「Swingin' Dick」と「ロバート・B・パーカー緊急インタヴュー」が興味深いです。

【本棚にあったロバート・B・パーカーの本】

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イリノイ・ジャケー SWING'S THE THING

2010-04-04 20:06:13 | テナー・サックス

先日、朝食時に窓から小さな我が家の庭を眺めていたら、知らぬ間に春がやってきていました。ヒュウガミズキの花が咲き、薄い黄色い小さな花が、低い枝に密集してついています。一つ一つは小さいですが、まとまると鮮やかです。今夜は黄色地のジャケットのアルバムを取り出しました。

ILLINOIS JACQUET (イリノイ・ジャケー)
SWING'S THE THING (Verve 1957年録音)

 Swings_the_thing

黄色のジャケットというと、ホレス・シルバーの「HORACE-SCOPE」、ドリス・デイの「Young Man With A Horn」などいろいろ浮かびますが、今夜は「ハーレム・ノクターン」が収録されているイリノイ・ジャケー(ts)の作品にしてみました。

ジャケーは、スイング時代から活躍した、本来はブロー派のテナー・サックス奏者ですが、バラードなども味わい深く、スイング系統の奏者の中でも、忘れられない一人です。後年プレスティッジに吹きこんだ「Bottoms Up」もよくスイングしていてよいアルバムだったと記憶しています。

本作品は、ジャケー(ts)、ロイ・エルドリッジ(tp)、ジミー・ジョーンズ(p)、レイ・ブラウン(b)、ハーブ・エリス(g)、ジョー・ジョーンズ(ds)によるヴァーヴ・レーベルお得意のブローイングセッション。「Harlem Nocturne」、「Can't We Be Friends」、「Have You Met Miss Jones?」、「Lullaby of The Leaves」のスタンダード4曲に、ロイ作「Las Vegas Blues」、ジャケー作「Achtung」と全6曲です。

バラード「Harlem Nocturne」がなんといっても注目されます。ジャズ作品として取り上げられるのは珍しいですが、ジャケーは豪快かつ悠々と吹いて名人芸を披露しています。音色が深いです。ミディアム・テンポの「Have You Met Miss Jones?」でもジャケーは旋律を大事に吹いています。全体にロイ・エルドリッジ(tp)も含めご機嫌にスイングし、時としてエキサイティング。

【庭のヒュウガミズキ】 

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