「春は名のみの風の寒さや 谷のうぐいす歌は思えど」という歌詞の歌「早春賦」は、作詞者の吉丸一昌が大正時代の初期に長野県安曇野を訪れ、穂高町(現在、安曇野市穂高)の雪解け風景に感銘を受けて詩を書いたとされています。穂高川のほとりに歌碑が立てられて毎年4月29日には早春賦音楽祭が催されます。今夜のアルバムは、熱い風の方で「A Slow Hot Wind」です。
JACQUELINE PETERS (ジャクリーヌ・ピータース)
A SLOW HOT WIND (WARNER BROS. 録音年不詳)
ジャクリーヌ・ピータースについては、ジャケ裏のライナーによる情報程度しかわかりませんでした。モデルで出発し、その後Richard Maltby Orchestraのバンド・シンガーとなり、独り立ちした後は、シカゴのMr.Kelly'sやハリウッドのJerry Lewis Club、マンハッタンのLiving Roomなどに出演。テレビにも、The Phil Silvers ShowやSteve Allen Showに出たとあります。
Milton DeluggとWilliam Staffordによる編曲で、弦も用いて全体にムーディーですが、ところどころにフルートやミュート・トランペットのソロも入ります。彼女は、声量もありそうですが、コントラルトの声で丁寧に歌い、ささやくような感じもよくて、バラード系統のものに似合いそうです。
収録曲は、「Blue Prelude」、「Goodbye」、「Help A Good Girl Go Bad」、「A Slow Hot Wind」、「I Enjoy Being A Girl」、「Just You, Just Me」、「This is New」、「Nobodey's Heart」、「I Fall in Love Too Easily」など美女に相応しい曲も入っています。タイトル曲「A Slow Hot Wind」はヘンリー・マンシーニ曲、ノーマン・ギンベル詞によるものです。
夜のリラックスタイムに相応しく、歌の方もスローなものが印象に残り、ゴードン・ジェンキンス作の「Good-Bye」、今ではスタンダードの「The End of The World」(この世の果てまで)、ちょっとブルージーな「Help A Good Girl Go Bad」そして「A Slow Hot WInd」となかなか聴かせてくれました。
【早春賦と早春賦まつり】
「早春賦」の作曲は中田章(中田喜直のお父さん)ですが、このメロディーは、モーツァルトの歌曲「春への憧れ」と似ていることで有名です。モーツァルトも民謡を題材にしているともいわれています。ともあれ、「早春賦」は、武満徹がギターのために編曲を行ったほどで、やはり、詞、曲ともによいものだと思います。
安曇野市では毎年早春賦まつりが開かれます。
4月29日に安曇野市穂高の早春賦の歌碑のところで行われます。コーラスやインディアンハープの演奏があります。(詳しくは安曇野市のホームページをご覧ください)