安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

トミー・タレンタイン TOMMY TURRENTINE

2010-12-29 20:55:26 | トランペット・トロンボーン

忘年会の締めを昨日長野駅前の居酒屋でやりました。職場の有志でしたが、なかなか盛り上がりました。この1年間大きな病気や事故がなく全員で年末を迎えられるというのが嬉しいところです。きのう、年末の挨拶に来てくれたある会社の会長に「あんたも疲れてるようで、顔も年相応になってきた。苦労しているように見えるぞ」と皆の前でからかわれたので、元気なふりをして飲みましたが、疲れました(笑)。時の流れは早い(Time flies.)。Timeレーベルの作品です。

TOMMY TURRENTINE (トミー・タレンタイン)
TOMMY TURRENTINE (TIME 1960年録音)

 Tommy_turrentine

TIMEレーベルの国内盤LPは、かつて廉価で販売されていたので、手に入れやすく、ソニー・クラーク・トリオなどを購入し親近感を持っていました。マーキュリー、エマーシーのプロデューサーだったボブ・シャドが設立したTIMEレーベルは、ブッカー・リトル、ソニー・クラーク、スタンリー・タレンタインなど当時の新鋭の録音を残していますが、60年代前半しか活動がありません。

トミー・タレンタイン(tp)は、弟のスタンリー・タレンタイン(ts)やホレス・パーラン(p)のブルーノート録音に参加していますが、リーダー作はこれ一枚だけです。本作品のメンバーは、トミー(tp)、スタンリー(ts)のタレンタイン兄弟、ジュリアン・プリースター(tb)、ボブ・ボズウェル(b)、マックス・ローチ(ds)というローチ・バンドの5人に、ホレス・パーラン(p)が加わった6人。

曲は、トミー自作が「Gunga Din」、「Time's Up」、「Long As You're Living」、「Too Clean」、「Two, Three, One, Oh!」の5曲で、あとはバド・パウエル作「Webb City」とホレス・パーランの「Blues for J.P.」の全7曲。トミー・タレンタイの作曲した曲は、活気が感じられ、「Too Clean」、「Time's Up」あたりが面白い。

3管編成で、「Time's Up」などテーマ部に厚いハーモニーも施されています。トミーのプレイはそう流麗というわけではありませんが、音色が美しく、「Too Clean」や「Time's Up」ではメロディアスなところも聴かせます。スタンリー・タレンタイとパーランは、愉悦的なプレイもしていて、「Time's Up」、「BLues For J.P.」が聴きごたえがあり、なかなかグルービーな作品。ローチのドラムは特徴があり、彼のリーダー作のように聴こえてしまうところが、ちょっと惜しいところ。


ベン・ウェブスター KING OF THE TENORS

2010-12-26 18:47:05 | テナー・サックス

先週、北海道に用事があり札幌と室蘭に行ってきました。札幌は過去にも何回か訪れたことがあり、レコード店やジャズ喫茶巡りをしていました。今回は、それに加えて、ブログ「デューク・アドリブ帖」を主宰しているデュークさんとすすきのでお酒を酌み交わすことができました。好きなミュージシャンや最近のトピックなどジャズ談議ができて楽しいひと時を過ごしました。はじめて会ったのですが、昔からの知り合いという感じでお話ができて感謝です。彼は、熱烈なデューク・エリントンのファンです。

BEN WEBSTER (ベン・ウェブスター)
KING OF THE TENORS (Verve 1953年録音)

 Kingofthetenors

1940年代にデューク・エリントン楽団で鳴らしたベン・ウェブスター(ts)ですが、50年代に入ってもいい作品を残しています。「テナーの王様」と名付けられたこのアルバムでは、ミディアムテンポ以上ではうなりを伴った男性的な吹奏、一転してバラードでは慈愛に満ちたプレイです。50年代なので録音が優れ、テナーの音や息遣いが明瞭です。

ヴァーヴ・レーベルのスター奏者がベンの伴奏に回っています。メンバーは、ウェブスター(ts)、オスカー・ピーターソン(p)、バーニー・ケッセル(g)、レイ・ブラウン(b)、アルヴィン・ストーラー(ds)、ハリー・エディソン(tp)、ベニー・カーター(as)で、この編成で5曲、ドラマーがJ・C・ハードに代わり、ギターを加えたピアノカルテットの伴奏で3曲やっています。

遅いテンポでバラードが、「テンダリー」、「ザッツ・オール」、「ダニー・ボーイ」と3曲、ウェブスターのオリジナルが2曲で「ジャイヴ・アット・シックス」と「バウンス・ブルース」、エリントンの2曲「ドント・ゲット・アラウンド・マッチ・エニー・モア」と「コットン・テイル」、そして「ペニーズ・フロム・ヘヴン」とLPでは8曲です。

「テンダリー」、「ザッツ・オール」、「ダニー・ボーイ」というテンポの遅い曲において、情緒を醸し出しながら、悠揚せまらぬプレイをベン・ウェブスターがしています。「テンダリー」は名演としてディスクガイドなどでよくとりあげられますが、僕は、「ザッツ・オール」も曲として好きなこともあり気に入っています。「コットン・テイル」はアップテンポで、唸りを上げて豪快に吹きぬけていくテナーに興奮します。スイングタイプですが、メロディ、サウンドが美しいので、どなたも楽しめるのではないでしょうか。

ホームページの散策に「札幌でレコード店、ジャズ喫茶めぐり」を掲載しました。時間があればご覧ください。モダンジャズやヴォーカルを聴こう 札幌でレコード店、ジャズ喫茶めぐり


ドリス・デイ DAY BY NIGHT

2010-12-23 17:30:12 | ヴォーカル(A~D)

最近、電子書籍の話題を目にすることが多くなりました。アマゾンやグーグルが先行しているようですが、大手出版社も日本電子出版社協会を発足させて対抗していくようです。著作権の保護や電子化権利問題など課題はあるようですが、時代の趨勢からするとデジタル機器で小説やエッセイを読むのが普及していくのでしょう。僕個人としては従来の書物に慣れているので、それも是非残してもらいたいところ。国内盤LPは1曲少なかったアルバムです。

DORIS DAY (ドリス・デイ)
DAY BY NIGHT (Columbia 1957年録音)

 Daybynightusa

ドリス・デイの人気作品です。CBSソニーから発売された国内盤LPを購入したところ、ヴォーカルLPの場合、収録曲数は12曲が多いのですが、これはB面だけ5曲で全11曲でした。日本盤ライナーを読んだら「ランプ・イズ・ロウ」は、現在、歌うことも発売も許されないので、やむなく割愛したとありました。オリジナル盤を入手したところ12曲入りで、「The Lamp is Low」も聴くことができました。

「The Lamp is Low」は、ミッチェル・パリッシュ作詞、ピーター・デ・ローズ及びバート・シェフター作曲とされていますが、フランスの作曲家、モーリス・ラヴェルの人気曲「亡き王女のためのパヴァーヌ」から旋律がとられているので、それが著作権の関係で親族から問題にされその日本盤には収録がかなわなかったようです。ラヴェルは近代の作曲家なので、こういうことがおきたのでしょう。

曲は、1930年代に作られたスタンダードが主で、「I See Your Face Before Me」、「Close Your Eyes」、「The Night We Caooled It A Day」、「Dream a Little Dream of Me」、「Under a Blanket of Blue」、「You Do Something to Me」、「Stars Fell On Alabama」(アラバマに星落ちて)、「Moon Song」、「Wrap Your Troubles in Dreams」(苦しみを夢に隠して)、「Soft as The Starlight」、「MoonGlow」、「The Lamp is Low」の12曲。

ポール・ウェストン編曲による弦入りオーケストラ伴奏の、ナイトムードに彩られたアルバム。ドリスは、ミディアムからスローテンポに近いこれらの曲を実にゆったりと歌っていて、聴くたびに素晴らしいと唸ります。声を張り上げてもリラックスしている感じがします。「Close Your Eyes」、「The Night We Called It A Day」、「Dream a Little Dream of Me」と続くあたりを愛聴していますが、後半に入り「Wrap Your Troubles in Dreams」も見事。廃盤への思い入れはあまりない僕ですが、これはUSA盤で聴いています。

【諸井誠著 わたしのラヴェル】

ラヴェルは好きな作曲家の一人で、この機会に関連した本を読みました。「わたしのラヴェル」は古い本なので既に絶版かもしれません。

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レム・ウインチェスター ANOTHER OPUS

2010-12-19 18:21:42 | ヴァイブ、オルガン他

松本市内で所用を済ませた後、老舗の洋食屋「おきな堂」でランチを食べました。旧制松本高等学校があり、その学生などが利用したためか、松本には昔から庶民的な洋食店が根付いています。僕がたまに利用するのは、「おきな堂」、「デリー」、「どんぐり」、「タツミ亭」あたりですが、「おきな堂」や「デリー」は観光情報誌にも載る有名店です。僕は、未だにオムライスなどの洋食類が好きなので、松本での昼食は、たいがいこれらのお店です。今夜はずっと聴いているアルバムです。

LEM WINCHESTER (レム・ウインチェスター)
ANOTHER OPUS (NEW JAZZ 1960年録音)

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ミルト・ジャクソン(vib)の「Opus de Jazz」は、ミルトの代表作のひとつとしてよくあげられますが、ミルト・ジャクソンに似ている演奏をするレム・ウインチェスター(vib)は、そのOpus de Jazzを超えようと意図したのでしょうか、続編ともいうべき作品を録音したのですが、こちらも優れたものです。

ウインチェスターは、本職が警察官だったのですが、そのヴァイブ・プレイがたまたまレナード・フェザーの目にとまり、1958年のニューポートジャズ祭に出演し、プロの道へと進みます。しかし、これからという1961年1月に自ら行ったロシアン・ルーレットにより亡くなってしまい、短期間しか活動がありません。

メンバーのうち、フランク・ウェス(fl)、ハンク・ジョーンズ(p)、エディ・ジョーンズ(b)の3人がミルト・ジャクソンのOpus De Jazzと重なります。ガス・ジョンソン(ds)とレム・ウインチェスター(vib)の5人編成で、これはもちろんミルトのものと同じ編成。レム・ウインチェスターの自作が「Another Opus」、「Blues Prayer」、「Both Barrels」、オリバー・ネルソン作「The Meetin'」、スタンダードの「Like Someone in Love」という5曲。

「Blues Prayer」は、遅いテンポのブルースで、ウインチェスターやウェスなど各人のソロが聴きごたえがあります。オリバー・ネルソンのテナーは好みではないのですが、彼の曲「The Meetin'」は傑作。ゴスペル・トレインソングだと原盤解説にありますが、ついメロディを口ずさんでしまいます。ここでのヴァイブ・ソロはなかなかエキサイティングです。「Like Someone in Love」はおだやかなムードが溢れた演奏で、主旋律にからむウインチェスターのオブリガート、ハンクのソロが美しい。

ホームページにレム・ウインチェスター(Lem Winchester ヴァイブ)を掲載しました。時間があればご覧ください。モダンジャズやヴォーカルを聴こう レム・ウインチェスター

【松本市内の洋食店】

僕がたまに入るところです。どこも洋食が好きな方にはよいです。「おきな堂」と「デリー」は中町 (蔵のある街)に位置し、「タツミ亭」と「どんぐり」は松本駅近くの立地です。

  おきな堂:松本市中央 2-4-10 0263-32-0975 
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  デリー:松本市中央 2-4-13  0263-35-2408 カレー専門店です。 

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  タツミ亭:松本市中央1丁目5-3 0263-32-0941 ステーキが有名。

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  どんぐり:松本市 中央1丁目4-5   0263-35-9505

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ズート・シムズ On Ducretet Thomson

2010-12-12 21:02:05 | テナー・サックス

ジャズファン向け雑誌の「ジャズ批評」はしばしば購入していますが、先月、ディスク・ユニオンから新しい雑誌「Jazz Perspective」が発売されたので、買ってみました。内容は、特集が「スカンジナヴィアン・ジャズ」と「オーストラリアン・ジャズ」で、他に廃盤ファン向けの記事やディスクレヴューなど盛りだくさんです。僕には難しいところもありますが、ここまでこだわった雑誌はなかっただけに、コアなファンに支えられて長続きする予感がします。ディスクレヴューで取り上げられていた作品です。

ZOOT SIMS (ズート・シムズ)
On Ducretet Thomson (Ducretet-Thomson 1956年録音)

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「Jazz Perspective」のレヴェーで取り上げられた理由は、このアルバムがオリジナルの10インチLP仕様で、澤野工房により復刻・発売されたからです。僕は東芝から出されたCDは既に持っていましたが、オリジナルデザインのジャケットとLPの音に興味が湧いたので、復刻LPも入手しました。なお、掲げたジャケは、CDのものでスキャナーで撮ってあります。

メンバーは、ズート・シムズ(ts)、ジョン・アードレイ(tp)、アンリ・ルノー(p)、ぺノワ・ケルシ(b)、シャルル・ソードレ(ds)。ジェリー・マリガン・グループに加わってのフランス楽旅の際に、現地のリズム・セクションを使って録音したものですが、ズートの1956年の音は、張りがあってつややかで豊かですし、アードレイも柔かくてしなやかな音で吹いていて、ホーンの音色がよい。

曲は、アンリ・ルノー作「Captain Jetter」、アードレイ、ルノー、シムズ共作「Nuzzolese Blues」、コール・ポーターの「Everything I Love」、クインシー・ジョーンズ作「Evening in Paris」、アイシャム・ジョーンズ作「On The Alamo」、おなじみの「My Old Flame」そして、アードレイの「Little Jon Special」で、テンポもスローからアップテンポまでうまく配置されています。

フロントの二人はもちろん、現地ミュージシャンがスイングしていて、体も揺れかねない楽しい演奏が収録されています。「Captain Jetter」、「Everything I Love」がそれで、ズート、アードレイとともにルノーのソロが光ります。そして、もう一つのハイライトが、ズート・シムズがワンホーンで演奏したバラード「Evening in Paris」で、実におだやかで情感豊かなソロ・プレイに酔わされます。ルノーの短いピアノ・ソロもアクセントになっています。LPだと、この「Evening in Paris」がB面の1曲目にきて、区切りがとてもよく、なお印象深い。

【Jazz Perspective 創刊号】

株式会社ディスク・ユニオン発行、定価1000円。ほとんど広告がないのがかえって新鮮。特集記事やレコード、CDに関する記事が中心なので、公演情報などはありません。ユニオン新宿店で買ったのですが、長野市内ではタワーレコード長野店に置いてありました。2011年4月刊行予定の第2号の特集はフレンチ&イタリアン・ジャズです。

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