安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

ウィリアム・ジンサー著 イージー・トゥー・リメンバー アメリカン・ポピュラー・ソングの黄金時代

2015-01-30 21:21:01 | 読書

アメリカのポピュラー・ソングの作者とその作品が俯瞰できる、たいへん興味深く、読んで面白い本です。著者は、『本書は、わたくしとアメリカン・ポピュラー・ソングとの生涯にわたるロマンスの物語である。』と記して、歌の生成プロセスとできた歌の魅力について書いています。

      

【著者について】

著者のウィリアムス・ジンサ—は、1922年ニューヨーク生まれで、ニューヨーク・ヘラルド・トリビューンの演劇・映画担当記者、論説委員を経て、フリーのジャーナリストとして活躍し多くの著作があります。また、自らもジャズ・ピアノの演奏や作詞・作曲も手がけます。

ジンサ—は、子供のころから、また、長じては記者として、同時代のミュージカルの舞台や映画を見て、その様子や感動を綴っています。これがこの本の大きな特色になっています。

例えば、リチャード・ロジャースがみずから作詞も手がけたミュージカル「ノー・ストリングス」の実験公演を観に行ったときのことについて、『飾りけのないシンプルな曲が続くなかで、「スウィーテスト・サウンズ(甘き調べ)」が流れてきたとき、思わず座席から身を乗り出してしまった。いったいどうしたら、これほど美しいメロディーがかけるのだろうか。そのときわたしは、初期のころよりも若々しい、新たなリチャード・ロジャースを発見したのだった。』と感動を綴っています。

【歌詞の重要性】

1920年代から60年代まで、年代を追って作曲家、作詞家を取り上げて、彼らが作った歌について注釈や感想を述べていますが、ジンサ—は、特に歌詞の重要性を説いています。例えば、『歌はまず、歌詞の内容で聴き手の心をとらえるからだ。歌を聴く人は、歌詞のなかの共感できるストーリーや、歌詞を乗せるメロディーの、聴き覚えのある流れに心を動かされる。』と記しています。

また、アイラ・ガーシュイン、E・Y・ハーバーグ、ジョニー・マーサー、サミー・カーン、ベティ・コムデンとアドフル・グリーン、スティーヴン・ソンドハイムといった作詞家に焦点を当てて多くのページを割いているところからも歌詞を重視していることがわかります。

僕は英語の歌詞がほとんど聞き取れないので、レコードやCDを聴くときに、どうしてもメロディー重視で歌を聴いてしまいますが、スタンダードについては、楽譜などで歌詞を確認しながら聴くくせをつけるなど、工夫しようという気になりました。

      

「スティーヴン・ソンドハイム そしてレナード・バーンスタイン」という章に挿入された写真。作曲のバーンスタインの方に重きをおくのではないかと思ったのですが、ジンサ—は逆です。

【優れた歌とは】

ポピュラー・ソングの解剖学と題して、三つの重要な要素を著者は挙げています。その三つとは、ヴァース、コーラス、そして歌詞です。「But Not For Me」、「I Get A Kick Out Of You」、「Embraceable You」、「Long Ago And Far Away」、「Moon River」、「Just In Time」などを例にとり、優れた歌がどうできているのか音楽的な分析も含めて、わかりやすく書いています。

この章に限らず、英語の歌詞が多数掲載され、その日本語訳が添えられています。題名だけを挙げた歌もたくさんあります。それらを読むと、頭の中でメロディーが自然と流れ始めて、これが実に楽しく、どんどんとページを繰っていけます。もちろん、知らない歌がたいへん多く、著者の深遠な知識に圧倒されます。

【楽譜や写真】

著書の両親や著者自身が集めた楽譜の表紙や作曲家や作詞家の写真が掲載され、本文の理解を深めるのに役立つと同時に、その時代の雰囲気を味わうことができます。貴重なものが多くあり、これも本書の大きな特徴です。

      

「Body and Soul」の楽譜の表紙。

【丁寧な翻訳】

関根光宏氏訳による本書(国書刊行会刊)は、歌のタイトルを日本語に訳してタイトルの意味がとれるようにしている点をはじめとした、丁寧な翻訳や、詳しい索引など、出版(2014年10月25日発行)するに当たって、かなりの労力を用いている点にも感心しました。

読み応えのある優れた本です。


ジェシー・デイヴィス YOUNG AT ART

2015-01-28 21:43:48 | アルト・サックス

先日、長野市から上田市を経て安曇野市へ向かう途中、ちょっと寄り道をして青木村の「大法寺」に寄ってみました。ちょうど雪が降った日で、雪景色の国宝の三重塔を見たかったからです。期待に違わず、うっすらと雪が被さった優美な姿の塔を見ることができました。それはよかったのですが、雪のある峠道の運転はちょっと気を使いました。期待に応えてくれたアルト奏者。

JESSE DAVIS (ジェシー・デイヴィス)
YOUNG AT ART (Concord 1995年録音)

   

僕は最近、アルト・サックス奏者の新しめのアルバムをほとんど聴いていません。ペッパー、キャノンボール、マクリーンなど50~60年代のものを聴いて満足し、他に聴く気がおきないのです。、もちろん、ケニー・ギャレットのものなど何作か持っているのですが、ハードバップを聴きたいし、さらに年齢のせいもあってか、うるさく感じます。そんな中で、ジェシー・デイヴィス(as)は、僕の嗜好に合っているアルト奏者です。

メンバーは、ジェシー・デイヴィス(as)、ピーター・バーンスタイン(g)、ブラッド・メルドー(p)、Dwayne Burno(b)、レオン・バーカー(ds)、Ted Klum(as 「One For Cannon」のみ)。デイヴィスは、1965年ニューオーリンズ生まれで、エリス・マルサリスに教えを受けています。1991年に初リーダー作をコンコードから発表し、これは3作目になります。来日もしているので、実演を聴かれた方もいるのではないでしょうか。

曲は、スタンダードが、「East of The Sun」、「I Love Paris」、「Fina and Dandy」、セロニアス・モンク作「Ask Me Now」、そしてデイヴィスの自作が、「Brother Roj」、「Georgiana」、「Waltz for Andre」、「Little Flowers」、「One For Cannon」、「Tipsy」の6曲で、全10曲です。まずは、スタンダードの演奏に興味が湧きますが、デイヴィスのオリジナルも、サイドメンがいいだけに面白そうです。

当時の新鋭によるハードバップが楽しめます。デイヴィス(as)には、細かいフレーズなどキャンボール・アダレイの影響を感じますが、ファンキーぽさはなく、落ち着きがあります。スタンダードの「East of The Sun」や「I Love Paris」はアレンジが工夫され、プレイもよく、スローテンポのモンク作「Ask Me Now」はストレートで、モンクの書くメロディの見事さに気付かせてくれます。デイヴィスのオリジナルでは、ワルツの「Georgiana」がバーンスタイン(g)、メルド―(p)のソロも含めてまずまずでした。

【大法寺三重塔(国宝)】

所在地:長野県小県郡青木村当郷
電話:0268-49-2256
ホームページ:青木村 国宝大法寺三重の塔

鎌倉末期の建立で、「見返りの塔」という名前がついています。塔の姿が美しいので、思わず見返るというところから、そう呼ばれるようになったようです。

      

正面の石段の下あたりから撮ったもの。   

      

三重塔の裏手前あたりから撮りました。 

   

三重塔の裏から撮ったものです。

   

観音堂

   

観音堂の横に小さなお地蔵さまがありました。


カフェ・クレッセンド (群馬県高崎市)

2015-01-27 17:49:07 | ジャズ喫茶

群馬県高崎市のカフェ・クレッセンド(CRESCEND)に行ってきました。本来はオーディオ店であり、中古レコードも扱っています。長野市から高速道を走り、松井田妙義インターで降り、国道18号から県道10号線に入り、途中休憩も入れて2時間弱で到着しました。

   

入店して、丸いテーブル席に着席。正午前で、お腹も空いていたので、まず、ナポリタンとコーヒーのセットを注文しました。スパゲッティはヴォリュームがあり、サラダがついていました。コーヒーのカップが、お店のオリジナルで凝っています。

      

お店全体は、中古が主体のオーディオ店で、スピーカーやアンプがたくさん展示してありました。レコード売り場をさっそく見てみましたが、ハードバップ系を中心に、フリージャズやクラシックのものも置いてあります。国内盤が大部分ですが、ジャズだけで2000枚くらいはあるそうです。また、中古CDもあります。

   

店内の音楽は、アメリカのFMでしょうか、DJの声も入る放送を流しているようで、男性ヴォーカルが続けてかかりましたが、フランク・シナトラの「夜のストレンジャー」がいいムードでした。近くに行って確認したら、音の出ていたスピーカーは、クリプッシュでした。レコードの試聴もでき、放送を中断して、アニタ・オデイの「Anita Sings The Most」がちょっとかかりました。

   

      

純粋なジャズ喫茶とは言えませんが、ジャズやオーディオ好きには、よさそうなスポットです。

【カフェ・クレッセンド】

住所:群馬県高崎市浜川町1354-5
電話:027-343-9945
営業:10:00~23:00  金曜定休
ホームページ: カフェ・クレッセンド (Facebook)


ケニー・バロン AUTUMN IN NEW YORK

2015-01-25 08:17:15 | ピアノ・トリオ

きのう、北安曇郡松川村のジャズ喫茶M-Gateに行ったのですが、その前に、遅い朝食と昼食を兼ねて、近くにある「メゾンドソラマメ」というビストロに寄りました。地元産の食材を使ったフランス料理がメインのようですが、ランチメニューには、日替わりワンプレートや、パスタもありました。ワンプレートランチを頼んで、飲み物は紅茶にしました。偶然に入ったお店ですが、気軽に入れて寛げるレストランです。公園を散歩して寛ぎモードのピアニスト。

KENNY BARRON (ケニー・バロン)
AUTUMN IN NEW YORK (Uptown 1984年録音)

   

ケニー・バロンのリーダー作品は多くて、どれを聴いていいのか迷います。これは、自作やスタンダードなど曲目のよさと小気味よいトリオのプレイで、僕は気に入っているアルバムです。UptownのLPで聴いていますが、現在はCDが出ていて、そのタイトルは「New York Attitude」になっています。

メンバーは、ケニー・バロン(p)、ルーファス・リード(b)、フレデリック・ウェイツ(ds)。ベース、ドラムスともにシャープなプレイをするので、バロンとの絡みが期待できそうです。この顔触れは魅力があるのですが、残念なのは、オリジナルのジャケットが冴えないことで、バロンのコート姿はどうにもさまになっていません。

曲は、バロンのオリジナルが「New York Attitude」、「Joanne Julia」、「Lemuria」の3曲、ヴァーノン・デュークの名曲「Autumn in New York」(ニューヨークの秋)、モンクの「Bemusha Swing」、ガーシュイン作「Embraceable You」の全6曲。「New York Attitude」は、バロンが伴奏を務めた寺久保エレナ(as)のリーダー作(2011年)のタイトルにもなっています。

話題に上りませんが、バロン(p)の作品の中でも、かなりよい部類に入るものだと思います。バロン自作の「New York Attitude」は、アップテンポで疾走するピアノがとまりませんし、続く「Autumn in New York」は、一転して美しいバラードを奏で、「Joanne Julia」では、ラテン系リズムも入れてリラックスしています。「Lemuria」は、マッコイ・タイナーを思わせるようなフレーズも聴かれる熱いプレイをしています。ところどころに、シンバルを大きく入れるウェイツのドラムスも効果的です。

【メゾンドソラマメ(Maison de SORAMAME)】

住所:長野県北安曇郡松川緑町15−6
電話:0261-85-2523
営業:LUNCH   11:30-14:00 DINNER  18:00-21:30 (火,水,木)、18:00 - 22:30 (金,土)
定休日:月曜日、第三火曜日
ホームページ:メゾンドソラマメ 

   

場所は、松川村役場のすぐ近くです。

   

店内。反対側には小部屋があります。

   

壁に据え付けた棚に、ビル・エヴァンスのレコードが飾ってありました。ご主人がお好きなのでしょうか。

   

本日のワンプレートランチ。肉がおいしかった。

   

紅茶です。


山梨県立美術館とLAIDBACKレコード店 (後篇)

2015-01-23 18:58:54 | お出かけ・その他

(2)LAIDBACKレコード店

もう一つの目的は、甲府市内にある中古レコード店「LAIDBACK」に寄ることです。美術館でかなり時間を費やしたので、慌てて移動しました。

外から見ると店内は広そうで、期待がもてそうです。入店したら壁が目につきましたが、歌謡曲からロックまで各種EPのジャケットが飾ってあって、オールジャンルの取り扱いのようです。ジャズの在庫場所を、教えてもらい、片端からチェック。数は少ないですが、オリジナル盤もありました。どのレコードもきちんとクリーニングがされ、外袋を含めてきれいに保存されていて、店主のレコードに対する愛情を感じました。

   

   

ロック系統の在庫が多く、ジャズ関連はあまり入荷しないようです。レコード盤のチェックをしているのか、棚の上にあるスピーカーから、歌謡曲などが聴こえましたが、なかなかいい音で鳴っていました。レコードやCDを眺めながら、こんな音で音楽を聴かされると、僕はすぐに買いたくなります。

   

新着レコードのコーナーに、オリバー・レイク(as)がエリック・ドルフィーの曲を演奏しているレコードがあったので、面白そうだと思い、衝動的に購入しました。やや前衛的なものですが、先ほどまで、様々な絵画を見ていた影響があったのかもしれません。

      

このレコード店の近くにジャズ喫茶「Alone」があり、行きたかったのですが、今回は時間がなかったので、次回の楽しみにしました。

【LAIDBACKレコード店】

住所:甲府市中央5-3-21
営業:PM12~PM8  水曜定休
電話:055-235-5127
お店のホームページ:レコード屋LAIDBACK