長野駅前の書店に立ち寄ったら、「ジャズ・ロックって何だ?」という特集が目を引いたので、ジャズ批評2011年9月号を買いました。ジャズ・ロックというと、リー・モーガンの「The Sidewinder」が代表に挙げられるものの、定義付けや分類は難しいようです。どうせ特集するなら、リズムなど技術面の分析記事があったらもっとよかったのですが。ラテンやロック色の濃い作品も作ったヴァイブ奏者を聴いてみました。
DAVE PIKE (デイヴ・パイク)
PIKE'S GROOVE (Criss Cross 1986年録音)
デイヴ・パイク(vib)は、ビル・エヴァンス(p)が参加した「Pike's Peak」(Epic)が広く知られています。この他に、彼にはラテンものやロックに近寄った録音が多くありますが、これは、タイトル通り、ジャズど真ん中で、しかも、デリケートなプレイも楽しめる飛びきりのアルバムです。メンバーは、デイヴ・パイク(vib)、シダー・ウォルトン(p)、デヴィット・ウィリアムス(b)、ビリー・ヒギンズ(ds)。
曲は、チャーリー・パーカー作が2曲で「Big Foot」と「Ornithology」、ディジー・ガレスピー作も2曲で「Con Alma」と「Birk's Works」、パイクの自作が「Reflections in Blue」、そして、スタンダードの「Spring can Really Hang You Up The Most」、「You Are My Everything」の7曲。ただし、「Big Foot」と「You Are My Everything」は2つのテイクを収録してあり、9つのトラックです。
パーカーとガレスピーのナンバーが4曲もあり、意気込みを感じさせます。また、僕の大好きな曲「You Are My Everything(You're My Everything)」(ハリー・ウォーレン作曲)をとりあげ、やや早いテンポで美しいメロディを奏でてくれるのが嬉しいところ。この曲は、マイルス・デイビス(tp)もプレイ(「Relaxin'」に収録)するなど、ミュージシャンに愛される曲なのでしょう。パイクのヴァイブ演奏で旋律がくっきりと浮かび上がります。
パイクは、湿り気のない乾いた感じのグルービーさを醸しだしています。バックのシダー・ウォルトン以下のリズム隊のよさもあり、どれもこれも聴き逃せません。「Big Foot」では、はじめの方で、パイクがアクセントをつけてタ、ターとソロに入るところなどぞくぞくします。全体にわたり、彼はハミング(聞きようによっては唸りながら)しながらプレイしています。「Birk's Works」でも、そうなのですが、メリハリをつけたプレイ。バラード「Spring Can Really Hang You Up The Most」では、それを控えめにして繊細な扱いをしています。
【ジャズ批評2011年9月号】