安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

ビル・エヴァンス ALONE

2014-05-31 20:40:07 | ピアノ

少し前になりますが、山梨県甲府市を訪れる機会があったので、JR甲府駅からほど近い中心街にライブを盛んに行っているジャズ喫茶「JAZZ IN ALONE」があったので寄ってみました。お店はライブ向けに作ってありますが、棚の上に据えられたJBLのスピーカーからマイルス・デイビスの吹く「枯葉」のメロディが流れていて、ほの暗い照明の雰囲気に似合っていました。エヴァンスの「ALONE」を聴きます。

BILL EVANS (ビル・エヴァンス)
ALONE (Verve 1968年録音)

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甲府市は、JR中央線沿線で松本から新宿に出る際に通るので、安曇野市出身の僕は、昔から親近感を抱いている街です。山梨県立美術館や近くのワイナリーを訪れたこともありますが、ジャズのお店に入るのは初めてです。ジャズ喫茶では「Aroma」もありますが、残念ながら訪問した時にはお休みでした。

キース・ジャレットのケルンコンサートがヒットした1970年代に、ソロ・ピアノブームというのがあったように記憶しています。僕は、あまり関心を持ちませんでしたし、今もそうソロ・ピアノを聴こうとは思いません。それでも、このエヴァンスの「Alone」は、愛聴盤になっています。名盤として挙げられますが、初めはスイング感に乏しい気がしてほとんど聴かなかったのですが、今では大事な一枚になっています。

曲は、スタンダード中心です。「Here's That Rainy Day」、「A Time For Love」、「Midnight Mood」、「On A Clear Day」(晴れた日に永遠が見える)、「Never Let Me Go」の5曲。日本盤のCDはここに2曲追加で、「All The Things You Are / Midnight Mood」と「A Time For Love」(別テイク)が入っています。アルバムのまとまりと聴いた後の余韻を大事にしたいので、CD追加の2曲は聴かないようにしています。

両手をフルに使い、メロディとともにハーモニーの豊かさ、美しさが溢れています。「Here's That Rainy Day」や「A Time For Love」は、繊細で、エヴァンスが微妙に力の入れぐあいを変えながら響きを変化させている様が目に浮かぶようです。「Never Let Me Go」のテーマと変奏は、抒情性はもちろん、浮遊感や寂寥感も感じられて、この1曲だけでも価値のあるアルバムだと思っています。

【JAZZ IN ALONE】

住所:山梨県甲府市中央4-3-25
電話:055-232-2332
お店のホームページ:ジャズ・イン・アローン

 

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「SINCE1974」と書かれている看板。面白い形の珈琲カップ。

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お店の外観です。ビルの2階がAloneで、右端の階段を上がります。

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お店のカウンターの向こうに側にレコード、スピーカーが見えます。 

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窓側は、演奏スペースになっていて、グランドピアノ、ドラムセットなどが置いてあります。   


ベニー・ウォレス BENNY WALLACE IN BERLIN

2014-05-28 20:15:19 | テナー・サックス

サイトウ・キネン・フェスティバルが今年も長野県松本市で開催されます。高校時代の友人が、同フェスを主宰している、サイトウ・キネン・財団に今年から務めていて、チケットの販売促進も行っています。販売は6月7日からですが、できる範囲で協力するつもりです。小澤征爾指揮の「幻想交響曲」やオペラの「ファルスタッフ」はよさそうだし、ジャズのマーカス・ロバーツ・トリオも気にかかります。どれに行こうか迷っていますが、まずは財布の中身と相談です。フェスティバルにおけるライブ録音。

BENNY WALLACE (ベニー・ウォレス)
IN BERLIN (enja 1999年録音)

   Bennywallaceinberlin

定価1000円(税抜き)程度の廉価盤CDがこのところいろいろと出されていますが、有難いことに、enjaレーベルのものが4月に30タイトル発売になりました。enjaは、設立が1971年で、比較的新しい録音が多いだけに、廉価で再発になるとは思っていませんでした。とりあえず聴きたかったものを5枚購入しましたが、その一つがベニー・ウォレスのこのアルバムです。

メンバーは、ベニー・ウォレス(ts)、ジョージ・ケイブルス(p)、ピーター・ワシントン(b)、ハーリン・ライリー(ds)。1999年11月6日、ベルリン・ジャズ・フェスティバルにおける実況録音。ベニー・ウォレスは、荒々しいブローで、音の固まりを吹くテナー奏者といった印象があったので、LPを一枚持っているだけで、ほとんど聴いていませんでした。しかし、これは曲目にスタンダードが多いことも幸いして、僕にも楽しめる魅力的なアルバムでした。

曲はスタンダードが、「It Ain't Necessarily So」、「I Love You, Porgy」、「It's Only A Paper Moon」、「Someone To Watch Over Me」の4曲、ウォレスの作が、「It Has Happened To Me」(「It Could Happen To You」のコード進行)、「Thangs」(「All The Things You Are」のコード進行)、「At Lulu Whites」の3曲。ウォレスのオリジナルといっても、スタンダードのコード進行を借りていたり、「Thanga」のイントロは、「All The Things You Are」と同じものなので、1曲を除き、どこかで聴いたことのあるメロディが流れます。

ベニー・ウォレス(ts)のハードな深い音色によるスタンダードが楽しめます。また、ジョージ・ケイブルス(p)がスピード感に満ちたプレイを行っています。「It Ain't Necessarily So」や「Someone To Watch Over Me」などにおけるウォレスの吹奏は、テーマをストレートに吹いて、その美しさを際立たせ、ソロになると一転して個性的で強烈になります。この落差も悪くありません。お祭りに相応しくカリプソ調の「It's Only A Paper Moon」では、ケイブルス(p)の素晴らしくスイングして爽快なソロ、ライリー(ds)のメロディアスで洒脱なソロと、リズム陣がかっこよくて痺れました。

【2014サイトウ・キネン・フェスティバル松本 パンフレット】

サイトウ・キネン・フェスティバル松本ホームページ

 

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ジェリー・マリガン JERU

2014-05-25 08:27:32 | その他木管楽器

4月から片道30~40分の徒歩通勤をしています。朝は、長野駅近くのタリーズやスターバックスで珈琲を飲むことも多く、自然と早足になっていますが、この季節は花壇や敷地の隅に色とりどりの花が咲いていて、足を止めることがたまにあります。先日も「かきつばた」や「つつじ」が目にとまりました。住宅敷地の端なのですが、自然な野山にあるといった趣きで、さりげなく咲いているのが良い感じです。さりげなく聴こえる演奏を。

GERRY MULLIGAN (ジェリー・マリガン)
JERU (COLUMBIA 1962年録音)

   Jeru   

バリトン・サックスのジェリー・マリガンは、1950年代にチェット・ベイカーと組むなどピアノレスのコンボで活動をしていましたが、ここではトミー・フラナガン(p)を迎えて、ピアノ入りのワン・ホーンによるプレイをしています。僕はLPで聴いていますが、最近、廉価盤CDが発売になりました。

メンバーは、ジェリー・マリガン(bs)、トミー・フラナガン(p)、ベン・タッカー(b)、デイヴ・ベイリー(ds)、キャンディド(コンガ)。コンガを入れた意図がよくわからないのですが、邪魔にはなっていないので気にはなりません。フラナガンは、ここでもよいプレイをしていて、「Here I'll Stay」や「Inside Impromptu」などで琴線に触れるフレーズ、ニュアンスで弾いています。

曲は、佳曲が並びました。ピアニストのビリー・テイラー作が2曲で「Capricious」と「Inside Impromptu」、クルト・ワイル作「Here I'll Stay」、サイ・コールマン作「You've Come Home」、コール・ポーター作のスタンダード「Get Out Of Town」、ジェリー・マリガンの自作「Blue Boy」、レナード・バーンスタイン作「Lonely Town」の全7曲。「Here I'll Stay」は、もっと演奏されてもよいと思わせる美しい曲です。「Lonely Town」については、フラナガンが1959年にブルーノート・レーベルで録音しています。

バリトン・サックスによる低く柔かい響きの、寛いだ演奏が堪能できます。フラナガン(p)をはじめリズム陣もしっかりとサポートしています。「Capricious」は、ボサノヴァのリズムで、マリガン(bs)が明るくプレイし、「Here I'll Stay」は、もともとの曲がいいこともありますが、マリガン、フラナガン(p)がさりげなく心地よいフレーズを連発しています。「Inside Impromptu」や「Blue Boy」では、端正な演奏の中に意外にブルージーさが漂っています。

【通勤途上の花たち 2014年5月】

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ジャッキー・アレン WHICH?

2014-05-21 19:50:38 | ヴォーカル(E~K)

先週、職場の仲間と長野駅東口に最近オープンした居酒屋「山内農場」に行ってきました。白木屋や魚民を展開している居酒屋チェーンのモンテローザ系列のお店なので、他と同じような印象ですが、「さつま揚げ」や「きびなご」など鹿児島のものがあるのが特徴です。東京に出向していた時、出向先に鹿児島出身の同僚がいて、郷里から送ってもらった本場の薩摩揚げをつまみによく飲んでいました。その時に、ほんのりと甘い薩摩揚げの味を覚えました。ちょっと甘さもあるヴォーカルです。

JACKIE ALLEN (ジャッキー・アレン)
WHICH? (NAXOS 1999年録音)

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10年前くらいまで、クラシックについては、廉価盤のNAXOS(ナクソス)レーベルのCDを良く購入していました。そのナクソスが、当時、マイク・ノック(オーストラリアのピアニスト)を総合プロデューサーに迎えて、ジャズの新規録音を行いましたが、そのうちの一枚がこのアルバムで、クラシックを買いに行って、目にとまり購入したものです。

ジャッキー・アレンは、シカゴを中心として活躍し、現在もコンサート・ツァーを行っている現役の歌手です。ブルーノート・レーベルにも録音を残していますが、日本ではほぼ無名だと思います。ジャズ批評2012年9月号の特集「いま旬の歌姫たち」の99ページに「Starry Night」という彼女のアルバムが掲載されているのが唯一の紹介かもしれません。

メンバーは、ジャッキー・アレン(vo)、ビル・カンリフ(p)、レッド・ホロウェイ(ts)、ゲーリー・フォスター(as)、ブルース・ポールソン(tb)、ジム・ヒューガート(b)、ロイ・マッカーディー(ds)。伴奏は、西海岸のベテラン・ミュージシャンが務めています。編曲は、ほとんどをビル・カンリフが行っています。

曲はスタンダード、ジャズ・オリジナル、自作と多彩です。「Too Hot For Words」、「Day Dream」、「Doodlin'」、「Lost in The Stars」、「Dearly Beloved」、「My Romance」、「In You Go」(アレンの自作)、「Left Alone」(レフト・アローン)、「It Was A Little Lonely」、「Which?」、「Admit It」(アレンの自作)、「I'm Just A Woman」、「It's Bad For Me」、「The Meaning of The Blues」、「The Last Dance」。全15曲ですが、曲名を見ると、レパートリーの広さに驚かされます。

ジャッキー・アレンが、やや低め(アルトといっていいと思います)のよく響くなめらかな声で、傾向の異なる曲を歌っています。スローな曲では、高音を伸ばし、一部ではスキャットも取り入れています。ホレス・シルヴァー作「Doodlin'」や「I'm Just A Woman」では、ホロウェイ(ts)やカンリフ(p)のソロも入り、グルーヴィーで、華やかで寛いだセッションといった一面もあります。マル・ウォルドロン作「Left Alone」では、じっくりと語りかけるようですし、「The Last Dance」は、爽やかなボサノヴァ仕立て。伴奏も含めジャズ・ヴォーカルらしい作品です。

【ジャッキー・アレンのホームページ】

http://www.jackieallen.com/

【長野駅東口 山内農場】

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山内農場の入り口、薩摩揚げときびなごのから揚げをスマホで撮りました。このさつま揚げを食べに既に2回飲みに行っています。

【ジャズ批評 いま旬の歌姫たち】

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左が、特集として「いま旬の歌姫たち」を組んだ2012年9月号です。右は、その続編として「いま旬の歌姫たち PART2」が特集された2014年5月号です。


ケニー・ドーハム BLUE SPRING

2014-05-18 09:01:21 | トランペット・トロンボーン

飯田市に実家がある、長野市在住の友人から、実家の裏山で採ってきたという「たけのこ」をいただきました。この春の時期がちょうど旬で、飯田市の北隣りの下伊那郡豊丘村では、たけのこ掘り(収穫)の体験も行っています。奥さんが、いただいた「たけのこ」を油揚げや豚肉などと一緒に煮てくれましたが、新鮮で柔らかくて最高でした。山菜の時期でもあり、春の自然の恵みに感謝しました。春がテーマになっています。

KENNY DORHAM (ケニー・ドーハム)
BLUE SPRING (RIVERSIDE 1959年録音)

   Bluespringkennydorham

先日、山梨県甲府市で30度を記録するなど、今年も猛暑が予想されます。そろそろ初夏に向かう時期だと思いますが、一応まだ春でしょう。そこで、遅ればせながら、春に関連する曲を集めたアルバムを聴いてみました。春に関連した曲は、他にも「Spring Will Be a Little Late This Year」、「Some Other Spring」、「Joy Spring」、「April In Paris」といったものもあり、春に限らず季節を題材とした曲は結構ありますね。

メンバーは、ケニー・ドーハム(tp)、キャノンボール・アダレイ(as)、セシル・ペイン(bs)、デビッド・アムラム(フレンチ・ホルン)、シダー・ウォルトン(p)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(ds)、又はフィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)。7人編成の大型のコンボで、バリトンサックスやフレンチホルンを加えて、サウンドに幅を持たせています。編曲は全てドーハムが行っていて、大型コンボによる異色作ともいえます。

曲目は春に関連したものが主です。ドーハムが、このセッションのために書いたものが4曲で、「Blue Spring」、「Poetic」、「Spring Cannon」、「Passion Spring」、スタンダードが、「It Might as Well Be Spring」(春の如く)、「Spring is Here」の2曲で全6曲。「Blue Spring」は、それらしいタイトルですが、「Passion Spring」は、情熱の春、恋愛の春とでも訳せばいいのでしょうか、はっきとした意味はわかりませんが、ちょっと気にかかる曲名です。

大型コンボによるアンサンブルやテンポがおおむねミディアムなこと、また、各人のソロ・プレイなど、全体に暖かくおだやかな印象のアルバムです。ドーハムのオリジナルの「Blue Spring」は佳曲といってよく、適度にブルージーで、彼のアドリブもスムーズでメロディアスです。「It Might As Well Be Spring」では、ドーハム(tp)とアダレイ(as)が対照的なソロをとっていて面白く、重厚なアンサンブルとシダー・ウォルトン(p)らのソロも入る「Passion Spring」もよかった。

【たけのこの煮物】

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自分で盛ったので、盛りつけ方はいま一つですが、味の方は最高でした。