安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

恩田 陸著「ブラザー・サン シスター・ムーン」(河出文庫)。主人公は著者の分身で、文学、ジャズ、映画が背景の青春物語。

2024-11-21 19:30:00 | 読書

最近、近世(戦国~江戸時代)の歴史関連の小説を読んでいたのですが、現代の青春物語もたまには良いかと、書店で目についた恩田陸著「ブラザー・サン シスター・ムーン」(河出文庫)を購入しました。

   

表紙

(カバー裏にある本書の紹介)

   

(目 次)

   

(感想など)

恩田陸さんの小説は、「祝祭と予感」(幻冬舎文庫)を読んだだけで、映画「蜂蜜と遠雷」は観たものの、その原作は読んだことがありませんでした。音楽に詳しい方だと記憶に留めていましたが、今回の「ブラザー・サン シスター・ムーン」(河出文庫)には、感心を通り越して感動しました。

小説は3部作で、関連はあるもののそれぞれに主人公がいます。読み進むと、この主人公3人は、著者の学生時代の自らの体験を元に創作した、著者の分身だとわかります。第一部は、主人公が女性で、結末に小説を書くことへの志が宣言されていて、まさに恩田さんのスタート地点を描いたもの。

第二部は、主人公が男性ですが、早大のモダンジャズ研究会を舞台に描いていて、著者の早大ビッグバンド (通称「ハイソ・オーケストラ」)在籍4年間の体験が反映されています。この第二部はジャズ小説といってもよいと思われ、文庫収録の特別対談も含めて、とても楽しめました。

(著者略歴)

   

(恩田陸さん関連の拙ブログ記事へのリンク)

恩田陸著「祝祭と予感」(幻冬舎文庫)を読みました。

映画「蜂蜜と遠雷」を観ました。(10月24日 山形村アイシティシネマ)

(参考)【第2部の登場人物に関連したホームページ】

早稲田大学モダンジャズ研究会

早稲田大学ハイソサエティ・オーケストラOfficial Website-音楽


近衛龍春著「伊達の企て」(毎日文庫)。伊達政宗の天下取りの野望を描いて、面白い。

2024-11-08 19:30:00 | 読書

近衛龍春著「伊達の企て」(毎日文庫)が、この10月30日付けで発行されたので、購入しました。DVDで観たNHK大河ドラマ「独眼竜政宗」が面白く、伊達政宗とその家臣団への興味が持続しています。

   

(表紙)

(カバーにある本書の紹介)

   

(目 次)

序章   石垣山城の屈辱
第一章  野望の目覚め 
第二章  天下分裂 
第三章  百万石交渉 
第四章  白石城奪取 
第五章  奥羽連合軍構想 
第六章  一揆のつけと大震災 
第七章  最後の賭け 
終章   新たな企て 

(感想など)

作家の近衛龍春さんが伊達政宗をどのように描いているのか興味津々で、一気に読みました。全体には、「伊達の企て」というタイトルどおり、政宗の天下取りの野望に焦点を当てて、その角度から出来事も記してあります。

関ヶ原の戦(1600年)時において、伊達政宗は、戦乱が長引くことを望み、それに乗じて領地を増やそうとしていたのに、すぐに決着。大坂夏の陣(1916年)でも、豊臣方と徳川方の争乱が長引くことを期待したのに、すぐ終結し、徳川家康の前に政宗の野望が実現することはなかったのですが、領地拡大への執念は、戦国大名らしくて、感服しました。

大坂夏の陣で、政宗が家康の陣地に乗り込むために、その進路上にいる味方を攻撃して排除しています。家康を助けるためか、葬り去るためか、多分後者だと思いますが、事実かどうか不明なものの驚愕しました。全体にテンポも良くて、どんどん読み進める小説です。

(著者略歴)

   

(参考)

   

NHK大河ドラマ「独眼竜政宗」(1987年放送)。DVDで観ましたが、いくつか観た大河ドラマの中で、抜群に面白いものでした。

【毎日新聞出版のホームページ】

伊達の企て【毎日文庫】 | 毎日新聞出版

 

(参考 拙ブログの近衛龍春さんの書籍に関するその他の記事)

近衛龍春著「毛利は残った」(角川文庫)を読了。関ヶ原の戦で西軍の大将だった毛利輝元のお家存続をかけた奮闘。

近衛龍春著「南部は沈まず」(角川文庫)。現在の岩手県を舞台とした大名「南部氏」の物語。

(参考 拙ブログのNHK大河ドラマ「独眼竜政宗」に関する感想など)

NHK大河ドラマ「独眼竜政宗」を観て、佐藤貴浩著「奥州の竜 伊達政宗」(角川新書)を読みました。

 


近衛龍春著「毛利は残った」(角川文庫)を読了。関ヶ原の戦で西軍の大将だった毛利輝元のお家存続をかけた奮闘。面白いです。

2024-11-01 19:30:00 | 読書

戦国大名の南部氏のことを書いた小説「南部は沈まず」が面白かった(その記事へのリンク)ので、続けて、近衛龍春さんの小説を読んでいます。「毛利は残った」(角川文庫)も良かった。

   

表紙

(本書の紹介)

   

(感想など)

関ヶ原の戦いで西軍の総大将となるも、敗戦によりお家の存続に向け奮闘する毛利輝元を取り上げた著者の慧眼に、感心しました。長州藩は幕末期、第二次幕長戦争で幕府に勝利し、その後、政治の主導権を握っていくことにもなりますが、その端緒ともいうべき点でも興味深かった。

関ヶ原の戦いで総大将に祭り上げられるところやその戦いの見通しについても、お気楽なおぼっちゃまという感じですが、敗戦後の減封処分に耐えながら、借金の返済や度重なる幕府からの普請要請をこなしていく輝元の変わりようは、まるで別人のようで、驚きました。

歴史上のストーリーとともに、非情な部分を残しながら、人間味も持ち合わせた輝元の内面に言及し、また、家臣団の思いや団結ぶりも描かれていて、素材の新鮮さに加え、小説としてもうまくできています。

(著者略歴)

(残念だった小説)

   

表紙

(本書の紹介)

(感想など)

実は、黒田官兵衛を主人公とする大河ドラマを観て、その息子の黒田長政にも関心があったので、近衛龍春著「黒田長政」(PHP文庫)も読みました。でも、つまらなかったので、同じ著者でも出来不出来があると思わされました。

偉大な父官兵衛(黒田如水)の話が多く、そこに長政が添え物で登場するような場面が多く、長政本人の物語となっていないのが、つまらない原因だろうと思いました。


近衛龍春著「南部は沈まず」(角川文庫)。現在の岩手県を舞台とした大名「南部氏」の物語、面白い。

2024-10-18 19:30:00 | 読書

先の札幌・小樽旅行の新幹線車内では読書三昧でした。東北地方を通過していくので、岩手県に関連した小説を読みました。戦国大名の南部氏の物語ですが、結構面白くて、上下巻読了しました。概要です。

  

   

上巻の表紙

(本書上巻の紹介)

   

   

下巻の表紙

(本書下巻の紹介)

   

(感想など)

初めて近衛龍春(このえ たつはる)さんの著書を読みました。歴史小説だと、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康とその周辺を題材にしたものが多いですが、著者は、当時の辺境地の大名も取り上げていて、それだけで興味を覚えます。

南部氏は、盛岡を本拠にした大名家で明治まで続きました。本書は、その始祖ともいうべき南部信直、利直親子の奮闘を描いています。史料に基づいた小説なので、固い面や詳細過ぎる著述もありますが、事実の面白さに圧倒されました。

南部利直の二度にわたる津波被害を乗り越えた不屈の闘志には感銘を受けました。検地が未実施だったのにも係わらず、その復興状況に照らして、徳川家康は改易せずに、お家を存続させたのにも感激。伊達政宗の領地奪取にかける意気込みがすさまじく、その点は南部家に同情しました。

 

(著者略歴)

   

 

 

   


篠崎史紀(N響特別コンサートマスター)著「音楽が人智を超える瞬間」(ポプラ新書)と映画「シャイン」。

2024-09-27 19:30:00 | 読書

先日のN響高崎公演(その記事)でコンサートマスターを務めていた篠崎史紀さんが書いた本がちょうど発売になったので、購入しました。

   

(本書の概要)

「マロ」の愛称で知られ26年間務めあげたN響第1コンサートマスターという肩書を超えて、様々な活動で知られる唯一無二のヴァイオリニスト「篠崎史紀」さんが、人生、音楽、教育、多彩すぎる趣味などについて語った本。クラシック音楽愛好家はもちろん、そうでない人も愉しく読める内容です。

(おおまかな目次)

第1章 ウィーンが「音楽の流儀」を教えてくれた
       ヴァイオリン教師の楽譜をこっそり盗んでは練習する日々
       イヴリー・ギトリスとの出会い
第2章 ウィーンで身につけたマロ流妄想力
      「モルダウ」と「新世界」の妄想的背景
第3章 北九州が「人生の流儀」を育んでくれた
第4章 N響が「コンサートマスターの流儀」を確立させてくれた
      サヴァリッシュとの思い出と堀さんの思い
      フェドセーエフを救った「くるみ割り人形」
第5章 偉大なマエストロたちが音楽の流儀を教えてくれた
      シャルル・デュトワ、ウラディーミル・アシュケナージ、アンドレ・プレヴィン
      パーヴォ・ヤルヴィ、ファビオ・ルイージ、ヴォルフガング・サヴァリッシュ
      ヘルベルト・ブロムシュテット、ロリン・マゼール、ロジャー・ノリントン
      トゥガン・ソヒエフ、ネッロ・サンティ、ワレリー・ゲルギエフ
第6章 いま、日本の音楽界に、そして故郷に伝えたい思い

(感想など)

NHK交響楽団のコンサートマスターを26年間務め、現在は同楽団の特別コンサートマスターである篠崎史紀さんが書いた本なので、特に、来日した指揮者とのやりとりや評価が記されている第4章や第5章が印象に残りました。

指揮者について、著者はトゥガン・ソヒエフさんのことを『言葉では説明できないけれど、とにかくすごい』というタイプとして、高く評価しています。僕は一度だけソヒエフの指揮でN響を聴いたことがありますが、また聴いてみたい。

第1章に登場するおじいさんと第4章のフェドセーエフさんの話は、ナチスドイツの行為や戦争の悲惨さを物語るもので、平和の大切さと音楽の力に思いを至らせてくれるものでした。また、映画「シャイン」の主人公「ヘルフゴット」と著者との邂逅が劇的で、篠崎さんの才能を見抜く力がすごいと感嘆。

(文中で印象に残った箇所・写真など)

著者は、ウィーン市立音楽院で、トーマス・クリスティアンについて学んでいます。

スイスで開催されたイヴリー・ギトリスの講習会で、篠崎さんが練習しているところに、突然現れたデイヴィッド・へルフゴット。すぐ才能に気づき、二人は非公開の演奏会を行うことに。ヘルプゴットは、1995年の映画「シャイン」の主人公のモデル。

2015~22年にN響首席指揮者を務め、その後は名誉指揮者になったパーヴォ・ヤルヴィと著者。

2022年からN響首席指揮者を務めるファビオ・ルイージと筆者。ルイージがオペラを振れることも評価していました。僕は、サイトウキネン(セイジオザワ)フェスで、チャイコフスキーの「エウゲニー・オネーギン」を彼が指揮しているのを観ました。

トゥガン・ソヒエフは、2008年10月にN響と初共演。特に2016年以降N響と共演を重ねている。『うまく言葉では言い表せないけれど、とにかくすごい、と思った指揮者のひとりはロシア出身のトゥガン・ソヒエフ。有無を言わせぬハンドパワー・・・を持っている。』と著者は評価しています。

(映画「シャイン」)

   

 (概要)

デヴィッドは、音楽家になれなかった父親ピーターから英才教育を受けて育った。父親の反対を押切って、ロンドンに留学したデヴィッド。だが緊張と父親との対立から、彼は精神を病んでしまう。実在の天才ピアニスト、デヴィッド・ヘルフゴットの半生を描いた作品。アカデミー賞主演男優賞受賞など受賞多数。

著者は、実際のデヴィッド・へルフゴットと、非公開の演奏会で共演しています。このエピソードには驚きました。DVDで一度観たことがありますが、この本をきっかけに、再視聴しました。