安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

オリバー・ケント 400 YEARS AGO TOMORROW

2012-10-28 23:21:30 | ピアノ

秋が深まってきて、僕の勤務地である、南信州(長野県飯田市・下伊那郡地方)では、各地で農作物の収穫イベントが開催されつつあります。そんな中、とある収穫祭(宴会)に招待されたので、出席しました。珍しい伝統野菜を含む新鮮な食材を使ったお料理をいただきながら、地元のワインなどお酒も飲みました。どれも美味しくて、実りの秋に感謝。瑞々しい作品。

OLIVER KENT (オリバー・ケント)
400 YEARS AGO TOMORROW (MONS 1997年録音)

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オリバー・ケント(p)は、Roman Schwaller(ts)のアルバムで知ったピアニストです。1969年にオーストリアのインスブルックで生まれ、ウィーンで学び、1993~95年には、アメリカでエディ・ヘンダーソン(tp)らと共演し、帰国後は、ウィーンを本拠に活躍しています。はじめ、ウィントン・ケリーを思わせるフレーズが出て興味を惹かれたのですが、ハービー・ハンコックなど新主流派に近いイメージです

オーストリアのピアニストといえば、フリードリッヒ・グルダを思い浮かべますが、ウィーン出身のジョー・ザヴィヌルやローランド・バティックといった人もいます。ケントもクラシックを学んでから、ジャズへ向かっています。ここでの彼の演奏を聴くと、ピアノのせいもあるかもしれませんが、まろやかで磨き抜かれた音色に、クラシックをしっかり勉強した形跡がうかがえます。なお、録音場所はニューヨーク。

メンバーは、 オリバー・ケント(p)、Essiet Essiet(b)、Joris Dudli(ds)。Essiet Essietは、ニューヨークのミュージシャンで、多くのハード・バップ系の録音に参加しています。Joris Dudliは、ケントと長年共演しています。曲は、ケントの自作が、「Plenty Of Twenty」、「Five Moons Around Venus」、「Deja Vu」、ボビー・ティモンズ作「This Here」、ウォルター・デイヴィス作「400 Years Ago Tomorrow」、スタンダードの「Autumn Nocturne」、「Skylark」、「My One And Only Love」の8曲。

ハードバップがベースですが、小気味良さに加えて、抒情性のあるイントロやモーダルな響きもあり、フレッシュな初リーダー作です。タイトル曲の「400 Years Ago Tomorrow」は、3人による疾走感が素晴らしく、ティモンズ作「This Here」は、ファンキーさは控え目で、爽やかなプレイぶり。バラードの「Autumn Nocturne」と「Skylark」は、スローテンポで、ピアノの音色の美しさとともに、ブラシによるサポートの良さが光ります。

【収穫祭りのお料理】

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伝統野菜 (この地域でしか栽培されていないもの)など、こちらで採れたものばかりです。下栗芋、ていざなす、清内路かぼちゃ、清内路黄芋などが入っています。果物は、シナノゴールド、シナノスイートはりんご、南水は梨、バラードは洋梨です。お料理も凝ったものでした。


青江三奈 THE SHADOW OF LOVE

2012-10-24 23:09:29 | ヴォーカル(A~D)

先週の土曜日の午前中、横浜市内をぶらぶらしていました。伊勢佐木町、馬車道、中華街と、横浜ならではの古い建築物を眺めながらの散歩は、とても楽しいものでした。散歩の途中、前から行きたかった、青江三奈の「伊勢佐木町ブルース」の歌碑に寄ることができました。彼女は歌謡曲の演歌歌手とされますが、その歌いぶりや、曲(編曲)にモダンなところを感じて、僕は隠れファンとなり、発売当時のEPも何枚か持っています。今夜は「Burbon Street Blues」(伊勢佐木町ブルース)収録のアルバム。

MINA AOE (青江三奈)
THE SHADOW OF LOVE (VICTOR 1993年録音)

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先日、テレビで青江三奈の生涯をドキュメンタリー風に描いた番組を放映していました。番組名は不明でしたが、2000年に若くして亡くなった彼女の歌手としての経歴などをたどるもので、感動的な場面が出てきてテレビにくぎ付けになりました。水前寺清子がインタビューに応えて、「青江三奈は、ジャズなど何を歌ってもうまかった」と語っていました。これは、1993年にニューヨークで、スタンダード曲を中心に録音したものです。

メンバーが豪華です。青江三奈(vo)、フレディ・コール(p,vo)、グローヴァー・ワシントン JR.(as)、エディ・ヘンダーソン(tp)、ジム・パウエル(tp)、テッド・ナッシュ(ts)、ジェリー・バード(g)、マル・ウォルドロン(p)、ジョージ・ムラーツ(b)、ビリー・ハート(ds)、Steve Berrios(per)。中でも、フレディ・コールは、4曲(「It's Only A Paper Moon」、「Love Letters」、「Harbour Lights」、「Green Eyes」)で青江三奈とデュエットで歌っています。

曲は、ほとんどスタンダードで、「Cry Me A River」、「It's Only A Paper Moon」、「The Man I Love」、「Love Letters」、「Lover, Come Back to Me」、「Bourbon Street Blues」(伊勢佐木町ブルース)、「Harbour Lights」、「When The Band Begin To Play」、「What a Difference A Day Made」(恋は異なもの)、「Green Eyes」、「Gray Shade of Love」、「Sentimental Journey」、「Honmoku Blues」(本牧ブルース)の13曲。

英語の発音はそうよくないし、演歌的な節回しが出たりしますが、彼女のハスキー・ヴォイスは効果的で、メンバーのソロやフレディ・コールの歌もつぼを得ており、全体にジャジーです。歌と編曲がよく、ジェリー・バードのギターやジョージ・ムラーツのベースソロも入るグルーヴィーな「Honmoku Blues」(本牧ブルース)、伊勢佐木町ブルースの英語詞版の「Bourbon Street Blues」、「What A Difference A Day Made」(恋は異なもの)あたりが聴きもので、「Love Letters」などコールとのデュエット曲は、二人ともリラックスして歌っていて雰囲気がよく出ています。

【伊勢佐木町ブルース歌碑】 

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ボブ・ロックウェル THE JOKER

2012-10-21 21:14:31 | テナー・サックス

おとといの金曜日、横浜の杉田劇場で行われたボブ・ロックウェル(ts)のコンサートに行ってきました。ロックウェルについては、CDを何枚か聴いてファンになっていたので、ちょうどいい機会でした。内容はたいへん充実していて、彼のサウンドの美しさ、フレーズの切れのよさに、満足し、興奮もしました。低音から高音までミストーンらしきものはなく、ブルーズでは思いきったヴィブラートをかけたり、テクニックもすごそうでした。コンサート会場で購入し、サインをしてもらったアルバム。

BOB ROCKWELL (ボブ・ロックウェル)
THE JOKER (Marshmallow 2006年録音)

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今回、ロックウェルは単身の来日で、リズムは、小野孝司(p)、荒巻茂生(b)、力武誠(ds)の3人が務めました。アドリブをたっぷりととった熱いハードバップに、すっかり魅了されました。エルモ・ホープの「So Nice」でスタートし、T・モンク、C・パーカー、B・ウェブスター、B・フリーゼルらの作品や、バラード系では、エリントン=ストレイホーン作「Day Dream」、ヴィクター・ヤング作「Love Letters」が演奏されました。

さて、このアルバムですが、メンバーは、ボブ・ロックウェル(ts)、キャスパー・ヴィヨーム(p)、イェスパー・ボディルセン(b)、ラスムス・キルべり(ds)。4人は、2006年の来日時のメンバーで、録音もその時に横浜で行われたもの。ロックウェルは、米国マイアミの出身ですが、1983年からデンマークのコペンハーゲンに移住しており、ピアノとベースはデンマーク出身、ドラムスはスウェーデン出身で、国際色豊かです。

曲は、デクスター・ゴードン作「Cheese Cake」、エディ・ハリス作「Mean Greens」、セロニアス・モンク作「Work」、リー・モーガン作「The Jorker」、ジョー・ヘンダーソン作「Teeter Totter」、ベン・ウェブスター作「Bounce Blues」、ロックウェルの自作「Phil's Delight」、そして、スタンダードが4曲で「When I Grow Too Old To Dream」、「Portrait Of Jennie」、「Time After Time」、「I've Got You Under My Skin」の全11曲。ジャズ・オリジナルでも「Cheese Cake」や「The Joker」といった親しみやすいものが入っています。

スケールの大きいハードバップが聴けるアルバムで、ロックウェル(ts)のアドリブは、へんにこねまわさず、メロディが感じられます。最初の曲、D・ゴードン作「Cheese Cake」を聴いた途端、僕は顔がほころびました。好きな曲だけに嬉しい収録で、しかも丁寧なプレイぶりです。「Work」、「The Joker」、バラードの「Time After Time」あたりも印象的です。ヴィヨーム(p)は、闊達さに加え、繊細なところもあり、「Cheese Cake」の素晴らしいバッキングや、「The Joker」では乗りのいい楽しい演奏を披露するなど貢献しています。

【ボブ・ロックウェル・コンサート・チラシ】 

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セルダン・パウエル THE SELDON POWELL SEXTET

2012-10-17 23:40:48 | テナー・サックス

先日、山に詳しい人の案内で、長野県下伊那郡内にある、きのこの採れる山に行ってきました。今年は、マツタケが不作で、気温が高いことに加え、この地域は少雨の影響があり、山が乾いているのが原因だとのことです。1時間以上、右往左往していましたが、僕は雑キノコをいくつか採っただけです。町に戻ってきて、きのこの専門家に見てもらったら、食べれるもので、山の恵みに感謝しました。味わい深いテナーです。

SELDON POWELL (セルダン・パウエル)
THE SELDON POWELL SEXTET (ROOST 1956年録音)

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1928年生まれのセルダン・パウエル(ts)は、実力を買われて、サイ・オリヴァー、ドン・レッドマン、ベニー・グッドマン、ウディ・ハーマン、サド・ジョーンズ=メル・ルイスなど多くのバンドに在籍しました。持ち替えでフルートも吹くので、サックス・セクションには格好の人材だったのでしょう。リーダー作は少ないですが、先ごろ、東芝の999円CDシリーズで、2枚のリーダー作が復刻されたのは朗報で、これは、そのうちの1枚です。前回記事のナット・アダレイの「Autobiography」では、サイドメンとしていいプレイをしていました。

メンバーは、セルダン・パウエル(ts)、ジミー・クリーブランド(tb)、フレディ・グリーン(g)、ローランド・ハナ(p)、アーロン・ベル(b)、オシー・ジョンソン(ds)、ガス・ジョンソン(ds)。副題に、「Featuring Jimmy Cleveland」とあって、クリーブランドにも焦点を当てています。フレディ・グリーン(g)のリズム・ギターも入っているので、是非いい再生装置でリズム隊を聴きたいところです。

曲は、バラエティに富んでいます。ガレスピーの「Woodyn' You」やビリー・ストレイホーンの「A Flower is A Lonesome Thing」、スタンダードの「She's Funny That Way」、「I'll Close My Eyes」、「Undecided」、「Sleepy Time Down South」、セルダン・パウエルの自作が4曲で、「Lolly Gag」、「11the Hour Blues」、「Button Nose」、「Biscuit For Duncan」、そして、M.Goldという人の「Missy's Melody」、Blakeという人の「It's A Cryin' Shame」の全12曲。

パウエル(ts)のスタイルは、レスター・ヤングを想起させますが、高音も使っていて、豪快な面もあります。「She's Funny That Way」、「I'll Close My Eyes」、「A Flower Is A Lonesome Thing」、「Sleepy Time Down South」の4曲では、パウエルのワン・ホーンによる情緒豊かなバラード演奏を聴くことができ、とりわけ「She's Funny That Way」は、カデンツァで始まっていて華麗。テンポが早い「Undecided」では、パウエルがドライブ感溢れる力強いソロをとり、クリーブランド(tb)も健闘しています。

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帰りにきのこの直売所によってみましたが、マツタケの販売はなく、その他のものがおいてあるだけでした。

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ナット・アダレイ AUTOBIOGRAPHY

2012-10-14 19:41:40 | トランペット・トロンボーン

10月6日の土曜日、長野県下伊那郡阿智村上清内路にある諏訪神社で奉納された「手作り花火」(長野県無形民俗文化財)を見に行きました。地区住民ら70人で組織する「上清内路煙火同士会」がお盆過ぎから用意した13種類の仕掛け花火の勢いのいい光の競演や轟音は素晴らしくて、見惚れました。ことに、火花を散らして回転する「大シャクマ」や最後の筒花火「大三国(だいさんごく)」は、迫力満点で、度肝を抜かれました。勢いがよくエンターテイメントにも富んだ作品。

NAT ADDERLEY (ナット・アダレイ)
AUTOBIOGRAPHY (ATLANTIC 1964~65年録音)

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ナット・アダレイ(コルネット)は、兄のキャノンボール・アダレイ(as)とのコンボなどでファンキー路線の演奏を行ったことでよく知られていますが、、ナットは曲作りにも長けていて、ヒットした曲をいくつも書いています。そのような自作品を集めて、新たに録音したのが、Autobiography(自叙伝)と名付た、このアルバムです

メンバーは、ナット・アダレイ(cor)、セルダン・パウエル(ts,fl)、ジョー・ザヴィヌル(p,arr)、サム・ジョーンズ(b)、グラディ・テイト(ds)、アーニー・ロイヤル(tp)、トニー・スタッド(tb)、ベニー・パウエル(b-tb)、ドン・バタフィールド(tuba)、ブルーノ・カー(ds)、ヴィクター・バーントーハ(conga)、ウィリー・ボボ(perc)。編曲は、ジョー・ザヴィヌルが担当し、アーニー・ロイヤル以下は、ほとんどアンサンブルへの参加です。

曲は、「Sermonette」、「Work Song」、「The Old Country」、「Junkanoo」、「Stony Island」、「Little Boy With The Sad Eyes」、「Never Say Yes」、「Jive Samba」と8曲。ファンキーでリズミカルな「Sermonette」は、ミルト・ジャクソン(vib)が「Plenty, Plenty, Soul」(Atlantic)で演奏していて、僕はそのアルバムでメロディを覚えました。キース・ジャレット(p)もアルバム「Standrds Live」(ECM)で取り上げた「The Old Country」は、跳躍のあるメリハリのある旋律に哀愁味が溢れていて、ファンキー路線のナット・アダレイ作とは俄かに信じられませんが、とても印象に残る曲です。 

リズミックで、グルーヴィー、そしてラテンリズムが賑やかな曲もあって、ジャズの楽しさ、多様性が具現化されています。「Sermonette」、「Work Song」、「The Old Country」とファンキー時代のおなじみ曲に加えて、「Jive Samba」などパーカッションを入れた賑やかな乗り乗りの曲も聴けます。ナット・アダレイ(cor)は、「The Old Country」などで快調に吹いていますし、セルダン・パウエル(ts)が「Jive Samba」でグルーヴィーなソロをとるなど、楽しいだけでなく聴きどころが多い作品。

【上清内路手作り花火】

(大シャクマ) 円盤が火を吹きながら勢いよく回転します。途中で逆回転になります。

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 (メリーゴーランド) 花火の中を、模型の馬が猛スピードで回ります。

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