安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

ディック・ジョンソン MUSIC FOR SWINGING MODERNS

2008-03-30 23:09:02 | アルト・サックス

先週はほとんど毎日飲み会で、久しぶりに蕎麦店でも宴会をしました。長野駅の近くの「そばきり みよた」というお店ですが、ここではジャズがかかっていました。長野市内にはそば屋さんは多いですが、ジャズを流しているところは初めてです。そばは細めで好みですし、てんぷらなど料理も美味しいのでかなり使えそうです。軽やかなアルト・サックスを聴いたので、その続きで今夜はこの盤です。

DICK JOHNSON (ディック・ジョンソン)
MUSIC FOR SWINGING MODERNS (Emarcy 1956年録音)

 Music_for_swinging_dick_johnson

ディック・ジョンソンは50年代の活躍で知られるパーカー系のアルト・サックス奏者です。リヴァーサイド盤がよく知られていますが、このアルバムもなかなかよいです。特に、スローものが情緒纏面としていて、アート・ペッパーを想起させます。チャーリー・マリアーノ、ハーブ・ゲラーらと並ぶ白人系アルト奏者としてもっと名前がでてもいいのではないでしょうか。70年代末からコンコード・レーベルなどへの録音もあります。

ディック・ジョンソン(as)以外のメンバーは、Bill Havemann(p)、Chuck Sagle(b)、Bob Mckee(ds)です。曲によって、ピアノのソロもはさんでいますが、ほとんどアルト・サックスをフューチャーしたアルバムです。ドラムスが堅実にリズムを刻んでいます。

曲ですが、LPのA面にスインギーなもの、B面にバラードを収録してあり、結果的に僕はB面を中心として聴いています。曲目も演奏もバラードの方が面白いからです。スイングしたものでは「The Belle of The Ball」、スローでは「The Things We Did Last Summer」、「Like Someone in Love」、「Stars Fell on Alabama」、「You've Changed」など全9曲です。

注目されるのは「The Things We Did Last Summer」、「Stars Fell on Alabama」という2つのスタンダードです。情緒を込めた艶やかなアルトの音色で、旋律をつづっていきます。「星降るアラバマ」は、キャノンボール・アダレイのものとつい比べてしまいますが、アルト・サックスだけを取り出すとなかなかいいところにいっていると思います。

ホームページにヘレン・カー(ヴォーカル)を掲載したので、時間があればご覧ください。モダンジャズやヴォーカルを聴こう


ジョルジオ・アゾリーニ TRIBUTE TO SOMEONE

2008-03-26 23:52:54 | ベース・ドラムス

近所のツタヤへ行ったら、ミケランジェロ・アントニオーニ監督の「LA NOTTE」(夜)があったので借りてきました。ジャンヌ・モロー、モニカ・ヴィッティが出演したイタリア映画で、同監督の「愛の不条理三部作」の一つだけにやや意味がとりにくいものでした。音楽はジョルジオ・ガスリーニ(伊のピアニスト)が担当していて、けだるいムードがよく出ています。ガスリーニのものは持っていないので、名前の似ているジョルジオ・アゾリーニ(伊のベーシスト)の作品を聴いてみます。

GIORGIO AZZOLINI (ジョルジオ・アゾリーニ)
TRIBUTE TO SOMEONE (Ciao Ragassi 1964年録音)

 Tribute_to_someone

このアルバムは、1999年に再発盤LPで購入しました。購入の際レコード店でジャケット記載のパーソネルをみて、すぐレジに持っていったのを覚えています。アゾリーニは、ハードバップから出発していますが、ここでは選曲、ミュージシャンの人選とも、あたかもブルーノート・レーベルにおける新主流派路線です。

メンバーは、フランコ・アンブロゼッティ(tp)、ガトー・バルビエリ(ts)、Dino piana(tb)、Pocho Gatti(p)、レナート・セラーニ(p)、アゾリーニ(b)、Lionello Bionda(ds)で、国際色豊かです。

アゾリーニがすべての曲の編曲を手掛けています。曲は、「Tribute to Someone」(ハービー・ハンコック)、「So What」(マイルス・デイビス)、「Too Blue」(ヴィクター・フェルドマン)、「Sometime Ago」(Sergio Mihanovic)、「The Stroller」(べニー・ゴルソン)、「Hiroshima」(ガトー・バルビエリ)という6曲です。作曲者名も入れてみました。

「Tribute to Someone」は、アンブロゼッティとバルビエリのソロがきけます。バルビエリのプレイはモーダルで、新鮮です。「So What」は、ピアノ・トリオ演奏で、レナート・セラーニのやや刺激的なタッチがたいへん曲想にあっています。名前だけは聞いたことがありますが、レナート・セラーニにはたいへん感心しました。

DVDを借りたのは、女優のモニカ・ヴィッティがお目当てでしたが、ジャンヌ・モローの印象が強く残っていて存在感がありました。ヨーロッパの映画は、レンタル店にさほど置かれていないので、このDVDを観れたのはラッキーでした。


デューク・エリントン THE POPULAR DUKE ELLINGTON

2008-03-23 18:26:41 | ヴァイブ、オルガン他

松本市内でマスコミ関連の友人と会ってきました。JR東海が進めているリニア中央新幹線(東京~大阪)のルートが話題に上りました。同社では山梨県と長野県にまたがる南アルプス(赤石山脈)にトンネルを抜くための調査を行っています。リニア車両の試験は山梨で行っており、私も試乗させてもらいましたが、500kmくらいのスピードが出ている割に静かでした。電車関連で「Take The A Train」の入った作品を聴いてみます。

DUKE ELLINGTON (デューク・エリントン)
THE POPULAR DUKE ELLINGTON (RCA 1966年録音)

 The_popular_duke_ellington

「Take The A Train(A列車で行こう)」は、1941年にビリー・ストレイホーンが作詞・作曲したものです。後に、エリントン楽団のオープニング・ナンバーになったもので、いかにもわくわくさせてくれるような、期待感をいだかせるメロディです。曲名は、ニューヨークの地下鉄の路線名で、大意はハーレムに行くならA列車に乗ろうという内容ですが、歌よりも器楽として演奏されうほうが多いようです。

僕は、グレン・ミラー、ベニー・グッドマンらスイングバンド、そしてカウント・ベイシー楽団を聴いていたので、はじめデューク・エリントン楽団にはなじめませんでした。エリントンの曲自体はいいのですが、バンドが演奏すると、アンサンブルの和音が複雑、かつブルー過ぎて重たく感じて、どうにもついていけませんでした。しかし、本作品や「70th Birthday Concert」を何回か聞くうちに次第に楽しめるようになってきました。

ポピュラーと謳っているだけに、収録曲はよく知られた名曲ばかりです。「Take The A Train」は、エリントン(p)とクーティー・ウイリアムス(tp)がフューチャーされた思わず立ち上がってしまう楽しい演奏。「I Got it Bad」でジョニー・ホッジス(as)、「Solitude」でローレンス・ブラウン(tb)、「The Twitch」でポール・ゴンザルヴェス(ts)と綺羅星のごときメンバーがソロをとっています。

エリントンらしいサウンドが特に聴けるのは、「Mood Indigo」、「Black and Tan Fantasy」、「Creole Love Call」です。それぞれ木管楽器を中心とした合奏から、ハリー・カーニー(bs)、ラッセル・プロコープ(cl)、ジミー・ハミルトン(cl)らのブルージーなソロが出てきます。それにしてもサックス・セクション全員の音のカラフルなこと、ソリの部分などどうしたらあんな音になるのでしょうか。

キャロル・スローンがエリントン・ナンバーをよく取り上げているように、彼の作品はスタンダード化して、ジャズ界共通の財産になっています。そんな、エリントン(彼の作曲についても)やベイシーなどビッグ・バンドについて知ることのできる、ジャズ批評「特集 ジャズ・ビッグバンド(No.67 1990年)」はとてもよい本です。

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ベティ・ブレイク SINGS IN A TENDER MOOD

2008-03-20 21:03:02 | ヴォーカル(A~D)

東京に住んでいる親戚の子供が第一志望の大学に合格したので、来週末お祝いをすることになりました。ワインが好きな家族なので、信州産ワインをお土産に持っていくことにして、ワイン専門店で買ってきました。2007年の国産ワインコンクールで金・銀賞を受賞した長野県塩尻市にある井筒ワイン製の2本です。最近の信州産は本当によくなったとお店の人が話していました。「Lilac Wine」の入っているアルバムを聴きます。

BETTY BLAKE (ベティ・ブレイク)
SINGS IN A TENDER MOOD (BETHLEHEM 1958年録音)

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「Lilac Wine」は、ジェームズ・アラン・シェルトンの作品ですが、この人については、わかりませんでした。ギタリストでブルーグラスのJames Alan Sheltonはいますが、年齢からすると名前が同じだけだろうと思います。

歌詞の大意は、「ライラック(リラ)からワインを作りました。これを飲むと見たいものが見えるようになるし、なりたいものにもなれる。それは甘く、私の恋に似てくらくらするもの、私の恋のように不確かなもの、私の恋はどこにあるのかしら」というようにワインの酔いと恋の酔いを対比させています。(歌詞の意味がよくとれていません。)

ベティ・ブレイクのリーダー作はこれ一枚だけですが、内容がすごくよいです。彼女はきれいな発音で、さわやかな感じで歌っています。また、伴奏には、ズート・シムズ(ts)、テディ・チャールズ(vib)、ケニー・バレル(g)が加わっており、ズートのオブリガートも聴け、それだけでにこにこしてしまいます。

アレック・ワイルダーの曲が、12曲中7曲入っているのも特徴です。「I'll Be Around」、「Moon and Sand」、「Trouble is a Man」、「It's So Peaceful in The Country」、「Blue Fool」などのワイルダー作品のほか「All of You」、「Out of This World」といったスタンダードが収録されています。

「Lilac Wine」は、有名スタンダードにもう一歩というところでしょうか。「ライラック・ワイン~」のメロディが印象的で、歌詞も気の利いたものなので、もっと広まることを望んでいます。B・ブレイクの中域を生かした温かみのある歌唱もこの唄に似合っています。

ホームページにドナルド・バード(トランペット)を掲載しました。時間があればご覧ください。モダンジャズやヴォーカルを聴こう      


マイルス・デイビス 'ROUND ABOUT MIDNIGHT

2008-03-16 17:10:53 | トランペット・トロンボーン

先週、袴姿で街を行く二人連の女学生を見かけました。短大か大学の卒業式に出席したのでしょう。うちの娘も卒業ですが、早いものだと感慨深いものがあります。大学では室内楽クラブに所属して、ヴィオラとピアノを弾いていました。社会に出ても演奏の機会が持てるような生活をしてほしいと願っています。ピアノではショパン、ドビュッシーなども弾いていますが、好きなのはバッハ、ブラームスら古典派の作品のようです。モダン・ジャズの古典を聴いてみます。

MILES DAVIS (マイルス・デイビス)
'ROUND ABOUT MIDNIGHT (COLUMBIA 1955~56年録音)

 Round_about_midnight

古典とは、古い時代に作られ、長い年月にわたる鑑賞を経て、現在もなお高い評価を得ている作品の意味です。モダンジャズの古典というと、パーカーやパウエルとともに、マイルス、ロリンズ、コルトレーンらの作品が挙がります。このアルバムは、コロンビア・レーベルの第1作で記念碑的な意味も持ち合わせています。

メンバーは、マイルス(tp)、コルトレーン(ts)、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)です。曲は「'Round Midnight」、「Ah-Leu-Cha」、「All of You」、「Bye Bye Blackbird」、「Tadd's Delight」、「Dear Old Stockholm」とジャズ・スタンダードが6曲。

マイルスのプレイは抒情的です。ミュートも使っていますが、あまり刺激的ではないので、ミュートがどうも好きになれないという方はこの作品あたりからなら入りやすいのではないでしょうか。また、編曲が工夫されています。バップ的なソロのリレーではなく、例えば「Round Midnight」のリフによる間奏、「All of You」における各人のソロの出だしを伴奏なしで揃えたことなどはよく指摘されるところです。

久しぶりに聴きましたが、「Round Midnight」のリフ・インタールードの「ジャ・ジャ・ジャーン~」やそれに続くコルトレーンのソロ、「Ah-Lue-Cha」のテーマ処理、「By By Blackbird」におけるマイルスの簡潔な表現など、聴きどころが多くて僕の集中力は全く途切れませんでした。

本作品は、年月が経過していることもあり、このごろではあまり聴かれていないかもしれません。あらためて聴いてみると内容をほとんど覚えていて、自分自身で驚いています。ジャズに夢中になった頃聴いたためと、それだけ印象的な中身だったからなのでしょう。