春野は午後3時半になると涼しい風が吹き始める。
夜は暑くない。
暑くないということのありがたさを実感する。
肉と野菜をシチリンであぶってビールを飲むのが夕食だった。
腹が満たされ、ほろ酔いになりそろそろ電灯を灯す時間になった。
ふと見ると飲み終えたスーパードライにバッタが留まっている。
キリギリスだった。
キリギリス君初めは缶にしがみつく形で存在していたのだが次第に上に移動した。
とうとうプルトップの辺りにまで進みビールを味わう。
その辺りはビールが缶の淵に残っているのが見える。
それを思いっきり飲んでいるのだ。
至近距離で写真を撮っても微動だにしない。
一心不乱に飲む姿は私ではないのか?と思えた。
働きもしないで歌を歌い冬になって食べ物がなくなってから気付くというあれだ。
表面を飲みつくしたキリギリス君に、もう少し飲ませてあげようと思いついた。
一旦キリギリス君を掴み上げ、その間に缶の中にある残りを出そうとした。
缶を傾けると、やはり少し出てきた。
再びキリギリス君を缶の上に戻した。
ところがキリギリス君は激怒していた。
「人の手を借りてまで飲みたいわけじゃない」とでも言いたかったのだろうか。
ピョンピョンと跳ね回りやがて暗闇に消えていった。
心なしか不安定な飛び方をしているのは酔いが回っていたからだろうか。
素直に私を受け入れていれば、もっともっと美味しい飲み物にありつけたのに。
「おいキリギリス君だからキリギリスってバカにされるのだ。人の好意をありがたく受けることが大切なのだぞ」
狡猾な老キリギリスが若いキリギリス君に諭しているような風景。
春野の夜は暑くない。
アルコールを多めに摂取しても暑くない。
夜は暑くない。
暑くないということのありがたさを実感する。
肉と野菜をシチリンであぶってビールを飲むのが夕食だった。
腹が満たされ、ほろ酔いになりそろそろ電灯を灯す時間になった。
ふと見ると飲み終えたスーパードライにバッタが留まっている。
キリギリスだった。
キリギリス君初めは缶にしがみつく形で存在していたのだが次第に上に移動した。
とうとうプルトップの辺りにまで進みビールを味わう。
その辺りはビールが缶の淵に残っているのが見える。
それを思いっきり飲んでいるのだ。
至近距離で写真を撮っても微動だにしない。
一心不乱に飲む姿は私ではないのか?と思えた。
働きもしないで歌を歌い冬になって食べ物がなくなってから気付くというあれだ。
表面を飲みつくしたキリギリス君に、もう少し飲ませてあげようと思いついた。
一旦キリギリス君を掴み上げ、その間に缶の中にある残りを出そうとした。
缶を傾けると、やはり少し出てきた。
再びキリギリス君を缶の上に戻した。
ところがキリギリス君は激怒していた。
「人の手を借りてまで飲みたいわけじゃない」とでも言いたかったのだろうか。
ピョンピョンと跳ね回りやがて暗闇に消えていった。
心なしか不安定な飛び方をしているのは酔いが回っていたからだろうか。
素直に私を受け入れていれば、もっともっと美味しい飲み物にありつけたのに。
「おいキリギリス君だからキリギリスってバカにされるのだ。人の好意をありがたく受けることが大切なのだぞ」
狡猾な老キリギリスが若いキリギリス君に諭しているような風景。
春野の夜は暑くない。
アルコールを多めに摂取しても暑くない。