明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



土砂降りの中、T屋に飲みにいく。カウンターで主人と馬鹿話していると女性客。石塚さんですか?と訊かれる。初対面だが、どうやら常連に、あることないこと吹き込まれているようである。どんな粘土を使ってるんですか?から「いつも赤い電気着けてるんですか?」あそこに住んでいると教えられ、窓を見上げてそう思ったらしい。 私は蛍光灯が寒々しく感じ、子供の頃から苦手である。引っ越すと、まず蛍光灯をはずす。常用するのが100Wの電球だが、それが赤く見えたらしい。切れると別室の60Wで代用するから、よけい赤く見えたかもしれない。室内に赤い電灯を点し、人形を作る男。江戸川乱歩じゃあるまいし、ただ気持ち悪いではないか。普通の電球ですよと言っておいた。 学生時代、近所で飲んでると店の奥から、OL風の女性が、洗濯物が頻繁に盗まれると大きな声で話しているのが聞こえた。何処の奥のアパートで、2階のどこそこでと、訊かれるまま答えていたが、どうやら私の上に住んでいる女性で、彼女は顔を合わせたこともない私が下手人だとふんでいるようである。横にでもいれば釈明もできるが、離れた席では、彼女の推理する犯人像を(つまり私なのだが)黙って訊いているほかなかった。 そういえば焼き鳥のK越屋の親父も、二十年以上通いながら、向うが訊かないから、私も余計なことを話さなかっただけだが、私をとんでもない人物だと思い込んでいたのには呆れた。“男は黙って~”というTVCMも昔のことのようで、ただ黙っていてもロクことはなさそうである。


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人形を作って撮影までしていると、自分が思いついたイメージとはいえ、妙な物を作るはめになる。今作っているのはアダージョ次号用の物で、一種の楽器である。ジャズ・ブルースの人形を作っていた頃は、楽器を作るのが苦痛で仕方がなかったものだが、つい本人が、巨大なそれを背負っているところを思いついてしまった。今回はその楽器が古びていなければ意味が無いので、せいぜい汚しているが、部品の一部を、世田谷文学館の荷風の畳でやりそこねた、お茶で煮出すというのをやってみた。例によって佃煮にしないよう気をつけながら。 それにしても、巨大な楽器を背負っていながら、ミュージシャンではないというのだから、次号は果たしていったい誰だ?

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