明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
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2017-02-21
ほぼ完成といってよい圓朝だが、足踏みしている理由がある。 若い頃は派手ななりで、弟子の肩に捕まって咳しながら歩いたり、気障で目立ちたがり、自己演出にたけた人物だったようだが、次第に芸一筋。弟子を頭ごなしに叱ることもせず、寄席で子供が泣いても腹も立てず、楽屋に向かって子供にお菓子はないかい? 困っている弟子に手を差しのべ、意地悪された師匠も大事に面倒を見、と優しい人格者として描かれている。現代に生きる私としてはそういった口伝を信じるしかすべはない。 しかし、気になっているのは圓朝の取材旅行に同行したり、兄のように慕っていたという鏑木清方の描いた、肖像画の傑作といわれる『三遊亭圓朝』である。リアルさよりも圓朝の内面を描いた、といわれる名作である。確かに残された写真とはちょっと雰囲気が違う。圓朝は客を手のひらで転がすように操り、舟上の場面では船酔いの気分にさせた、という名人であるが、その鋭い眼差しの奥に、してやったり思う壷的な、一物を抱えているような気がしてくるのである。清方が知る、圓朝の一瞬の真の表情をとらえているのではないか?この絵を凝視してから肖像写真を見ると、表情も違って見えて来て、圓朝の自己演出に、まんまと引っかかっているのではないか、という気がしてくるのである。
HP
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