安倍晋三の選ぶべくして選んだのか、自らの国粋主義・国家主義・自民族優越主義と見事一致した新元号「令和」

2019-04-04 12:09:51 | 政治


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 2019年7月28日任期満了実施参院選で

安倍自民党を大敗に追いつめれば

政権運営が行き詰まり 

2019年10月1日の消費税10%への増税を

断念させる可能性が生じる



 新元号は2019年4月1日の午前11時半から官房長官の菅義偉が発表するということだったが、なぜか遅れて、NHK NEWS WEB記事によると11時41分からの発表となった。安倍晋三のふてぶてしさに関係なく墨で太々と「令和」と書いた額を掲げた。

 そして、「『令和』は『万葉集』の梅花の歌、三十二首の序文にある『初春の令月(れいげつ)にして、気淑(きよ)く風和(やわ)らぎ、梅は鏡前(きょうぜん)の粉(こ)を披(ひら)き、蘭(らん)は珮後(はいご)の香(こう)を薫(かお)らす』から引用したものだ」(NHK NEWS WEB)と、奈良時代末期編纂の万葉集の和歌からの出典であであることを明らかにした。

 この和歌の作者はネットで調べてみると、大伴旅人とか、山上憶良とか名前は上がっているが、歴史上作者不明となっているということである。

 中国の古典から離れて、日本の古典から採用した点、日本主義者安倍晋三らしいと思ったが、「令和」という二字熟語自体が上からの命令による平和・調和という意味解釈を取る点からも、安倍晋三らしい選択だと思った。安倍晋三がこのように持っていくべく謀ったのではないかとさえ疑った。

 「日本主義」とは、〈明治中期において明治政府の極端な欧化主義に対する反動として起こり、日本古来の伝統的な精神を重視しこれを国家・社会の基調としようとした国家主義思想である。〉と「Wikipedia」は紹介している。

 「令和」が発表されると、ネットでも同様の感想が見受けられたという。このような反響に対する国語辞典編纂者飯間浩明氏の意見を2019年4月2日付「asahi.com」記事が伝えている。

 〈インターネットでは、「令」の文字に「命じる」「いましめる」という意味もあることから、「命令に従え」という意味を連想するという意見もあるが、「令には『令夫人』『令兄』のように相手を立てたり、『令顔』のように美しさや素晴らしさを表したりする用法もある」と話す。〉

 要するに上からの命令系の「令」ではありません、相互尊重(相手を立てる)や秀逸さ(美しさ・素晴らしさ)を表現する系統の「令」だと断りを入れている。と言うことは、命令系の「令」と解釈することはゲスの勘繰りということになる。
 
 外務省も同様の海外からの反響を受けて、「令和」の英語表記の統一を各国駐在日本大使に指示したと、2019年4月3日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。

 〈イギリスの公共放送BBCが「令」の意味を秩序の「order」だと速報するなど、一部メディアが、「令」が一般的に「order・秩序」や「command・指令」の意味で使われているなどと報じた〉。対して外務省は正確な統一的理解の確立ために、〈「令和」には「beautiful harmony」、美しい調和という意味が込められていると説明するよう、海外に駐在する大使などに指示した。〉・・・・

 「令」の文字を国語辞典編纂者飯間浩明氏と同様の解釈を取り、「和」という文字をプラスして、新しい時代への願いとして「美しい調和」の意を込めた「令和」であって、戦前型の上意下達的な意を纏わせた「令和」ではないと、前者の解釈を切り捨てている。

 新元号が果たして上意下達的な上からの命令系の「令和」と解釈されるのか、相互平等性を込めた「美しい調和」と解釈されるべきなのか、順次見ていく。

 先ず出典となった和歌の意味を「NHK NEWS WEB」(2019年4月1日 15時49分)記事紹介の二松学舎大学塩沢一平教授の說明から見てみる。

 大伴家持の父であり、当時太宰府の長官だった大伴旅人の邸宅で開かれた宴席に集まった32人が梅を題材に和歌を詠み、この32首の序文(背景説明)として読まれた和歌だそうで、「春の初めの良い月にさわやかな風が柔らかく吹いている。その中で、梅の花は美しい女性が鏡の前でおしろいをつけているかのように白く美しく咲き、宴席は高貴な人が身につける香り袋の香りのように薫っている」という意味だと解説している。

 では、安倍晋三が新元号発表後に開いた「談話記者会見」から、「令和」についいてどのように説明しているのか見てみる。

 「この『令和』には、人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つという意味が込められております」――

 当然のことだが、上からの命令系の平和・調和を意味する新元号「令和」ではないと間接的に否定、文化育成の新しい時代となることの願いを込めた美しいばかりの相互尊重系の新元号「令和」だと強調し、断言している。

 そして万葉集については、「1200年余り前に編さんされた日本最古の歌集であるとともに、天皇や皇族、貴族だけでなく、防人(さきもり)や農民まで幅広い階層の人々が詠んだ歌が収められ、我が国の豊かな国民文化と長い伝統を象徴する国書であります」と說明、万葉集に収められた和歌が「天皇や皇族、貴族」といった上流階級の占有物ではなく、「防人や農民まで幅広い階層の人々」が嗜んだ国民的な文化だと断りを入れて、万葉集を新元号の出典とすることの妥当性に理解を求めている。

 冒頭発言の最後は、「文化を育み、自然の美しさをめでることができる平和な日々に心からの感謝の念を抱きながら、希望に満ちあふれた新しい時代を国民の皆様と共に切り開いていく。新元号の決定に当たり、その決意を新たにしております」と締め括っている。

 但し万葉集を新元号の出典とすることの妥当性を求めたあとで、「悠久の歴史と薫り高き文化、四季折々の美しい自然、こうした日本の国柄をしっかりと次の時代へと引き継いでいく。厳しい寒さの後に春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように、一人一人の日本人が明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる、そうした日本でありたいとの願いを込め、『令和』に決定いたしました」と述べているところに安倍晋三の国粋主義・国家主義・自民族優越主義そのものが顔を覗かせていて、前に述べた上からの命令系であることを間接的に否定して、相互尊重系の新元号「令和」だと強調し、断言したことと矛盾するし、「希望に満ちあふれた新しい時代を国民の皆様と共に切り開いていく」云々と口にしたことを自ら裏切ることになる。

 そもそもからして「悠久の歴史と薫り高き文化、四季折々の美しい自然」等々、日本の歴史・文化・伝統、さらに自然までをも、優越性を持たせた面からのみ捉えた価値観を付与して、それが「日本の国柄」だとし、歴史にしても、文化にしても、自然にしても否定的側面をも否応もなしにない交ぜにしていること(色々な物が混ぜ合わさって一つのものを形成していること)を一切無視していることは世界的通念となっている文化相対主義に対する挑戦そのものであろう。

 【文化相対主義(Cultural relativism)】「全ての文化は優劣で比べるものではなく対等であるとし、ある社会の文化の洗練さはその外部の社会の尺度によって測ることはできないという倫理的な態度と、自文化の枠組みを相対化した上で、異文化の枠組みをその文化的事象が執り行われる相手側の価値観を理解し、その文化、社会のありのままの姿をよりよく理解しようとする方法論的態度からなる」(「Wikipedia」

 だが、安倍晋三は日本の歴史・文化・自然を他国のそれらよりも遥か上に置いて、それを以って「日本の国柄」だと優越的に価値づけている。「自国の歴史・政治・文化などが他国よりも優れているとして、それを守り発展させようとする主張・立場」を国粋主義と言い、この国粋主義を成り立たせている思想的原点は、他国よりも優れているとしている自民族優越主義である。

 そして自民族優越主義は自民族・自国を単位として何事に於いてもその優越性を価値づける点、「国家をすべてに優先する至高の存在、あるいは目標と考え、個人の権利・自由をこれに従属させる思想」(大辞林)である国家主義を背後に内包していることになる。

 安倍晋三が国粋主義者・国家主義者・自民族優越主義者であることは、この種の日本人が満ち溢れていた戦前日本への回帰主義を自ずと抱えていることになることと共に何度かブログに書いてきたが、安倍晋三のこういった主義・思想から記者との質疑応答の一つを見てみる。

 産経新聞小川記者「産経新聞の小川です。内閣記者会の幹事社として質問させていただきます。

 今日、先ほど決定した新元号を、日本の古典を由来とする『万葉集』からとった『令和』としたことについて、これまで元号は全て中国の古典を由来としてきたとされております。改めて、日本の古典を由来として「『令和』に決めた、その総理の思いをお聞かせください。

 また、今月末で幕を閉じる平成の30年間は、国内では人口減少が進み、また、自然災害が相次ぎました。また、目まぐるしく変化する国際情勢やデジタル化など、日本は今、大きな転換点を迎えています。5月1日の改元まで残り1か月となったことを踏まえて、平成の次の時代をどのような気持ちで迎え、また、次の時代のどのような国づくりをされていきたいか、お考えをお聞かせください」

 安倍晋三「我が国は、歴史の大きな転換点を迎えていますが、いかに時代が移ろうとも、日本には決して色あせることのない価値があると思います。今回はそうした思いの中で歴史上初めて国書を典拠とする元号を決定しました。

 特に『万葉集』は、1200年余り前の歌集ですが、一般庶民も含め地位や身分に関係なく幅広い人々の歌が収められ、その内容も当時の人々の暮らしや息づかいが感じられ、正に我が国の豊かな国民文化を象徴する国書です。これは世界に誇るべきものであり、我が国の悠久の歴史、薫り高き文化、そして、四季折々の美しい自然、こうした日本の国柄はしっかりと次の時代にも引き継いでいくべきであると考えています」――

 誰にしても分かりきったことだが、「色あせることのない価値」とは時代を超えて持ち続けることができる肯定的な優れた価値を指す。

 確かに「いかに時代が移ろうとも、日本には決して色あせることのない価値がある」と言うことができる対象物はあるが、その多くが学問・芸術・技芸等の文化の所産である文物であって、封建時代は豪族、武士、明治以降は政治家や軍人、豪商、企業家等の権力的営為に関しては肯定的な優れた価値のみで捉えて、全てを「色あせることのない価値がある」と評価付けることは不可能で、色褪せることなく持ち続けることになっている否定的価値をもない交ぜにしている歴史的事実を抹消させていて、ここにも安倍晋三の自民族優越主義を露出させていることになる。この露出は既に触れたように国粋主義の露出であり、国家主義の露出ということになる。

 いわば安倍晋三は自らの国粋主義・国家主義・自民族優越主義に基づいて、「我が国の悠久の歴史、薫り高き文化、そして、四季折々の美しい自然、こうした日本の国柄はしっかりと次の時代にも引き継いでいくべきであると考えています」と発言していることになる。

 当然、ここで問題となるのは厳密に言って、安倍晋三が言っているように実際に「『令和』という二字熟語には、人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つという意味が込められている」とすることができるかどうかであり、国語辞典編纂者飯間浩明氏が言っているように「令には『令夫人』『令兄』のように相手を立てたり、『令顔』のように美しさや素晴らしさを表したりする用法もある」とすることができるかどうかであり、外務省が各国に派遣している大使館大使に指示したように「令和には『beautiful harmony』、美しい調和という意味が込められている」とすることができるかどうかということになる。

 では、元の和歌と上記掲げた「NHK NEWS WEB」記事が紹介していた二松学舎大学の沢一平教授の出典和歌の解釈に戻ってみる。

 「初春の令月(れいげつ)にして、気淑(きよ)く風和(やわ)らぎ、梅は鏡前(きょうぜん)の粉(こ)を披(ひら)き、蘭(らん)は珮後(はいご)の香(こう)を薫(かお)らす」 

 「春の初めの良い月にさわやかな風が柔らかく吹いている。その中で、梅の花が美しい女性が鏡の前でおしろいをつけているかのように白く美しく咲き、宴席は高貴な人が身につける香り袋の香りのように薫っている」――

 これが32首の序文(背景説明)である以上、32首を以ってして詠みこんでいる情景の說明以外の何ものでもなく、何らかの時代性を持たせて詠み込んでいるわけでもないし、時代性を暗示させて詠み込んでいるわけでもないし、時代性を象徴させて詠み込んでいるわけでもないことは和歌そのものに現れている。

 要するにこの和歌が「令」の字と「和」の字に持たせている意味から離れて、その意味とは無関係に「令」と「和」の字をピックアップして、「令和」とひっつけ、二字熟語をつくり上げたに過ぎない。

 当然、和歌とは関係なしに「令和」となる二字熟語そのものから、どういった意味を込めているのか、どういった時代性を望んでいるのか読み解かなければならない。

 但しこの和歌からは如何なる時代性も影も形も見えないとしても、元号が天皇の時代を表し、その時代の中に国民を置いている以上、新元号は新天皇のあるべき時代を象徴する二字熟語として選考されることになるばかりか、天皇と国民の関係性をも託されることになるゆえにその関係性までも「令和」という言葉に込められているはずだから、それらの関係性をどう表しているかという点からも読み解かなければならない。

 元号が天皇の時代を表していることは国民主権でありながら、国民に発表するよりも前に天皇と皇太子に報告して、新元号「令和」を定める政令の公布に当たって天皇に「御名御璽」を求めたことからも証明することができる。

 最初に書いたように菅義偉の新元号発表時の「令和」の「令」の字に上からの命令系の意味解釈を感じ取ったから、大正6年初版発行という時代物の『大字典』(啓成社)で調べてみた。「令」の字が載っているページの画像を載せておくが、かなりボロボロになっている上に撮影技術が未熟なために写りが悪いが、勘弁してもらうことにする。

 赤線で囲った箇所を最初に表記してみる。当用漢字を使用。

 〈上に立つ人の下命戒告をいふ。〉、〈上官の命を奉ずる義。転じて長官の義とし、更に命に服従せしむる義とし〉云々と、命令形の意味を持たせている。そしてこのあとに赤線で囲ってないが、〈助動詞としては、して・しむ・せしむ等他に動作をなさしむる義。〉と、当然なことだが、命令系の助詞であることを以って名詞解釈との間に整合性を持たせている。

 この「大字典」の漢字解釈のみで、「令和」なる二字熟語が和歌の詠みとは関係なしに上からの命令系の平和・調和を表現していることが明らかになる。要するに戦前型の国家秩序・社会秩序を新元号に託して、そのような時代となることの願いを込めた。

 国語辞典編纂者飯間浩明氏「令には『令夫人』『令兄』のように相手を立てたり、『令顔』のように美しさや素晴らしさを表したりする用法もある」と指摘しているが、「大字典」の次のページに「令夫人」(人の妻の敬称)とか、「令兄」(他人の兄の敬称)等々、載っているし、「令顔」は見当たらないが、「令容」(ととのいたるよきかたち)と同じ意味の漢字が載っているが、全て皇族・貴族等の上流階級、もしくは上位権威者に所属する言葉か、そうでなければ、時代がかなり下って明治・大正・昭和初期の知識階層が精々使う言葉であって、一般国民、あるいは一般庶民の日常用語とは無縁の言葉であり、この「令」の文字が持つ階級差は隠れもない。

 そのような「令」の字であり、新元号「令和」でありながら、安倍晋三は「この『令和』には、人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つという意味が込められております」とか、「文化を育み、自然の美しさをめでることができる平和な日々に心からの感謝の念を抱きながら、希望に満ちあふれた新しい時代を国民の皆様と共に切り開いていく。新元号の決定に当たり、その決意を新たにしております」と、国民の日常に即した、美しい意味の元号であるかのように胸を張って装っている。

 以上、当方の解釈を纏めると、安倍晋三が自らの国粋主義・国家主義・自民族優越主義に一致させるべく、戦前型の上からの命令系の平和・調和を密かに望み、選ぶべくして選んだ新元号「令和」と見る他ない。

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安倍晋三がリーマンショック級不況を理由に消費税増税を延期したなら、絵に描いた餅を大盤振舞いすることになる

2019-04-01 11:08:48 | 政治


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 2019年7月28日任期満了実施参院選で

安倍自民党を大敗に追いつめれば

政権運営が行き詰まり 

2019年10月1日の消費税10%への増税を

断念させる可能性が生じる


 "餅"とは幼児教育無償化や高等教育無償化等の全世代型社会保障制度似関わる政策を指す。その"餅"が、誰にも分かりきっていることだが、消費税増税を延期したなら、絵に描いた餅を大盤振舞いすることになる。そうされて喜ぶ国民はいないはずだが、消費税増税延期の方をこそ、喜ぶ国民の方が多いのかもしれない。 

 大盤振舞いすることになる理由は、これも誰もが察していることだが、二つある。誰もが察していたとしても、社会保障制度充実の財源として消費税増税は必要だという姿勢を取りながら、増税の延期を選挙勝利の便利な道具としてきたことを改めて突きつけなければならない。

 国民誰しも消費税を上げるよりも上げない方がいい。国民のそういった利害感情を利用して国政選挙を勝ち抜いてきた。そして安倍一強をつくり上げた。獲得した頭数で特定秘密保護法や憲法解釈変更による集団的自衛権行使の容認を含めた新安保法制等々を強行採決で成立させてきた。その狡猾さ・権謀術数は際立っている。

 安倍晋三は2014年11月18日に衆議院の解散を国民に告げる「記者会見」 を開いている。

 「本年4月より8%の消費税を国民の皆様に御負担いただいております。5%から8%へ3%の引き上げを決断したあの時から、10%へのさらなる引き上げを来年予定どおり10月に行うべきかどうか、私はずっと考えてまいりました。消費税の引き上げは、我が国の世界に誇るべき社会保障制度を次世代に引き渡し、そして、子育て支援を充実させていくために必要です」――

 8%から10%への消費税増税分は社会保障制度の持続性確保と子育て支援拡充に欠かすことのできない重要な財源だと先ずは指摘している。

 だが、「消費税を引き上げることによって景気が腰折れてしまえば、国民生活に大きな負担をかけることになります。そして、その結果、税率を上げても税収が増えないということになっては元も子もありません。経済は生き物です」の口実で、「本日、私は、消費税10%への引き上げを法定どおり来年10月には行わず、18カ月延期すべきであるとの結論に至りました」と延期を告知、延期したのは増税だけではなく、社会保障制度の持続性確保と子育て支援拡充も先送りすることになった。

 この記者会見の約半年前の2014年4月の5%から8%への消費税増税以降、増税前の駆け込み需要の反動で需要の落ち込みが激しかった。このことに懲りて、2015年10月の8%から10%への増税を1年半先送りするということなのだろうが、このように懲りること自体、この記者会見の日を起点にして1年半延期の2017年4月までの約2年半近くの間に需要落ち込みに対する自らの景気対策の効果が出ることに自信を置いていないことを意味することになる。

 ところが、この同じ記者会見で、「3本の矢の経済政策は確実に成果を上げつつあります。経済政策において最も重要な指標、それはいかなる国においても雇用であり、賃金であります。政権発足以来、雇用は100万人以上増えました。今や有効求人倍率は22年ぶりの高水準です。この春、平均2%以上給料がアップしました。過去15年間で最高です。企業の収益が増え、雇用が拡大し、賃金が上昇し、そして消費が拡大していく、そして景気が回復していくという経済の好循環がまさに生まれようとしています」云々と、2014年の消費税5%から8%への増税時以降の需要落ち込みをモノともせずに自らの経済対策アベノミクスの成果を自信満々に吹聴している。

 そしてこのような消費税増税延期とアベノミクス経済に関して「国民の皆様の判断を仰ぎたいと思います」と宣言、消費税増税延期の何よりの効果が記者会見3日後の2014年11月21日の衆議院解散、2014年12月2日公示・12月14日投開票の総選挙で与党の自由民主党は単独で絶対安定多数の266を超える291議席を獲得、公明党は選挙区で全員当選の現行制度下最多の35議席獲得、合わせて議席数の3分の2以上を維持することに成功した。消費税を上げるよりも上げない方がいい国民の利害感情を巧みに刺激したことが功を奏したに違いない。

 民主党政権時代の菅無能が2010年7月の参院選直前に消費税10%を突然打ち出して選挙に惨敗したこと、あるいは同じ民主党政権の野田佳彦が2012年に自民党と公明党3党で社会保障と税の一体改革に関する合意の代償として衆院を解散、一体改革の財源として打ち出した2014年8%、2015年10%の消費税増税がマニフェスト違反と攻撃されて、大惨敗を喫したのと雲泥の差である。

 バカっ正直に社会保障制度持続性確保に務めた民主党政権が選挙に敗北し、一方の安倍晋三は消費税増税延期と共に社会保障制度持続性確保までをも先送りして、選挙に大勝利した。

 安倍晋三は消費税増税延期を選挙勝利の道具としたのはこの衆院選のみではない。2016年6月1日に通常国会閉幕に合わせて「記者会見」を開いているが、消費税増税再延期の告知ともなっている。

 「少子高齢化の流れに歯止めをかけ、誰もが生き甲斐を感じられる社会を創る。一億総活躍の未来を切り開くため、大きな一歩を踏み出す。『未来へと挑戦する国会』になった」との物言いで、今国会で社会保障制度を望ましい姿に変えつつあると自負し、その一方で、「足元では新興国や途上国の経済が落ち込んでおり、世界経済が大きなリスクに直面しいる」こと、「中国など新興国経済に『陰り』が見える」こと、だからと言って、「現時点でリーマンショック級の事態は発生」しているわけではない上に「1年半前、衆議院を解散するに当たって、正にこの場所で、私は消費税率の10%への引上げについて、再び延期することはないとはっきりと断言した」

 だから、「今回、『再延期する』という私の判断は、これまでのお約束とは異なる『新しい判断』であります」と訳の分からないことを言って、「2019年10月には消費税率を10%へ引き上げることとし、30か月延期することとします」と、2017年4月の増税予定を一気に2年半もの延期を決定して、「『新しい判断』について国政選挙であるこの参議院選挙を通して、『国民の信を問いたい』と思います」と参院選への抱負を語っている。

 最初に増税を告知した記者会見では、「再び延期することはない。3年間、3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずや(増税できる)その経済状況をつくり出すことができる。私はそう決意しています」と宣言した国民への約束を全て翻したことになる。

 国民から見た場合、そんな約束を破られることよりも消費税を上げるよりも上げない方がいい利害の方が大切なのだろう、2016年6月22日公示・7月10日投開票の参院選は自公連立政権の与党は合わせて70議席を獲得。目標としていた改選議席の過半数である61議席を大きく上回る大勝利を収めている。また非改選議員を含めた参院全体では自公と改憲勢力をあわせると、衆議院と共に日本国憲法改憲の発議が可能な圧倒的多数となる3分の2を確保する効果絶大を消費税増税再延期は呼び込んだ。

 勿論、この延期は日頃約束していると言うか、日頃宣伝している社会保障制度の充実化の先送りを伴うことになる。いわば絵に描いた餅にしている。

 安倍晋三は2017年10月10日公示・10月22日投開票の衆院選挙を消費税増税延期という手ではなく、増税分の還元という形で自民党284議席、公明党は29議席、合わせて313議席の衆議院議席三分の二を維持する勝利を収めている。2017年9月25日の「記者会見」

 「幼児教育の無償化も一気に進めます。2020年度までに3~5歳まで、全ての子供たちの幼稚園や保育園の費用を無償化します。0~2歳児も、所得の低い世帯では全面的に無償化します。待機児童解消を目指す安倍内閣の決意は揺らぎません。本年6月に策定した子育て安心プランを前倒しし、2020年度までに32万人分の受皿整備を進めます」と高齢者に手厚かった社会保障制度を全世代型へと転換、その財源を2019年10月8%から10%への消費税増税税収分約5.6兆円のうち、幼児・高等教育無償化に2.8兆円、低所得層の高齢者支援として1.1兆円、その他の使途内訳で増税分の還元を策している。

 現在もリーマンショック級の不況が訪れた場合は増税の再延期の可能性に触れているが、その手の不況は望んでいないはずだ。ただでさえ景気の実感を与えることができない片肺飛行のアベノミクスを完全に墜落させてお先真っ暗にさせてしまうことは明らかだからだ。

 当然、いよいよ増税をせざるを得なくなって、国民の利害感情を利用、増税2%分どころか、ポイント還元等々の方法で増税相当分の2%を大きく上回る5%を還元する意向を示して、2019年7月に予定している参院選の再度の勝利を狙うことになった。

 2019年3月27日午後の参院本会議で一般会計総額過去最大の101兆4571億円となる2019年度予算が自公明両党などの賛成多数で可決、成立した。財務省の「2019年度予算のポイント」には「幼児教育・保育の無償化」、「介護⼈材の処遇改善」、「待機児童の解消」、「低年⾦の⾼齢者等に対する年⾦⽣活者⽀援給付⾦」等々の社会保障充実化の予算が組み込まれている。

 官房長官の菅義偉も、正月のラジオ番組で2019年度予算成立後が消費増税について最終判断する区切りだと発言していたという。もしここでリーマンショックだろうと何であろうと、どのような理由であれ、2019年10月の10%への消費税増税を延期したなら、「幼児教育・保育の無償化」にしても、それ以下のこれまで絵に描いた餅にしてきた社会保障充実化の政策は、全てが決定的に絵に描いた餅とすることになる。予算を組んでおいて、それを執行せずに済ますことなど、許されるはずはない。

 例え国民の大多数が増税延期を望んだとしても、ウソの上にウソを上塗りすることになるこれ以上の絵に描いた餅の大判振舞いには拒絶反応を示して、増税延期という実利だけを取るべきだろう。

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JOC会長竹田恒和の東京五輪決定に関わるカネの動きは状況証拠としては疑惑を超えて、限りなく贈賄に近いクロを示している

2019-03-22 11:33:48 | 政治


   2019年7月28日任期満了実施参院選で

   安倍自民党を大敗に追いつめれば

   政権運営が行き詰まり 

   2019年10月1日の消費税10%への増税を

   断念させる可能性が生じる


 2001年から日本オリンピック委員会(JOC)会長に就任している竹田恒和が3月9日(2019年)午後、都内で行われたJOC理事会で今年6月の任期一杯で会長と理事を退任することを表明した。

 理由はマスコミがこれまで伝えてきたように東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会(役目を果たして2014年1月解散)理事長時代の2013年7月と10月にこの招致委員会がシンガポールのコンサルタント会社に二度に亘って送金した約2億を超えるカネは東京五輪招致のコンサルタント契約を装った、実際は集票依頼の賄賂ではないかとの疑惑を持たれて、2016年1月にフランス検察当局が捜査を開始、本人も2018年12月に予審判事の事情聴取(自身は「ヒアリング」と言っている)受けるなどしていたが、フランスの裁判所は昨年12月に裁判を開くかどうかを審査する「予審手続き」に入り、さらに今年1月になって、仏検察当局は贈賄容疑で竹田恒和に対する正式捜査を開始したと伝えていることによる。

 竹田恒和は昨年12月の予審手続き入りを受けて2019年1月15日に記者会見を開き、身の潔白を表明した。安倍晋三の森友学園疑惑・加計学園疑惑に関わる国会答弁と同様、竹田恒和にしても本人が自分の口で身の潔白を言っているに過ぎない。事実無根の証明とはならない。記者会見にしても、本人の釈明のみで、記者の質問を断って、7分で終了している。事実、潔白であるなら、どのような質問も恐れないはずである。この質問を断ったことが、フランスの捜査とは別に本人に対する疑惑を深めることになった。

 2019年1月15日付の「NHK NEWS WEB」記事が記者会見の全文を伝えていた。

 竹田恒和「おはようございます。竹田恒和でございます。皆様には、日頃からわが国のスポーツの振興、特にオリンピックムーブメントに多大なご理解とご協力を賜っておりますことを厚く御礼申し上げたいと思います。

 またこのたびは、東京オリンピックパラリンピック競技大会に向けてご支援いただいている国民の皆様、スポーツ関係者の皆様、大会準備に携わっておられる組織委員会の皆様に大変ご心配おかけしており、申し訳なく思っております。

 本日は、2014年までにすでに解散してしまった、東京2020オリンピックパラリンピック招致委員会、元理事長として会見をさせていただきます。改めまして、お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。

 本件は招致委員会とシンガポールのコンサルティング会社 ブラックタイディングス社と取り交わされた2つのコンサルタント業務に関するものであります。これら2つのコンサルタント契約は、通常の承認手続きに従い締結されたものであります。2つの契約に関する稟議書は通常の承認手続きを経て最後に回覧され、私が押印いたしました。私の前には既に数名が押印しておりました。

 これらの契約内容はロビー活動および関連する情報を収集するコンサルタント業務の委託になります。これらの契約につき、私は国会の衆参両院の予算委員会をはじめとする各委員会に呼ばれ、私は招致委員会元理事長の立場で参考人として説明をいたしました。質疑に対応するため、私は実務の詳細につき国および都から派遣された招致委員会当時の職員などに実態を確認し、報告をさせていただきました。

 招致委員会事務局は主として国と都から多くの人材を派遣いただいて、オールジャパン体制で業務を行っておりました。国会においてはその後、本件に対してさらなる追及はありません。さらにJOCは第三者により、外部の弁護士、公認会計士による調査チームを設置し、延べ37名の関係者を対象に私が署名に至った経緯につき綿密なヒアリング調査を行いました。調査報告書はブラックタイディングス社とのコンサルタント契約は適正な承認手続きを経て締結されたものと確認しております。

 承認手続きにおいて担当者が取り引きの概要説明を記載した書面の稟議書を起案し、この上司が順次承認したうえで、理事長であった私に承認を求めるものであります。私自身はブラックタイディングス社との契約に関し、いかなる意思決定プロセスにも関与しておりません。私には本件に関与していた人々や本件の承認手続きを疑うべき理由はありませんでした。

 調査報告書は招致委員会からブラックタイディングス社への支払いはコンサルタント業務に対する適切な対価であったと結論づけております。また付け加えますと、調査報告書では私がブラックタイディングス社と国際陸上競技連盟会長、およびその息子がいかなる関係があったことも知らなかったことを確認いたしました。また調査報告書は、ブラックタイディングス社との契約締結に日本法において違法性はないと結論づけました。

 この調査報告書は2016年9月に発表され、それ以降さらなる調査は行われておりません。2017年初旬にはフランスの要請を受けた東京地検にも協力し、すべての質問に対し回答をいたしました。東京地検では何らの手続きも行われていません。そ
の後、フランス当局の要請により、(2018年)12月10日にパリでヒアリングを受けてまいりました。

 そこですべての質疑に応答し、みずからの潔白を説明いたしました。現時点、私の心境といたしましては、この騒動により2020年東京オリンピックパラリンピック開催に向け、着実で順調な準備に尽力されている皆様、組織委員会、オリンピックムーブメントに対し影響を与えかねない状況となってしまったことにつき、大変申し訳なく思っております。

 また、信頼するスタッフたちが一丸となって熱い思いを持って取り組んでいたのは紛れもない事実であり、その支えがあったからこそ、この東京招致が実現できたものと確信しております。この場をお借りして改めて当時のスタッフを誇りに思うとともに、皆様に感謝を申し上げたいと思います。

 今後、私は現在調査中の本件について、フランス当局と全面的に協力することを通じて、みずから潔白を証明すべく全力を尽くしてまいります。以上であります。

 カネを使って東京都に投票をお願いする行為はあくまでも裏取引に所属する不正であって、係の者が案を作成、関係者に回して承認を求める会議開催手間省略の稟議書に不正を正直に書くはずもなく、にも関わらず、「承認手続きにおいて担当者が取り引きの概要説明を記載した書面の稟議書を起案し、この上司が順次承認したうえで、理事長であった私に承認を求めるもので」あることを以って不正がなかったことの証明にしようとする。

 例え不正に関わった人間が作成した稟議書であったとしても、そこに裏取引の経緯や成果を記すはずもない。証明にならない事務手続きを持ち出さざるを得ないこと自体が限りなく状況証拠をクロに近づけている。JOC設置の外部第三者調査チームが「コンサルタント契約は適正な承認手続きを経て締結されたものと確認した」と、この「確認」をも事実無根・シロの根拠にしているが、この根拠にしても、仏検察当局が贈賄容疑で竹田恒和に対する正式捜査を開始したことに対しては何ら役に立ってはいなかったことになる。

 当然、2018年12月10日にパリでフランス当局から事情聴取を受けた際の自らの身の潔白の訴えにしても、相手に聞く耳を持たせることはできなかった。そのような訴えとは裏腹にシロであることの証明とはならないことを証明としている矛盾の追及を恐れて、記者に対する質疑の時間を設けることはせず、言いっ放しで記者会見を打ち切ることにしたのだろう。繰返しになるが、事実、潔白であるなら、どのような質問も恐れることはない。

 竹田恒和は「これらの契約につき、私は国会の衆参両院の予算委員会をはじめとする各委員会に呼ばれ、私は招致委員会元理事長の立場で参考人として説明をいたしました」と言っているが、参考人招致をされた国会での質疑を取り上げてみる。安倍晋三と同じで必要ないことを長々と喋って、無実の証明に必要となる発言やあるはずの契約書等の物的証拠は一切示さなかった。ムダな発言が多いから、読み飛ばしたとしても、無実の証明とならない理由は短い言葉で片付くゆえに、その理由さえ目を通して貰えば、片付くはずだ。

 2016年5月16日衆院予算委員会

 玉木雄一郎「2020年東京オリンピックの招致をめぐる買収疑惑であります。

 私も2020年東京オリンピック・パラリンピックの成功を祈る一人でありますが、このオリンピックに関しては、新国立競技場の建設計画の見直し問題、またエンブレムの見直し問題、また、新しい国立競技場には聖火台がない、こういった問題、さまざまな問題がこれまでも取り上げられてきましたが、今回の問題は極めて私は深刻であると思っています。

 資料1をごらんください。

 そもそも、これは一部の報道ではなくて、フランスの検察当局が公式にこの件に関して捜査を行っている旨を5月12日に発表しております。また、ガーディアンというイギリスの新聞を初め、海外の各紙メディアもこれを報道しております。まさに日本の名誉にかかわる問題だと思っています。

 資料2をごらんください。事案の概要、これはそのガーディアン紙の報道の表をそのまま持ってきましたけれども、少し複雑なので順を追って説明します。

 この一番上にあるラミン・ディアクさんという国際陸連の会長さんがいます。彼はあわせて、IOC、国際オリンピック委員会の投票権を持つ委員でもありました。今回報じられている疑惑は、この国際陸連の前会長であるラミン・ディアクさんの息子さん、パパマッサタ・ディアクさん、英語ではクロースフレンドと書いていますが、親友とされるイアン・タン・トン・ハン氏、このタン氏の経営する会社の口座、これはブラック・タイディングス社といってシンガポールにあると言われていますが、この口座に日本の招致委員会から多額のお金が送金をされ、そしてそのお金が招致にかかわるIOCの委員の買収と、そしてまた成功報酬として使われたのではないか、こういう疑惑であります。

 そこで、まず総理にお伺いします。

 先週の本会議で、同僚議員の福島議員からの質問に対して、本件に関して、早急に東京都及びJOC、日本オリンピック委員会、ここに確認をし、調査するなど事実関係の把握に努めると総理は明言されましたけれども、その後の調査結果はどうなっていますか」

 安倍晋三「詳細については文科大臣から答弁をさせたいと思いますが、御指摘の件については、招致委員会の理事長であったJOC竹田会長が先週ステートメントを私の答弁の後発表し、正式な業務契約に基づく対価として支払いを行ったとの見解を示したと承知をしています。

 当時の招致活動の具体的な内容については、招致委員会の主体となっていたJOCと東京都が説明責任を果たしていくべきものであり、政府としても、スポーツ庁を中心に、引き続き事実関係の把握に努めてまいりたいと思います」

 玉木雄一郎「資料1をごらんください。

 総理、これは危機感と緊張感が少し少ないのかなと思うので、改めてこれを見ていただきたいんです。

 フランス検察当局も文書の中に書いていますが、これはなぜ問題かということは、フランス当局が、短いステートメントですけれども、その中に幾つかの要素を書いています。一番大事なポイントは何かというと、金銭の送金、授受が、皆さんも、全国の皆さんも大変感動したと思いますが、2013年9月のあの感動的な、東京に開催地が決まった9月、この9月を挟んで前後に2回、合計2億円を超えるお金が、先ほど申し上げたシンガポールのブラック・タイディングス社に送金されているということです。

 この時期的な近接、つまり、開催決定の2カ月前に約1億円がまず振り込まれ、そして開催が決定した次の月に残りの1・3億円が振り込まれている。この決定にかかわる極めて近接した時期に多額の資金が移動していることについて、フランス当局は、それを捜査を始める一つの理由と掲げて、このステートメントを発表しているわけであります。

 改めてお伺いします。この送金については、フランス当局やあるいは外国のメディアが報道しているような疑惑は一切ないと、これは自信を持ってお答えになりますか。総理、改めて」

 文科相馳浩「報道がありましてから私も大変びっくりいたしまして、事実関係については、招致委員会、しかしながら当時の招致委員会はもう解散しておりますので、そこの理事長であった竹田さん、JOCの今は会長でございますけれども、その方々、また、スポーツ庁としては、何か大変重大な事案ではないかということで、当時の担当しておられた水野さんと、また招致委員会事務局の樋口さん、この方々に直接お会いをして確認をし、そして、当面いただいている情報について今からお伝えしたいと思いますし、きょうは参考人としても竹田さんをお呼びでありますので、ぜひ事実関係をお聞きしていただきたいと思います。

 実は、私も、当時8月に招致の最終段階に入りまして、一番最終的な票読み、またそのための情報収集、どのような方にどのように働きかけをした方が最終的に票を獲得できるかということで、モスクワの世界陸上選手権、ここの方に私も参りました。

 と同時に招致委員会においても、ここが大きな山場だと。このときの時点において、御記憶にあると思いますが、大変日本は厳しい状況にありました。理由は、汚染水の問題であります。私も、7月、8月とこの問題について官邸ともかけ合いながら走り回ったことを記憶しておりますが、そのときに、最終的に、コンサル会社と調整をした上で、適切な情報を踏まえて対処しなければいけないという判断をされたようですが、その際に、自薦、他薦、あまたのコンサル会社がどうですかと言ってくる中で、十分に対応するためにも、招致委員会のメンバーはコンサル業務に関してはプロではありませんので、電通に確認をしたそうであります。そうしたら、電通の方から、こういう実績のある会社としてはこの会社はいかがでしょうかということの薦めもあって、しかしながら、最終的には、招致委員会の方において判断をされて、この会社と契約をされたということがまず一点目であります。

 ただ、その契約のときに、契約交渉の中で、コンサル料を払わなければいけませんが、残念ながら、向こうから指定された金額を、当時、招致委員会は財政的に厳しい状況で、持っていなかったそうです。したがって、まず払うべき金額を払い、また、この後、最終的に招致を成功させなければいけませんから、成功までの間のことも含めてその後また払いますというふうな状況で、契約を2回に分けた、こういうふうに報告を聞いております。

 最終的には招致をかち取ることができて今日に至っているわけでありますが、8月の段階のモスクワでの世界陸上選手権、これに向けて、より強い、情報を収集し、対策を練る、そのための戦略を持つに当たって、必要なコンサル、そのコンサルが今回御指摘されている会社であった。

 ただ、そのコンサルがラミン・ディアクさんと関係する会社であったということは、残念ながら、当時の招致委員会においては知る由もなかった、こういうふうな報告を受けております」

 玉木雄一郎「電通からの推薦でお願いすることになったコンサルティング会社だということは分かりましたけれども、今大臣からもありました、きょうは、竹田会長、招致委員会の前理事長にもお越しをいただいておりますので、お伺いしたいと思います。

 最初の振り込みが7月です。招致決定が9月です。2カ月間、実質働いたのは2カ月間だと思いますが、そこで2億円を超えるお金。具体的に、どういう情報収集をいただいて、どういう報告をもらって、どういう業務活動書のレポートを受けているのか。具体的に、どのような活動をして、どのような成果があったのかという、その報告はどのようなものを受けておられるのか、御説明をください」

 竹田恒和「ただいま御指名いただきました日本オリンピック委員会、JOCの竹田でございます。

 先生方には、日頃から我が国のスポーツ振興に多大な御支援、御協力を賜り、また、この8月に開催されますリオデジャネイロ・オリンピック大会、2020年の東京オリンピック大会に向けて多大な御支援をいただいていることを心から感謝申し上げたいと思います。また、大会の招致活動につきましても、皆様方には多大な御支援そして御協力をいただいたことを改めて御礼を申し上げたいと思います。

 本日は、日本オリンピック委員会の会長の竹田でございますが、2020年東京大会の招致活動にかかわる問題でございますので、特定非営利活動法人東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会の元理事長として説明をさせて頂きたいと思います。

 2020年の招致委員会は、2011年9月にJOCと東京都で立ち上げ、そして招致活動をスタートいたしました。同年12月には衆参両議院の招致決議、そして閣議了解をいただき、本格的活動となりました。

 その活動に当たっては、民間資金の調達として、各界各層からの寄附、そして協賛金をベースとして、税金を一切使わないでこの活動を行ったということをまずお伝えしたいと思います。

 また、オリンピック招致活動で海外コンサルの契約を結ぶことは、国際的に見ても極めて一般的でありまして、むしろ海外コンサル契約なしでは招致は成功しないとまで言われているほどであり、これは事実であると思っております。

 今回、どのような契約が行われたかということを御説明申し上げたいと思います。

 まず、経緯でありますが、先ほど馳大臣からもお話がございました。この各種大会イベントを行うに当たって、代理店あるいはコンサルというのは自薦、他薦、多くありますが、今回は本人から売り込みがありました。そして、株式会社電通さんにその実績を確認いたしましたところ、十分その業務ができる、そして実績があるということを伺い、事務局で判断したということを報告を受けております。特に、アジア、中東地域において活動実績が強いこと、この地域を中心とした活動に期待したところであります。

 敗れた2016年の東京招致の際には今回の倍近い多数のコンサルを雇っておりましたが、残念ながら余り機能させることができなかったため、2020年には絞り込んで活動をいたしました。

 招致活動最終段階においては、特に実績のあるコンサルタントを探しており、契約するに至ったと報告を受けております。特に陸上関係については影響力があると各方面からも聞き、PRすべき重点競技として考えていたところでございます。世界陸上協会の会長の親族が関係しているということは全く認識していなかったということを申し添えます。

 このIAAF、世界陸上競技連盟とブラック・タイディングス社は業務の実績はあるということは伺っておりますが、ラミン・ディアク氏そしてその息子さんたちとこの会社が関係があるということは、全く我々は知る由もなかったということをお伝え申し上げます。

 ただし、いずれにいたしましても、いずれのIOC委員あるいはその親族がブラック・タイディングス社との資本関係や役員として関係していないということを認識しております。IOC委員として、そしてその親族が、経営者ではなく、あくまで知人の範囲であれば問題はないということも認識しているところであります。

 この会社の実績はいろいろございまして、決してペーパーカンパニーではございません。2015年の世界陸上北京大会の招致コンサルタント、マーケティング、2008年北京オリンピックのホスピタリティーサポート、博鰲アジアフォーラムの協力、そして二〇一二年イスタンブール世界室内陸上競技の大会等が挙げられます。

 また、この契約の内容でありますが、先ほども御質問ありました。ブラック・タイディングス社との契約は、異なる業務内容で二つの契約を行い、それぞれの業務対価として二回にわたって支払ったものでございます。これは、招致委員会の正式な手続に基づき、そして契約を交わし、行ったものでございます。

 この契約支払い行為につきましては、国際会計基準により、招致委員会にて適切な会計処理をし、新日本有限責任監査法人等により正式に監査を受けたものであり、そして、IOCにも決算報告をし、承認を受けたところでございます。

 内容といたしましては、一回目は、最終段階に入った国際ロビー活動を効果的に、そして効率的に行うため、ロビー活動コミュニケーション戦略の確立、IOC委員の動向、周辺情報の収集、大会関係の情報収集などを業務といたしました。

 国際関係のプロモーションは2013年の1月から解禁でありまして、ですから、一月から、実際この契約は7月でありますが、7月から9月までの最後の一番大事なときに契約をしたわけでございます。

 二回目の、招致決定後のIOC総会や東京招致の要因についての情報収集、分析を委託し、招致に関する報告や今後の活動などのために基礎資料とすべく業務をしたものでございます。

 ここで、よろしいですか。(玉木委員「簡潔にお願いします。時間がないので」と呼ぶ)はい、分かりました。

 まず、業務内容ですけれども、そして、成果物のことについてお話し申し上げます。

 当該業務の成果物はロビー活動そのものであり、アポイントメントの実施や業務報告、情報分析などの有形無形の各種報告が成果であります。これらの成果は、最終段階までの情報収集と効果的なロビー活動の詰めに大いに役立ったものであり、まさに最後の票読みと票獲得には欠かせないものであったというふうに確信をいたしております。

 招致活動の特殊性とその契約の実態について少し御説明をさせていただきたいと思います。

 招致決定の1カ月前、2013年8月10日から18日まで開催されましたIAAF世界陸上選手権ですが、同時にIOCの理事会が行われました。30名以上のIOC委員が来ることが分かっておりました。

 2016年のオリンピック・パラリンピック招致のときにも、2009年ベルリンで行われました同選手権が招致の決定1カ月前に開催されました。その決戦の場であり、そこでの活動が十分でなかったということが敗因の一つとなっておりました。

 2020年の招致では同じ失敗は許されず、モスクワの世界陸上の選手権で、活動は決戦の場であり、そのための招致戦術を策定すべく、2013年4月から6月にかけて全力で取り組んでおりました。しかし、世界陸上の関係者へのアプローチの点での人脈が脆弱であるとの結論に至ったわけであります。

 そこで、事前アプローチを受けていた数名のコンサルタントのうち、国際競技連盟大会に……」(玉木委員「質問ができないです」と呼ぶ)

 委員長竹下亘「竹田会長、申しわけございません、時間が迫っておりますので、手短にお願いをいたします」

 竹田恒和「はい、わかりました。

 まず、招致決定した際の収入の確保状況も踏まえて、そして成功報酬的な意味合いもある、新たな追加業務委託もあるということを話し合ったということも聞いておりました。

 そして、結果として、2013年9月7日、ブエノスアイレスのIOC総会で東京決定を受け、日本国内で盛り上がりも大きく、日本国民の全体に活気をもたらすことができたと思っております」

 玉木雄一郎「いろいろ今説明いただきましたけれども、私の質問には答えて頂いておりません。

 どういう結果が成果物、有形無形のというふうに言いましたけれども、では、文書として、この二億円を超えるものに対する対価として何らかの報告書はあるんですかないんですか、この点についてはもう一度お答えいただきたいのと、ちょっと資料3を見てください。

 実績の大変あるブラック・タイディングス社ということで、例えば2015年の北京国際陸上などを招致した実績があるというふうにありましたけれども、これは一部欧米のメディア、日本のメディアも報じていますし、私もグーグルアース等で住所を確認すると同じところが出てきますけれども、アパートの一室で、しかも、今は会社がもうないということです。

 このもとになる、世界反ドーピング機構の独立委員会の報告書の中に一番最初にこの東京招致についての疑惑が出てくるんですが、実はそこにもこのブラック・タイディングス社の口座というのが出てくるんですね。ロシアのマラソンランナーのドーピングのもみ消しに失敗したので、そのお金をリファンド、うまくいかなかったので、戻すときの口座にここが使われているんです。

 そこの報告書の中の注書きにおもしろい記述を見つけました。このブラック・タイディングスというのは、英語をそのまま訳すと黒い文書とか情報とか通知ということだと思いますが、そのヒンディー語は、黒い金を洗浄するという意味だそうです。

 これはペーパーカンパニーではないと今お話がありましたし、そういう認識はなかったということであれば、証拠を出してもらいたいんです。招致委員会は既に解散しておりますけれども、残余財産は組織委員会にも引き継がれていますし、ましてや竹田前理事長、今JOC会長は、ある意味、同じ人物で当事者でありますから、先ほど話があった、こういう2億3千万円に対する対価としての活動報告書及び財務諸表は、今、誰が、どこで管理をされていますか。

 そして、もう一つ伺います。

 こういう問題が発覚した後に、ブラック・タイディングス社あるいはタン氏に接触をとって、渡したお金をおかしなことに使われていませんねという確認はとりましたか」

 竹田恒和「まず、関係書類についてでありますが、これは、法人清算人であります招致委員会元専務理事水野正人氏が責任を持って管理をしております。この契約書につきましては、その存在と内容は、昨日、5月15日に現物を確認いたしました。そして、条約事項には守秘義務事項があることを御理解いただきたいと思います。守秘義務事項によりまして、契約相手側の確認など、法的な論点の検討を経ずに、直ちに開示をできるものではないと認識いたしております。

 また、これが、先ほども御質問がございましたが、ペーパーカンパニーではないかということでございますが、契約時は、実績もあり、そしてペーパーカンパニーではないということを確実に認識しております。しかし、現在はどうなっているか、正直、把握しておりません。

 そもそも、この世界でのコンサルタントは、個人事業も非常に多く、個人経営ですね、そして、海外を回って活動することも多いため、自宅を会社として登記している例も珍しくなく、多くのコンサルタントもそのようにしております。我々としては、あくまでも、ブラック・タイディングス社の実績を踏まえて今般の契約に至ったということをお伝え申し上げたいと思います」

 玉木雄一郎「二番目の質問は、この事案が、事前にはわかりました、信頼あるところと信じてやったということなんですが、こういうことが取り上げられて、大きな世界的な疑惑になっておりますから、そういうことが出た後、改めてブラック・タイディングス社あるいはタン氏そのもの、こんなにたくさんのお金を払っているわけですから、連絡先は当然わかっていると思いますが、確認はされましたか」

 竹田恒和「確認はいたしておりません」

 玉木雄一郎「では、正しいということはどのように、妥当性について、今、確かに払ったことは払ったとお認めになっていますが、それが今、不正なものに使われたのではないのかということが、国際的な疑惑が生じているわけですから、その使途について確認は、では、それが適正なものであったかというのはどういうふうに確信をお持ちなんですか」

 馳浩「今回の事案は、フランスの捜査当局が指摘をしたことから始まったというふうに認識しておりますから、私も大臣の立場で、ある意味では、そういう指摘を受けた以上は、きちんとフランスの捜査当局に協力をしなさいというふうな指示はもう出しておりますので、それを踏まえて、どのようにそのお金が使われたのかといったことも、フランス捜査当局との、関係捜査機関との調査によって明らかにされるべきものだと考えております」

 玉木雄一郎「大臣、それは違うと思います。

 この前、ロンドンで腐敗サミットが行われて、そこで、伊勢志摩サミットでは日本が主導してスポーツにおける腐敗対策の文書を取りまとめるということをもう言っているわけですね。しかし、ホスト国自身がオリンピックの招致にかかわって大きな疑惑を抱えたままでは、そんな文書を取りまとめるなんてできないと思いますよ。それこそブラックジョークですよ、これは。

 だから、私がお願いしたいのは、まず委員長、サミット前までにもう一度、この件に関する集中審議を求めたいと思います。そして、先ほど大変重要な答弁があったのは、これは水野氏が報告書等を全て管理しているということでありますから、この水野氏と、そして前事務局長の樋口氏の参考人招致を求めたいと思います。

 あわせて、最後、総理にお願いしたいんですが、これはやはりサミット前までにきちんとした、我が国独自にしっかり調査をして潔白だということを明らかにすべきだと思うんです。その意味でお願い申し上げたいのは、本件に係る契約書、活動報告書、そしてブラック・タイディングス社が本当に実績があるのかというその実績を記した文書、また財務諸表を、これは例えば党首討論がまた行われますから、その日の正午までに公表するようにぜひ促していただきたいのと、それと、第三者委員会、独立の調査委員会を立ち上げて、サミットまでに徹底した真相究明をすべきだと思いますけれども、総理、いかがでしょうか」

 安倍晋三「先ほど馳大臣から答弁したとおりでありまして、フランス当局がまさに今捜査をしているわけでございますから、我々としては、このJOC側に対しては、旧招致委員会側に対しましてもしっかりと協力するように馳大臣から申し上げているところでございます」(玉木委員「いや、総理、最後に」と呼ぶ)

 竹下亘「玉木さん、ちょっと待ってください。先ほど要求がありました集中審議の件、それから参考人質疑、それから財務諸表の提出、後刻、理事会で検討をさせていただきます」

 玉木雄一郎「はい。よろしくお願いします。もう終わりますが、もともとこれが、国際的に取り上げたのは、一月に発表された世界反ドーピング機関の報告書です。その報告書の中にこういう記述があります。マーケティングコンサルタント業とは何を意味するのかについて、捜査当局間の共通認識として、それは不正な賄賂を隠す便利な言葉だというふうにされています。

 ですから、コンサルタント契約の対価として公式に払ったといっても、まさにそれが不正を隠す一つの隠れみのになっていて、その使途が本当に適正だったかどうかについては、これは日本の名誉をしっかりと保つためにも徹底的に日本独自で自主的に調査すべきだと考えますので、このことを強くお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました」

 玉木雄一郎が「この二億円を超えるものに対する対価として何らかの報告書はあるんですかないんですか」とコンサルティング会社に2億円以上の対価を支払うについての何らかの報告書はないのかと問い質したのに対して竹田恒和は「この契約書につきましては、その存在と内容は、昨日、5月15日に現物を確認いたしました。そして、条約事項には守秘義務事項があることを御理解いただきたいと思います。守秘義務事項によりまして、契約相手側の確認など、法的な論点の検討を経ずに、直ちに開示をできるものではないと認識いたしております」と答弁しているが、裏取引ならば、正規の契約書を装っているだろうから、そこからは何も見えてこない。

 但しそのコンサルタント会社は本人からの売り込みであったために株式会社電通にその実績を確認したところ、調査の末、実績を請け合ったとしている。当然、どういった事柄の確認を電通に依頼したのか、その事項を書き連ねた書類の写しは残っていなければならない。調査にはカネが掛かるはずだから、のちのちの支払い・経費として計上する証拠として入出金表に残さなければならないからだ。電通にしても収入・経費・利益を計上する関係から、調査依頼を文書で受け取り、調査結果を文書で報告しなければならない。調査に関わるカネが組織間で動く以上、口頭で依頼して、口頭で依頼を受け、口頭で報告し、口頭で報告を受けたとすることは決してできない。

 コンサルティング会社がペパーカンパニーの疑いがある以上、電通への依頼書、電通からの報告書がペパーカンパニーの疑いを払拭するより確かな証拠となる。玉木一郎はこの点を突破口とすべきだった。

 だが、竹田恒和は自身の身の潔白を証明するより重要な証拠となる電通への依頼書、電通からの報告書を持参もせず、当然、見せることもしなかった。贈賄の疑いをかけられて国会に参考人招致された人物がそのような文書を持参しないということはあるだろうか。

 また、コンサルティング会社はIOC委員やその関係者への働き掛けを依頼されていただろうから、報告書に「守秘義務」をかけるのは止むを得ないとしても、玉木雄一郎が「開催決定の2カ月前に約1億円がまず振り込まれ、そして開催が決定した次の月に残りの1・3億円が振り込まれている」と明かしている2013年10月に支払ったカネに関する前以っての契約について竹田恒和は「二回目の、招致決定後のIOC総会や東京招致の要因についての情報収集、分析を委託し、招致に関する報告や今後の活動などのために基礎資料とすべく業務をしたものでございます」と答えている、その手の「委託」にまで守秘義務をかける正当な理由は見い出し難い。

 この点を突くべきだったし、逆に竹田恒和はなぜ存在するはずの業務依頼書と業務報告書を示して、「これこれこのとおり疚しいところはありません」と身の潔白証明の一つとしなかったのだろうという疑問が残る。

 さらに「IOC総会や東京招致の要因についての情報収集、分析」の「委託」に「1・3億円」もの対価を必要とする理由にしても、その正当性は見い出し難い。成功報酬と捉えた方が素直に納得できる。どう贔屓目に見ても、状況証拠は限りなくクロを示している。黒いカネが功を奏した2020年東京五輪決定と見るべきだろう。「青、黄、黒、緑、赤」5色の五輪マークが全部黒色に見えてくる。

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安倍晋三がプーチンの懸念の根拠を逆手に取って辺野古移設断念を差し出せば、少なくとも歯舞・色丹返還の可能性は生じる

2019-03-21 11:22:50 | 政治


   2019年7月28日任期満了実施参院選で

   安倍自民党を大敗に追いつめれば

   政権運営が行き詰まり 

   2019年10月1日の消費税10%への増税を

   断念させる可能性が生じる


 プーチンが2019年3月14日、モスクワで開催のロシア経済界との非公開会合で議論した世界情勢の中に日ロ平和条約交渉に関しても言及、「テンポが失われた」と述べて交渉が停滞しているとの見方をしめしたと、ロシアの有力紙であるコメルサントが2019年3月15日付で伝えたと2019年3月16日付「asahi.com」記事が伝えていた。

 停滞の理由は日本に米軍基地の設置を認めている日米安保条約等に触れて、「日米同盟を解消する必要がある」との考えをも示したとしているが、返還後の島々に日米安保条約に基づいてアメリカが米軍を配置することへの懸念をプーチンは前々から示していた。

 その〈一方でプーチンは今後の交渉について「打ち切ってはならないが、落ち着く必要がある」と指摘。結論を急がず対話を継続する姿勢を示した〉と、日本との経済協力まで投げ捨ててしまう訳にはいかないからだろう、交渉継続の思惑を紹介している。

 記事は末尾で、〈ロシアの世論調査では、北方領土の引き渡しに反対する国民は約8割にのぼり、北方領土の島民に限れば9割を超える。北方領土を管轄するサハリン州議会などからは、日本への島の引き渡しを明確に否定しないプーチン氏を批判する声も上がっている。〉と紹介して、国内世論もプーチンの判断に影響を与えている可能性に触れている。

 この〈北方領土の非軍事化は、日本と旧ソ連、ロシアとの領土交渉で度々取り上げられ、90年代初めにはロシアのエリツィン大統領(当時)が言及したこともあった。〉と2018年11月17日付「毎日新聞」記事が伝えている。そして複数の日露関係筋からの情報として、2016年11月19日にペルー・リマで開かれた日ロ首脳会談で安倍晋三が「北方領土は非軍事化するというのが日本の考え方だ」とプーチンに伝えていると報じている。

 要するに1990年代初めから返還した場合の北方領土に米軍が基地を設置し、軍を展開することへの懸念を旧ソ連にしても、後継のロシアにしても有していて、このことを日本側に度々伝えていた。このような懸念に最終的に応える形で安倍晋三は2016年ペルーの首脳会談での非軍事化の表明となったということになる。

 記事は、〈両首脳は2018年11月14日の(シンガポールでの)会談で、「平和条約締結後の歯舞群島と色丹島の引き渡し」を規定した日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速させることで合意した。〉と紹介しているが、2019年1月26日付「共同通信47NEWS 」記事は、プーチンが2000年に「1956年宣言の履行は義務」と表明し、2島決着を提案したのに対して日本側が4島返還に固執して拒否したことを報じている。となると、シンガポール会談での1956年日ソ共同宣言基礎の歯舞・色丹二島返還交渉の合意は安倍晋三の方からの提案という形を取っているが、実際は安倍晋三の譲歩ということになって、2日後の11月16日にオーストラリア・ダーウインで行なった内外記者会見での発言、「従来から政府が説明してきているとおり、日本側は、ここにいう平和条約交渉の対象は、四島の帰属の問題であるとの立場であります。従って、今回の1956年宣言を基礎として平和条約交渉を加速させるとの合意は、領土問題を解決して平和条約を締結するという従来の我が国の方針と何ら矛盾するものではありません」はマヤカシそのものとなる。

 ロシア側の返還した場合の北方四島のいずれかの島に於いて現実化するかも知れない米軍基地の展開に対する懸念にしても、安倍晋三のプーチンに伝えたとする北方領土非軍事化の考え方にしても、いずれの首脳会談後であっても、どちらの政府の公式見解にも現われなかったと記憶している。もし公式見解で触れていたなら、プーチンが非公式の場でこのことに触れる意味がなくなる。

 安倍晋三がプーチンに「北方領土は非軍事化するというのが日本の考え方だ」と伝えたペルー・リマ開催の日ロ首脳会談の2016年11月19日から半年と約10日程あとの2017年6月1日にプーチンはロシア西部サンクトペテルブルクで行われた各国の通信社代表らとの会見で北方領土問題について言及し、島を日本に引き渡した場合、現地に米軍が展開する可能性があると述べ、返還は事実上困難との見方を示したと2017年6月1日付「産経ニュース」が伝えている。

 要するにこの会見の半年と約10日程前にペルー・リマの日ロ首脳会談で安倍晋三がプーチンに与えた返還された場合の北方四島非軍事化は確かな保証とはならずに眉唾として受け止められていた。

 記事はプーチンがロシアの北方四島での軍備拡張は韓国への最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備などの北東アジアでの米国のミサイル防衛(MD)網拡大への対抗措置だと正当化し、北方四島はそのような「脅威」に対抗するのに「極めて便利な場所」だとして、ロシアにとっての北方領土の軍事的重要性を強調したと伝えている。つまり軍事的安全保障上からも北方四島はなかなか手放せませんよの意思表示となる。

 但し北東アジア全体の軍事的緊張緩和が実現した場合はロシアによる北方四島の非軍事化は「可能だ」とも述べたとしているが、北東アジア全体での軍事的緊張は逆に高まっているし、日本はそのような状況に加担さえしている。

 2018年2月14日の衆院予算委員会で国民民主党の後藤祐一がロシアの懸念を取り上げている。

 後藤祐一「プーチン大統領が、おととしの12月、山口県に来られました。その後の日ロの首脳の共同記者会見のときに、北方領土問題についてこのように述べておられます。米国と日本との間の安全保障条約の枠内における条約上の義務が念頭にありますが云々とあって、全ての微妙さとロシア側の懸念を考慮することを望みますと。

 米安保条約の6条というので、アメリカは、陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することが許される、つまり、日本のどこにでも米軍は基地なりを置いていいという安保条約6条というのがあって、北方領土がもし日本の帰属になった場合には米軍の基地が置かれてしまうのではないか、だとすると、なかなかどうぞというわけにはいかないですよねということをプーチン大統領はおっしゃっていると思うんですが、これは明確にこう言っているわけですね」

 安倍晋三「6条においては、当然これは日本の同意が必要となるわけであります」

 後藤祐一「いえいえ、プーチン大統領が、北方領土の問題についてなかなかいいよという話にまでいかないのは、6条に基づいて米軍が基地を置いてしまうかもしれない、だからなかなか返せないよねということをちゃんと考えてほしいと。これはある意味合理的だと思うんですよ。なかなか領土問題が解決しない理由は、プーチン大統領ははっきり言っているんですよ。総理も同じ認識ですか」

 安倍晋三「私とプーチン大統領とのやりとりの中身については、これはまさに交渉中でございますから、ここで発言することは控えさせていただきたいと思います。

 これは横に置いておいて、他方、安保条約の6条において、米軍が望めばどこにでも置けるということでは全くないわけでございまして、先ほど私が申し上げましたとおり、日本の同意が必要であります」

 要するに日本はアメリカが返還された場合の北方四島に米軍基地を置くことを望んだとしても同意しないと保証していることになる。

 安倍晋三とプーチンは2018年の首脳会談をこの2018年2月14日の衆院予算委員会後の2018年5月26日のモスクを皮切りに2018年9月10日にウラジオストクで、2018年11月14日にシンガポールで、そして2018年12月1日にアルゼンチンのブエノスアイレスでと、4回も開催している。

 公式見解上は現われなくても、北方四島返還交渉と平和条約締結交渉を前へ進めるためにロシア側の懸念についても話し合われたはずで、安倍晋三は2016年11月19日のペルー日ロ首脳会談で表明した「北方領土非軍事化」の保証の有効化に務めたはずだ。

 そして2018年最後のアルゼンチンはブエノスアイレス日ロ首脳会談開催の12月1日から19日後の2018年12月20日、プーチンは年末恒例の記者会見で非公式の場であるものの、再び北方四島に於けるロシアの懸念を取り上げている。「asahi.com」(2018年12月21日02時00分)

 プーチン「(返還した島々に米軍基地設置の可能性について)日本の決定権に疑問がある。日本が決められるのか、日本がこの問題でどの程度主権を持っているのか分からない。

 平和条約の締結後に何が起こるのか。この質問への答えがないと、最終的な解決を受け入れることは難しい。(日本の決定権を疑う例として沖縄の米軍基地問題を挙げ)知事が基地拡大に反対しているが、何もできない。人々が撤去を求めているのに基地は強化される。みなが反対しているのに計画が進んでいる」

 2018年2月14日の衆院予算委員会で、「安保条約の6条において、米軍が望めばどこにでも置けるということでは全くないわけでございまして、先ほど私が申し上げましたとおり、日本の同意が必要であります」と安保条約に於ける基地設置に関わる日本の主体的同意へのアメリカ軍の従属性を言いながら、そして4回も首脳会談を行なっていながら、ロシアの懸念払拭の有効化を実現させることができなかった。

 そして2019年に入って早々の1月22日にモスクワで安倍晋三とプーチンは通算25回目の首脳会談を開催しながら、同年3月15日になって、既に触れているようにロシアの有力紙コメルサントが前日3月14日モスクワで開催したロシア経済界との非公開会合の席でプーチンが表明した北方領土交渉に関わる懸念を報じることになった。しかもプーチンはこれまでと違って、米軍基地を置かない保証を「日米同盟解消」に求めた。

 これは安倍政権にとってクリアできない条件だと承知の上で突きつけた、当然、実現可能性を何ら期待していない要求であろう。だとしても、プーチンが「日米同盟解消」を掲げた以上、2018年2月14日の衆院予算委員会で後藤祐一に対して安保条約6条を根拠として言及した米軍基地設置に於ける「日本の同意の必要性」だけではなく、2019年3月18日の参院予算委員会で国民民主党新緑風会派の山本太郎がロシア側の懸念を取り上げたのに対して安倍晋三が同じく米軍基地設置に関して「事前協議が必要であります。事前協議に於いて日本側が了承しなければならない」と答弁した事前協議の必要性にしても、ロシア側の懸念を払拭する何らの材料にも、保証にもなっていないことになる。

 安倍晋三がこの事前協議の必要性を答弁したのに対して山本太郎は、1960年の「安保改定交渉に先立ち、その前年、1957年6月21日に出された岸首相とアイゼンハワー大統領の共同声明には合衆国によるその軍隊の日本に於ける配備及び使用について実行可能なときは、実行可能なときはいつでも協議することを含めて、安全保障条約に関して生じる問題を検討するために政府間の委員会を設置すると書かれています」と述べて、事前協議制度が「実行可能なとき」という条件づきで機能する、いわば実行不可能なときは機能しないことになる抜け道を暴き出しているが、こういったことをプーチンが承知していて、安倍晋三にはできもしない「日米同盟解消」を持ち出した可能性は排除できない。

 但し例えプーチンが「日米同盟解消」を求めたとしても、沖縄の米軍基地問題を取り上げて、「知事が基地拡大に反対しているが、何もできない。人々が撤去を求めているのに基地は強化される。みなが反対しているのに計画が進んでいる」ことを米軍基地に関わる日本の決定権を疑う根拠として挙げている以上、その根拠を逆手に取って辺野古移設断念をプーチンに差し出した場合、沖縄の県民投票に現われた辺野古ノーの民意に添うことになるばかりか、「日米同盟解消」とまでいかなくても、返還された場合の北方領土を米軍の好きなようにさせない意思表示となるはずで、少なくとも歯舞・色丹返還の可能性は生じることになる。

 安倍晋三がそこまでしなければ、プーチンの「日米同盟解消」は北方四島のいずれの島も返還しないための無理難題として生き続けることになるだろう。

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安倍晋三の日米同盟緊密化優先を目的とした、何が何でも既成事実を積み上げようとする辺野古基地建設の見切り発車

2019-03-18 12:00:30 | 政治


   2019年7月28日任期満了実施参院選で

   安倍自民党を大敗に追いつめれば

   政権運営が行き詰まり 

   2019年10月1日の消費税10%への増税を

   断念させる可能性が生じる


 政府は常々辺野古基地は世界一危険とされる普天間飛行場を撤去・返還するための代替施設だと辺野古移設を正当化しているが、辺野古基地建設反対派は移設をストレートに反対するのではなく、現代の戦争に於ける先制攻撃は先ず敵国土に接近した巡洋艦・駆逐艦・フリゲート艦・潜水艦等搭載の巡航ミサイル攻撃と爆撃機搭載の巡航ミサイル攻撃で敵基地を相当程度に打撃を与えて戦力を喪失させてから、海兵隊や地上部隊のお出ましという順番になっていて、こういった艦艇攻撃の重要度が増す一方での先制攻撃時での海兵隊の即応性・機動性の重要度の低下との関係、さらに急場の場合の兵員輸送は大量輸送の大型軍用機を利用する短時間での大量輸送が可能である関係から、普天間返還後にその地の海兵隊員を9000人グアムに移動させる計画があるが、それがオーストラリアであってもさして変わらないわけであって、普天間基地でなくても、米海兵隊の沖縄での有事以外のプレゼレンスは必ずしも必要ではなくなる。

 この不必要性に依拠した場合、普天間基地の不必要性に自ずとしてリンクすることになり、結果として普天間の代替施設の不必要性を最終的な回答とするところに進んでいく。このことを前面に押し出した辺野古基地建設の論理的な反対運動とすべきように思える。このように戦術を転換しないと、辺野古基地建設反対に対して世界一危険と言われる普天間の全面返還には辺野古を代替基地とする以外に方法はないとする政府側の主張との堂々巡りが続くことになる。

 辺野古基地建設が見切り発車だと分かる、自由党森ゆうこ追及の象徴的な国会論戦をNHK中継で見た。

 2019年3月3日の院予算委員会

 森ゆうこ「普天間代替基地の辺野古の沖縄県民の意思・思い、県民投票で示されました。だが、次の日に埋立工事を強行する、次の日ですよ。神経を疑いますね。何でちょっと止めることぐらいできなかったんです」

 委員長「岩屋防衛大臣」

 岩屋毅「事業を行っているのは沖縄防衛局でございますので、私の方からお答えさせて頂きます。私共は沖縄の負担軽減を1日も早く目に見える形で実現をしていかなければいけないと思っております。沖縄県さんとも会話の機会を累次持っております。沖縄県知事さんとは私は4度、お目にかからせて頂きました。これからも丁寧な説明を行って、ご理解を頂きつつ、沖縄の負担軽減、ひいては普天間基地の全面返還に向かって一歩づつ前に進ませて頂きたいというふうに思っております」

 森ゆうこ「公共工事の観点から伺います。来年度の当初予算、辺野古移設事業はいくらですか、総額」

 岩屋毅「平成31年度予算案に於いては契約ベースで約707億円、歳出ベースで611億円を計上しているとろでございます。細目は必要ですか。その内訳はですね、環境影響評価経費として契約ベースで約134億円 歳出ベースで約37億円。埋立工事に要する経費として契約ベースで約405億円、歳出ベースで約271億円。キャンプ・シュワブ再編成工事に要する経費と致しまして契約ベースで約265億円、歳出ベースで約301億円、その他の事務経費(?・・・・・)契約ベースで1億円、歳出ベース1億円を計上しております」

 森ゆうこ「これまで掛かった経費の総額、そしてこれから事業費はいったいいくら掛かるのか教えてください」

 岩屋毅「これまでの執行の総額は1270億円だと思いますが、全体の経費がいくらかかるかというご質問ですが、それがですね、この段階では確たることは申し上げられません。先般、軟弱地盤の改良工事が進んだということも、申し上げておりますが、詳細な設計が済み、概要が分かり次第、報告をしてまいりたいというふうに思っております」

 森ゆうこ「ここ予算委員会なんですけど。総額、いくら掛かるか分からない。いつできるかは分からない。そんな公共事業の予算てあるんですか。一体いくら掛かるんですか。一体いつになったらできるんですか。見通しぐらい言わなければ、皆分からないではないですか」

 鈴木敦夫防衛省整備計画局長「お尋ねの件ですけどれも、普天間飛行場の移設にかかる経費につきましては平成21年に約3500億以上という全体見積りを出しました。また、既に復帰(?)いたしました普天間飛行場への移設にかかる平成18年度から平成29年度までの支出、準備額でございますが、これは先程大臣からお話がございましたように約1270億円でございます。

 その内訳を申しますと、環境影響評価経費と・・・約180億円、埋立工事の遣り繰り経費として約752億円、キャンプシュワブ再編経費・・・・として約332億円となってございます。今後の全体の経費につきましては先程大臣がお話がございました、今後沖縄防衛局に於きまして地盤改良にかかる具体的な設計の検討等、行うなど、これに当たりましてはより合理的な設計・施行が工事本体(?)に資するということから十分な検討を行うこととしております。
 
 そのため現時点では確たることを申し上げることは困難でございますけども、然るべきときにしっかりと整理させて頂きたいと思います」
 
 森ゆうこ「然るべきときにとはいつのことでございますか」

 鈴木敦夫「今回の設計等につきまして十分な検討を行い、より合理的な設計・施行、これがきちんと検討が終えた時点ということでございます」

 森ゆうこ「ちゃんと答えてくださいよ、いつまでなのか。公共事業でしょう?軟弱地盤については3年前から指摘されてるんですよ。それをないないって言って。で、設計もできなくて、これ本当にできるんですか?もんじゅ(高速増殖炉)なんかと一緒じゃないんじゃないんですか?

 散々税金使って、できないっていうことじゃないんですか。いつできるんですか。いくら掛かるんですか。本当にできるんですか?」
 
 岩屋毅「今、先生、3年前から軟弱地盤は分かっていたと仰っいましたが、そうではありませんで、最初に24本のボーリング調査を行ないました。その中にN値ゼロ、完全なN値ゼロ(試料採取用の筒を地中に沈めるのに何回打撃を与えたかを示す単位)が1本、それに近いものが3本ございましたが、ボーリングを行なった地点を今、数が少なかったものですから、それだけでは判断をし難いということで、追加の52本のボーリング調査を行なった結果ですね、大浦湾側には確かに軟弱地盤があると。

 従って改良工事が必要だということになりましたが、衆議院の審議のときにですね、お答え申し上げたんですけれども、70メートルのサンドコンパクション、あるいはサンドドレインという工法を使えばですね、十分安定的な工事は可能だと、しかも70メートルをやらなければいけないのは全体の数パーセントにとどまる、約7割は40メートル以下の施行で済むちゅうということを私共確認をして致しておりまして、工事はできます。

 しかし詳細な設計が終わらなければですね、工事費や工期についてこの段階では確たることは申し上げられませんけど、分かり次第、ご報告をさせて頂きたいとおもいます」

 森ゆうこ「資料の4ページを御覧ください。4月26日の地質調査報告書。結果、結論、右側のページ。読んでください」

 岩屋毅「この4ページの右っかわですか。『前述したようにC1護岸計画箇所等には大きく凹む谷地形が形成されており、そこには非常にゆるい、軟らかな堆積物、えー、これ(「谷埋〈タニウメ〉堆積物))は何と読むんでしょうか、すみません、砂質土、粘性土が堆積している。N値が上位の砂質土、AVF、ちょっと専門用語で(Avf2-s1層)、0~18(平均5.4)、下位の粘性土Avf2-c1層で0~13(平均1.6)を示し、N値0を示すものも多い。以上のことから、特に当該地においては、構造物の安定、地盤の圧密沈下、地盤の液状化の詳細検討を行うことが必須と考える』でございます」

 森ゆうこ「防衛省、これいつ作った報告書ですか」

 鈴木敦夫「平成28年3月に纏められた報告書でございます。公開されましたのは平成30年3月ということでございます。これは平成29年2月に公開請求に基づき、開示されたものです」

 森ゆうこ「平成28年に分かっていったんですよ。だけど、隠していたんです。で、事務方でいいですから、今の資料の左側、下の方、何テ書いてありますか。『谷地形が形成され』たところ、読んでください、そして説明してください」

 鈴木敦夫「黄色い部分(マーカーを付してあるのか)だと思いますけど、えー、『谷地形が形成され,えー、非常に緩い・軟らかい、えー、えー、谷、堆積物、えー、えー、砂質土,粘性土が、えー、じゅう、たいせい(?)40メートルで堆積している』と言うことでございます。

 ただ、先程大臣から申し上げましたように、そもそもそのときの報告書では、この内容のみでは地盤の強度を十分に評価でき可能性にはございませんでした。従いまして、(以下聞き取れない。「追加調査を行う予定でございます」とでも言ったのか)」

 審議は続くが、辺野古建設が見切り発車であることはこの質疑応答で十分に理解できるから、文字起こしはここで中断。

 森ゆうこが資料4ページの一部を読んでくれと要求したとき、防衛省の岩屋毅も、防衛省整備計画局長の鈴木敦夫も、読むことのできない漢字に突き当たっている。要するに国会答弁に重要な資料でありながら、二人とも目を通していなかった。岩屋毅は防衛省の役人が野党質問者の質問通告に対応して作成した大臣用答弁書に適宜従って答弁し、鈴木敦夫にしても部下の役人が作成した同様の答弁書に応じて答弁している程度なのだろう。

 目を通さない理由は基地建設を進める政府側にとって不都合な事実があまりに多過ぎるからだろう。目を通して頭に叩き込むと、不都合な事実に気持が煩わされることになる。結果、不都合な事実から目を背けたい心理が自ずと働く。知らぬが仏の方が不都合な事実を押しのけて建設を強引に進めることができる。

 岩屋毅はこれまでに辺野古建設にかけた「執行総額は1270億円」で、以後必要となる「全体の経費」は「この段階では確たることは申し上げられない。詳細な設計が済み、概要が分かり次第、報告をする」と答弁し、防衛省整備計画局長の鈴木敦夫も、「現時点では確たることを申し上げることは困難でございますけども、然るべきときにしっかりと整理させて頂きたい」と発言している。だが、工事は進んでいる。見切り発車ではなくて何であろう。

 一般的には調査・工事方法の設計・工事費用の見積もりがあって、初めて工事にかかる。この一般的なルールを無視し、工事に掛かった点も見切り発車を窺わせることになる。

 以上の質疑と安倍政権が辺野古に土砂投入に至ったこれまでの経緯を簡単に見てみる。

 2010年11月28日の沖縄県知事選挙では前回2006年11月知事選で普天間の県内移設容認を主張し、初当選を果たした現職の仲井眞弘多が主たる対立候補伊波洋一を破って、再選を獲ち取った。仲井眞弘多も伊波洋一も、「Wikipedia」によると、普天間の県外移設を公約としていたが、仲井眞の方は前回の県内移設容認を玉虫色に彩って、県内移設反対は明言しなかったという。なかなかのタヌキ親父である。

 次回2014年沖縄知事選の約1年前の2013年12月27日に仲井眞弘多は記者会見して、政府の名護市辺野古沖埋め立て申請を承認したと表明した。県内移設反対を明言せず、県内移設容認を玉虫色に彩った甲斐があったのだろう。

 この仲井眞弘多の埋め立て申請承認を受けてなのだろう、先の防衛省整備計画局長鈴木敦夫の答弁から分かるように沖縄防衛局は2013年と2014年に辺野古基地建設予定地の地質調査を開始し、その報告書を2016年3月に完成。2017年2月に情報公開制度に基づいた公開請求に応じて、報告書を開示。

 当然、報告書に満載の不都合な事実、その情報は開示に応じて世間に洩れることになる。例え洩れたとしても、鈴木敦夫が発言しているように「地盤改良にかかる具体的な設計の検討等」を必要することから、その検討の終了と、岩屋毅が「詳細な設計が済み、概要が分かり次第、報告をする」と答弁しているように見積もりまで含んだ「詳細な設計」が完了しないことには工事に掛かることはできないはずだが、全体の建設費がいくら掛かるのかを算出もせず、工期も計算せずに2018年12月14日に安倍政権は辺野古沿岸部への土砂投入を開始した。

 要するに工事進捗の既成事実を積み上げていって、基地建設反対の有効性を潰していく見切り発車に出た。辺野古建設反対の沖縄県民の意思表示が示された2019年2月24日の県民投票も無視することになった。岩屋毅が「70メートルをやらなければいけないのは全体の数パーセントにとどまる、約7割は40メートル以下の施行で済むちゅうということを私共確認をして致しておりまして、工事はできます」と答弁してることは2019年2月28日の衆院予算委員会で共産党の赤嶺政賢に対して軟弱地盤の深さが最大で90メートルある場所が一部に存在することを認めながら、「70メートルまで施工する必要がある場所は全体のうちの数%程度だ。全体の約7割は水面下40メートル未満の地盤改良工事によって所要の安定性が確保できる。水面下70メートルを超える深度では非常に固い粘土層に分類される強度を有していることから、十分に安定性を確保できていると確認をしている」としていた答弁の意味を取るが、これも既成事実の積み上げの一環で、どうにかなるという見切り発車の部類でなくて何であろう。

 この根拠は防衛省が2019年3月15日に参議院予算委員会の理事会に提出した報告書にある。そこには埋め立て区域の軟弱地盤の改良工事に3年8か月程度かかるということだけで、全体の工期や総事業費は明示されていなかったという。全体の工期や総事業費等々の先行き不明確でありながら、工事を進めていく。見切り発車による基地建設完成に向けた既成事実の積み上げそのものであろう。

 アメリカ側は普天間の代替施設は辺野古がベストだという姿勢でいる。対して安倍晋三は民主党政権下で崩壊した日米同盟の再構築と強化を謳い上げて、「民主党政権の3年間で著しく損なわれた日米の絆と信頼を取り戻し、緊密な日米同盟が完全に復活をしたと自信を持って宣言したいと思います」と2013年2月23日の内外記者会見で日米同盟の緊密化を誇り、似たような誇らかさを他の機会でも口にしている。もしここで辺野古移設に頓挫した場合、安倍晋三にとっては米国の日本に対する、あるいは米国の安倍晋三自身に対する認め難い信頼喪失行為に映るはずである。

 要するに日米同盟の緊密化を優先させることが目的の辺野古工事の見切り発車だった。

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安倍晋三の取り残された被災者を眼中に置かない「東日本大震災8周年追悼式」スピーチ

2019-03-14 12:23:23 | 政治


   2019年7月28日任期満了実施参院選で

   安倍自民党を大敗に追いつめれば

   政権運営が行き詰まり 

   2019年10月1日の消費税10%への増税を

   断念させる可能性が生じる


 2019年3月11日、政府主催の「東日本大震災8周年追悼式」が行われ、安倍晋三が立派な「スピーチ」を披露している。勿論、口先とスピーライター御提供の言葉の使い方で魅せている見せかけの立派さに過ぎない。

 冒頭、「かけがえのない多くの命が失われ」た大震災から「8年の歳月が流れました」と言い、「最愛の御家族や御親族、御友人を失われた方々のお気持ちを思うと、今なお哀惜の念に堪えません」と近親者や友人・知己を亡くしたことで遺された多くの被災者が8年経っても今なお癒えないであろう哀しみを思い遣ると、安倍晋三センセイ自らは「今なお哀惜の念に堪えない」と胸の内を訴えている。

 当然、なかなか癒えることのない哀しみとは別に困難な生活状況のもとに遺された被災者や、周囲に命を亡くした人々がいなくても、被災によって苦しい生活を余儀なくされた被災者がせめて生活の場ではそれぞれの苦しみや哀しみ、孤独を味わうことから早く抜け出すことのできる復興政策を、インフラ復興に重点を置いた政策とは別に同じように重点的に推進することになったはずた。そして8年も経過したのだから、相当程度の成果を挙げていなければ、「今なお哀惜の念に堪えません」と言っていることは身近な命を亡くすことになった残された被災者の哀しみを口先だけで言っていることになる。

 この目的は立派な高速道路を造ったからと言って、片付くものではない。被災前とは比べ物にならない立派な施設をあちこちに造ったからと言って、それでヨシとすることはできない。

 だが、次に口にしたことはインフラに関わる復興の進捗度に重点が置かれている。「震災から8年が経ち、被災地の復興は、着実に前進している」とか、「地震・津波被災地域では復興の総仕上げに向け、生活に密着したインフラの復旧はおおむね終了した」とか、「住まいの再建も今年度末でおおむね完了する見込みだ」、あるいは福島の原発事故被災地域では帰還困難区域を除く避難指示解除地域では、「本格的な復興・再生に向けて生活環境の整備が進んでいる」とか、帰還困難区域にでも、特定復興再生拠点の整備が開始され、「避難指示の解除に向けた取組が動き出している」とか、要するにインフラ整備を基準に復興は確実に進んでますよと請け合っている。

 次いで、「一方で、いまだ1万4千人の皆さんが仮設住宅での避難生活を強いられるなど、長期にわたって不自由な生活を送られています」と、仮設住宅に残されている1万4千人に亘る避難生活での不自由な生活に触れているが、生活上の物理的な不便さへの言及であって、このことが心身に与える心理的・身体的労苦(心身が疲れ苦しい思いをすること)への言及ではない。

 そして「政府として、今後も、被災者お一人お一人が置かれた状況に寄り添いながら、心身の健康の維持や、住宅・生活再建に関する支援、さらに子供たちが安心して学ぶことができる教育環境の確保など、生活再建のステージに応じた切れ目のない支援を行い、復興を加速してまいります」と約束し、その約束の中に「心身の健康の維持」を入れて、いわば身体のケアだけではなく、心のケアへの支援に触れているが、安倍政権は民主党菅政権下の2011年7月29日策定の《東日本大震災からの復興の基本方針》で、〈復興期間は10年間とし、被災地の一刻も早い復旧・復興を目指す観点から、復興需要が高まる当初の5年間を「集中復興期間」と位置付ける。〉としていたことを受け継いで、2016年から2020年までを「復興・創生期間」と位置付ける復興政策2016年3月11日に《「復興・創生期間」における東日本大震災からの復興の基本方針》を閣議決定、その中で、〈被災者支援(健康・生活支援)〉として〈避難生活の長期化や恒久住宅への移転に伴う被災者の心身の健康の維持やコミュニティの形成、生きがいづくり等の「心の復興」など、復興の新たなステージに応じた切れ目のない支援を行う。〉と公約、「具体的な取組」を次のように謳っている。

 〈コミュニティ形成の支援や心身のケアを始めとした被災者支援の重要な課題に対応するため、50の対策からなる「被災者支援(健康・生活支援)総合対策」を着実に推進する。

  見守りや生きがいづくりのための「心の復興」といった心と体の健康についての支援を行うなど、被災者の心身のケアに対する支援を継続する。また、被災者の移転に伴うコミュニティ形成や既存のコミュニティとの融合などを引き続き支援する。〉

 「コミュニティ形成」にしても、新設コミュニティと「既存のコミュニティとの融合」にしても、「心の復興」に帰着する。「心の復興」のためには身体的ケアよりも心のケアが重要となる。いくら身体的に健康でも、心を病むと、その病が早晩、身体まで蝕んでいくことになる。心が健康であると、身体の健康も自ずと維持されることになるからだ。

 当然、安倍政権発足から前政権の復興政策を引き継いで復興期間を6年3カ月、《「復興・創生期間」における東日本大震災からの復興の基本方針》の閣議決定の2016年3月11日から計算しても、3カ年を経過させている。経過させた期間なりにインフラの復興のみならず、それに劣らずに被災者に対する心のケアを通した「心の復興」を安倍政権としても成果を上げていなければならないことになる。

 安倍晋三は記者会見や公式行事でも被災地における心のケアに触れている。そのいくつかを拾ってみる。

 《「東日本大震災四周年追悼式」における内閣総理大臣式辞》(首相官邸/2015年3月11日)

 安倍晋三「被災地に足を運ぶ度、復興の槌音が大きくなっていることを実感します。高台移転、被災者向けの住宅の事業は着実に前進し、復興は新たな段階に移りつつあります。しかしながら、今なお、原発事故のために住み慣れた土地に戻れない方々をはじめ、23万人の方が厳しい、不自由な生活を送られています。新しい生活をスタートさせた方々も、生活環境への適応など、御苦労は絶えません。健康・生活支援、心のケアも含め、被災された方々に寄り添いながら、さらに復興を加速してまいります」
 「健康・生活支援、心のケアも含め、被災された方々に寄り添いながら、さらに復興を加速してまいります」と、復興はインフラだけじゃないそ、精神面の復興も進めているぞと、後者の復興についても手落ちがないことを宣言している。
 《3回国連防災世界会議ハイレベル・パートナーシップ・ダイアローグにおけるスピーチ》(首相官邸/2015年3月14日)
 安倍晋三「東日本大震災の発災直後、全国から女性警察官を中心にその部隊が甚大な被害があった地域に派遣されました。彼女たちは、長期間にわたって多くの地域を歩き、様々な境遇にいる被災者の方々の話を聞きました。女性らしい、きめ細かい『心のケア』によって、多くの被災者が救われたのです。私は、東日本大震災後、22回にわたって、東北に足を運んでまいりました。そこで、多くの女性たちと出会ってきました。

  ・・・・・・・・

 女性は災害による被害を、より受けやすい『災害弱者』だと言えます。あってはならないことですが、災害後の混乱状態では女性への暴力が増えるとの報告があります。しかし、女性は家族を災害から守る知恵と知識を持ち合わせています。そして、被災後、多くの困難に立ち向かわなくてはならない被災者の身体と心のケアにきめ細やかに対応することができます。災害によって損なわれたコミュニティを取り戻すためにも、女性の力は欠かせません。私は、被災しながら地域活動に懸命に取り組む女性たちに、被災地を訪れるたびにお会いしています」

 「被災者の身体と心のケア」と毀損コミュニティの回復に女性の力に期待しているが、政府の心の復興政策をベースとしなければ、自治体や女性個人が太刀打ちできない事業であろう。当然、政府の心の復興政策が先行している状況下でなければ、このような発言はできない。

 東日本大震災発災5年目を次の日に控えた2016年年3月10日の安倍晋三の「記者会見」(首相官邸/2016年年3月10日)

 安倍晋三「避難指示が解除された地域では、生業、生活、心のケアなどについて、それぞれきめ細かく支援し、戻りたいと考えている住民の皆様が安心して戻れる故郷を取り戻すことができるように、全力で取り組んでいきます」

 勿論、この「生業、生活、心のケア」の必要性は原発被害の福島だけに限らない。

 「復興推進会議・原子力災害対策本部会議合同会合」(首相官邸/2019年3月8日)
 
 安倍晋三「東日本大震災からの復興は、内閣の最重要課題です。発災から間もなく丸8年となります。復興の総仕上げ、福島の本格的な復興に向けて、確固たる道筋をつける重要な局面を迎えています。

 これまでの取組の結果、復興は一歩一歩、着実に進展しています。一方で、被災者や被災地のおかれた状況は多様化しており、よりきめ細やかな対応が求められています。

 各閣僚におかれては、復興・創生期間の残り2年間、一日も早く復興を成し遂げるため、全力で取り組んでください。

 他方、復興・創生期間後においても、心のケア等の被災者支援などについては対応が必要です。

 ・・・・・・・・・・・・

 東北の復興なくして、日本の再生なし。被災者の声を聴き、その声を復興につなげていく。私自身、明日、岩手県を訪問します。現場主義が安倍内閣の原点です。改めて、閣僚全員が復興大臣であるとの意識を共有し、被災者の心に寄り添いながら、一日も早い被災地の復興に向けて全力を尽くしてください」

 ここではインフラに関する「復興は一歩一歩、着実に進展している」が、「心のケア等の被災者支援などについては対応が必要です」と、間接的に遅れていることを示唆している。具体的にどれ程に遅れているかについては触れていないし、安倍晋三発言の全体を通して見た場合でも、被災地に於ける「心の復興」がインフラ整備に劣らずに重要であることを機会あるごとに被災者に向けて、さらには国民に向けて発信しているものの、では、どれ程に成果を上げているのか、その説明責任を負っているはずだが、過去の追悼式辞でも触れていないし、今年3月11日の追悼式辞でも、一言も触れていない。

 安倍晋三が散々に「心のケア」だ「心の復興」だと"やっている感"を国民にアピールし、それなりに"成果を上げている感"を匂わせている実際の成果がどの程度なのか、マスコミ記事から見てみる。

 「朝日新聞福島県民対象世論調査」(asahi.com/2019年2月27日23時00分)

◆あなたは、福島第一原子力発電所の事故に対する、これまでの政府の対応を評価しますか。評価しませんか。

 評価する 20
 評価しない 58
 その他・答えない 22

◆東日本大震災や原発事故から8年がたち、あなたは、福島の復興への道筋がどの程度ついたと思いますか。(択一)

 大いについた 3
 ある程度ついた 49
 あまりついていない 38
 まったくついていない 6
 その他・答えない 4

◆あなたは、福島県全体で、元のような暮らしができるのは今からどのくらい先になると思いますか。(択一)

 5年ぐらい 4
 10年ぐらい 15
 20年ぐらい 18
 20年より先 56
 その他・答えない 7

◆あなたは、福島第一原発の事故による放射性物質があなたやご家族に与える影響について、どの程度不安を感じていますか。(択一)

 大いに感じている 19
 ある程度感じている 41
 あまり感じていない 32
 まったく感じていない 7

 その他、置かれている状況について答えているが、否定的反応が半数近くか半数以上となっている。当然、いくら政府が心のケに務めたとしても、「心の復興」は覚束ないことになる。

 このことの証明として既にリンク切れとなっているNHK NEWS WEB記事、《福島県内の「震災関連死」心臓と脳血管の疾患が肺炎と並び最多》(2019年3月2日 18時23分)を挙げることができる。

 福島県からの情報として、〈福島県内で先月までに震災関連死と認定された人は2267人、震災と原発事故から8年がたった今も増えていて、津波などで犠牲となった1605人を大きく上回〉って、そのうちの〈200人は、避難に伴う転居などの回数が平均で6回以上に上り、死因は、心臓と脳血管の疾患が肺炎と並んで最も多いことがNHKが行ったアンケート調査で分かった。〉と伝えている。

 「不明」などの25人を除いた避難所の移動や転居などの回数

 ▽1回から2回が6%にあたる10人、
 ▽3回から4回が22%にあたる37人、
 ▽5回から9回が58%にあたる99人、
 ▽10回以上が14%にあたる24人で、

 平均6.7回、最多31回。当然、記事は避難先を転々としてふるさとに帰れないままに死亡した例も挙げている。

 死因
 ▽肺炎54人
 ▽心疾患39人
 ▽老衰が19人、
 ▽脳血管疾患15人

 心臓と脳血管の疾患合計54人は肺炎と並んで最多。そして自殺者11人。

 これが安倍晋三の「心の復興」"やっている感"に反した福島県に於ける実際の「心の復興」ということになる。

 ところが、NHKの2018年12月~1月にの岩手・宮城・福島の被災者、原発事故の避難者当合計4400人余りに対する「アンケート」(全体の36%に当たる1608人の回答)を見ると、インフラ復興に応じた地域経済の復興が伴っていないことが分かって、このことに言及している安倍晋三の言い振りが口程でもないことが分かる。

 「震災前に暮らしていた地域の復興の状況をどう感じるか」

 「まったく進んでいない」8.6%
 「思ったよりも遅れている」54.5%  
 「思ったよりも進んでいる」27.4%
 「復興は完了した」2.6%

 「進んでいる分野」

 「道路や鉄道などの交通インフラ」の復興

 「実感がある」+「やや実感がある」49.4%
 
 「進んでいない分野」――「地域経済」の復興

 「実感がある」「やや実感がある」13.5%
 「実感がない」と「あまり実感がない」47.8%

 「国が復興の総仕上げと位置づける『復興・創生期間』残り2年余で今後、計画どおりに復興が進むと思うか」

 「そう思わない」26.2%
 「あまりそう思わない」39.4%と 合計65.6%

 記事解説。〈インフラや公共施設の復興が進む一方で、地域経済が低迷して復興の遅れを感じる人が多い現状が浮き彫りになっています。〉
 
 このことの主たる原因は人口減少であろう。被災地は全体的にその傾向にあるようだが、特に福島県の減少は大きくて、「時事ドットコム」(2019年03月09日14時50分)記事は、〈東京電力福島第1原発事故による避難指示が解除され、小中学校が地元で再開した福島県内の10市町村では、児童・生徒数が2018年5月時点で計758人と、事故前の1割強にとどまっている。避難の長期化で、多くの子育て世代が新たな場所で生活を再建したことが背景にあり、各市町村は厳しい学校運営を強いられている。〉と伝えている。

 そして2017年3月に避難指示解除の川俣町山木屋地区を例に挙げて、〈昨年4月から小中学校が再開したが、小学生は6年の児童5人だけ。今年の新入生もおらず、4月から休校する見通しだ。住民の帰還率は約4割だが、60代以上が4分の3を占め、「子育て世代は避難先の学校で子供の友人関係ができたり、家を新たに建てたりして生活基盤を移している」(町教育委員会)という。〉と、住民帰還の厳しい状況を伝えている。帰還者のうち60代以上が4分の3を占めているということは長く住んでいて、地縁・血縁が色濃く心身に染み込むことになっていることからの帰還であって、そこまではいっていない若者は故郷を離れることにさほど抵抗感はなく、故郷への思いよりもより生活がしやすい新たな地を求める向上心を容易に優先させることができるのだろう。

 人口流出・人口減少はコミュニティーの維持を難しくする。インフラの復興に成功したとしても、訪れる人は少く、いつもガランとしている立派な公共施設を新たに建設する状況を提供するようなことで終わることになって、そこに活発な経済活動も望めないことになる。残された被災者・残った被災者は抱えている心の傷を癒やす機会も与えられずに傷をより深めるような鬱々とした時間を送りかねない。

 その結果の、現在も跡を絶たない、特に福島県に多い震災関連死ということであるはずだ。

 インフラの復興のみに邁進している政府の姿だけが浮かんでくることに対してこのように心のケアを通した「心の復興」が遅々として進んでいないのは安倍晋三が故郷に取り残さらた被災者を眼中に置くことができない心の持ちようと力不足が原因なくて、何であろう。

 安倍晋三が2019年3月9日に津波などで大きな被害を受けた岩手県釜石市を訪れて、自動車専用道路の開通式典に出席してテープを切り、さらに南北2つに分かれていた路線が今月23日から1つの路線につながる三陸鉄道リアス線の釜石駅で運転士の技能を高めるための訓練運転の列車に試乗したことは、復興政策がインフラ重点となっていることに対して象徴的である。

 要するにインフラの復興に主たる眼中を置いて全体の復興を進めているから、「心の復興」が遅れる歪みを生じさせている。その結果の、「政府の復興が計画通りに進むと思うか」の問いに対して「そう思わない」26.2%+「あまりそう思わない」39.4%の合計半数以上の65.6%も占めることになっているのだろう。

 安倍晋三の言葉だけで魅せている復興の姿に誤魔化されてはいけない。

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安倍晋三が対北朝鮮完全非核化を進める以上、拉致解決の目はない 解決の方策があるかのように見せかける言葉遊びはやめよ

2019-03-11 11:57:51 | 政治


   2019年7月28日任期満了実施参院選で

   安倍自民党を大敗に追いつめれば

   政権運営が行き詰まり 

   2019年10月1日の消費税10%への増税を

   断念させる可能性が生じる


 2019年3月5日参院予算委

 清水貴之「日本維新の会の清水貴之です。どうぞよろしくお願い致します。先ず初めに米朝首脳会談、そして北朝鮮問題ついて総理にお聞きしたいと思います。このパネルですが、米朝会談後の総理の発言を上げてみました。『安易な譲歩を行わず、同時に建設的な議論を続け、北朝鮮の具体的な行動を促していく。そのトランプ大統領の決断を日本は全面的に支持をする』。次は『私自身が金委員長とと向き合わなければいけない』、こういったことを述べられております。

 で、私が是非、聞きたいのは『全面的に支持する』という部分でして、まあ、友好国のアメリカと歩調を共にしてという意味では理解をするんですが、ただ結果は、進展は、残念ながらなかったわけです。となりますと、まあ、拉致の問題の解決も、私は遠のいたと思います。となりますと、拉致家族の皆さんの思いを受けまして、拉致問題解決のためには何が何でも合意して前に進めるべきだったと、そういった意味では、結果とした残念な結果になったんだと、いうような発言になっても良いのではないかと感じたんですが、総理、どうでしょうか」

 安倍晋三「そこはですね、清水委員と見解が違うところなんですけど、あの、基本的にはですね、この世界で多くの国々が、あるいは安保理決議もそうなんですが、この
核、そして弾道ミサイルを廃棄させるという方向で、この、まさにその意を受けて、勿論、大統領が首脳会談を行っているわけでございますが、同時にこの拉致問題については、勿論、世界各国と共有はしておりますが、まさに我が国の問題であるわけでございます。

 その中に於いて今回、先ず核・ミサイル問題につきましては安易な譲歩はしなかったという、勿論、この朝鮮半島の非核化に向けて大きな一歩をぐっと進むことはできなかったのは事実であります。そのことについては私も残念に思いますが、しかし安易な妥協はしなかったということでありました。

 かつての、この、米朝で交渉を行ってきた中に於いてはすね、えー、向こうが少し進めば、こちらもですね、制裁を解除していく。あるいは何かを出す。結局、彼らが何かを掴んでやめてしまう。そういう繰り返しにはならなかったっていうことは良かった、こう考えておりますし、その決断をしたと。形式的な成功を示すのではなくてですね、実質的な前進がないのであれば、この安易な妥協はしなかったということを評価しているところであります。

 一方拉致問題につきましては今回一対一の、一番最初の一対一の首脳会談、首脳会談うちの一対一、いわゆるテタテと言われる部分に於きまして、我々は首脳会談を行う際にはテタテを一番重視をしております。これ非常に微妙な問題、たくさん出席者がいますとですね、話せないことについて、当然、そこで通訳だけを交えて話をするわけでございます。その場に於きまして、えー、いわば日本に取って大きな問題であるこの問題を大統領は出したということでありました。

 いわば米国がそこまで重視をしてるということをですね、金正恩委員長も理解したんだろうと思うわけでございます。さらにはその後の少人数の夕食会でも、この問題を引き続き提議をし、真剣な議論が行われた。えー、これは今までなかったこと、昨年も提議をして頂きましたが、今までなかったことが行われたのでございました。

 そういう意味に於きましてはしっかりと金正恩委員長には伝わったのではないか。そこは私は成果と考えているところでございます。ただ、えー、まだ、実際にですね、拉致被害者が実際に日本に帰って来ることができているわけではございませんんから、実際にこの問題を進めていく上に於いて、勿論、日本人自身の問題でありますから、私自身が金正恩委員長と向き合わなければならないと、このように考えております」

 清水貴之「『私自身が金委員長と向き合わなければいけない』と言われました。もう一度ですね、核の問題についてお聞きしたいんですが、非核化を進めていく上に於いて順当な流れを見ますと、非核化が進んで、その次が拉致だという話になってくるんだと思いますが、今回は非核化の部分でなかなか進展がなかったと。

 そうしますとここを先ずは日本としてどう解決に向けて、アメリカと共に進めていくかという、これがまた拉致の解決に繋がっていくことだと思うんです。そうしますと、非核化に向けて、じゃあ、どんなことが日本できるのかと、これについては、総理、如何お考えでしょうか」

 安倍晋三「我が国としてはですね、引き続き米朝プロセスを後押しをしていくことが大切だと思っておりますが、より具体的にはですね、朝鮮半島の完全な非核化に向けた検討は、例えば、核弾頭、核物質、再処理、ウラン濃縮施設、弾道ミサイル及びそれらの製造施設等の廃棄や検証のあり方、多くの要素を含む複雑なものだと認識しております。

 その具体的な進め方をですね、含め、米国との間で引き続き緊密にすり合わせを行っていく必要があると、施設を廃棄していく、今、ありました施設、それぞれについて、また物質について、それをどのように解体していくか、廃棄していくか、という方法論の中に於きましても日本がしっかりとアメリカと、えー、相談しながら、日本でできることもあるわけであります。

 今後共ですね、日米、あるいは日米韓で緊密に連携をした上で中国やロシアを初めとする国際社会と協力しながら、引き続き朝鮮半島の非核化を進めていかなければならないと、こう考えております」

 清水貴之「そして総理の『私自身が』というご発言ですけど、あのー、よく分かります。是非、進めて頂きたいと思うんですが、ただ、一方でじゃあどうやってこれを実現していくのかという話になるのだと思います。何もこちらからですね、示さないのに、それこそ条件提示とか、譲歩もなく、北朝鮮側が拉致の解決を提案してくる、あるいは会おうという話になるとは、やはり思えないわけですねえ。

 今回の会談で北朝鮮がやはり経済制裁の解除、これを一番欲しがっているんだなということは、非常に多く分かったというふうに思います。となりますと、日本側から率先してその提案をしていく、こういったことをやっていくことで、この直接総理が向き合うということの実現に繋がっていくんじゃないかと思いますけど、これは総理、どうでしょう」

 安倍晋三「例えばですね、経済制裁についてどう対応していくのか、ということでもあるんだろうと、こう思っています。北朝鮮への対応については引き続き、米国を初めとする国際社会と緊密に連携しつつ、安保理決議を完全に履行していく方針に変わりはありません。

 その上で我が国として拉致問題を解決するために何が最も効果的か、という観点から、今後の対応を真剣に検討していく考えでございます」

 清水貴之「今、仰った通りですね、安保理決議を重視するということは経済制裁を日本だけ独自に解除するということは、これは現実的ではないと話したと思うんですけども、となると、やはりこう向き合い方というのは、じゃあ、どうやったらこれをが実現できるかというと、やはり私が思っているのは核とこの拉致問題、切り離して考える。これが日本としてどこまでできるのかということに繋がっていくんじゃないかと思うんですね。

 切り離して、じゃあ、北朝鮮と直接向き合った場合に、今の安保理決議の話になります。経済制裁の話になりますが、日本だけ独自のことをするということになったら、これは国際社会に対して、もしくはアメリカに対してそういったことしっかり説明する、説得していく必要が生じてくると思うんですね。そういった意味で色んなことを含めてというお答えだと思うんですけども、もう一度その辺りのことをお答え頂けますか」

 安倍晋三「北朝鮮側もですね、この遣り取りを、金(正恩と言おうとしたのか)、聞いて頂いていると思いますので、今申し上げることを、(苦笑しながら、)吟味して頂きたいと思うのでありますが、引き続き米国を初めとする国際社会と緊密に連携しつつ、安保理決議を完全に履行する、していく方針には変わりありません。安保理決議にについては日本も参加をしているわけであります。

 その上ですね、我が国として拉致問題を解決するために何が最も効果的か、という観点から、今後の対応を真剣に検討していく考えがあるということでございました(?)。あの、
北朝鮮とのこの問題の中でも拉致問題については日本独自にですね、判断したなければならない事柄が様々あるわけでございます。日本はこれまで打ってきた中の様々な、様々な対応をしてきたわけですが、その中にはですね、今申し上げましたように安保理決議によるものもあるわけでございますが、それはですね、今申し上げましたように国際社会共に行っているものでありますが、それは続けていくということになるわけでございます。

 かつて小泉総理が2002年に訪朝したときにはですね、あのあと最終的には5人の被害者が、この、おー、帰ってくる、一時帰国だったところ、(北朝鮮には)帰さないということになって、結局そのまま日本に帰還することができたのでございますかが。そのときに我々が何かをするということではなかった。ただ、しかし、えー、この拉致・核・ミサイルの問題、あと、不幸な過去を清算してですね、そして日朝関係を正常化をしていく、というような平壌宣言を発出をした中に於いてこの、この5人の被害者が日本に最終的には帰還することができたということもあるわけでございます。

 そうした様々な経験も活かしながらですね、あらゆるチャンスを逃さずにこの問題の解決に当たっていきたいと、こう考えております」

 清水貴之「拉致被害者家族の有本恵子さんのお父さんは、もう拉致問題の解決は長引くが、次はもう、安倍総理の仕事になったと、非核化の動きは待っていられないとこういったコメントを出されておりますけれども、是非、あの対応お願い致したいと思います」

ついて、厚生労働省の勤労統計の不正問題について質問したいと思います。まず最初がですねとくべ

 安倍晋三が応答の中で、「一番最初の一対一の首脳会談、首脳会談うちの一対一、いわゆるテタテと言われる部分に於きまして、我々は首脳会談を行う際にはテタテを一番重視をしております」と言っていることについて、「テタテ」の意味が分からなかったから、ネットで調べたところ、フランス語で、勿論、日本風の読みとなっているが、名詞で「打ち明け話」とか、「内緒話」、形容詞で「差し向かいの」、「内密の」といった意味があると解説されている。要するに「一対一」で済ますことができるところをわざわざ「テタテ」といった一般的ではないフランス語を持ち出して、首脳会談に於ける首脳同士の一対一の話し合いがさも大層なこと、凄いことであるかのような勿体をつける。安倍晋三らしい、言葉だけの価値付けとなっている。

 テタテを最重要視しようがしまいが、それを何回行なおうが行うまいが、トランプと金正恩との第1回首脳会談、今回の第2回首脳会談を見れば分かるはずだが、結果が全てであることを教えている。完全非核化も進んでいないし、拉致問題も進んでいない。大体が金正恩自体に完全非核化の意志がなく、核保有国認定を望んでいることはこれまでの経緯から見て、明らかである。

 いわば最重要視が即結果に繋がる保証はどこにもない。安倍晋三はプーチンと25回も首脳会談を重ねている。1対1のテタテが一度の首脳会談で2回行われるケースもあることからすると、首脳会談の回数を遥かに超えるテタテを行なってきたはずだが、北方四島返還問題に関しては何ら進展を図ることができていない。安倍晋三は言葉だけでさも成功するかのような可能性を演出することに長けているが、既に多くから見抜かれているのだから、もうそろそろ、やめた方がいい。

 日本維新の会の清水貴之は第2回目の米朝首脳会談は核問題も拉致問題も、何の進展も見られなかったのだから、トランプが金正恩の経済制裁解除要求を拒否したことを以って安倍晋三がトランプの決断を日本は全面的に支持するとした発言よりも、残念な結果に終ったとする発言になってもいいのではないのか、あるいは非核化に向けて日本はどんなことができるのかと問い、さらに安倍晋三が「私自身が金委員長とと向き合わなければいけない」と決意表明していることに関しては今回の首脳会談で金正恩が一番欲しがっているのは経済制裁の解除だと分かった以上、核問題と拉致問題を切り離して考えるべきで、その場合、経済制裁の解除の話に突き当たることになるから、拉致問題解決に向けて金正恩と向き合うためのにはアメリカを説得して、日本独自の経済制裁解除を行うべきではないかと提案している。

 確かに金正恩は経済制裁の解除を一番に欲している。だが、アメリカに対する説得が成功して、日本独自に制裁を解除することになる経済支援、あるいは経済交流が金正恩が望む規模のものでなく、程々の規模であったなら、金正恩は日本に対する重要な外交カードとなっている拉致問題を簡単にはテーブルに乗せることはないだろう。日本は果たして程々の規模を超える、抜け駆けともなりかねない制裁解除の説得をアメリカに対して成し得るだろうか。もし金正恩が満足する規模の日本独自の制裁解除を許したら、アメリカ自身が持つ経済に関わる北朝鮮に対して持っている外交カードの力を一定程度削ぐことになる。この点からも、許したとしても、金正恩が満足しない程々程度の解除になるはずだ。

 だが、トランプが2回目の首脳会談で金正恩が要求する経済制裁解除に応じた場合の北朝鮮側のメリットはアメリカとの間に行われる経済支援や経済交流の量のみならず、他国に与える右へ倣えすることのできる影響も遥かに大きく、トランプの制裁解除に右へ倣えした日本の経済制裁解除があって初めて金正恩は拉致問題を外交カードとして切る価値が出てくる。要するにトランプが金正恩の要求する経済制裁解除を拒否したことによって、経済制裁を解除した場合に便乗して拉致解決に乗り出すことができる日本側のチャンスまで失った。

 と言うことは、安倍晋三が金正恩と向き合うチャンスまで失ったことを意味する。そして首脳会談で最も重要な点は金正恩が完全非核化の意志を示さないままに経済制裁の解除を求めたということである。完全非核化までの経済制裁を主張しているアメリカや日本、他の西側諸国にとって非核化しない北朝鮮への経済制裁解除は自己矛盾そのものとなる。トランプとしたら、完全非核化へと向けるステップとして自己矛盾を可能な限り抑えた状態で一部制裁解除を与えたいと考えていたのかも知れないが、双方の思惑が違い過ぎたということで制裁解除拒否ということになったのだろう。

 要するに金正恩がまともに向き合っている第一番の相手はアメリカであって、日本ではない。アメリカは親であって、日本は子の価値しかない。親が折れれば、子はそれに従う。このことは朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」が2019年3月8日付けの紙面でベトナムの首都ハノイで先月行われた米朝首脳会談についての論評を掲載して、安倍晋三と河野太郎が拉致問題でトランプに画策していることを非難する声明を載せたことに現われている。「NHK NEWS WEB」(2019年3月8日 17時50分)

 安倍晋三と河野太郎について、「アメリカ側にかわるがわる電話をかけて、首脳会談で拉致問題を解決する意思を伝えてほしいと要請した。日本は自分たちに有利な方向にアメリカを動かそうとして、ロビー活動に人的物的資源を総動員した。

 私たちが相手にするにはいままで日本が犯した罪はあまりにも大きい。日本が過去の罪悪について賠償しないかぎり、我々とつきあう夢を見るべきではない」

 そして、〈首脳会談が物別れに終わり合意文書が交わされなかったことについて、「内外からアメリカの責任だとする主張が一様に上がっている」として、制裁解除に応じないアメリカへの不満も滲ませた。〉と解説している。要するに首脳会談を成功させることができなかった八つ当たりを日本に向けているに過ぎない。日本はその程度の扱いしか受けていない。

 では、清水貴之の質問に対する安倍晋三の答弁を纏めてみる。

 首脳会談が何の進展もなく、残念な結果に終わった原因がトランプの金正恩要求の経済制裁解除の拒否にあるにも関わらず、「トランプの決断を日本は全面的に支持をする」とした安倍晋三の発言の見当違いを清水貴之に指摘されると、核・ミサイル問題について安易な妥協はしなかった点を評価した全面的な支持だと述べた上で拉致問題については首脳会談での二度に亘る1対1の話し合いの場とその後の少人数の夕食会でもトランプが取り上げたのは「今までなかったこと」で、「米国がそこまで重視をしてることを金正恩も理解したはずだ、しっかりと金正恩委員長には伝わったのではないか。そこは私は成果と考えている」などと答弁している。

 アホも休み休み言えと言いたい。アメリカが100回取り上げようと、金正恩は拉致問問題を日本に対する外交カードとし得るかどうかの状況に応じてこの問題について日本と向き合うべきかどうかを決める。いわば北朝鮮国益に従う。当然、金正恩に伝わったかどうかが「成果」の判断材料になるはずはない。

 このことは前回の首脳会談で明らかになっているはずだが、トランプは取り上げたことを自慢し、来日して2017年11月6日に都内の迎賓館で拉致被害者家族と初めて面会、拉致被害者家族はトランプに大いなる期待を掛けたが、幻と終わった。この経験から安倍晋三は何も学ぶことができていない。学んでいながら、このような発言を口にしているとしたら、さも解決できるかのような振りを装って、国民を騙していることになる。
 
 清水貴之がアメリカを説得して日本独自の経済制裁の解除を行ない、拉致解決に繋げるべきではないかと提案すると、安倍晋三は経済制裁に関しては米国を初めとする国際社会との緊密な連携と安保理決議の完全な履行を従来どおりに主張している。いわば北朝鮮完全非核化まで経済制裁続行の宣言である。

 ところが、完全非核化の意志のない金正恩に対して完全非核化までの経済制裁続行の宣言を日本が突きつけることは見当違いということだけではなく、そのような状況下では金正恩に対して拉致問題を外交カードとして使う時期ではないことを認識させるのみとなる。要するに経済制裁を伴わせた北朝鮮完全非核化の要求と拉致問題解決は両立させることはできない。拉致問題を解決させたければ、経済制裁を伴わせた北朝鮮完全非核化の要求を取り下げる二者択一の道しか残されていないことを認識すべきである。後者は国際社会の一員としてできないと言うなら、拉致解決の要求を取り下げる選択肢しかないことになる。当然、金正恩と向き合うことなど夢のまた夢となるから、さもできるかのような雰囲気を言葉のみで振り撒くべきではない。

 安倍晋三の胸の内の拉致解決の方策は次の答弁に現われている。

 「我が国として拉致問題を解決するために何が最も効果的か、という観点から、今後の対応を真剣に検討していく考えでございます」

 「何が最も効果的か」――

 金正恩が一番欲しがっているのは核保有国認定であり、経済制裁解除であるにも関わらず、経済制裁を伴わせた北朝鮮完全非核化の要求を取り下げることができずに「何が最も効果的か」と口しているに過ぎないから、さも方策があるかのように見せかける言葉遊びに過ぎない。

 だから、「次は私が金正恩氏と向き合う」とか、「拉致問題を解決するために何が最も効果的か」といった言葉を繰り返し言わなければならなくなる。

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安倍晋三の国会ウソ答弁典型を対本多平直「お父さん、憲法違反なの」〈長州「正論」懇話会〉エピソードへの言い開きに見る

2019-03-07 11:45:06 | 政治


   2019年7月28日任期満了実施参院選で

   安倍自民党を大敗に追いつめれば

   政権運営が行き詰まり 

   2019年10月1日の消費税10%への増税を

   断念させる可能性が生じる


 安倍晋三が2018年8月12日に地元山口県下関市内で開催の長州「正論」懇話会設立5周年記念講演会で講演している。「産経ニュース」

 安倍晋三「毎年、防衛大学校の卒業式に出席し、服務宣誓を受けますが、最高指揮官、内閣総理大臣として、真新しい制服に袖を通したばかりの自衛官たちから『事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め、もって国民の負託に応える』との重い宣誓を受けます。そうです。まさに彼らは国民を守るために、その命を懸けるんです。

 しかし、近年でも『自衛隊を合憲』と言い切る憲法学者はわずか2割で、違憲論争が存在しています。その結果、多くの教科書に自衛隊の合憲性に議論があるとの記述があり、自衛官の子供たちも、その教科書で勉強しなければなりません。ある自衛官は息子さんから『お父さん、憲法違反なの?』と尋ねられたそうです。そのとき息子さんは、目に涙を浮かべていたと言います。

 皆さん、このままでいいんでしょうか。こんな状況に終止符を打つ。全ての自衛官が誇りを持って任務を全うできる環境を整えることは、今を生きる私たち政治家の責任であります。憲法の中にわが国の独立と平和を守ること、そして自衛隊をしっかりと明記することで、私はその責任を果たしていく決意であります」――

 要するに自衛官が誇りを持って国土・国民を守ることができるようにするためには自衛隊が合憲なのか違憲なのかの曖昧な位置づけを任務の背景にするのではなく、そのような曖昧さから脱して憲法に明記、合憲というしっかりとした保証を与えて任務遂行に誇りを持たせなければならないとの趣旨となる。

 但しかねがね指摘しているように「彼らは国民を守るために、その命を懸けるんです」と自衛隊のみに特別使命を与えること程、危険なことはない。戦前、世界屈指の最強日本の天皇の軍隊を以ってしても、国土・国民を守ることはできなかった。日清戦争から太平洋戦争までの戦時中に設置された日本の陸海軍の最高統帥機関――軍隊の頭たる大本営が戦略も戦術も満足に描くことができず、最高統帥機関として機能しなかった。手足たる各部隊の機能性は大本営の機能性に対応する。かくして無残な結末を迎えることになった。

 当然、現在の自衛隊の機能性はかつての大本営に当たる、総理大臣を議長とする現在の国家安全保障会議(「日本版NSC」)の機能性にかかることになる。そして自衛隊を動かすコストは政府の経済政策と国民の経済活動の機能性に掛かっている。いわば国民全体で国土を守り、国民を相互に守っている。自衛隊のみが国土・国民の命を守っているわけでもないし、そのために命を懸けているわけではない。

 それを自衛隊のみの特別使命であるかのように限定する。特定の組織に対してエリート集団であるかのような特別使命の付与は自分達を特別な存在だと思い込ませる価値づけに等しく、戦前の軍隊に於いてその危険性を学んできたはずだが、安倍晋三がこのことを学ぶことができないのは国家主義で頭が凝り固まっているからだろう。国家主義者は国民ではなく、国家を最高の位置に置いていて、国家を全てとしている。

 安倍晋三は「ある自衛官は息子さんから『お父さん、憲法違反なの?』と尋ねられたそうです。そのとき息子さんは、目に涙を浮かべていたと言います」を誰か人から聞いたエピソードとして紹介している。ネットや紙媒体に目を通して得たエピソードとしての紹介とはなっていない。

 だが、2019年2月20日付「日刊ゲンダイDIGITA」「安倍首相またウソ “自衛官の息子涙目”逸話には元ネタあり」と題した記事に関しては人から聞いたエピソードとはなっていない。SNS上に出回っている「ネタ元」の人物を明らかにして、エピソードの由来を紹介している。

 その人物とは保守系雑誌などに寄稿している元航空自衛隊空将、現在は東洋学園大非常勤講師の織田邦男氏(67)だとして、昨年1月公開の「KAIKENチャンネル」インタビューでの発言を伝えている。

 「私の息子も小学校だったか中学生だったか忘れましたけど、帰ってきてね。『お父さん、自衛隊って違憲なの?』と聞かれた時、ショックを受けましたよ。先生が言っていると。私はあるところに書いたら、最近安倍さんがそのフレーズを使うようになった」

 そして記事は、〈織田氏の「正論」2017年8月号への寄稿にも同様の話が出てくるが、「さすがに今はないだろう」との旨も書いている。織田氏が空自を退職したのは2009年。現在の出来事のような安倍首相の口ぶりは怪しい。

 確認した限り、織田氏は安倍首相が強調する「息子が涙を浮かべた」と語っていない。情緒的に話を盛り、何となく「自衛隊がかわいそう」というムードを醸造し、悲願の改憲に結びつける。一般人ならまだしも、権力者には許されないウソだ。

 ましてや、自衛官の息子に心ない言葉を浴びせた教員が本当にいるのなら、行うべきは教員の指導だ。憲法を変える理由にはならない。〉と結んでいる。

 この記事の冒頭は、2019年2月13日の衆院予算委での立憲民主の本多平直議員との遣り取りを取り上げる形で、〈安倍首相が自衛隊明記の改憲理由として、たびたび持ち出す逸話は事実か、いつどこで聞いたのかと質問。すると、安倍首相は「私はウソを言うわけない」とキレまくったのだ。〉と安倍晋三の極端な反応を指摘した上で、そのときの「ウソだと言ってんでしょ。非常に無礼な話で、人格攻撃だ」云々の発言を〈安倍首相のガキのケンカ答弁〉と巧みに評価、「希代の大ウソつきがよく言えるが」と、正しい解釈を下している。

 確かに安倍晋三が披露するエピソードの如何わしさ・信用の置けなさも問題だが、そういったエピソードに対する国会答弁を通した言い開きだけではなく、安倍晋三自身の不正関与が疑われる事態に対する言い開きが事実そのままなのか、まるっきりのウソなのかは言い開きの言葉の使い方自体に現われることに注意して、その言葉の使い方から事実かウソかを見抜き、ウソと見抜いた場合はそのウソをこそ問題としなければならない。断るまでもなく、一国のリーダーがウソをついていい訳はないからである。

 では、自衛隊の子どものエピソードに対する安倍晋三の言い開きから、それが事実なのか、ウソなのかを俎上に載せてみる。立憲民主党の本多平直がこのエピソードを取り上げている2019年2月13日の衆院予算委員会と2019年2月20日衆院予算委員会での遣り取りを見てみるが、あとの方の2月20日の遣り取りから見てみる。

 2019年2月20日衆院予算委員会

 本多平直「もう一つ総理が憲法改正の理由としては、何度も色んな講演でおっしゃっている、『お父さんは違憲なんだよ』と涙を流した自衛官の子どもさんがいるという逸話、これは実話かという話を前回(2月13日)の委員会で質問させて頂きましたが、はからずも総理が激昂しまして、『私をウソつきと言うのか』と。私が総理のことをウソつきと言ったかのような画面がテレビでも流れていますが、私は単に、『どこで聞いたんですか?』と聞いたら、総理はその場ではお答えを頂けませんでした。

 あの、私、いずれにしてこの話、実在しようがしまいが、こんな話が憲法改正の理由になること自体が飛んでもなくおかしいと。イジメとか、もし何かあったなら、その子にちゃんと説明したり、その学校にあったことを解説にしていくことが先であって、この子がいたから、憲法改正が必要だなんて、・・・みたいな話、問題だと思うんですが、一応実話なのかって話を聞いて、ご準備を頂いてるようなんで、お答えいただけますか」

 安倍晋三「あの、前回ですね、本田委員は私がウソをついているということを前提に質問を組み立てられておりましたので、その、それは、おかしいでしょうということは、(本多平直が抗議と他委員のヤジ)内心は私は分かりませんけど、内心はそれは分かりませんけど、私が推測する上においては殆どそれを前提にしておられるのかなあと私考えたわけでありまして、その中でそういうふうに申し上げたわけでございますが、あのー、そこでですね、ご指摘のエピソードについてはですね、防衛省担当総理秘書官を通じて航空自衛隊の幹部自衛官から伺った話であります。

 航空自衛隊の幹部自衛官が述べていたということはこれは本人に秘書官を通じて確認をしております。これ以上詳しいことはですね、自分(=幹部自衛官)と息子の、あるいはそのときの学校の先生に関ることなんで、これ以上は述べないで貰いたいと言われておりますので、この航空自衛隊の幹部自衛官官から伺ったというところまででとどめさせて頂きたいと思うところでございますが、秘書官自身が自衛隊、自衛官本人から、直接聞いたものであると、このように考えております。

 ただ、私は申し上げたかったことはですね、教科書にそういう記述(自衛隊違憲論)があるのは、多くの殆どの教科書にそういう記述があるのは、記述っていうのはですね、いけん、いけん、違憲論があるということは、記述があるのは事実でありますから、そういう記述を無くすと言うことはですね、いわば違憲論争に終止符を打つという考え方で述べているわけでございまして、これは防衛の根本にかかることではないかと、私は考えているところでございます」

 本多平直「今日、その総理秘書官、私、お呼びしているのですが、来て頂いていますか。いつ頃、ご自身の話なのか、自分の友人の話なのか、それぐらいはお話しして頂きたいと思って、お呼びしているのですが」

 安倍晋三「秘書官、ここにおりますが(背後に半ば振り返って、左手で示す)、おりますがね、それは秘書官をですね、参考人として呼ばれましてもですね、これは秘書官というのは膨大な職務もありますし、私は、いわば、秘書官、私の秘書官ですから、私が、当然、答えるのが当たり前であってですね、私がすぐ聞けばいいだけの話でございございまして、今言ったことが全てでございまして、えー、これをですね、では、これが違うって言うのであればですね、その違うっていう、しょう、証拠を出して頂かなければですね、いちいち秘書官をですね、このことで、(吹き出し笑いをして)その場合、どうにかと思いますんで、先程言ったことが全てでございまして、秘書官自身がですね、秘書官自身が確認をしていることでございます。今申し上げましたのも航空自衛隊の幹部自衛官であるということは申し上げましたが、これはここまで述べてはいいのかということ。

 段々絞られてきますから、ここまで述べただけでもですね。えー、そ、それで、あのー、え、え、えー、秘書官からですね、あのー、おー、は確認している、もう一度確認をしている。どこまで述べていいのかということも確認しているところでございます」

 本多平直「今総理秘書官、呼ばないっ言ってますけど、そんな話、通らないんですよ。この政権に於いては。加計学園問題の柳瀬さん。総理に言わずにですよ、総理の親友の業者と3回も首相官邸で会って、加計学園問題のことをやってて、記憶にない、記憶にないと。やっと私達が呼んで出てきて、3回も首相官邸で柳瀬秘書官、会っていたこと明らかになったんじゃないですか。

 今回だって我々の追及で、これまだ事実かどうか分かりませんよ、中江秘書官、統計問題で厚生省にプレッシャー掛けたんじゃないかって。私はそういう総理秘書官が重要な役目を果たしちゃってるんですよ、連絡調整を、果たすだけじゃなくて。総理の命を受けてというはずなのに総理で(総理官邸で?)勝手に色々やっている。ですから、私はですね、この問題だって、総理に言われてどういう話になっているのかよく分かりませんけど、・・・・・(?)ました。

 いずれにしても、こういうことを言うが言わまいが、この問題をしっかりと解決することであって、憲法改正に繋がる理由では全く無いっていうことを指摘をして質問を終わりたいと思います。以上です」 

 本多平直はこの日の質疑の別のところで、「総理は一度言ったことは変えない信念の人ですから」と褒めていたが、ウソを貫き通す信念人という意味での褒め言葉であるはずだ。

 安倍晋三の上記答弁を詳しく読めば、嘘をついていることは一目瞭然である。最初の方の答弁は一応理路整然とした答弁となっていて、「ご指摘のエピソードについてはですね、防衛省担当総理秘書官を通じて航空自衛隊の幹部自衛官から伺った話であります」とネタ元を落ち着いた様子で明らかにしている。

 ところが、本多平直が「今日、その総理秘書官、私、お呼びしているのですが」と言って、直接総理秘書官から問い質す姿勢を見せると、一応保っていた理路整然がどこかに吹き飛んでしまって、吹き飛ぶと同時に答弁が不必要に長々となっただけではなく、言葉のつっかえや、「あのー」とか「えー」とか、発話の合間に挟み込む言葉が多くなっている。事実を話しているなら、このような事態に陥ることはない。

 ウソをついている場合に答弁が不必要に長々となる現象は、それが事実なら、事実そのままを話せばいいから、事実そのままの言葉数で済むが、ウソを事実に変える場合、それが不可能であるから、色々な言葉を使って念入りに事実を積み上げる必要性を自ずと対にしなければならなくなるからだろう。

 安倍晋三は「ご指摘のエピソードについてはですね、防衛省担当総理秘書官を通じて航空自衛隊の幹部自衛官から伺った話であります」と明快に言いながら、少し後で、「秘書官自身が自衛隊、自衛官本人から、直接聞いたものであると、このように考えております」と言っているが、安倍晋三自身が総理秘書官からそのエピソードを聞いたとき、その秘書官は安倍晋三に対して自衛官本人の経験として直接聞いたエピソードなのか、あるいは自衛官本人がまた聞きのエピソードなのか、告げなかったことになるし、秘書官自身が自衛官本人にどちらかなのかを確かめもしなかったし、安倍晋三自身もどちらなのか秘書官に聞かなかったことになる。だから、「このように考えております」と推察するしかなかった。

 この不自然な遣り取りも事実でないからこその断定の不在と見なければならない。

 2019年2月13日衆院予算委員会

 本多平直「総理が憲法改正の理由として仰ってること、非常におかしいなと思ってることが、色々な場面で言ってらっしゃるんですけれど、去年ですかね、下関の講演で、『お父さん、憲法違反なの』と言われて、自衛官の息子さんが涙を浮かべていたって話、よくされてるんでけど、これ、実話なんですか」

 安倍晋三「これ、実話なんです」

 本多平直「何県で、いつ頃聞かれた話なんですか。(自席に座ってから、手を上げ、腰を浮かせて)どういった方に聞かれたんですか」

 安倍晋三「これはあの、防衛省から聞いた話です。で、あの、具体的にですね、今、具体的に氏名を上げるということは差し控えたいと思いますが、ま、それ以上、もう少しは詳しくはお話を、今、急に、今、聞かれましたから、教えかけで(?)お答えをしたいと思いますが、これについても、これについてはですね、それは資料はだ、出すっていうんであれば、えー、このことについて資料を出させて頂きます」

 本多平直「私はですね、このエピソード、(安倍晋三が何か言ったのか、安倍晋三の方に向かって)後で調べてください。私の実感は違うんですよ。私は小学校、中学校、ずうっと自衛隊の駐屯地のそばで育ちまして、たくさん自衛隊の息子さんいて、こんな話は出たことないんですよ。ですから、私の小学校、中学校の時代ですらそうで、今こんな話なんかね、出ているって実感はないので、本当に総理に、こんな話をね、誰かあったら、それ自体、しっかりね、私はその子どもを説得しなければいけないですよ。

『そんなことないんだよ』と。『お父さんの仕事は別に憲法違反じゃないよ』と。そういうことをね、私は説得しなければいけないと思っていますよ。実は私、総理に申し上げたいのは、今1年間の国会で、自衛隊が憲法違反の疑いがあるとかね、憲法違反だっていうことを、総理は思いは違うと思いますよ。

 そういうことを取り上げている政治家って、誰だと思ってます?」

 安倍晋三「先週でしたか、私、党首(?)会談のときかな、その前に会ってですね、年配の女性から、『私の息子はですね、安倍さんが憲法で自衛隊を明記してくれる自衛官だけど、本当に嬉しく思っている。これで、これで誇りに思えるようになった』、こう言っています。『私も自衛官の娘を持って、本当に嬉しく思っています』

 それはそう言われました。で、本多議員はね、私が言ってることは(本多平直が何か声を掛けたのか、急に大きな声になって)ウソだと言ってるんでしょ、それ。それは非常に無礼な話ですよ。ウソだと言ってるんでしょ、あなたは」

 本多平直は自席から「言ってないよ」

 安倍晋三「本当だったら、どうすんのよ、そこで」

 本多議員が「根拠を出してほしい」とか自席から言う。

 安倍晋三「あなたは本当だったら、ウソだと言ってるんだから。いや、いや、根拠を出したら、こんな時間を使って、私を非難して、ウソだと言っているというのは極めて非常識な話だと思う」

 本多平直「委員長、ちょっと、議事録を見せて。私、ウソだって言いました?いつどこで聞いたんですかって聞いてるんですよ。譬え話なのか、実話なのかって聞いただけだけじゃないですか」

 安倍晋三「えーとね、だって今、本多さんはそんなことないということを言っているわけですから。ウソだということを、ウソだということを前提に言っているわけであってですね、それは、それはですね、それはずうっと私のそういう話をですね、(テーブルに手を突いて屈めていた腰を急にしゃんと伸ばして)私がウソを言うわけないじゃないですか。そういう確認をしろと言っても。確認しろと言っても、氏名は出せませんよ、いくらなんでも」

 野田聖子委員長「総理もヤジに答えないでください」

 安倍晋三「すみません。、筆頭理事が、あの、あのー、ご指摘だったので、反論させて頂きましたが、これは、これはですね、これはですね、いわば私がそういうことをまるで、ないことを想像というかですね、政治的に利用するために作り話のように作ったということについて、そういう、そういう、いわば前提で議論しておられるわけですから、それは余りにもですね、余りにも全面的に人格攻撃ではないか、こう思う、政策論と言うより人格攻撃ではないかと、こう思ったわけであります。

 これは当然、事実でありますから、いつ、誰から、どういう言う話を聞いたということをしっかりとお話をさせて頂きました」

 本多平直「私は政治家の話の中でね、例えば複数の農家の方から聞いた話を、こんなことを農家の方が仰ってましたよという話はあるんですよ。ただ、私と実感と違うので、そしてね、総理、これ、そういう私が――

 懇談会のような話じゃないんですよ。憲法を変えようというね、理由として、先程のね、自治体が(自衛官募集に)協力していないから変えるんだ。憲法を変えたら、じゃあ、自治体はこの名簿の話、今、実害が出ていない、ちょっと大変だけど。

 私たち国会議員にさせた、(大臣席を指差し)あなた達させたんですよ、私達に。・・・・を(?)それと同じことを、現場の方は苦労されていると思いますよ。多少不便だと。しかし(憲法を)変える必要ないじゃないですか。ちゃんと募集のパンフレットは・・・・に送られているんだから。

 学者の話も、憲法解釈を勝手に捻じ曲げたというか、学者の安保法制も反対だけど、安保法制は反対だけど、自衛隊は合憲だとか言うんですよ。・・・・・

 そして子供の情緒論。こういうことで憲法を変えることはおかしいということを申し上げて、私の質問は終わりたいと思います」

 安倍晋三は「ウソだと言ってるんでしょ、それ。それは非常に無礼な話ですよ。ウソだと言ってるんでしょ、あなたは」、「私を非難して、ウソだと言っているというのは極めて非常識な話だと思う」、「ウソだということを前提に言っているわけだ」、「私がウソを言うわけないじゃないですか」とかなり感情を害して本多平直を非難している。対して本多平直は「私、ウソだって言いました?」と反論しているが、最初に「実話なんですか」と聞いている以上、安倍晋三の指摘どおりウソを前提の虚偽話と見ている追及に他ならない。

 但し安倍晋三は2019年2月20日の衆院予算委員会国会答弁発言、「ご指摘のエピソードについてはですね、防衛省担当総理秘書官を通じて航空自衛隊の幹部自衛官から伺った話であります」が事実そのものであるなら、この発言を7日遡ること2019年2月13日の衆院予算委員会の場で自然と自身の答弁となって現われていなければならない。

 答弁とならなかったのは、エピソードが自身が聞いた話ではなく、他人の文章・語句・説などを盗んで使うことを意味する剽窃だったと見るほかはない。要するに2月20日の答弁は2月13日に質問があったから、急いで用意した、いわば後付のネタ元ということにしなければ、前後の整合性を失う。
 
 2019年2月4日の衆院予算委員会で無所属(立憲民主党・市民クラブ)の小川淳也から厚労省発表の2018年6月の実質賃金が21年5カ月ぶりの伸びとなったことに「何らかの印象を持ったか」などと問われたときも、実質賃金の上がり下がりに気を使っていないはずはないのに実質賃金の動向を知ることができる「毎月勤労統計を確認したことはない」、「報告も受けていない」と答弁したときも、不必要に長々となっただけではなく、「あのー」とか「えー」とか、発話の合間に挟み込む言葉が多くなっている。

 安倍晋三「あのー、ご存知だと思いますが、私はそのときの、えー、毎勤(毎月勤労統計)、のですね、えー、上がる、が、上がったことについてですね、確認されては、一度もございません、私自身が。

 ですから、これ、私自身に色々印象が残っていたなら、そうだったんだろうと思いますが、私自身、実はですね、それが上がったということについて、実はいちいち毎勤統計については私は報告は受けていません。

 私が、えー、ま、統計で報告を受けるのはですね、失業率と有効求人倍率を色々、各人に於いて、総務大臣、総務大臣から報告を受けるときでございます。基本的にいちいちのですね、毎勤統計について、えー、私、一喜一憂する考えはございませんし、そもそも、もう余りにも、承知になっているでしょうけど、むしろ私は、えー、この毎勤統計についてですね、えー、ま、実は先程ご説明したんですが、事業所に於いて、その事業所の職員で割ったものの平均でございますから、経済の実態を直接示しているかどうかということについて、私はむしろそれは総雇用者所得で見るべきだという議論をいつもしていたわけでございます。

 ですから、そういう意味に於いてですね、そこは私は特別な印象を持っているわけではないわけでございます。えー、この実態から見れば、この、えー、三桁(?)あることも。

 あと、あのー、おー、その前にですね、えー、この入れ替えも、ま、お、行なわれということだったということもあるんだろうと、こう思う次第でございます」

 「毎月勤労統計の報告は一度も受けていない、自身も報告を求めたことはない」が事実なら、そのままを答弁すれば片付く話なのに答弁に於けるいつものスムーズさを失い、答弁自体も長々としたものになっている。統計不正に関与している後ろめたさがなければ、こうも手際の悪い言い開きとはならないだろう。

 安倍晋三の言い開きの傾向から事実なのか、ウソをついているのかが見えてくる。当然、ウソをついていると推察できる言い開きなら、それを逆手に取って、追い詰めていく選択肢を取るべきだろう。それが何らかの不正関与に関わる追及なら、馬脚を現すキッカケにならない保証はない。

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安倍晋三のNHK「日曜討論」サンゴ発言は必ずしも間違っていない 不都合な事実は隠す情報隠蔽があるのみ 

2019-03-04 11:48:04 | 政治


   2019年7月28日任期満了実施参院選で

   安倍自民党を大敗に追いつめれば

   政権運営が行き詰まり 

   2019年10月1日の消費税10%への増税を

   断念させる可能性が生じる


 ――不都合は表に出さない情報隠蔽をこそ問題とし、絶対主義者に陥っているゆえの謙虚さのカケラもないことを知るべし――

 安倍晋三の問題となった沖縄「サンゴ」発言は今年最初の2019年1月6日NHK「日曜討論」9党首インタビュー〈2019年の政治はどう動く?〉で飛び出した。

 伊藤雅之キャスター「アメリカ軍の沖縄のですね、アメリカ軍の普天間基地の移設をめぐる問題について伺います。先月から埋め立ての工事、名護市で土砂の投入も始まったということです。政府と沖縄県の対立が続いている状況ですが、この問題についてですね、今後のスタンス、また沖縄県民の理解、どのように見ていますか」

 安倍晋三「先ず誤解を解かなければいけないんですが、あの、日本国民の皆さんもですね、全く新しく辺野古に基地を作ることを進めているというふうに思ってる方が多いと思いますが、先ず市街地の真ん中にある、世界でも危険な基地と言われている普天間を返還するためにどうしたらいいのかということをずっと考えてきた。その中で普天間の返還を行うためには代替の基地である辺野古に基地を作りますよ、しかしその代わり世界で最も危険と言われている普天間基地は返還されるということでありまして、この計画を今進めています。

 民主党政権時代にも最低でも県外という宣言をしましたが、結局、どこにも持って行くとかできずに辺野古に移設をするということが決まった。今、その計画に則って作業を進めているんですが、さらに付け加えますと、移設するに当たって普天間の機能のうち、三つあったんですが、一つは空中給油機になりますが、15機、全て岩国に移設されました。18年後、そのことを行うことができた訳であります。

 また、緊急時の受け入れ機能というのもあったんですが、九州の自衛隊の基地に移転が決定されました。さらにはオスプレイもですね、訓練は本土移転を推進しておりますし、整備は木更津て実施しております。

 このように機能を相当縮小して普天間(辺野古の間違い)に持っていくということ。さらにはこのことによってですね、今は市街地の真ん中にありますから、防音の措置をしなければいけない個数がですね、世帯が1万数千もある。これが辺野古に移れば、ゼロになっていくということもご理解して頂きたいと思います。

 今、土砂が投入されている映像がありましたが、土砂を投入していくに当たってですね、あそこのサンゴについては、これを移しております。また絶滅危惧種が砂浜に存在していたんですが、これは砂を浚ってですね、これをしっかりと別の浜に移していくという環境の負担をなるべく抑える努力もしながら行なっているということであります。

 勿論、沖縄の皆さんの気持に寄り添っていくとことも大切ですし、理解を得るようですね、さらに努力をしていきたいと思っております」

 安倍晋三のこの発言に対して玉城デニー沖縄県知事が翌1月7日、自身のツイッターに「安倍総理...。それは誰からのレクチャーでしょうか。現実はそうなっておりません。だから私たちは問題を提起しているのです」投稿した。さらに安倍晋三のこの「サンゴ」発言が事実誤認であるにも関わらず、キャスターの伊藤雅之が事実誤認の指摘も批判もないままに流した、結果、多くの視聴者が非事実を事実としたのではないか、いわば自分達の中で事実と解釈するに至ったのではないかといった趣旨の批判がNHKに殺到。NHKは1月10日の定例会見で「報道機関として自主的な編集判断に基づいて放送している。番組内での政治家の発言についてNHKとしてお答えする立場にはございません」と釈明に追われている。

 この安倍晋三の「サンゴ」発言を問題視した野党の最近の国会質疑を二つ見てみる。

 2019年2月20日衆議院予算委員会

 本多平直「例えばサンゴの問題も、総理、あそこのサンゴは移してるということで、川内議員とも議論しました。言い方がね、全部、あそこのサンゴを移していると取られる言い方を総理、されてたんじゃないかなと思うんですよね。だから、総理が全体をバッーと言い切るみたいな言い方で、多くの行政の方も後で総理の答弁と合わせる説明をしなきゃいけなかったり、あのー、国民の側も、誤解をする方が出ると。

 ですから、サンゴをまだ移していない方がまだ多いわけですよ。あの、7万4千のうちの一群体だけ移しただけなんですよ。あそこという言い方も、たくさんある工事のある地域のどこかで、まあ、その說明が違うわけです。

 総理、あのときの言い方はちょっとね、ちょっと丁寧に説明すれば良かったということだけ、言って頂けないですか」

 委員長野田聖子「岩屋防衛大臣」

 岩屋毅「先に私の方から事実関係だけを。現在埋め立てを進めているキャンプシュワブの南側の、辺野古側とも言っておりますが、そこにおけるサンゴについては、護岸で閉め切り、周囲と隔離されると、その生息に影響が生じるためにですね、既に移植をしたところです。

 総理は、その辺野古側の工事については、あのー、サンゴはもう移植をしているという、ことを仰ったんで、ご認識は間違っていないというふうに思っております。北側には、先生、仰ったように7万4千群体ございまして、これ全部、移植する予定でございまして、先ず3万9千群体を沖縄県知事に対して移植の許可申請をしていますが、不許可と、今なっておりまして、残念ながら、移植はまだ済んでおりません」

 安倍晋三「なぜサンゴを移植しなければいけないか、ということについてはですね・・・、(本多平直が何か抗議をする)ついてはですね、いわばそういう遣り取りですから、NHKの中の遣り取りについて、どういう考え方で私がお話をさせて頂いたか、ということでございます。南側海域全体についてですね、周囲の海域に影響を与えないように埋め立て海域を全て護岸で閉め切った。閉め切ったら、当然、閉め切った段階ではサンゴは大きな影響が出るから、それはサンゴは移植しなければいけないということであります。

 なお、北側はですね、まだ閉め切ってはいないわけですから、閉め切っていない段階ではサンゴに影響は出ていない。しかし閉め切ればですね、当然、サンゴを移植しなければならないということになります。で、この土砂が入っている、要するに北側と・・・(本多平直「言い方が間違っている」)言い方でですね、あのー、おー、私の說明は常に十分だというウソを申し上げるつもりは全くありませんが、NHKの中の遣り取り、短いやり取りの中でですね、こう申し上げたことについては私は間違ったことを決して申し上げているわけではありませんし、その遣り取り、遣り取り、(ヤジ)その遣り取りの中でですね、『では、こちら側は、北側はどうなんですか』ということになればですね(NHKの司会者がこのように聞いてこれば)、北側は、当然、それはサンゴは移植しますが、閉め切る前にはちゃんとやらせていただきますよということをお話をさせて頂くわけでございますが、少ない遣り取り、遣り取りはそれで終わっているわけでございますので、私は別に、その、誤解を、何か与えるような言い方をですね、言うことでございます(ママ)。

 まあ、本田委員の指摘、本田委員の考え方としてはですね、それは、あのー、少し、もう少し詳しく説明しろよと、そういうお気持なんだろうと、そのお気持は分からないわけでは、勿論、ありませんが、しかし日曜日の、その討論会の中の、討論会と言っても、私とキャスターだけだったんですが、その中での遣り取り どんどん話題が移ってまいりますから、私は別に他意があってそう申し上げたわけではなくて、基本的には事実に基づいて申し上げているということでございます」

 本多平直「まあ、あのー、言い方をもっと丁寧にして頂きたいということを私は指摘をしております」

 辺野古基地建設が工事として成り立つのかの視点からの質問に移る。

 

 2019年2月28日衆議院予算委員会 

 川内博史「最後に辺野古のサンゴのことをお聞きします。この前岩屋大臣がですね、総理があそことおっしゃられたところにも、ところにはですよ、ちっちゃな子供のサンゴが群体数は分からないけど、あるということをお認めになられました。土砂を投入してるところに。

 子どものサンゴです。そこに土砂を投入している。で、総理がNHKでご発言をされたわけですけれども、私はですね。発言を訂正されるべきだ、というふうに思います。沖縄の県民投票の結果も出たし、県民に寄り添っていくとおっしゃるわけですから、やっぱり訂正されるところはきちっと訂正されるいうことが大事だというふうに思います。如何でしょうか」

 安倍晋三「あのー、今日は折角ご質問頂くということになっておりましたので、私も一杯勉強して参りましたので、今まで何を言われていたかっていうと、いちいちお話をさせて頂きたいと思いますが、(原稿読み)普天間飛行場の全面返還に向けて辺野古への移設を進めておりますが、移設作業に当たっては予め周辺の自然環境に十分配慮して、約5年間に亘る環境影響調査を行なっています。

 その際、沖縄県知事からは合計6度、1500件以上に及ぶ意見を頂き、これを全て反映をしております。その上で保護対象のサンゴの、保護対象のサンゴについては移植し、私このことを述べているわけですが、また、国指定の天然記念物や絶滅危惧種に指定されている貝類・甲殻類などを移動させる方針であると承知をしております。

 このうちサンゴ類の移植については沖縄防衛局に於いて部外の専門家からなる環境監視等委員会の指導・助言を踏まえて、保護基準を設定されまして、実際に設定した基準は、これは那覇第二滑走路の工事に伴う埋め立ての採土にもですね、相当厳しいものがあります。

 この内容は沖縄県にも報告していると聞いております。具体的にはですね、具体的に申し上げた方がわかりやすいと思いますが・・・・」

 委員長野田聖子「総理、質問時間が終了しておりますので簡潔に」

 安倍晋三「ここ大切なことなんですが、那覇第二滑走路の工事に伴い、小型サンゴ、約3万7千群体の移植を行なっています。これは既に答弁させて頂いております。仮にこれをですね、仮にこれを辺野古移設と同じ基準で当てはめれば、小型サンゴ類約17万群体、3万7千ではなく、17万群体を移植する必要があるわけであります。

 その厳しさで、今、こちら側は、辺野古はやっているということを申し上げたいと思います。なお北側海域には保護対象のサンゴ、7万4千群体が存在していますが、このうち約3万9千群体については、昨年2度に亘り県の移植にかかる申請を行っておりますが、2度とも県に残念ながら不許可になっているという状況があるということであります」

 川内博史「私、訂正しますかって聞いたのですけど」

 安倍晋三「今、お答えをさせて頂いた通りでございまして、様々な工事をする際にですね。サンゴを移植するというのは、当然、保護対象となっているものを移植していく。その考え方から、今申し上げましたように第2滑走路についても移植をしておりますが、その、その、移植の条件よりも相当厳しい。これ、3万7千群体、移植を行ないましたが、その17万群体をですね、やらなければいけないという基準でやっている、ということを申し上げているとおりでございます」

 川内博史「終わります。総理、もうちょっと考えて・・・・(「答弁してくださいよ」か)」(終了)

 先ずNHK「日曜討論」での安倍晋三の「勿論、沖縄の皆さんの気持に寄り添っていくとことも大切ですし、理解を得るようですね、さらに努力をしていきたいと思っております」の発言を取り上げてみる。

 民主主義は党派の頭数が意見や主張を左右し、あるいは決定することがほぼ既成事実となっていて、少数意見を蔑ろにしまう弱点を抱えているものの、多数決と少数意見の尊重を原則としている。2019年2月24日に行われた普天間の辺野古移設の賛否を問う沖縄県民投票は「賛成」11万余票に対して「反対」が4倍近い43万余票を獲得、圧倒的多数で辺野古移設反対の沖縄県民の意思表明が行われた上に辺野古移設賛成の立場では少数意見に当たる自民党支持層でも「反対」が半数近い48%を占めたと言う。このように「反対」票は党派を超えていた。これ程の民主主義の原則を踏まえた圧倒的な決定は稀有な現象であろう。

 当然、基地移設に関わる安倍晋三の「沖縄の皆さんの気持に寄り添っていく」は沖縄県民の「反対」の意思に寄り添うものでなければ、真正な意味を取らない。ところが安倍晋三は民意に関係なく辺野古移設の推進を表明し、工事を再開始た。「沖縄の皆さんの気持に寄り添っていく」は"安倍晋三自身の気持ちに寄り添っていく"の言い換えに過ぎないことの正体を露わにした。これ程の民主主義の否定はない。安倍晋三の「~に気持ちに寄り添っていく」は信用できない言葉にランク付けしておかなければならない。

 安倍晋三のサンゴに関わる発言は「今、土砂が投入されている映像がありましたが、土砂を投入していくに当たってですね、あそこのサンゴについては、これを移しております。また絶滅危惧種が砂浜に存在していたんですが、これは砂を浚ってですね、これをしっかりと別の浜に移していくという環境の負担をなるべく抑える努力もしながら行なっているということであります」となっている。「土砂を投入していくに当たってですね、あそこのサンゴについては、これを移しております」は土砂投入以前の過去完了形となっていて、必ずしも間違ったことを言っているわけではない。

 勿論、土砂投入以後の過去完了形はサンゴを死滅させてしまうために発言としては成り立たない。土砂投入以前の過去完了形であることは先に上げた2月20日衆院予算委での防衛相岩屋毅の答弁が裏付けている。

 岩屋毅「現在埋め立てを進めているキャンプシュワブの南側の、辺野古側とも言っておりますが、そこにおけるサンゴについては、護岸で閉め切り、周囲と隔離されると、その生息に影響が生じるためにですね、既に移植をしたところです」
 
 但し安倍晋三のNHK「日曜討論」での「サンゴ」に関わる発言は、どこをどう見ても、"サンゴの移植は何事もスムーズにいっています"の意味内容となっている。いわばサンゴの移植に関して「何ら障害を抱えていません」の意味を取ることになる。

 そうはなっていないことは上記岩屋毅の答弁の続きが証明することになる。

 岩屋毅「北側には、先生、仰ったように7万4千群体ございまして、これ全部、移植する予定でございまして、先ず3万9千群体を沖縄県知事に対して移植の許可申請をしていますが、不許可と、今なっておりまして、残念ながら、移植はまだ済んでおりません」

 安倍晋三自身もサンゴ移植に障害を抱えていて、何事もスムーズにいっていないことを川内博史に答弁している。

 安倍晋三「なお北側海域には保護対象のサンゴ、7万4千群体が存在していますが、このうち約3万9千群体については、昨年2度に亘り県の移植にかかる申請を行っておりますが、2度とも県に残念ながら不許可になっているという状況があるということであります」

 だが、こういった障害の点についてはNHK「日曜討論」では一言も触れずに何事もスムーズに進んでいるかのような発言をした。安倍晋三は本多平直に対して「日曜討論」の「短いやり取りの中で自身の発言は間違ってはいない。キャスターが『北側はどうなんですか』と聞いてくれれば、正確に答えることができた」といった趣旨のことを述べているが、時間が短かったから、あるいは聞かなかったからとの理由で、一国の首相が何事もスムーズに進んでいるかのような間違った情報をマスメディアを通じて全国に垂れ流していいい正当性を獲得できる訳ではない。

 結果、既に触れたように安倍晋三の自己都合な発言のままに辺野古移設が何事もスムーズに進んでいる雰囲気で受け止めることになった視聴者も多くいたことは否定できない。

 また、例えサンゴ移植が全ての埋め立て地域で土砂投入前に完遂できたとしても、移植を受けたサンゴの長期生存率は低いという学者の指摘もある。

 辺野古移設の障害はサンゴ移植のみではなく、他にもある。昨年2018年4月時点で移設地辺野古の埋め立て区域全体の約4割にあたる65ヘクタール程度が軟弱地盤であることが指摘されていた。軟弱地盤は最も深い地点で水深90メートル、政府は地盤を固めるために約7万7000本の砂杭を打ち込む地盤改良工事を検討しているそうだが、国内企業の施工実績は水深70メートルにとどまっていて、この差20メートルをどう処理するのかが、当然、国会で問題視されることになった。

 防衛相の岩屋毅は2019年2月28日の衆院予算委員会で共産党の赤嶺政賢に対して軟弱地盤の深さが最大で90メートルある場所が一部に存在することを認めた上で次のように答弁していると2019年2月28日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。

 岩屋毅「水面下70メートルの施工ができる船は3隻あるが、その70メートルまで施工する必要がある場所は全体のうちの数%程度だ。全体の約7割は水面下40メートル未満の地盤改良工事によって所要の安定性が確保できる。

 水面下70メートルを超える深度では非常に固い粘土層に分類される強度を有していることから、十分に安定性を確保できていると確認をしている」

 「水面下70メートルの施工ができる船は3隻あるが」、「水面下70メートルを超える深度では非常に固い粘土層に分類される強度を有している」から、問題ないとしている。

 「全体の約7割は水面下40メートル未満の地盤改良工事」で済み、「70メートルまで施工する必要がある場所は全体のうちの数%程度」をプラスして、大目に全体の8割と見ても、残る水面下70メートルを超える深度の全体の2割は「非常に固い粘土層に分類される強度を有している」とすると、軟弱地盤の深さが最大で90メートルある場所が一部に存在することを認めたことと明らかに矛盾する。

 この矛盾を矛盾としていないことは不都合な事実は隠す情報隠蔽に当たる。

 このように辺野古基地建設に関して様々な障害を抱えていながら、一国の首相である安倍晋三がそのことに触れずに何事もスムーズに進んでいるかのような雰囲気を与えることは岩屋毅の軟弱地盤に関わると同様の不都合な事実は隠す情報隠蔽なくして成り立たない。安倍晋三はそんなことは意図していないと言うだろうが、それを巧まずして行なっているのかどうかは別にして、この手の情報隠蔽を用いていいところだけを見せる自己都合を介在させた恣意的な情報の取捨選択は安倍晋三の常套手段となっている。

 そしてこのような自己に都合のいい情報のみを選択して、不都合な事実は隠す情報隠蔽を常套手段として、国会でどう追及されようとも、自省心を備えていないがゆえに自身の発言の不備・偏りに気づきさえもしないのは自己絶対主義に陥っているからに他ならない。だからこそ、ウソを用いたり、強弁を展開したりして、一旦口から発した発言は発言したとおりに守ろうとする。

 安倍晋三のこのような自己絶対主義をこそ問題としなければならない。

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メール記載の「官邸関係者」は内閣参事官、「委員以外の関係者」は中江と姉崎、他1名は安倍晋三関与をチャラにするストーリー

2019-02-28 12:55:06 | 政治


   2019年7月28日任期満了実施参院選で

   安倍自民党を大敗に追いつめれば

   政権運営が行き詰まり 

   2019年10月1日の消費税10%への増税を

   断念させる可能性が生じる



 【謝罪】2019年2月25日の当「ブログ」に厚労省から「毎月勤労統計の改善に関する検討会」阿部正浩座長宛の最初のメールの日付は2015年9月4日なのですが、2通目のメールの日付は同じ9月4日としたのは誤りで、正確には「2015年9月14日午後4時8分」の発信でした。謝罪します。年のせいで、かなり頭が疲れているようです。

 発信日2015年9月4日、発信者「毎月勤労統計の改善に関する検討会」(略称「毎勤改善検討会」)の事務局員である労働省雇用・賃金福祉統計課長補佐手計(てばか)高志の最初のメールに、〈なお、現在、検討会での検討結果等については官邸関係者に説明をしている段階であります。〉と記載されている「官邸関係者」とは当時労働省首相官邸出向の内閣参事官であり、2015年9月14日の2通目のメールに、〈意見をいただいた部分について、反映等を行っているところですが、委員以外の関係者と調整をしている中で〉云々と記載の「委員以外の関係者」とは、前首相秘書官中江元哉と元厚労省統計情報部長であり、「毎勤改善検討会」の事務局員でもある姉崎猛と統計関係の有識者だと厚労署側が明らかにした。

 いずれも安倍晋三の統計不正への政治関与を否定する文脈での公表だが、事実は関与していながら、その関与をチャラにするためにつくり上げたストーリーなのか、そうではないのかを問題にしなければならない。安倍晋三の不正関与は前首相秘書官中江元哉に指示、その指示に基づいて中江元哉が厚労省に働きかけて行われたとの状況証拠を野党が国会で積み上げている。指示の目的はアベノミクス経済がうまくいっているかのように国民に見せかけるための統計操作だと見られている。心証から言うと、安倍晋三ならやりかねない悪巧みである。

 先ず、どのような経緯を取って、このような公表に至ったのか、簡単に振り返ってみる。

 2015年の3月31日に前首相秘書官中江元哉が首相官邸に厚労省の宮野総括審議官と姉崎統計部長を呼びつけて、統計の取り方について話し合っている。どのような話し合いなのかは2019年2月15日衆議院予算委員会で国民民主党・無所属クラブ奥野総一郎に答弁している。

 中江元哉「具体的な日付は2015年の3月31日だったと思います。それで具体的な遣り取りについては、説明のときは4年前のことでありますので、詳しくは覚えておりませんが、その際、私からは厚労省の方々に賃金統計に関する基礎統計についてこれまで公表していた数値が過去に遡って大幅に変える理由等を尋ねたところ、全数入れ替え、サンプルを全部入れ替えるという方法を取っているためであるという回答でありました。

 そこで私の方から過去に遡って大幅に公表された数値が変わるようでは経済の実態がタイムリーに表せられないのではないかという観点から、どうしてそのような(企業)サンプルを全数入れ替えする、そういう方法を採用しているのかということを聞きました。また、ほかの統計に於いても同様に全数入れ替えという方法が取られているのかということを聞いた記憶がございます。

 また、他の統計は諸外国の事例などを見つつ、専門家の意見を聞くなど、経済の実態を適切に、先程申し上げましたようにタイムリーに表すために改善の可能性について考えるべきではないかという問題意識を伝えた記憶がございます。

 私と致しましては当然の反応をしたつもりであります。現にそのときの統計結果に対しましては有識者の方々から様々な指摘がなされたと承知しております。これらはやるときはすべて政策的な観点からのものであると考えております」

 要するに経済の実態をタイムリーに反映するためには企業サンプルを全数入れ替えするのではなく、部分入れ替え方式で統計を取るべきではないかと「問題意識を伝えた」――と言えば聞こえはいいが、問題提起した。これが安倍晋三の指示による政治関与が効いた統計不正の開始なのかと問題視されることになった。

 中江元哉が「これらはやるときはすべて政策的な観点からのものであると考えております」と言っていることは、どういう統計方法を採用するかの結論は「毎勤改善検討会」の有識者各委員が政策的な観点から決めることであって、私はノータッチですよ、つまり雇い主である親分の安倍晋三も関知していないことですよの意味を取ることになる。

 実際に中江元哉はこのあとで、「総理にはご報告はしておりません」と厚労省職員との話し合いそのものから安倍晋三の存在を外す発言をしている。このように安倍晋三は無関係ですよと暗に言ったり、国会答弁で示したり、様々に手を打たり、安倍晋三自身が「アベノミクスを上振れさせるためのものでない」などと言わなければならないのは政治関与を疑われても仕方がない統計不正の構造を取っているからに他ならない。

 2019年2月20日衆院予算委員会で立憲民主党の長妻昭が「何か変なメールが出てきた」との物言いで、厚労省が「毎勤改善検討会」の座長である阿部正浩に送信したメールの存在を指摘、厚労相の根本匠にメールの提出を要求。阿部正浩が受信しているメールだから、隠しようがないと観念したのだろう、厚生労働省は2月22日に阿部正浩座長に送信した、あとからまで出てくるかもしれないが、取り敢えずは3通のメールを衆院予算委員会理事会に示した。いずれも発信者は「毎勤改善検討会」の事務局員である労働省雇用・賃金福祉統計課長補佐手計高志となっている。

 1通を除いて2通共に上記示したように官邸の関与を疑わせる文言が記載されていて、「毎勤改善検討会」の事務局員である労働省雇用・賃金福祉統計課長補佐手計高志と同様に同じ事務局員である厚労相の姉崎猛と首相官邸で前首相秘書官中江元哉と面会し、統計の取り方について話し合っている関係上、中江元哉が「官邸関係者」に目されることになった。

 姉崎猛は2019年2月22日の衆院予算委で立憲民主党の小川淳也の追及に答弁している。

 「9月14日の午後の早目の時間に(首相官邸に行き)『毎勤の検討会』の6回目が近かったので検討会のことについて簡単に触れた。その際、秘書官(中江元哉)から、『コストと言うよりも、ちゃんと実態を把握するような観点から言うと、部分入れ替えもあるのではないか』というようなコメントがあった」と答弁、さらに「14日に総理秘書官のところに行ったときは毎勤改善検討会の報告書の最終的な調整っていうか、修正を指示してやっていたのでですね、それなんで、秘書官のところにいくとき修正中だったので、資料とか持っていかなくて、口頭で説明をして、そういうことだったんで、いずれにしてもそのとき資料を、担当課で、第6回目の検討会に向けて修正をしている最中でしたので、こういう結論になるみたいな感じでは言わなかったんじゃないかというふうに、調整中で・・・・」と答弁を重ねている。

 要するに中谷元哉は2019年2月15日衆議院予算委員会では2015年3月31日に首相官邸で姉崎猛等と面会した際にはどういう統計方法を採用するかの結論は「毎勤改善検討会」の有識者各委員が政策的な観点から決めることであって、私はノータッチですよといった趣旨の答弁をしていながら、約半年後の9月14日になっても、「毎勤改善検討会」の議論の行方、あるいは結論の行方に大きな関心を払っていた。いわば有識者各委員の議論・結論に任せるは口とは裏腹な事実――ウソ答弁となる。

 小川淳也の質問に対する姉崎猛のこの答弁に関して前首相秘書官中江元哉は次のように答弁している。

 「9月14日に厚労省の姉崎さんと宮野さんが来られたということでありますけれども、私、その時期にそのようなことは思い出せません。当初からの問題意識からすると、経済の実態をより理解に表す方策として部分入れ替えということがあるなら、そうした考え方を専門的に進めて貰ったらどうかというようなことを申し上げたかもしれないが、いずれにしても専門家の方々が検討されている訳ですから」

 「申し訳ありませんが、覚えておりません」と記憶にないで始まり、記憶にないで結んでいる。

 但しここでも有識者各委員が政策的な観点から決めることであって、私はノータッチですよといった趣旨の答弁を繰り返している。つまり親分の安倍晋三もノータッチですよと言っていることになる。

 中江元哉が例え全然記憶がないことでも、2015年9月14日に首相官邸で姉崎猛が中江元哉と面会して、検討会の議論について姉先が「検討会のことについて簡単に触れた」と発言している以上、統計の取り方についての議論をしていた「第5回毎勤改善検討会」の中間的整理案の結論が「総入れ替え方式が適当」だったのに対して2015年9月14日の検討会座長に宛てたメールでは、〈サンプルの入れ替え方法について、部分入れ替え方式で行うべきとの意見が出てきました。〉と、第6回目の検討会の議論の中に「部分入れ替え方式」を割り込ませようとしていることは首相秘書官中江元哉が望んでいた部分入れ替え方式に一歩近づかせる「意見」となる。

 姉崎猛が中江元哉と面会したとしていることに対して中江元哉が記憶していないとしている食い違いが安倍晋三関与の疑惑を一層掻き立てることになったことになった。この疑惑を打ち消すためにだろう、厚労省は2月21日に立憲民主党の小川淳也の要求を受けて、姉崎猛は報告書案の修正は「首相秘書官に説明に行く前に行った」と文書で回答したと、2019年2月21日付「毎日新聞」は伝えている。

 修正の日時を記事は、首相官邸で中江元哉と面会したのは9月14日午後であるのに対して〈「修正指示の具体的な日時は9月11日(金)の夜か14日(月)の朝」「当時担当が多忙で修正がぎりぎりになったのかもしれない」〉と、姉崎猛の主張を伝えている。

 勿論、この文書回答の内容に添って姉崎猛は以後国会で追及されても答弁することになる。だからこそ、文書回答2月21日の翌日の上記2019年2月22日の衆院予算委での立憲民主党小川淳也の追及に対しては2015年9月14日の首相秘書官中江元哉との面会時の遣り取りを說明するのに「毎勤改善検討会の報告書の最終的な調整っていうか、修正を指示してやっていたのでですね」とか、「秘書官のところにいくとき修正中だった」、「第6回目の検討会に向けて修正をしている最中でした」等々、報告書案は「調整中」を何度も強調することになったのだろう。

 首相秘書官統計不正不関与説=安倍晋三統計不正不関与説はこの程度で打ち止めにしておけばいいのに2019年2月25日午前の衆院予算委員会で厚労省政策統括官の藤沢勝博が発信日2015年9月4日のメールに記載されていた「官邸関係者」は当時厚労省から首相官邸に出向していた内閣参事官だと明らかにしたと2019年2月25日付「毎日新聞」が伝えている。

 内閣参事官がどの程度の地位なのかネットを調べてみると、「コトバンク」に、〈内閣官房・法制局や各省庁などで、その部局の所掌事務に参画し、重要事項の総括整理や立案などを行う、課長級の職員。〉と出ている。

 単に首相官邸に出向の身である課長級の職員に検討結果等を説明しているとわざわざメールで座長相手に知らせる意味がどこにあるのだろうか。検討会の議論にどれ程の影響力を与える力を持っているというのだろうか。首相官邸の高い地位にある人物に説明しているとすることによって、その影響力からしても、意味を持つことになる。

 安倍座長にしても、「官邸関係者」の文字を見て、高い地位の人物を頭に浮かべたろう。低い地位の人物を頭に浮かべても、何の意味も出てこない。

 こう見てくると、内閣参事官はスケープゴートにされた疑いが濃厚となるだけではなく、もしスケープゴートだとしたら、これまでの経緯から、安倍晋三統計不正不関与のストーリーを涙ぐましいばかりに一生懸命打ち立てようとしている様子が浮かんでくる。

 2通目の2015年9月14日のメールに記載がある「委員以外の関係者」は厚生労働相根本匠が国会答弁では首相秘書官中江元哉だとしていたにも関わらず、2月26日の閣議後記者会見で中江元哉と姉崎猛、統計関係の有識者の3名であると明らかにしたと2019年2月26日付「asahi.com」が伝えている。

 2015年9月14日のメールは、〈委員以外の関係者と調整をしている中でサンプルの入れ替え方法について、部分入れ替え方式で行うべきとの意見が出てきました。〉とある。中江元哉は2015年9月14日の首相官邸で面会した姉崎猛からの検討会の報告は記憶にないと否定しているが、記憶の有無に関係なしに報告を受けたことが事実となる。

 さらに中谷元哉は「自分は問題提起のみで、決定は専門家が決める」といった趣旨で、自身は決定にはノータッチであったかのように国会答弁しているが、当日の首相官邸で、〈委員以外の関係者と調整をしている中で、部分入れ替え方式で行うべきとの意見が出てきた〉とメールに記載がある以上、「委員以外の関係者」とは中江元哉と姉崎猛、統計関係の有識者を指すことになり、この3人の誰が「部分入れ替え方式で行うべきとの意見」を出しのかは予てから部分入れ替えを問題意識として提起していた中江元哉が主体的役割を担っていたことは想像に難くない。

 このことだけではない。「第5回毎勤改善検討会」の中間的整理案の結論が「総入れ替え方式が適当」と位置付けていたのに対して首相官邸面会2日後の2015年9月16日の「第6回毎勤改善検討会」では、阿部座長の欠席のもと、「サンプル入れ替え方法については、引き続き検討することとする」という「中間的整理(案)」に変更された上、第7回、第8回と開催を予定していながら、そのまま立ち消えとなっただけではなく、このことを受けてのことだろう、「厚労省」は2018年4月に、〈従来、調査対象事業所のうち30 人以上事業所は、2~3年ごとに、新たに無作為抽出した事業所に総入替えを実施していたが、平成30 年からは毎年1月分調査で一部を入れ替える方式に変更〉と、「毎勤改善検討会」の結論を経ずに部分入れ替え方式に変更している不自然さからしても、首相官邸の関与=安倍晋三の関与を事実と見なければ、これまでの政府側答弁の経緯と整合性が取れなくなる。

 関与が事実だからこそ、「官邸関係者」を内閣参事官だとするスケープゴートとするストーリーを、さらに「委員以外の関係者」を中江元哉一人ではなく、さらに2人を加えて3人とする、安倍晋三関与をチャラにするストーリーが必要になったはずだ。

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