武見敬三が新型コロナウイルス関わる安倍政権の対応に対して内外で不当な批判が様々に起きている、先週金曜日の時点に於けるPCR検査407名の感染陽性者に対して既に76名も退院している、クルーズ船での集団感染でも656名の陽性者に対して既に退院者が245名、合計300名を超えて退院、日常生活戻に戻っている、「こうした力こそが実は我が国が国際社会の中で評価している」点だ、このような評価点は「内外にしっかりと発信していくことが必要だ」云々の文言で内外の不当な批判に反して安倍晋三陣頭指揮の政府対応の成果だとばかりにヨイショしている。
対して安倍晋三は一時重症状態だった罹患者のうち20名程度が軽症・中程度に改善、専門家の話として新型コロナウィルス感染者の多くは軽症で、多くが治癒していると、武見敬三のヨイショに応じている。但し「多くは軽症」という状況は新型コロナウィルス自体が持つ特徴的傾向であって、安倍晋三陣頭指揮の政府対応の成果とは関係しないし、当然、武見敬三が指摘しているように安倍晋三陣頭指揮の政府対応に基づいた国際社会の中での日本の評価点とすることはできない。
中国で感染確認の5万5924人のデータに基づいたWHO派遣の各国専門家と中国保健当局の専門家による2020年2月20日までの中国現地調査の分析結果を2020年2月29日付記事として伝えている「NHK NEWS WEB」は安倍晋三が言う「多くは軽症」を、〈感染者のおよそ80%は症状が比較的軽く、肺炎の症状がみられない場合もあったということです。〉と、特徴的傾向の一つとして示している。
だが、安倍晋三は武見敬三が新型コロナウイルスの特徴的傾向を安倍晋三陣頭指揮の政府対応の評価点としていることに対して「これはあまり報道されてないところもございますので、ま、こうしたこともですね、しっかりと発信をしていきたいとこう思っております」の文言で、安倍晋三陣頭指揮による政府対応の成果に位置づけ、なおかつマスコミがこの点について報道に熱心でないことに暗に不満を示して、より発信されるべきだと訴えている。
新型コロナウィルス感染者の80%程度が軽症者で、一定程度の入院で済み、程なくして日常生活に無事戻ることができるパターンが固定化されていて、新たな感染者が出た場合でも、そのパターンが繰り返されることを常識とすることができたとしても、一人でも重症者が存在し、死者が出ている以上、「多くは軽症」だと片付けることはできない。一度ブログに利用した、《医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド》(一般社団法人 日本環境感染学会/ 2020年2月13日)には次のような下りがある。文飾当方。
〈発生状況
国内の感染者数は増加していますが、軽症例や無症候病原体保有者が多くを占めています。〉
〈臨床的特徴(病態、症状)
新型コロナウイルスは呼吸器系の感染が主体です。 ウイルスの主な感染部位によって上気道炎、気管支炎、および肺炎を発症すると考えられます。本ウイルスに感染した方全員が発症するわけではなく、無症状で経過してウイルスが排除される例も存在すると考えられます。〉(一部抜粋)
ブログに次のように書いた。
〈本人が知らないままにウイルスを抱え込んだとしても、発症しないままに過ごして、知らないままにウイルスが消滅してしまう例があると言うことは、本人は無事であったとしても、ウイルスを抱え込んでいる間、そのウイルスに第三者が感染、発症する例もあることを意味することになる。
特に体力が低下している高齢者や、高齢者ではなくても、何かの病気治療中で体力が万全ではない中高年層がコロナウイルス感染の症状が出ていない、いわば野放し状態となっている無症候病原体保有者と何らかの接触をした場合、ヒトからヒトへの感染が起こり得る可能性は否定できないばかりか、一人の発症から感染経路を辿る作業にしても、感染元が無症候病原体保有者で、既にウイルスを消滅させていた場合は事前の感染者が特定不可能となって、感染元を一人ひとり探し当てて、入院隔離するなりして感染拡大を阻止するローラー作戦にしても、全てがうまくいかないことになって、感染経路を辿る作業が往々にして迷路に迷い込むことになりかねない。〉・・・・・・
このことは2020年2月23日付「asahi.com」記事も専門家の指摘として伝えている。
国際医療福祉大の和田耕治教授(公衆衛生)は「無症状でもウイルスを排出している可能性を指摘する報告もある。心配な人は、2週間程度は家族と別の部屋で過ごしたり、食事は離れてとったりするなどの対策を念のためとってほしい。手洗いの徹底も大事だ」
それゆえに新たな感染者が出るたびに住居地の自治体は新規感染者の感染経路を辿るべく、その行動歴を洗い、濃厚接触者の有無を探し歩いて、濃厚接触者と思しき人物に行き当たったなら、検査を指示しなければならない。検査の結果、陽性なら、入院を求めると同時に今度はその陽性者の感染経路を辿るために行動歴を洗い、濃厚接触者の有無を探し歩いて、濃厚接触者と思しき人物に行き当たったなら、検査を指示する繰り返しに出る。
そしてこの繰り返しは新規感染者が複数人出たとしても、新型コロナウィルスの特徴的傾向として「多くは軽症」だと分かっていても、新たな感染が止まらない限り続けなければならない。
そしてこの感染が止まらない状況は、断わるまでもなく、その状況に応じた自治体の繰り返しの作業にとどまらない。感染防止のための人の移動制限は経済の停滞・縮小に向かい、特に不特定多数の人間を相手に商売や業務を行う何らかの営業体内に小規模の集団感染でも発生した場合は、他への感染を防ぐ観点から一定期間の休業を迫られることになり、そういった休業が各地に続くと、経済の停滞・縮小にととどまらずに、国民生活の停滞・縮小を必然化することになる。
そして日本の現状は、日本は日本としてそのとおりの事実を招いている。「多くは軽症」だなどと言っている場合ではないし、新型コロナウィルスの特徴的傾向に過ぎない「多くは軽症」を感染症対策の功績と位置づけて、そのような日本の「力こそが実は我が国が国際社会の中で評価している」といった誇りは経済と国民生活の停滞・縮小を余りにも蔑ろにしている。
現状の新型コロナウイルス感染に関わる安倍晋三と武見敬三の以上の認識はコロナウイルスに対する危機感と現状認識の希薄さなくして招くことはない。勿論、日本経済が感染でダメージを受けていることへの発言はあるが、「多くは軽症」で片付けることができる理由は経済の状況については経済の話題のみとし、感染状況については感染の話題として別個に取り上げて、双方を総合的に関連付けて議論する発想がないからだろう。その結果として危機感と現状認識の希薄さが現れることになる。
安倍晋三のこの危機感と現状認識の希薄さは改正新型インフルエンザ対策特別措置法成立2020年3月13日の翌日の3月14日の「記者会見」発言からも窺うことができる。
安倍晋三は冒頭発言で感染の現状を「国家的な危機」と位置づけている。
安倍晋三「現時点において感染者の数はなお増加傾向にあります。しかし、急激なペースで感染者が増加している諸外国と比べて、我が国では増加のスピードを抑えられている。これが、専門家の皆さんが今週発表した見解です。
WHO(世界保健機関)が今週、パンデミックを宣言しましたが、人口1万人当たりの感染者数を比べると、我が国は0.06人にとどまっており、韓国、中国のほか、イタリアを始め、欧州では13か国、イランなど中東3か国よりも少ないレベルに抑えることができています。」
安倍晋三「現時点において感染者の数はなお増加傾向にあります。しかし、急激なペースで感染者が増加している諸外国と比べて、我が国では増加のスピードを抑えられている。これが、専門家の皆さんが今週発表した見解です」
安倍晋三「未知の部分が多い新型コロナウイルス感染症でしたが、皆さんの御協力を頂き、これまでの対策を進める中で、多くのことが分かってきました。
これまでのデータでは感染が確認され、かつ、症状のある人の80パーセントが軽症です。重症化した人でも半数ほどの人は回復しています。クルーズ船も含めれば、感染者の4割以上、600人に及ぶ方々が既に回復し、退院しておられます。他方、お亡くなりになった方は、高齢者の皆さんや基礎疾患のある方に集中しています」
安倍晋三「感染力に関しても、これまで感染が確認された方のうち、約8割の方は他の人に感染させていません。つまり、人から人へ、次から次に感染が広がるわけではありません。
他方でスポーツジムやライブハウスなど、特定の場所では集団での感染が確認された事例が報告されています」――
以上の冒頭発言からは「国家的な危機」は見えてこない。どこが「国家的な危機」だと言いたくなる。
新型コロナウイルス感染の現状に原因を置いて、「国家的な危機」だと切迫的に捉えていながら、「国家的な危機」の二次的原因となっている経済と国民生活の停滞・縮小には触れないままに諸外国と「人口1万人当たりの感染者数を比べると、我が国は0.06人にとどまっている」、「症状のある人の80パーセントが軽症」、「重症化した人でも半数ほどの人は回復」、「クルーズ船も含めれば、感染者の4割以上、600人に及ぶ方々が既に回復」、「感染力に関しても、これまで感染が確認された方のうち、約8割の方は他の人に感染させていません。つまり、人から人へ、次から次に感染が広がるわけではありません」云々とまるで重症者も死者も一人も出ないような、危機感と現状認識の希薄さを曝け出すことができる。
だが一方で、「新型コロナウイルス感染症が経済全般にわたって甚大な影響をもたらしています。とりわけ、中小・小規模事業者の皆さんにとっては、事業存続にも関わる重大な事態であると認識しています」と、密接に関連しているはずの感染の状況と経済及び国民生活の停滞・縮小を別個に捉えて、論じている。
この認識も危機感と現状認識の希薄さから出ている。
この希薄さは感染症に必需品となるマスクの充当にも現れている。日本国内で出回るマスクの7割は中国製で、中国からの出荷が滞っていることに対してマスク不足を予見しなければならなかったにも関わらず、新型コロナウイルス感染症対策本部がマスクメーカー及びマスク卸売販売業者の団体に対してマスクの増産等について要請したのは2020年2月13日の「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策」によってであり、今年度予算の予備費103億円からマスク増産への補助として4億5000万円を充てている。
この増産要請はいずれはマスクが品薄となることを見込んだものではなく、既に品薄状況を受けた要請だとマスコミは伝えている。
この品不足状況に対して安倍晋三が月内に月6億枚以上のマスク供給を確保すると表明し、それに応えたのか、防衛相の河野太郎は2020年3月6日の記者会見で自衛隊保有のマスク155万枚のうち突発的な大規模災害に備えて3週間後に新規マスクを自衛隊に返納してもらう前提で100万枚を拠出する方針を表明、6日後の3月12日に35万枚を、残り65万枚は3月13日午前中に自衛隊のトラック2台で都内の倉庫に搬入、その後全国の医療関係者や介護関係者に配布されるとマスコミが伝えていた。
そして河野太郎3月6日の表明4日後の2020年3月10日付の「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策第2弾について」(厚生労働省医政局地域医療計画課)で、マスクに関わる次の対策を打っている。
◆需給両面からの総合的なマスク対策
・ネット等での高額転売目的のマスク購入を防ぐため、マスクの転売行為を禁止
・布製マスク2,000万枚を国で一括購入し、 介護施設等に緊急配布
・ 医療機関向けマスク1,500万枚を国で一括購入し、 必要な医療機関に優先配布
・ マスクメーカーに対する更なる増産支援
この要請の3日後の2020年3月14日付「NHK NEWS WEB」記事が、「京都や大阪の大規模病院でもマスク不足が深刻」と題して次のように伝えている。
〈複数の病院関係者によりますと、京都市の京都大学医学部附属病院では、今月に入って医師や看護師に対し、病院から支給されるマスクが制限されるようになり、ほとんどの部署で毎日1人1枚から1週間に1枚程度になったということです。
新型コロナウイルスの感染者を受け入れる病院には指定されていませんが、高度な医療を行う病院で多くの入院患者がいて、マスク不足の中で感染症対策が十分なのか、働く人たちから懸念の声が上がっているということです。〉・・・・・
マスク不足だけではない、検査体制の不備・不足も予見しなければならなかったはずだが、その構築の遅れも国民の不安を掻き立てた。
肝心な必要性を予見した前以っての対応ではなく、後手後手の対応のみからも、危機感と現状認識の希薄さしか浮かんでこない。
この程度の危機感と現状認識の希薄さしか持ち合わせてないにも関わらず、安倍晋三は記者質問に対する答弁で、「国内の感染の状況については、様々な手を打った結果、現時点では爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度、持ち応えているのではないかというのが専門家の皆様の評価であろうと思います。今後とも、依然として警戒を緩めることができない状況でありますが、国民の健康、命を守るために全力を尽くしていきたいと思っています」と、各自治体の努力の成果を自らの成果のように刷り込んで、「国民の健康、命を守るために全力を尽くしていきたいと思っています」と国民の健康と命を請け合っている。
危機感と現状認識の希薄さの上に請け合っている国民の健康と命に過ぎない。要するに実の伴わない、上辺だけの言葉で成り立たせた「国民の健康と命」が実態だということである。