安倍晋三の東京五輪1年程度延期はアスリートファーストで決めたことか、自らの任期内開催を優先させた自己利害の自己都合なのか

2020-03-30 11:03:08 | 政治
 2020年東京オリンピック・パラリンピックの延期を余儀なくさせた原因は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大であることは誰もが承知しているはずである。当然、延期の期間は世界的な感染拡大の終息の時期か、終息に近い時期を予測して判断しなければならない。

 このことも誰もが承知しているはずであり、誰もが承知していなければならない。1年後にオリンピックを開催しても、世界的な感染がやまなければ、延期が無駄となって、開催が困難となり、さらに延期するか、あるいは中止するか、改めて決めなければならなくなる。

 つまり3月24日夜の安倍晋三とIOCトーマス・バッハ会長との間の電話会談で1年程度の延期を決めたということは来年の夏には新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が終息しているか、終息とまでいかなくても、一定程度以上に収まっていて、どの国でも人の移動が制限を受けることなく自由に行われていることを予測してのこととなる。人の移動の自由はアスリートたちの練習の自由を保障する。

 人の移動の制限の解除は世界中どこでも、オリンピックが延期開催される時期よりも何ヶ月も前でなければ、アスリートたちは本番で最高のパフォーマンスを目指すための前以ってのトレーニングを困難とするか、不可能とすることになる。オリンピック・パラリンピックがスポーツに於ける世界の祭典である以上、主催国日本のアスリートだけが十分にトレーニングできればいいということにはならない。

 また、終息か、終息に近い状況を迎えることができてこそ、オリ・パラの開催を安倍晋三が自らの発言を勇ましく見せる効果的な言葉の一つとして使っている「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証」とすることができる。

 3月25日の参院予算委員会で立憲民主党の田島麻衣子が1年延期を「来年9月にある自民党総裁の任期に合わせたものですか」と質問したところ、五輪相の橋本聖子が「全く関係することではありません」と否定したと「asahi.com」記事が伝えていた。You Tubeから動画を探し出して確かめてみた。一部抜粋。この日の委員会には安倍晋三は出席していない。

 田島麻衣子「先ず東京オリンピック・パラリンピックの延期について橋本大臣に伺います。延期を1年程度と決めたのはなぜなのですか。それについて客観的な根拠はありますか」

 橋本聖子「昨夜ですけど、安倍総理とバッハ会長との電話会談が行われました。コロナウイルスの感染を受けて開催するのは困難な状況にある。安倍総理の方からバッハ会長に対して1年程度の延期を提案させて頂いたということであります。そしてすぐにバッハ会長からは100パーセント同意をするということで、その後のIOCの理事会で1年程度の延期ということが決定されたということであります」

 橋本聖子が1年延期の「客観的な根拠」を述べずじまいだったから、田島麻衣子が再度尋ねると、安倍晋三が1年延期を提案して、IOCが協議をして決定した、その決定に添って政府として粛々と勘案をしていくといった趣旨の答弁、1年程度の延期決定としたIOC協議を1年とした「客観的な根拠」としているが、安倍晋三がトーマス・バッハに提案の「1年程度」がそもそもの始まりなのだから、安倍晋三の胸の内にあった「1年程度」という年数に対する「客観的な根拠」について答えなければならないが、そのようには答えていない。

 安倍晋三の「1年程度」が私的な利害からの計算ではなく、公的な利害に立った計算であるなら、明確に答えることができた「客観的な根拠」のはずだが、答えることができないのだから、「客観的な根拠」の程度が知れることになる。

 田島麻衣子は「1年程度」が安倍晋三の私的な利害に立った計算と見たのだろう。

 田島麻衣子「来年9月にある自民党総裁の任期に合わせたものですか」  

 橋本聖子「全く関係することではありません。来年のオリンピック東京大会、パラリンピック東京大会に向けてIOC、そして組織委員会等が様々な競技日程というものを考えながら、IOCの理事会で決定に至ったということであります」

 IOCが提案して安倍晋三が受け入れた「1年程度」というわけではないのだから、IOCの協議や決定に関係しない場所から「客観的な根拠」を明らかにしなければならないが、IOCが協議・決定した「1年程度」に「客観的な根拠」を置くゴマカシで凌いでいる。

 安倍晋三は3月24日夜のトーマス・バッハとの電話会談後に首相官邸で「囲み会見」を開いている。

 安倍晋三「先程、森会長、小池都知事、橋本大臣同席の下に、バッハIOC会長と電話会談を行いました。まず、改めて、東京オリンピック・パラリンピックの中止はないということについて、バッハ会長と確認いたしました。

 そしてその上で、開催国日本として、東京五輪について、現下の状況を踏まえ、世界のアスリートの皆さんが、最高のコンディションでプレーでき、そして、観客の皆さんにとって、安全で安心な大会とするために、おおむね一年程度、延期することを軸として、検討していただけないか、という提案をいたしました。

 バッハ会長から、100パーセント同意する、という答えをいただきました。そして遅くとも2021年の夏までに東京オリンピック・パラリンピックを開催するということで合意いたしました。今後、人類が新型コロナウイルス感染症に打ち勝った証として完全な形で東京オリンピック・パラリンピックを開催するために、IOCバッハ会長と緊密に連携していくということで、一致したところであります。日本は日本として、開催国の責任をしっかりと果たしていきたいと思います。

 先ずは現下のこの感染症の広がりの状況を見る中において、これは、年内ということは難しいだろうということにおいて、1年程度ということにいたしました。その上において、遅くとも2021年の夏までにということで合意をしたところであります。そして、この目標の上において、しっかりと会場等の対応について、調整をしていくことになると思いますし、この後、IOCの理事会が開催されると思います。」

 安倍晋三は「1年程度」としたことの理由を二つ口にしている。

 「世界のアスリートの皆さんが、最高のコンディションでプレーでき、そして、観客の皆さんにとって、安全で安心な大会とするため」が一つ目。「現下のこの感染症の広がりの状況を見る中において、これは、年内ということは難しいだろうということにおいて、1年程度ということにいたしました」が二つ目。

 だが、この一つ目も二つ目も、新型コロナウイルスの世界的な感染状況の趨勢、成り行きにかかっている。当然、安倍晋三の方から提案した「1年程度」の延期で新型コロナウイルスの世界的な感染は「人類が新型コロナウイルス感染症に打ち勝った証として、完全な形で東京オリンピック・パラリンピックを開催」できる状況にまで終息していると見ていることになる。

 では、このことの「客観的な根拠」は?安倍晋三自身の口から確かめてみる。 

 2020年3月27日参院予算委員会

 石橋通宏「先ず安倍総理に伺います。東京オリンピック・パラリンピックの延期、1年程度ということを先ず最初に言われたそうですが、その根拠を教えてください」

 安倍晋三「東京大会を延期する期間についてではですね、世界のアスリートが万全のコンディションでプレーを行い、そして観客にとって安全で安心な大会としていくためには世界に於ける感染の広がりを勘案するとですね、数ヶ月程度の時間では困難であり、ある程度の時間を要せざるを得ないと考えたところであります。

 他方で例えば2年といった余りにも長期な延期となれば、これはもはや2020年東京大会へのモメンタム(勢い)が失われ、別の大会のようになってしまうという懸念があったのであります。そのため先日(3月24日)のIOCバッハ会長との電話会談に於いて私から概ね1年程度の延期を提案し、遅くとも2021年の夏までとの合意に至ったところでございます」

 石橋通宏「東京で開催する以上は東京のモメンタムは失われないんじゃないですか」

 安倍晋三「これはアスリートの皆さんがですね、2020年をめがけて最高のコンディションも作ってきているところでございます。そしてそれがまた2年後ということになればですね、これはまた、かなり、初めから遣り直さなきゃなんないということにも繋がってくるわけでございまして、そん中に於いてですね、様々な疑問があるということは承知をしておりますが、先程申し上げた理由でですね、私から1年程度を軸として検討して貰えないかということを申し上げたところでございます」

 石橋通宏「来年の秋ではダメなんでしょうか」

 安倍晋三「1年程度を軸としてということを私が申し上げ、そしてバッハ会長からは、遅くともですね、夏までにとというお話があり、最終的にですね、遅くとも夏までにということで合意がなされたところでございます」

 石橋通宏「ちょっと根拠が分からないんですが、真夏で昨年も大問題になったマラソンの札幌開催等も決めたわけです。真夏にやるんですか」

 安倍晋三「それはですね、また今IOCに於いてですね、具体的な時期については議論がなされていくものと承知をしておりますが、IOC組織委員会に於いてですね、最終的な調整がなされていくものと考えております」

 石橋通宏「バッハ会長は夏に限定していない、2021年なら、全ての選択肢がテーブルにあると発言されていますが、その通りでよろしいですか」

 安倍晋三「バッハ会長、今申し上げましたように遅くとも2021年の夏までに大会を開催するということで合意をしたところであります。具体的な開催時期については今後IOC大会組織委員会、東京都の間で検討し、決定されることになるわけでございますが、なおバッハ会長は遅くとも2021年の夏までにとの内容として2021年の夏季の前、または夏季と発言したと承知をしております」

 石橋通宏「確認ですが、先程世界のアスリートをという話もありましたが、専門家、有識者のご判断、ご助言は頂いたのでしょうか」

 安倍晋三「いわば専門家と言う方々の助言は頂いていないところございますが、これはある程度、この判断を、政治的に判断をしなければいけないわけであります。それぞれですね、それぞれ、いわば1年、2年、あるいは半年に於いて、それぞれのご意見があるわけでございますが、どっかで判断をしなければいけないと考えたところでございます」

 石橋通宏「しかしIOCのバッハ会長もWHOの判断を云々と仰ってましたよね。IOCはWHOと相談されたのでしょうか」

 安倍晋三「いわばIOCがWHOとですね、相談しているかどうかということについてはIOCがWHOと連携をしながらというふうにおっしゃっているというふうに承知をしているところでございます。いわば私の提案を、の上にですね、バッハ会長は遅くても来年の夏までにという判断をされた、ということではないかと思います」

 石橋通宏「よく分かりませんが、今日、脇田専門家会議座長、(国立感染症)研究所所長に来て頂いております。ありがとうございます、お忙しい中。

 今世界的な広がりが拡大しています。途上国も含めて、欧米がかなり広がっていますが、南アフリカ等でも広がりを見せているということで大変懸念されますが、現在は欧米を中心とした世界的な広がりの状況をどう見ておられるのか、教えてください」

 脇田隆字「新型コロナウイルス感染症につきましては昨年度末から中国湖北省、武漢市から流行が始まり、中国では流行が終息しつつあるもののの、現在で欧米を中心とした世界的な流行となり、3月26日時点で世界全体の感染者数は41万4279名。死亡者数は1万8440名となってございます。今のところ世界的な流行の終息はなかなか予測は難しいという状況でございます。

 石橋通宏「現時点で予測は難しい。過去の大きな世界的な感染症と比較をして今後の展開の予測、終息までの予測、どんな状況なんでしょうか」

 脇田隆字「今ご質問の過去に流行した主な感染症との比較でございます。あのサーズにつきましては感染者数が8096名、死亡者数774名、マーズにつきましては感染者数が2494名、死亡者数が858名となっております。で、サーズ、マーズにつきましては日本の感染者はございませんでした。

 で、サーズはですね、平成14年11月に初めて確認をされまして、終息宣言まで8か月がかかっております。それから新型インフルエンザにつきましては平成21年4月に初めて確認をされ、終息宣言まで1年4ヶ月を要していますで、マーズついては未だに中東地域に於いて流行が継続していると言うことを承知しております。

 終息までの期間ということでございますけども、現在の感染状況を踏まえますと、我が国に於いても流行の終息等の見通しについて考える段階にはまだないというふうに考えております。

 一方で武漢に於ける強力な外出禁止、あるいは交通遮断による都市封鎖による流行の封じ込め、及びこれまでの日本の流行状況などの解析から。この新型コロナウイルス感染症に対する有効な対策も徐々に明らかになってきております。今ではお願いしてますとおり、密閉・密集・密接な場所を徹底的に避けるということによりクラスターの発生を予防して、また、現在国内の複数地域で発生しているクラスターを早期発見をして早期対応する。そしてクラスターの連鎖による感染拡大を防止することをやります。

 また大規模イベントを自粛して頂くことによりましてメガクラスターの発生を回避すること、さらに医療体制の強化によりまして、患者の重症化予防に取り組んでいくということがこの感染対策と非常に重要だと思っております」

 石橋通宏「重ねてお聞きしますが、心配なのは途上国です。これから広がりがある。医療体制、先程言われたような体制が取れない。そういったところにこれからさらに感染が拡大していく。過去の感染症と比較しても、1年、2年の話ではない懸念、あるんじゃないでしょうか」

 脇田隆字「只今の委員のご質問でございますけども、途上国の感染状況の把握というのは、これ、さらに検査の状況等がなかなか報告もされないという難しい状況になっておりますので、今後の見通しについてもなかなか難しいと考えおります」

 石橋通宏「総理、聞いておられたと思います。分からないんです。1年なのか、2年なのか。とりわけこれから途上国、南米、そして南アフリカ含めて広がっていたときに来年になるか分からない。終息するか分からない。その状況で本当に来年の夏って断言できるんでしょうか。

 橋本大臣。アスリートの皆さんのことを第一に考えたときに途上国でこれから本当にいつ終息できるか分からない。それからアスリートの皆さんがもう一度、準備をされる。そういったときに本当に世界の全てのアスリートの皆さんのことを考えたときに1年以内にできるんでしょうか。ご意見をお願いできないでしょうか」

 橋本聖子「アスリートからの観点ということでお聞きを頂いたというふうに思いますけれども、4年に一度のこの大会に向けて万全を期して4年サイクルで準備をしているというのがアスリートであります。ただ、今回のこの世界的にコロナウイルスが拡大しているという状況を踏まえて先週アスリートからも、大変な懸念が示されていたところでありまして、先ずは1年程度の延期というふうにに決定をしたことによって各国アスリートから1年程度という延期が示されたけれども、そのことに於いて先ずは示されたことに、あの、アスリートたちは世界各国から称賛の声が上がっておりました。その中でアスリートたちが、今後どのように準備をしていくかというふうに考えたときには終息から次へのアプローチと言いますか、準備期間というものを十分に取っていきたいというふうに考えるのは、当然だというふうに思っております。

 ただ、1年以上ということになりますと、やはり総理のお話がありましたとおり、もはや2022年、20年の大会から1年が限界であって、その以上のということになりますと、当然別のものとして、あるいは選考委員会ですとか、そういったことも遣り直さなければいけないというような新たな問題が生じていくということになりますと、IOCが決定をした、先ずは1年程度の延長・延期というのがアスリートたちが望ましいというふうに現段階では考えていることだと思います」、

 石橋通宏「先程来の話でとりわけ途上国、これから感染が広がっている国々のアスリートの皆さん、どういう対応できるのか、そのことを考えれば、いや、十分な体制を取って、十分な万全の体制をアスリートの、世界のですよ、世界の、そうすれば、そのことを本当に考えれば、1年以内にできるのかと言われれば、先程脇田座長にも言って頂きました、『分からい』。だから来年の秋、2年という選択肢も、本来であれば、しっかり専門家のご意見を聞いて、議論すべきでは、なかったのか、いうふうに強く思います。

 是非、世界のアスリートのためと言われれるのであれば、総理、そのことも含めて、ちゃんとした議論をして頂きたい。そのことは改めて追及していきたいと思います」

 石橋通宏は安倍晋三に延期期間を「1年程度」とした根拠を尋ねたが、安倍晋三はIOC会長のトーマス・バッハとの電話会談後の囲み会見とほぼ同じ内容を述べたのみである。いわば世界のアスリートのコンディショニング(スポーツパフォーマンスを最大限に高めるために、筋力やパワーを向上させつつ、柔軟性、全身持久力など競技パフォーマンスに関連するすべての要素をトレーニングし、身体的な準備を整えること)の問題、そして現在の感染状況から見て、早期の開催(=年内の開催)は困難であることを根拠にした「1年程度」であり、新型コロナウイルスの世界的な感染状況が終息か、終息に近い状況となることを見通して根拠づけた「1年程度」ではないことを結果的に明らかにしている。

 しかもこの「1年程度」は専門家の助言に基づいた延期幅というわけではなかった。

 石橋通宏「確認ですが、先程世界のアスリートをという話もありましたが、専門家、有識者のご判断、ご助言は頂いたのでしょうか」

 安倍晋三「いわば専門家と言う方々の助言は頂いていないところございますが、これはある程度、この判断を、政治的に判断をしなければいけないわけであります。それぞれですね、それぞれ、いわば1年、2年、あるいは半年に於いて、それぞれのご意見があるわけでございますが、どっかで判断をしなければいけないと考えたところでございます」

 新型コロナウイルスの世界的な感染状況の今後を専門家の助言に基づいた疫学的な見地から判断した上での「1年程度」ではなく、オリンピックの延期開催をいつにするかに関係した政治的判断のみで感染状況の今後を占うことも、処理することもできないことを棚に上げて、いわば世界的な感染状況から離れた政治的判断で「1年程度」とするに至ったと、安倍晋三は間接的に証言したことになる。

 要するに感染状況の今後の見通しとは無関係の政治的判断であることだけは分かった。当然、政府、あるいは安倍晋三個人の利害に関わる政治的判断ということになる。

 と言うことなら、「1年程度」の延期の根拠を「世界のアスリートの皆さんが、最高のコンディションでプレーでき、そして、観客の皆さんにとって、安全で安心な大会とするため」に置いていることも、「世界のアスリートが万全のコンディションでプレーを行い、そして観客にとって安全で安心な大会としていくため」としていることも、自分たちの利害を隠し、その利害を綺麗事とするためにアスリートや観客をあざとく利用していることになる。

 石橋通宏は新型コロナウイルスの世界的な感染状況との関係から延期幅を「1年程度」とすることが疫学的な知見に基づいて妥当かどうか、国立感染症研究所所長であり、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部新型コロナウイルス感染症対策専門家会議座長である脇田隆字の口を借りて証明しようと試みた。

 脇田隆字の答は過去に流行したサーズ、マーズ、新型インフルエンザ等の感染規模、感染期間、人体への感染の影響等で得た知見との比較で、「今のところ世界的な流行の終息はなかなか予測は難しいという状況でございます」、あるいは「終息までの期間ということでございますけども、現在の感染状況を踏まえますと、我が国に於いても流行の終息等の見通しについて考える段階にはまだないというふうに考えております」であった。

 脇田隆字のこの答からも、延期の「1年程度」が感染状況の今後の見通しとは無関係の政治的判断であることが分かる。

 確かに2年延期とか、中止とかは2020年の7、8月を目標にトレーニングを積んでいたアスリートに新たな困難をもたらす。年齢的な困難さに直面するアスリートもいるだろうし、年齢的な困難さは体力的な困難さとなって振り掛かってくる。それらの困難さを排除できたとしても、若手の台頭によって活躍の勢力図が変わってしまうということもあり得る。

 但しこれらの困難さを全て回避できたとしても、新型コロナウイルスの世界的な感染が終息か、終息に近い状況を迎えなければ、開催そのものが困難となる。そしてこのことを考慮に入れない、政府の利害からの「1年程度」という政治的判断だとしたら、コロナウイルスの世界的な感染によって急失速している経済をオリンピック景気でV字回復させることを狙ったのか、安倍晋三個人の利害からの政治的判断だとしたら、田島麻衣子が3月25日の参院予算委員会で五輪相の橋本聖子を追及したように時期的に見ても、いくら本人が否定しても、「来年9月にある自民党総裁の任期に合わせた」個人の利害に基づいた政治的判断から外すことはできない。

 安倍晋三は2020年3月28日の夕方6時から首相官邸で新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた政府の取り組みを説明する記者会見を開いている。

 「記者会見」

 NHK松本記者「東京オリンピック・パラリンピックの開催が1年程度、延期になったということですが、開催には新型コロナウイルスの感染終息が前提となると思います。

 先ほど総理は長期戦への覚悟を語っていらっしゃいましたけれども、長い闘いでも、やはり出口が必要だと思います。その出口となる終息の見通しあるいは目標、これを示すべきだと考えますけれども、いかがお考えでしょうか。

 また、その延期によって、政治スケジュールのほうが流動化したという指摘もあります。来年秋には総理の自民党総裁としての任期、また衆議院議員の任期も満了します。衆議院解散の判断は、オリンピックと同様、感染の終息が前提となるのか。また、その終息した場合に、年内にも行い得るのか、お考えをお聞かせください」

 安倍晋三「まず、オリンピックを遅くとも来年の夏までに開催するということで、バッハ会長と合意をしました。おおむね1年間、延期をしていくということなのですが、この判断、決断については、先般、G20においても、共同声明において、この決断を称賛すると強い支持が表明されたところでありますが、一方、ではいつこのコロナとの闘いが終わるのか、終息するのか。今、答えられる、現時点で答えられる世界の首脳は一人もいないのだろうと。私もそうです。答えることは残念ながらできません。

 と同時に、オリンピックを開催するためには、日本だけがそういう状況になっていればいいということではなくて、正に世界がそういう状況になっていかなければならないわけであります。

 そこで、先般のG7やG20でも強く主張したところでありますが、まずは治療薬とワクチンの開発に全力を挙げるべきだ。先ほど申し上げました、今、治療薬については、日本は相当、今、進んでいる。治験等に向けて進んでいると思います。同時に、またワクチンについても、CEPI(感染症流行対策イノベーション連合)やGavi(Gaviワクチンアライアンス)を通じて、国際社会とともにワクチンの開発を急いでいます。そういうものが出てくることによって、ある程度、終息に向かってめどをただしていきたいと、こう思っているところであります。

 そして、その後のスケジュールについてお話がございました。確かに来年、自民党の総裁としての私の任期も来ますし、衆議院の任期等が来ますが、今は我々はそういうことを一切、頭の中には置かず、頭から外して、この感染症との闘いに集中したいと思っています」

 NHKの松本記者は「開催には新型コロナウイルスの感染終息が前提となる」と言い、「出口となる終息の見通しあるいは目標、これを示すべきだと考えますけれども」と要請した。

 対して安倍晋三は「いつこのコロナとの闘いが終わるのか、終息するのか。今、答えられる、現時点で答えられる世界の首脳は一人もいないのだろうと。私もそうです。答えることは残念ながらできません」との物言いでいつ終息するのか見通すことはできないと答弁しながら、「オリンピックを開催するためには、日本だけがそういう状況になっていればいいということではなくて、正に世界がそういう状況になっていかなければならないわけであります」と、日本だけではない、世界的な感染の終息を開催の条件としている。

 つまり安倍晋三は開催の条件を世界的な終息だとしながら、自身を含めて世界の首脳はコロナウイルスの世界的な感染がいつ終息するかは誰も見通せていないと悲観論を展開、いわば開催の条件をクリアするのはいつの頃か不明であるとしながら、早々に「1年程度」の延期で開催を決める政治的判断を行った。

 矛盾しているということだけではない。ここには矛盾を矛盾でないとする強引さしか見えてこない。この強引さはかなりの強度なもので、何しろいつ終息するか見通すことができなのに「1年程度」の延期ということで開催を決めたのだから、「1年程度」という政治的判断がオリンピック景気を狙った政府の利害よりも、自民党総裁の任期内に合わせた安倍晋三個人の利害に基づいた自己都合の政治的判断の開催であることの方が濃厚となる。

 少なくとも新型コロナウイルスの世界的な感染の終息か、終息に近い状況を見通した延期期間でない以上、アスリートの最高のパフォーマンスを望み、そのパフォーマンスに観客が歓迎することに根拠を置いた「1年程度」ではないことだけは断言できる。

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