「文春オンライン」が2021年2月3日付で、〈総務省の幹部らが、同省が許認可に関わる衛星放送関連会社に勤める菅義偉首相の長男から、国家公務員倫理法に抵触する違法な接待を繰り返し受けていた疑いがあることが「週刊文春」の取材で分かった。〉と報じた。翌日衆院予算委で立憲民主党の黒岩宇洋(たかひろ)がこの接待疑惑を取り上げ、菅義偉を追及した。
2021年2月4日衆院予算委員会 要所要所に青文字で大したこともない解説を入れていくことにする。 黒岩宇洋は質問冒頭、「総理は先日緊急事態宣言の延長を決定した。国民にはさらなる自粛を、行動の制約をお願いした。その中でコロナを克服するためには政府に求められるのは国民からの信頼だと思う。この一年以上、安倍政権、菅政権に於いて不祥事が重なり国民からの信頼を損ねている。一昨年の菅原経産大臣、公職選挙法の疑いがあるということで大臣を辞職した。 次に河井克行法務大臣、公職選挙法で起訴され、裁判中です。妻の河合案里参議院議員も巻き込んで、前代未聞の大掛かりな選挙買収という状況になった。そのあとは桜を見る会、これは1年を経って、昨年秋からこの問題を巡って前総理の公設秘書が政治資金規正法違反で起訴、有罪になった。安倍前総理自らも退陣して3ヶ月で検察から事情聴取を受けた。正直、国民からも失望の声が上がった。 これも昨年になるけども、IR汚職、秋元元内閣府副大臣が逮捕、起訴された。昨年夏には鶏卵事業者の問題で吉川元農水大臣がこれも起訴された。年明けになって、直近では与党の複数の議員が銀座でハシゴ酒。本当に国民の信頼をどんどん失墜させている云々と菅義偉たちにとっては痛くも痒くも感じないことを長々と前置きしてから、目的の質問に入る。 黒岩宇洋「今日お聞きするのは私は本当に恐縮で残念なんですけども、総理ご自身のご長男、放送事業会社に勤めているということが報道されていますが、本来原則では接待することが禁止されている、そんな所管官庁である総務省に対して総理のご長男が接待したという、こういう疑惑が出てきました。 私は総理に誠意を持ってこの事案についての説明をお願いしたいと思います。これ、総理の著書、敢えてコピーを持ってきましたが、ここに書いてある、『国民の「当たり前」私が実現する』、今日、総理、あくまでも『国民の「当たり前」というモノサシでですね、自己不信(?)や官僚の答弁のようではなく、きっちりと国民に向けて説明して頂きたいとおもいます。 先ず総理、今日発売された、総理のご長男の事案となっている週刊誌、お読みになられましたか」 菅義偉「全体像は掌握しています」 「全体像の掌握」ということなら、週刊誌は菅長男接待疑惑を報じているのだから、長男が不法な接待主側に立たされていることは承知していることになる。 黒岩宇洋「お読みになられたのか、巻頭のグラビア写真等はお読みになられたのか、簡単にお答え願います」 菅義偉「それは見ていません」 黒岩宇洋「モノクロの巻頭カラー(?)で、トップ。そこでですね、目を目隠ししていますけど、総務省の高級官僚に、今日ですね、週刊誌を資料として出したいと言ったのですけども、理事会で拒否されたんで、残念ながら、うん。 で、口頭で説明するご無礼を国民の皆様にはご容赦頂きたいと思います。黒目隠しが入って、長髪の方で、タクシーチケットを総務省官僚に渡していると思しきこの方はどなたですか」 菅義偉「それは分かりません」 黒岩、自席から「えっ」と声を上げる。 黒岩宇洋「今、総理、週刊誌のグラビア写真もご覧になったと仰いましたよね。これ、総理のご長男、指摘されている方ですよ。それはご長男だったのか、そうではなかったのかお答えください」 菅義偉は「全体像は掌握しています」と言ったのであって、巻頭のグラビア写真等は「見ていません」と答えている。「ご長男が接待疑惑をかけられていることは承知しているんですね」という場所から追及を進めていくべきを回り道ばかりしている。 菅義偉「正直言って、そうかどうかは分かりません」 黒岩宇洋「総理、国民の当たり前でいきましょうよ。自分の息子が、しかもかくかくしかじかときっちりと背景を説明されて、写っている写真。だったら、その方が自分のご子息かどうか、ご子息に確認されたんですか」 菅義偉「確認はしていません」 黒岩宇洋は菅義偉が「どう全体像を掌握しているのか」と問うべきだったろう。否でも週刊誌が菅長男を接待疑惑の主役と目していることに触れざるを得ない。 黒岩宇洋「報道によりますと、我々の驚くべき事実が書かれているんですよ。昨年の10月7日、そして12月の8日、10日、14日と立て続けに霞が関総務省のナンバーツー以下、ちゃんと幹部官僚が接待を受けていた。 では、ここで報道されている12月14日、これは総理がステーキ会食をして猛省をされた日です。けども、これ昨日事前通告して、ちゃんと事実確認してくださいと総理にお願いしたんです。総理のご子息は高級官僚と何をされていましたか」 菅義偉「先ずですね、関わった者が誰であったか、国民の皆様から疑念を抱かせることがないように総務省がしっかりと事実関係を確認した上で、ルールに則って対応して欲しいというふうに思っています。先ずお尋ねが私の親族であるとは言え、公的立場ではない一民間人に関するものであります。本人や家族の名誉、プライバシーに関わることであり、本来このようなことでお答えすべきことでは私はないと思います。 ただ週刊誌に民間会社に報道にあるように勤めていることは事実であります」 あくまでも把握している「全体像」には触れないようにしている。下手に触れたなら、自身と関連付けられることを恐れている可能性はある。 総理大臣ともなると、その権威は周囲の人間までが身に帯びることもある。例えば首相の国会議員初当選時代からの長年の政策秘書ともなると、その地位にあるというだけで地元の市長や県知事よりも権勢を振るう者が出てくる場合もあるし、首相との関係を利用して、その権威を自己評価を高める道具に代えて、自分を売り出す者も出てくる。勿論、好むと好まざるとに関わらず、親族は首相の権威を身に纏うことになって、首相の身内の誰々さんだと手厚いもてなしを受けたり、畏れ多い扱いを受けたりする。特に権威主義を行動様式・存在様式としがちな日本人は何かと上の権威に対して自分の方から勝手に有り難ったり、畏れたりする傾向に囚われがちとなる。こういった上の地位の人間を畏れ多い存在だと見る上下関係が往々にして忖度という一方的な義務行為を生じさせることになる。 いくら菅義偉が長男は「公的立場ではない一民間人」だと言っても、長男を相手にする総務省の役人たちが長男の背後に菅義偉の存在を全然見ないという保証はない。もし長男と菅義偉を切り離すことができなかった場合は忖度という心理的作用が働く余地を自ずと抱えることになる。2月4日にマスコミが長男接待疑惑を報じた次の日の2月5日にTwitterに次のような投稿をした。 〈安倍昭恵の友人たちに対する「私の肩書を自由に使って」云々は安倍晋三の虎の威を借りた首相夫人としての肩書が持つ権威が周囲を従える効き目があることを知っていたから。菅義偉の息子が別人格であっても、父親の持つ権威が息子自身を優越的立場に置くベースとなっていなかったかどうかが問題。〉 黒岩宇洋「ちょっと総理、勘違いされていると思いますね。何か自分の身内だから公私混同、公の立場ではなく、私人のことって言うんですが、この疑念・疑惑は私人にかけられたものではなくて、菅政権そのものにかけられた疑念・疑惑なんですよね。これを払拭するためにその事実関係を知り得る方が身近にいらっしゃったら、その方に総理としてお聞きすることがある意味当然なことじゃないんですかという趣旨で質問しているんです。 12月14日、これは報道によりますが、総理のご長男は高級寿司店で会食されていたということでございます。父親は高級ステーキ店で会食をした。ご子息は高級寿司店で会食をした。こうしたことが事実だかどうか、本来、確認したいと思いませんか、総理。例えば事実でないんなら、ご子息に確認して、総理は昨日から、もっと言えば、おとといからネット報道されてから、ご子息と直接、ないしは電話で話をされていますか」 「菅政権そのものにかけられた疑念・疑惑」だとしているなら、菅長男を介して総理である菅義偉個人に対する忖度が総務省官僚をして衝き動かすことになった菅長男に対する接待を伴った何らかの利益供与の形で現れた「疑念・疑惑」とは見ていないことになる。但し安倍政権の間に政治の疑惑や不祥事に対して役人側が協力して文書を改竄したり、破棄したりしたように総務省の接待疑惑が菅政権に波及しないように口裏を合わせて疑惑自体を隠そうとしていると見ているなら、その疑いを口に出さなければ、「菅政権そのものにかけられた疑念・疑惑」だと根拠づけることはできないし、口で言っているだけと受け取られることになる。 菅義偉「電話では確認をしました」 黒岩宇洋が少し前に「写っている写真。その方が自分のご子息かどうか、ご子息に確認されたんですか」と質問したき、菅義偉は「確認はしていません」と答えている。要するに目のところに黒のモザイクが入った写真の主については確認しなかったが、週刊誌が報じている接待疑惑につては自身の長男が標的にされていることを知って、「電話では確認をしました」ということになる。となると、やはりどの程度に「全体像」を把握しているのかを、菅義偉自身の神経を逆撫でしてイライラとさせるためにも聞くべきだったろう。 黒岩宇洋「では、その接待は事実かどうか、これについてご子息からお聞きになったことをお伝え下さい」 菅義偉「接待と言うよりも、私は調査が入ったら、事実関係に対してそこは協力するようにということは申し上げました」 あくまでも掌握しているという「全体像」に於ける細部には触れないようにしている。不法接待を議題に長男を語ることも、語ることによって自身と関連付けられることも避ける自己防衛意識が働いているからだろう。 身近な周囲が疑惑を否定しても、その否定が事実かどうかの調査が入る。肯定すれば、なおさらのことに具体的な経緯を知るためと再発防止のために調査が入る。菅義偉の「調査が入ったら」は調査を覚悟している言葉となるが、疑惑の否定を成功させるためには総務省の役人との口裏合わせという連携プレーが必要になる。この場合、長男の背後にいる菅義偉に対する忖度が連携プレーを確かなものとするかどうかの鍵を握ることになる。 黒岩宇洋「私はね、ちょっとこれも常識とは残念ながら、かけ離れているのではないのかと。一般の親子、まさに国民の当たり前から言えばですね、息子さん、こんだけ報道されて、公知の事実としてこういった疑惑を持たれたときにそれはやっぱり詳らかに話を聞いて、そして今度は総理として今度はしっかりと国民に伝える。 これは国民の当たり前だと思うんです。その上でですね、総理が、私が冒頭申し上げたとおり、こういった疑念、それについて事案に私は誠実に丁寧に答えているとはなかなか思えない。 この点についてさらに何点か話を進めてお聞きしたいと思います。今日ですね、接待を受けたとされる4人の官僚のうち、残念ながら総務省の審議官のお二人は出席を拒否されました。今日いらっしゃっている秋本芳徳総務省情報流通行政局長、いらっしゃっていますか。 じゃあ、局長、お聞きします。(2020年)12月10日、六本木の小料理屋で総理のご子息から接待を受けたのはこれは事実ですか」 秋本芳徳「お答えいたします。会食をさせて頂いたことは事実でございます」 黒岩宇洋「会費はご自身で支払われましたか」 秋本芳徳「お答えいたします。当初出席者の中に利害関係者がいないと認識しておりましたため、自己分の負担を行っていませんでした。事後に取材を受ける過程で出席者の中に東北新社の社員であると共に利害関係者であると思われる子会社の社長等を兼ねている方がいることが判明いたしましたため先ず確認できる範囲での返金を行っています」 「当初出席者の中に利害関係者がいないと認識しておりました」。つまり2020年12月10日の面会の時点では初対面だったことになる。でなければ、事後の取材で「利害関係者であると思われる」人物の存在を知ることにはならない。 但し初対面の場合であっても、高級官僚が外部の人間と会合を持つ場合、会合の約束を取り付ける段階で相手がどこの誰と分かっているはずだし、顔を初めて合わせた段階で双方共に名刺を出しながら、自己紹介し合うごくごく一般的な儀礼をこなすものだが、誰と合うのかも分からずに待ち合わせ場所にのこのことでかけたことになるし、自己紹介も名刺交換もせずに飲食の伴う会合をこなしたことを意味することになる。 つまり少なくとも役人側は相手の氏素性を知らないままに一定時間の会合を持ったことになる。一杯屋でカウターに隣り合った者同士がお互いに相手の素性を知らないままに酒を酌み交わし、お喋りにいっときの時間を費やすということはあり得るが、ここで取り上げられている飲食に関しては秋本芳徳がウソをついていることによってのみ、こういった場面が成り立つ。当然、「当初出席者の中に」云々は出てこない。 さらに秋本芳徳は「事後に取材を受ける過程で出席者の中に東北新社の社員であると共に利害関係者であると思われる子会社の社長等を兼ねている方がいることが判明いたしました」と言っているが、黒岩はここで「どういった利害関係に当たるのか」と聞かなければならなかった。「利害関係者であると思われる子会社の」云々では秋本芳徳自身はこの期に及んでも利害関係者かどうかははっきりとは把握していないことになるからである。 黒岩宇洋「簡略化して再度お答えください。要はその日は自分では一切お金を払わずにご馳走になったということでよろしいですね」 秋本芳徳「事後的に額、確認できる範囲での額を確認致しまして、振り込みをさせて頂きました次第であります」 黒岩宇洋「その日は払っていないわけですから、ご長男からご馳走になったということでよろしいですね」 相手の戦法は「当初出席者の中に利害関係者がいないと認識」していたためにご馳走になったが、後で分かったから、返金した。何も問題はないと無実を主張するもの。ご長男と審議官が最初から利害関係にあることを相互に知っていたという両者の関係を確定しなければ、黒岩宇洋の追及は空回りすることになる。当然、利害関係者がいるとは知らなかったとする言葉のカラクリを見破らないことには事は始まらないことになる。 加計学園獣医学部新設に向けた安倍晋三の便宜供与疑惑が生じたとき、2015年4月2日に首相秘書官の柳瀬唯夫が首相官邸で愛媛県と今治市の職員と面会したかどうかが疑惑解明のカギと目されたものの、2018年5月10日午前中の衆院予算委員会に参考人招致された柳瀬唯夫は面会者が大勢いて、中に県市職員が混じっていたのに気づかなかった、名刺交換しなかったのかと問われて、保存してある中には加計学園関係者以外の名刺はなかったからと暗に名刺交換はしなかったかのように答弁させただけで追及を見事免れさせてしまった失敗を野党は教訓にしていないらしい。 秋本芳徳「確認できる範囲で返金を行わせて頂いた次第でございます」 黒岩宇洋「えー、タクシーチケットは先方から貰ったのか、お土産もタダで貰ったのか、事実をお答えください」 秋本芳徳「飲食代やタクシー代も当初はご負担を頂きました。事後的に返金をさせて頂きました」 黒岩宇洋「総理、人から食事や飲食をご馳走になって、お土産までタダで貰って、タクシーチケットまで出して貰う。これ、我々は接待と言うんですが、総理、如何ですか」 総務省役人に対して接待主が当初から利害関係者であると承知していたという言質を取らない限り、「我々は接待と言うんです」は蚊に刺された程度の打撃しか与えない。 菅義偉「私自身、全く承知しておりません。それが息子であれ、誰であれ、それに関連してご指摘のような不適切なことがあったかどうかについてはしっかりと関係者の中で対応して貰いたいというふうに思います」 菅義偉にとって長男の対総務省官僚接待疑惑がどのような形であれ、自身と関連付けられることは認めるはずはない。となると、やはり把握しているという「全体像」がどの程度に把握しているのか、どのような意味づけをしているのか、問わなければならないことになるが、黒岩宇洋は問わないままに遣り過している。 黒岩宇洋「会食、お金を返したと言いますが、これ一般的にですと、皆さん聞いてください。モノを盗りました、あとで返しました、無罪放免。そんな話が通るんだったら、刑法も何も要らなくなっちゃう。お返しになったと言いますが、局長、いくら返したんですか」 秋本芳徳「お答え致します。具体的な返額の妥当性も含めて、現在、調査を受けている最中でございまして、この場でのお答えを差し控えさせて頂きたいと思っています」 黒岩宇洋「返したからいいでしょうと言っても、いくら返したのか、それも言えないと。これ、この接待の疑惑に対して何をどう説明しようとしているのか。 じゃあ、これ、局長にお聞きしますけども、この一緒に会食をした総理のご長男はこれは総務省にとっての利害関係者ですか」 秋本芳徳「お答え致します。今ご指摘の点も含めて、今後(国家)公務員倫理審査会(人事院設置)等に於いて調査が進められると承知をしておりまして、この場でのお答えは差し控えさせて頂きたいと思っております」 秋本芳徳が「当初出席者の中に利害関係者がいないと認識しておりました」と答弁したときに素早く食いついて、「事後に取材を受ける過程で出席者の中に東北新社の社員であると共に利害関係者であると思われる子会社の社長等を兼ねている方がいることが判明いたしました」と既に答弁していることを根拠に利害関係者であることを既成事実に持っていかなければならなかったはずだが、その機を逸した以上、この発言を再度持ち出して、「お答えは差し控えさせて頂きたい」を無効にすべきだったが、その機会さえ逃してしまった。 黒岩宇洋「局長ね、おととい2月2日ですよ。局長は12月10日飲食したんだけれども、これは利害関係者と割り勘で飲んだときにのみに提出する1万円以上、会費がかかった届け出を事務次官宛に出しているじゃないですか。 これ、利害関係者と飲んだときだけ出す届けですよ。何で出したんですか] 「国家公務員倫理教本」(国家公務員倫理審査会) 1万円を超える飲食の届出(倫理規程第8条) 自分で費用を負担するなど、利害関係者の費用負担によらずに利害関係者と共に飲食をする場合において、自分の飲食に要する費用が1 万円を超える場合は倫理監督官へ事前に届け出なければなりません。 ただし、やむを得ない事情により、事前に届出ができなかった場合は、事後速やかに届出を行わなければなりません。 なお、届け出る内容は、各府省等の倫理監督官が定めています。 秋本芳徳「お答え致します。先ず基幹放送事業者として認定を受けております放送事業者につきましては利害関係者に該当を致します。会食相手の一部の方は役員を兼務していおられましたことから、外形上、利害関係者に該当する疑いがあると考えまして、事後的な報告を行わせて頂きました。 但し利害関係者に該当するか否かにつきましては個別の判断を要するということで今後、総務省の大臣官房、そして人事院、公務員倫理審査会による事実確認が行われると認識おりまして、私はその調査を受ける立場(うまく誤魔化していると思ったのか、フッと笑う)でございます。その調査に真摯に対応してまいりたいと思います」 あくまでも「当初出席者の中に利害関係者がいないと認識しておりました」の既成事実化を目論んでいる。黒岩宇洋はこの既成事実化を如何に破るかに追及の成否がかかることになる。 黒岩宇洋「どうも私、事前の説明を聞くと、要は東北新社は直接、放送事業の許認可権は(利害関係者に)該当しないと。その子会社、これは総理のご長男が取締役をしている。これは登記簿にも載っておりますけども、ここは利害関係者だと。 要は東北新社、親会社だったら、利害関係者ではないですよという説明のようなんです。ここで人事院、事務局長、人事審査会の事務局長に来て頂いていますが、これね、利害関係者とは何ですかと、これは倫理規定に定義はしっかりとされています」 ここで黒岩は「国家公務員倫理規程」を持ち出して、2条に1号から8号まであるの、1号の1から5まではどうのと関係もしない講釈を垂れるムダを費やしから、目的としていた6を持ち出して、必要とする質問を行う。取り上げて、書き記す価値もないから、省くことにした。 黒岩宇洋「そこで確認しますけども、この所管する業界というのはこれは役所用語で言うところの所掌する業界という理解でよろしいでしょうか」 荒井仁志(国家公務員倫理審査会事務局長)「お答え致します。倫理規定2条1項6号に於ける各省が所管をする事務のうち、事業の発達・改善・調整に関する事務に関してその相手方となる事業者を利害関係人とするでございます。いわゆる省庁が所管する事業に於いて事業を行う企業といったものとなります」 要するに黒岩は「省庁に於ける利害関係者とはどのような定義となっているのか」ということと、特定の業者に限定した場合の東北新社、あるいはその子会社は総務省にとって利害関係者に当たるのかどうかを聞くだけで済んだ。 黒岩宇洋「ちょっとペーパー読まれたんでね、私、事前に人事院に確認して、所管と所掌と一緒かと。一緒だと、要は所管とは簡単に言ったもので、本来は所掌と。そうすると、総務省の設置法、これ第4条、所掌事務というのは96項まであるんですよ。総務省の所掌事務第4条の60号にですね、『電気通信業及び放送業の発達、改善及び調整に関すること』 許認可とか免許とか何も書いていない。『放送業の発達、改善及び調整に関すること』。これは所掌ですよ。所管です。業界って、こんなに広いんです。で、今申し上げた東北新社の定款を取り寄せると、この定款、総則ですね、第2条、これ目的です。第9項にもっと細かく書いてある。放送法に基づき基幹放送事業及び一般放送事業と。 これをやるんだと。こうなると、明らかに総務省の所管は放送業であって、この東北新社は放送業を営んていると。これは間違いなく政治倫理規定が指名している、これは利害関係者です。利害関係者から接待を受けるのはこれは政治(倫理)規定違反、アウトなんです。懲戒対象、国家公務員法倫理規定法違反です。 総理ね、総理聞きますけども、総理も総務大臣をやっているわけですから、この放送業のエキスパートですよ。この業界の人だったら、東北新社というだけで、当然ね、もうCSチャンネルやっていると。そういう業者だって、もうこれ、ある意味、常識じゃないですか。如何ですか」 「Wikipedia」によると、黒岩宇洋は中退しているものの東大に入っている。頭がいいと、回りくどい質問をしなければ気が済まないらしい。 菅義偉「それは分かりません」 黒岩宇洋「今日、時間ないんで、あれですけど、そもそもね、総理は総務大臣のときに息子さんを20代半ばに総務大臣秘書官に採用しましたね。任命しましたね。その事実関係をお答えください」 菅義義偉「任命をしました」 黒岩宇洋「総理ね。総理はここのところ世襲批判をしていますけども、世襲でも選挙を通らなければ、バッジは付けられないですよ。だけども、総務大臣秘書官というのは任命したら、すぐそのまま25歳でも政務秘書官ですからね、私は世襲より遥かに甘いことをやっている。どうも総理は言っていることとやっていることと真逆のような気がする。 国民に対してもこんなに厳しいことを言いながら、今日聞いていても、自分の親族や家族や、そしていま一番近いと言われている総務省を庇っているとしか思えない。どうも言っていることとやっていることに逆だ。 で、今申し上げたとおり、総理のご子息は総務大臣政務秘書官という総務省の重責のポストを経てから、この東北新社に行ったわけですから、これは当然、総理だって東北新社のことは息子を含めて、企業ですから、これが分からなかったというのは国民の当たり前とかけ離れていると言わざるを得ないでしょう。 この倫理規定違反、今後も詰めていきますけども、そこで総理、やっぱり国民にとって非常に不思議な話。総務省のナンバーツーって言ったら、なかなか会うことができない、一般の国民は、我々国会議員だって本当に相手が忙しければ、局長クラスでも30分で退席ですよ、それが年末に1週間で3回、10月にはナンバーツーの総務省審議官が2時間45分も会食している。 何でこの人達はこんなに総理のご子息とここまで会食したのか。思い当たる理由、目的をお答えください」 菅義偉「先ずですね、秘書官にすることにどうしてここはルールの元に秘書官にしてるんです。世襲制限というのは私は言い続けてきました。息子3人いますけども、政治家には誰もしません。これは了解をしています。それと今40代ぐらいですよ。私は殆ど会っていないですよ。それは私は全く承知していませんが、それが息子であれ、誰であれ、それがご指摘なようなことがあったら、あったかどうかというのはやはりしっかり調査して貰う必要があるだろうというふうに思います。 いずれにしろ、私自身は自分の政治信条として世襲制限するということはずっと言い続けてきましたから、そこはやり遂げますし、秘書官やったのは10年以上前のことですよ。東北新社の社長というのは私も秋田の同じ出身ですから、先輩で、もうお亡くなりになりましたけども、そういう色んなご縁があって、応援して貰っていることは事実でございますけども、それと今の私の長男のことと決めつけるというのはそれはいくら何でもおかしいんじゃないですかね。 私、完全、別人格ですからね。そこは是非ご理解をして頂きたいと思います。私の長男にもやはり家族がいますし、プライバシーも、勿論、これもあると思いますよ。それを長男は長男で会社の一社員ですから、そういう中で言われているような不適切なことがあるかどうかについてこれから総務省の政治倫理ですか、審査会でそこはしっかりと対応して貰いたいと思います」 菅義偉は現在でも東北新社から「応援して貰っている」。つまり菅義偉と東北新社は深い関係にある。当然、総務省役人は菅義偉が持つ首相としての権威のいくらかを東北新社の子会社の社長をしている菅長男に纏わせて、菅義偉に対する忖度と同時に菅長男に対する忖度を併せ持つ可能性は生じる。と言うことは「別人格ですからね」だけでは済まない問題を抱えていることになる。 黒岩宇洋「今いみじくも東北新社の社長とのご縁まで仰った。それで先程東北新社は何をしている会社か知りませんと。これがね、国民の当たり前とはかけ離れていると言っているんですよ。 それでね、私は接待を受けた3人のこの今回のご長男と会食した目的っていうのを総務省から先程返ってきた先ずナンバーツーと言われる総務省審議官、これね、内外の通信事業の動向等に意見交換を行うため、まあ、ちょっと尤もらしいけれども、やっぱりさっき言ったように2時間40分ですよ。で、次に2番目、吉田審議官、ナンバースリーの方、親睦を図るため。今日来ている流通行政局長に至って、本人または親が東北出身者の懇親会。 こんなものにですよ、今申し上げた接待となったら、懲戒処分となる、自分の身の危険を侵してまで4回も、12月に週3回、しかもコロナ禍でこんなに自粛しているときに駆けつけるというのは一般感覚で言ったら、どうも、今、総理はサラリーマンみたいなことを仰ってますが、やっぱり総理大臣や総務大臣を経験している方の影響が大きいかもしれません。 こういう疑念を抱かれるから、今日、そういったことはないということをはっきりとみなさんに、これからもですけども、国民の皆さんにまでお伝え頂きたいと思います」 黒岩宇洋は「やっぱり総理大臣や総務大臣を経験している方の影響が大きいかもしれません」と口にした以上、総務省役人による菅義偉への忖度の力学が働いた菅長男からの接待受諾であり、総務省役人側からの忖度と接待の反対給付としての菅長男に対する放送事業に関わる何らかの便宜供与ではないのかとはっきりとした形の疑惑へと持っていくべきだった。 菅義偉「いま私は東北新社のことはずっと知っておりますけども、先程の質問はみんなが知っているということじゃなかったですか。私は今ウソを言ったような言い方じゃないですか。 じゃあ、私自身もですよ、ご指摘のような不適切なことがあったら、それは長男から電話があったときにそれはそうした会社から色んなことを聞かれたら、そこは事実に基づいてしっかり対応するということは申し上げました。 そういう中で先程東北新社の内容について私は皆さんのことを聞かれたと思いましたよ。東北新社を知っていらっしゃる方は非常に少ないと思いますよ。何をやってらっしゃるか、そこは私が知らないって言ったわけじゃないですから、そこは違ったと思います」 黒岩宇洋「それは誤解です。私もしっかりと総理宛の質問、これは文、写してきています。この道のエキスパートですから、総理はご存知ですねと私は質問したつもりですし、私は行き違いの齟齬があったら、それは私としては遺憾だと思いますが、少なくとも総理とか私が言ってきた一般の人など(のことについては)、誰も聞いていないですよ。総務省で放送行政を担っている人なら、誰でも分かっているでしょうとそう言ったわけですよ。その人達が分かりませんでしたと(?)。 総理ね、今後利害関係者かどうかということも同僚議員が詰めていくと思いますが、先ずね、お話聞いて、局長仰った、こういった肩書、公務員ですよ、ホントにね、倫理規定というのは国民に不審や疑念をいだかれないということですごーく厳しくできている。そんな中で平気でこれ1万円以上ですよ、そんなおカネを払わずに飲み代、食べ物代、チケット代、タクシーチケット代、お土産、これご馳走されている。これ適切だと思いますか」 菅義偉「まあ、総務省に於いて既に調査開始ということでありますから、国民の皆さんから疑念を抱かれるようなことは絶対しないというルールに基づいてしっかりと対応する必要があるというふうに思います。 私自身は全く承知しておりませんので、今言われているような総務省に於いてご指摘の会社とどのようなことがあったのかですね、事実を確認をして、ルールに基づいて対応すべきだというふうに思います」 菅義偉はあくまでも一般論で片付けることを願い、菅長男と総務省役人との間の特定の問題だとすることを避ける巧妙な答弁で片付けようとしている。 黒岩宇洋「今の質疑をしていてもですね、本当に不可解な分からないことだらけだったと思います。そして残念ながら、総理ですね、国民の当たり前からかけ離れているんじゃないかというのが卒直な印象です。で、今後ですね、この話は総理が主導して速やかに事案解明して頂くことを強く要請して質問を終わらせて頂きます」 |
秋本芳徳は接待主に支払ってもらった飲食代等の返金額について「具体的な返額の妥当性も含めて、現在、調査を受けている最中でございまして、この場でのお答えを差し控えさせて頂きたいと思っています」、あるいは黒岩宇洋の総務省にとって菅長男は利害関係者に当たるのかの問に対して「今後(国家)公務員倫理審査会(人事院設置)等に於いて調査が進められると承知をしておりまして、この場でのお答えは差し控えさせて頂きたいと思っております」と答弁拒否しているが、2021年2月10日付「asahi.com」記事がこういった答弁は正当性がないということを2021年2月10日の衆院予算委員会での立憲民主党今井雅人の質問に対する人事院の答弁によって裏付けられたといった趣旨のことを伝えていた。その遣り取りを文字起こししてみた。
2021年2月10日衆院予算委員会
今井雅人「総務省の接待疑惑の件で色々と伺わせて頂きたいのですけども、国家公務員倫理審査会というのがありますね。法律(国家公務員倫理法)を読ませて頂きました。規定(国家公務員倫理規程)も色々読ませて頂きました。事前にレクを色々と遣り取りさせて頂いておりますけども、この倫理審査会の元で任意で各省庁にこれからこういう調査をしますという端緒(の報告)が行って、調査(開始の通知)が来て、それから(調査結果の)報告が来る。
こういう流れだと思いますが、この調査をしている間に国会に(各省庁は調査に関係する事柄の)説明してはいけないという規定がどこにも見当たりません。そういう規定があるのかないのか。そして(人事院は)今回の事案に関してですね、総務省に対して調査の間は今回は説明しないようにというようなご指導をされたかどうか、教えて下さい」
荒井均(人事院設置国家公務員倫理審査会事務局長)「お尋ねの根拠にお答え致します。倫理法理の中に調査中であることを理由に調査の対象となっている本人が自ら調査している内容について対外的に発言することを禁止した規定はないものと承知をしております。
また、倫理審査会の方からこのようなご指導を申し上げたことはございません。いずれにしましても、倫理審査会に於いて倫理基準に応じてしっかりと調査を致すことが重要であり、倫理審査会と致しましては任命権者の報告を受けた上で疑義があると考える場合、倫理法に定められた権限に基づき、意見を述べ、再検討を求めるなど的確に対処してまいりたいと思います」
今井雅人は人事院設置の国家公務員倫理審査会事務局長の荒井均の保証を得て、参考人として出席している総務省官僚に対して「今後お答えできませんなどと言わないで欲しい」と釘を差してから、秋本芳徳総務省情報流通行政局長に菅義偉の長男菅正剛(せいごう)といつから知り合いになったのかと尋ねる。
秋本芳徳「私が記憶している限り菅正剛さんと知己を頂いたのは2015年以降のことでございます」
今井雅人「年に1回程食事をされていると伺ってましたが、これは2015年当時から、毎年1回ぐらいは食事をされていたのですか」
秋本芳徳「2015年以降、年に1回程度でございます」
今井雅人「最初はどういう場でお会いしたのでしょうか。2015年ですね」
肝心なことを聞くことができないから、文字起こしやめた。
上記2月4日の衆院予算委員会で同じ秋本芳徳が黒岩宇洋の質問に答えて「当初出席者の中に利害関係者がいないと認識しておりましたため、自己分の負担を行っていませんでした。事後に取材を受ける過程で出席者の中に東北新社の社員であると共に利害関係者であると思われる子会社の社長等を兼ねている方がいることが判明いたしましたため先ず確認できる範囲での返金を行っています」と答弁したことを今井雅人は頭に入れていなかったらしい。
要するに2015年当時から総務省官僚は接待主が東北新社子会社社長の菅正剛であり、総務省とは利害関係者であることを承知していて、接待を受けていたが、そのことを隠すために黒岩宇洋の追及にウソを重ねていた。ウソを重ねるについてはただ単に利害関係者から接待を受けていたことを隠すためだけでは済まない。接待に対する反対給付として不正な利益供与、あるいは便宜供与を与えていたからこそ、ウソの積み重ねが必要となる。接待側も何らかの不正利益供与・便宜供与を期待していなければタダで飲み食いさせる接待は行わない。
問題となるのは総務省側が菅長男と菅義偉を切り離して接待を受け、利益供与等を図ったのか、菅長男の背後に控えている菅義偉への忖度が働いた利益供与なのか、はっきりとさせなければならない。
また秋本芳徳は2月4日の衆議院予算委員会で黒岩宇洋に対して「お答え致します。具体的な返額の妥当性も含めて、現在、調査を受けている最中でございまして、この場でのお答えを差し控えさせて頂きたいと思っています」、「お答え致します。今ご指摘の点も含めて、今後(国家)公務員倫理審査会(人事院設置)等に於いて調査が進められると承知をしておりまして、この場でのお答えは差し控えさせて頂きたいと思っております」の答弁拒否ができなくなった。その点追及がしやすくなったはずである。このことを 今日、2021年2月15日に開催される衆議院予算委員会で活かすことができるかどうかである。既にNHKで中継放送が始まっている。菅長男接待問題を詰めるために野党はどういった追及の仕方をするのだろうか。鮮やかに詰めることができれば、菅内閣支持率低下に対応して野党の党支持率は少しは上げることができるはずである。