菅義偉は五輪開催に向けた選手や大会関係者、観客の「安心」が国民の「安心」を奪う引き算となり得ることにも気づかずに開催を叫んでいる

2021-05-17 11:33:54 | 政治
 2021年5月10日衆院予算委

 立憲民主党の山井和則がコロナの感染状況如何に関係せずに東京オリンピック・パラリンピックを開催するのかと菅義偉に迫っていた。

 山井和則「今回、緊急事態宣言、解除できませんでしたが、私はこの間、ずっと思い増すのは菅総理の頭の中はオリンピックファーストで、結局コロナ対策、ワクチン接種、あるいは本当にコロナで苦しんでいる事業者や国民への対策が二の次になってしまっているとしか思えて仕方がないんです。

 そういう中で私も観光京都の地元でありますから、オリンピックを楽しみにしておりました。私の知り合いにもアスリートの方がおられます。しかし私の知り合いの介護施設でも、クラスターが発生し、そのために先頭に立ってクラスター対策に取り組まれた20代の介護職員の方がコロナでお亡くなりになりました。小さなお子さんを残してお亡くなりになりました。同僚の方々からはこれは戦死だと言われております。私の大切な、大切な方も感染され、集中治療室でコロナで入れられたということもありました。

 そういう中でオリンピックを優先と言っている場合じゃないんじゃないかと、自分自身のみならず、国民の命、あるいは、先程言いましたように多くのお店が潰れかかっている。多くの生活困窮者が残念ながら自ら命を絶つ事態にもなっているわけであります。そこで菅総理にお伺いしたいと思います。この(パネル『東京500人未満の宣言解除なら』)東京大学の専門家先生の予測ですね、今後、7(なな)月、8月に向かって再度リバウンドがあるかもしれない。感染拡大があるかも知れないという一つの試算です。

 つまり心配していますのはオリンピック、それは安全・安心できたらいいです。しかし二兎追うものは一兎も得ずという言葉がありますが、本当にこれは安心・安全なオリンピックってできるのか、ここにありますようにもしかしたら7(なな)月第1週に1500人を東京で超える感染拡大があるかもしれない。あるいは8月第3週に1800人を超える感染拡大があるかもしれない。こういう一つの試算もあるわけですね。

 そこで菅総理にお伺いしたいと思います。菅総理、これ、オリンピックが開催される7(なな)月8月、ステージ3の感染急増、あるいはステージ4の感染爆発、そういう状況でも、オリンピック・パラリンピック、これは開催されるんですか」

 山井和則は相変わらず無駄な質問が多い。質問の時間が持たないから余分なことをお喋りをする必要があるのかもしれない。「7月、8月にステージ3、ステージ4の感染状況に見舞われていても、オリンピック・パラリンピックは開催するのか」の一言で十分である。
 
 菅義偉「大変失礼だと思いますけども。わたしはオリンピックファーストでやってきたことはありません。国民の命と暮らしを守る、最優先に取り組んできています。そこは念入りに言わせて頂きます。オリンピック・パラリンピックですけども、先ず現在の感染拡大を食い止めることが大事だと思います。

 東京大会につていIOCは開催を既に決定を、各国にも確認をしています。開催に当たっては選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じて、安心の上、参加できるようにすると共に国民の命と健康を守っていくのが責務だと思っています。

 今般日本政府が調整をした結果、ファイザーとIOCを通じて各国選手にワクチン無償の提供が実現することになっています。これに加えて選手や大会関係者を一般の国民と交じらわないようにする。選手は毎日検査を行うなど、厳格な感染対策の検討を行っており、まあ、しっかり準備を進めていると、このように思っています」

 山井和則「菅総理、これ質問通告してるんですよ、先週金曜日。非常にこれ、基本的な質問です。感染急増のステージ3、感染爆発のステージ4。そのときにもオリンピックはやるんですか」

 菅義偉「今、私が申し上げましたけども、先ずは国民の命と健康を守っていくということが最優先で、そのために感染拡大は食い止めるために全力を上げていきたいというふうに思います。

 東京大会に於いて先程申し上げましたようにIOCは開催を既に決定し、各国にも確認をしており、開催に当たっては選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、安心して参加をできるようにすると共に国民の命と健康を守っていく、これが開催に当たっては基本的な考え方です。今申し上げたのが私の基本的な考え方です」

 山井和則「感染の爆発のステージ4、感染急増のステージ3でオリンピック開催ですか」

 菅義偉「開催に当たっては選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、安心して参加をできるようにすると共に国民の命と健康を守っていく、これが開催に当たっては基本的な考え方であります」

 山井和則「菅総理、これ国民の命がかかってるんです。かつ海外から来られるアスリートの方の命もかかってるんです。これだけ聞いても答えないということはこれ全国の医療従事者、コロナで苦しんでおられる方も見ておられます。感染爆発しても、菅総理はオリンピックされるというお気持ちなんですか」

 菅義偉「そんなことは全く申し上げておりませんよ。開催に当たって、よく聞いてください。選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、安心して参加をできるようにする。それと同時に国民の命と健康を守っていく。これが開催に当たっては私の基本的な考え方であります」

 山井和則「菅総理、そんな感染爆発でもやるんですかって聞いたら、そんなことは言ってませんよということは感染急増のステージ3とか、ステージ4の感染爆発ではオリンピックはやらないというふうに理解してもよろしいですか」

 菅義偉「私が今申し上げたとおりでございます」

 山井和則「いや、その日本語を分からないんです。その日本語の意味が。その答弁されていませんよ。これは誰もが不安に思ってるんです。日本中だけしゃなくて世界中が一歩間違ってオリンピックでクラスターが発生したら大変だとみんな心配して思っています。あと、多くの命が安心・安全だったら、オリンピックはやった方がいいと思っている人も多いと思います。しかしできないかもしれないから、こういう議論、私もですね、なかなかアスリートの方のことを考えると、(議論は)やりたくないけれども、これやっぱり私たち国民の命を守らないとダメですから。

 これ、今日の配布資料の中に4ページ、毎日新聞の調査で、毎日新聞がですね、全国47都道府県の知事さんに東京オリンピック・パラリンピック、アンケートされてるんです。その中に質問1、配布資料の4ページですね、『感染状況に関わらず開催すべきか』、つまり今言ったような感染急増とか、感染爆発であっても、開催すべきだなんて答えている人はゼロなんです。

 だから、感染爆発したら、オリンピックやらない、できない。これ当たり前ですよねということなんですよ。そしたら、菅総理お聞きします。感染状況に関わらず
オリンピック・パラリンピックは開催すべきですか」

 菅義偉「私、先程来申し上げておりますけども、開催に当たっては選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、安心をして参加をできるようにすると共に国民の命と健康を守っていく。これが開催に当たっては私の基本的な考え方です」

 山井和則「だから、オリンピックファーストだと言われるんじゃないですか。オリンピックありきだなんて言われるんじゃないんですか。47都道府県の知事だけじゃなくて、日本国民の、世界の方々の多くがオリンピックやって欲しいけども、感染拡大、爆発したら、無理だよねというのが普通の考え方だと思いますよ。にも関わらず、その一番の権限を持つと言われる菅総理が感染爆発しても、感染急増しても、オリンピックやるかやらないか、やらないとも言わない。

 私はね、感染爆発しても、感染急増してもオリンピックやるというのは、それは危険だと思います。あり得ない。オリンピックって、平和の祭典じゃないんですか。オリンピックでクラスターが出たり、日本中で医療崩壊、今のように50人、100人、1日で亡くなっているかもしれない中で平和の祭典できますか。できますか。菅総理、ここは私は菅総理の基本姿勢をお聞きしたいんです。

 勿論、オリンピック、人命、両方必要ですよ。でも、もし(両方必要という関係を)回避することになったら、人命、日本人の人命が失われているいるという状況に於いてオリンピックを菅総理は強行されるんですか、されないんですか。その基本認識ぐらいはお聞かせ頂きませんか」

 菅義偉「私はさっきから何回も申し上げております。開催に当たっては、よく聞いてください。選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、安心をして参加をできるようにし、国民の命と健康を守っていく。これが開催に当たっての私の基本的な考え方でありす」

 菅義偉から同じ答弁しか引き出すことができないから、この辺で質疑の取り上げはやめにする。この日午前中に衆院予算委、午後に参院予算委が開催されたが、2021年5月12日付「asahi.com」記事によると、衆参の1日を通じて「国民の命と健康を守っていく」を計17回も繰り返したと報じている。同じ答弁を17回も繰り返す根気強さは官房長官時代に培ったのだろうか。

 山井和則は菅義偉が同じ答弁を2度繰り返した辺りで別の角度からの追及を試みるべきだったが、際限もなく似たような追及に自らはまり込んでしまって、抜け出せなかった。菅義偉が開催可能とする理由づけは「開催に当たっては選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じて、安心の上、参加できるようにする」云々の答弁から伺うことができる。先ず海外からの観客を受け入れないことを決定していること、日本人観客数の上限決定の判断先送りは開催時のコロナ感染者数が把握しづらいことからだろう。当然、感染拡大状況次第で国内の大規模イベントで許可している観客数に応じて収容人数50%や、5000人制限、あるいは無観客といったそれぞれの制限を設けることで観客に対しては感染防止対策を徹底させやすいことが先ず一つ挙げることができる。

 選手に関しては行動できる範囲を宿泊施設や練習会場、試合会場に限定していること、大会関係者は移動時の公共交通機関の使用禁止、検査に関しては選手は毎日、大会関係者は4日ごととすること、違反行為があれば、選手に関しては大会の参加に必要な資格認定証を剝奪する罰則を、大会関係者に関しては菅義偉が2021年5月14日の記者会見で強制退去措置を現在検討していると発言していることから選手と大会関係者に関しては行動管理がかなり容易で、その行動をコントロール可能と見ていて、感染防止対策が有効に働くと計算、観客に関しても開催時の感染状況に応じた入場人員調節による社会的ディスタンスを取りさえすれば、感染はより効果的に抑えられると踏んで、そのような想定の上に開催は大丈夫だと理由づけているのだろう。

 ましてやIOC=国際オリンピック委員会会長バッハが東京大会と北京大会で希望する選手や大会関係者に中国製のワクチンを提供する考えがあることを表明し、実現すれば、選手や大会関係者から日本の社会に感染していくという構図は極端に限定されることになり、残る危険性は日本人観客から一般的な日本人へという日本人同士の感染の経路のみとなるが、この危険性は社会的ディスタンスやマスク着用、手洗いの徹底によって限定されると見ているのだろう。

 しかしこういった想定上の開催可能性はオリンピック・パラリンピックという祭典が一般社会と深い関わりを持っていることに反して東京オリンピック・パラリンピックに於ける考えられる感染の程度と一般社会に於ける現実の感染の程度を別々に補足していることによって成り立ち可能となる。

 なぜなら、菅義偉の「開催に当たっては選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、安心をして参加をできるようにする」の言葉そのものが社会の感染状況を置き去りにしていることになるからである。

 つまり一般社会の感染状況がステージ3だろうが、ステージ4だろうが、そのこととは関係なしに東京オリンピック・パラリンピックという場から一般社会に向けて感染が広がる危険性を最小限に抑えることができれば、開催は可能だとしている菅義偉の「基本姿勢」となっている。但し菅義偉は総理大臣である以上、一般社会の感染防止対策とオリンピック・パラリンピック開催時の感染防止対策の両方に最終責任を負う。オリンピック・パラリンピック開催の感染防止対策がしっかりしていさえすれば、一般社会の感染はどうであってもいいとするのは両方に責任を負っていないことになって、無責任となる。

 と言うことは、東京オリンピック・パラリンピックの場所だけ感染に関しては安心できるということだけではなく、社会の感染も極力抑えて、一通りの安心ができる場所にしておく必要がある。

 具体的には開催に当たって緊急事態宣言にもまん延防止法に頼らずに一般社会の感染者を大きく抑えた状態にしておく責任を負う。大きく抑えて、一定程度の社会経済活動を保証できていたなら、誰からも何も言われることなく心置きなく開催できる条件が整う。結果、菅義偉は社会に対しても東京オリンピック・パラリンピックに対しても、両方共に責任は果たしていることになる。

 勿論、ワクチンに頼ってもいいが、そのために65歳以上高齢者ワクチン接種の7月末完了を急いでいるのだろうが、7月末完了が間違いなく実現させることができたとしても、〈以下接種人数は「日本のワクチン接種シナリオ」(2021年2月26日)から〉65歳以上⾼齢者の接種完了⽬途が⽴ち次第、優先順位から基礎疾患保有者(820万⼈)+⾼齢者施設従事者(200万⼈)+60〜64歳(750万⼈)+その他16歳以上59歳まで(約5,200万⼈)の計6970万人のうち、接種せずがいたとしてしても、6000万人がとこの接種が待ち構えている。この6000万人を65歳以上高齢者3600万人から未接種者を差し引いて約1.4倍と見たとしても、65歳以上高齢者は4月12日接種開始から7月末完了予定の3カ月半の約1.4倍、5カ月近くかかることになる。東京オリンピック2020の2021年7月23日から8月8日の日程と東京パラリンピック2020の2021年8月24日から9月5日までの日程終了までに希望していながら多くのワクチン未接種者を残すことになる。

 要するに菅義偉はワクチン未接種残る65歳以上高齢者や65歳以下の一般国民6000万人うちの多くの国民の安心・安全を置きざりにして、「選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、安心して参加をできるようにする」としている選手や大会関係者のみの「安心」を以って国民の安心・安全に代えることはできないにも関わらず、「それと同時に国民の命と健康を守っていく」としている言葉が示すようにさも代えることができるような物言いをするペテンを狡猾にも働かせている。

 第1波、第2波、第3波、第4波と続く感染の波を受けて積み重なっていく死者数、重傷者数を見ただけで、「国民の命と健康を守ってい」っている状況にはない。特に自宅療養中に体調が急変して医師に連絡しても、救急車を呼んでも入院先が見つからずに治療を受けないままに死に至らしめてしまう状況は「国民の命と健康を守っていく」の言葉が口先だけであることを暴露するのみである。2021年5月14日付「NHK NEWS WEB」記事は、コロナに感染して自宅などで療養中の患者が体調急変によって死亡したケースが4月は96人、前の3月の3倍だと伝えている。都道府県別では大阪が39人と最多、次いで兵庫21人、東京10人等としている。

 例えコロナに感染して自宅療養となり、体調が急変して重症化したとしても、望むままに病院に入院できて、万全な治療の提供を受けたものの、その甲斐もなく回復できずに死亡した場合は止むを得ないが、入院先を探したが見つからずにどのような治療を受ける機会も与えられずに亡くなっていく状況が継続・放置されているのだから、この1事例を取り上げただけでも、「国民の命と健康を守っていく」責任を果たしているとは決して言えない。

 要するに菅義偉は「国民の命と健康を守ってい」っていない場面が数々あることに目を向けることができないままにさも守っていっているかのように口先だけで言っているに過ぎない。 

 また、選手や大会関係者の「安心」の中には観客の「安心」も含めて、その一端を派遣要請を受けている医師200人、看護師500人が担うことになるが、国民へのワクチン接種とコロナ感染の入院患者治療の必要人員とされている関係から断る医師、看護師が出ている。つまり選手や大会関係者、観客の「安心」を引き受けることが逆に国民の「安心」を奪う引き算となることを弁えているがゆえの要請拒否である。

 菅義偉がこういった視点を持たないからこそ、守ってもいないのに「国民の命と健康を守っていく」と言うことができるのだろう。あるいは持っていても、持っていないフリをするのは総理大臣の責任行為としてある「国民の命と健康を守っていく」を禁句としなければならなくなるからだろう。

 上記衆院予算委員会開催日は2021年5月10日だったが、3日後の2021年5月13日に勤務医で作る労働組合「全国医師ユニオン」が厚労省を訪れ、東京オリンピック・パラリンピックの中止を求める要望書を手渡したと同日付「NHK NEWS WEB」が伝えている。

 要請書には例え無観客であっても全世界から選手や関係者ら数万人が来日することになり、危険性を否定できないことと医療関係者が長時間労働を強いられている中で地域医療を崩壊させかねない大会を開催し、最前線で闘う医療従事者にボランティアを求めることは無責任だと中止要請の理由が述べてあると書いている。

 要するに国の要望に応えることによって国民の「安心」を奪う引き算はできないということである。記事には組合員の医師からは「多忙のためワクチン接種でさえ協力が難しいのに、オリンピックのボランティアまでとても手が回らない」といった声が相次いで寄せられていると書き添えている。

 「全国医師ユニオン」植山直人代表(記者会見)「選手にはつらい話だが、大会中止は誰かが言いださなければならない。医療従事者は声を上げることが求められていると思うので、あえて要請を行った。

 コロナと闘う気があるのか、という政府への不信感が医療現場の感覚だ。国は国民の生命と財産を守る重大な使命があり、はっきりした姿勢を示すべき局面だと思う」

 どうも医療従事者には菅義偉たち国のコロナ感染防止対策の腰が定まっていないように映っているようだ。一方で東京オリンピック・パラリンピックの開催に関しては「選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、安心して参加をできるようにする。それと同時に国民の命と健康を守っていく」と頑なまでにねばり越しを見せている。

 要するに「全国医師ユニオン」の要請書は前者の「安心」が必ずしも「国民の命と健康を守っていく」ことに繋がらないことの証明を改めて示しているに過ぎない。となると、東京オリンピック・パラリンピック開催が国民の「安心・安全」を奪う引き算としないためには1日の新規感染者を極端に少なくして、国民の「安心・安全」を増加させる以外にない。医療も逼迫から解放され、余裕が出てきて、このような全体的な状況が与えることになる国民の「安心・安全」が選手や大会関係者や観客の「安心・安全」と一体性を持つことになって、開催に疑問符を付けられることはなくなる。

 2021年5月11日に東京都医師会の尾崎治夫会長が定例記者会見で東京オリンピック・パラリンピックを安全に開催するには都内での新型コロナウイルスの新規感染者数を100人以下とする必要があると発言したそうだが、となると菅義偉はただ「開催する、開催する」とバカの一つ覚えを繰り返すのではなく、東京オリンピック・パラリンピック開催の危機管理として、つまり国民の「安心・安全」と選手や大会関係者や観客の「安心・安全」に一体性を持たせるために、あるいはどこからも中止の横槍を入れさせないために1日の新規感染者数を何人とすることができたら、医師も看護師もその他のボランティアも協力の余裕が出て開催、できなかったら、国民の「安心・安全」を放置したまま開催することはできないからと中止を決定する計画書を作成すべきであろう。

 だが、山井和則との質疑でみてきたとおりに菅義偉にはサラサラその気はないようだ。「新型コロナウイルス感染症に関する菅義偉記者会見」
 
 江川紹子「フリーランスの江川紹子です。よろしくお願いします。

 オリンピックのことについてお伺いいたします。政府は、選手を守るということについてはすごくいろいろな工夫をされていると思うのですけれども、選手以外に、それよりはるかに多い最大9万人の外国人が来日するというふうに伝えられております。前回の記者会見でフランスのラジオ局の記者が海外の報道陣のことを挙げて、いろいろな取材をするつもりですと、行動監視は物理的に可能でしょうかというふうに質問されたのに対して、首相は、選手以外の方は様々な制約がある、水際も含めてありますとしかお述べになりませんでした。たとえ自主隔離を求めても守るとは限らないということもあります。五輪関係者、競技団体も含めて同じです。どうやってこの9万人もの人の行動をチェック、この人たちは一般ホテルに泊まるので、一般人と接触する可能性が大いにあるわけです。この問題をどういうふうにするつもりなのかを具体的に示していただきたいというふうに思います。

 そしてまた、尾身先生が国会で五輪に関して、感染リスクと医療の負荷について、前もって評価をしてほしいというふうに述べられたと思います。これについて政府はどう対応するのでしょうか。そういういろいろなケースを想定して評価するという場合には、それは国民にきちんと根拠とともに示していただけるのかと、このことをお伺いするとともに、尾身先生には、先ほどの感染リスクと医療の負荷についての評価が必要な理由についても教えてください」

 菅義偉「まず、私から申し上げます。前回の質問の際に、マスコミの方が確か3万人ぐらい来られるというような話があったと思います。今、そうした方の入国者というのですかね、そうしたものを精査しまして、この間出た数字よりもはるかに少なくなるというふうに思いますし、そうした行動も制限をする。そして、それに反することについては強制的に退去を命じる。そうしたことを含めて、今検討しております。

 ですから、一般の国民と関係者で来られた人とは違う動線で行動してもらうようにしていますし、ホテルも特定のホテルに国として指定しておきたい。指定して、そうした国民と接触することがないようにと、そうしたことを今、しっかり対応している途中だという報告を受けています」

 江川紹子「評価については」

 内閣広報官「すみません、自席からの御発言はお控えください」

 江川紹子「だって答えていただいていないので。

 感染リスクと医療の負荷についての評価をしてほしいというふうな尾身先生からのお言葉について、これを実行するおつもりはあるのかということを伺いました」

 菅義偉「この行動指針を決める際に、専門家の方からも2人メンバーになっていただいて、相談しながら決めさせていただきます」

 尾身茂「今の御質問は、なぜ医療への負荷の評価をしなくてはいけないかということですけれども、実は今、なぜこれだけ多くの人がオリンピックに関係なしに不安に思っているかというと、感染者が500行った、600行ったということよりも、今はやはり医療の負荷というものが、つまり一般医療に支障が来て、救急外来も断らなくてはいけない、必要な手術も断らなくてはいけない、しかも命に非常に直結するようなところまでという状況になっている。

 さらに、医療のひっ迫というのが重要なのは、これから正にワクチン接種というところに医療の人がまた、さらにいろいろな人が、オリンピックだろうが何だろうが多くの人が来れば、コロナにかかるかかからないかにかかわらず、多くの人が来ると一定程度必ず何か具合の悪いことになるというようなこともあるわけですよね。

 そういう中で私が申し上げた理由は、いずれ私は、関係者の方は何らかの判断を遅かれ早かれされると思うのですけれども、それは開催を仮にするとすれば、前の日にやるわけではないですよね。当然X週間、Xデー、Xマンスを、時間的余裕を持ってやるわけで、そのときの医療への負荷というものは、そのとき、分かりますよね、もう医療が本当にかなり良い状況、中くらいの状況、いろいろ分け方はあると思いますけれども、そのことの状況に応じて、仮にオリンピックをやるのであれば、そのX週間後にどのぐらいの負荷で、状況があれだけれども、更なる負荷ということになりますね。そのことをある程度評価するのは、オリンピックを開催する人たちの責任だと私は思います、ということで申し上げたということ」

 選手や大会関係者や観客の行動指針とコロナ感染者数のケースバイケースに応じた東京オリンピック・パラリンピック開催の是非の評価は似ても似つかない非なるものである。にも関わらず菅義偉は行動指針作成に専門家が2名加わっていて、相談していると誤魔化しの答弁をして平然としている。もし誤魔化しでなく、本当に混同していたとしたら、混同する程バカということになる。
 
 尾身茂は要するに東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた「安心・安全」の確保のために国民の「安心・安全」を奪う引き算とならないよう、医療への負荷の程度を基準とした開催か否かの評価を政府の危機管理として作成しておくのが「オリンピックを開催する人たちの責任だ」と断言している。そして江川紹子は菅義偉に対してその評価は国民にきちんと根拠と共に示すべきだと要求している。

 尾身茂も江川紹子も当然のことを求めているに過ぎない。当然のこととしていないのは菅義偉のみである。安倍晋三のスピーチで獲ち取ったオリンピックと考えているのかどうか分からないが、開催に向けた選手や大会関係者や観客の「安心・安全」が国民の「安心・安全」を奪う引き算に早変わりする危険性には気づいていないことだけは確かなようである。

 山井和則は「東京オリンピック・パラリンピック開催期間中にステージ3、ステージ4の感染状況になって、治療やワクチン接種の医師・看護師が不足するようになったなら、東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて派遣養成していた医師・看護師を治療やワクチン接種に戻すことになるのか。それとも不足を放置したままでいるのか」と尋ねたら、別の展開を見い出せたかもしれない。

 いずれにしても菅義偉は国民の命と健康を守る危機管理の先頭に立つ資格はない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする