06年7月から北海道開発行政トップの北海道局長として国土交通省本省勤務となった品川守(58)が北海道開発局出先機関石狩川開発建設部部長時代の05年に地元の建設会社に天下った開発局OB2人と共謀、自ら主導して特定の業者に落札させる談合の調整を行った「官製談合」で16日札幌地検に逮捕された。
談合内容と経緯を6月18日(08年)の「毎日jp」記事≪国土交通省 官製談合の体質と決別せよ≫(「毎日新聞」社説」)から見てみる
<官側が談合を主導する官製談合の体質が国土交通省の隅々にまで染みわたっているのではないか。本省の現職局長が、出先機関の北海道開発局の部長時代に官製談合に関与していたとして競売入札妨害容疑で札幌地検に逮捕された事件だ。
直接の容疑対象は、開発局が05年に発注した2件の河川改修工事。指名競争入札だったが、地元の建設会社に天下りした開発局OB2人と共謀し、特定の業者に落札させる談合の調整をしたという。このうち1件の予定価格に対する落札率は96.01%と極めて高い。
発注側が談合を主導し、業者に公共工事を高値で落札させ、見返りにOBを天下りで受け入れさせるという典型的な官製談合の構図だ。その分、税金が余計に業者の懐に流れ、つけは納税者である国民に回ってくる。税の無駄遣いがこれほど問題になる中、国民の怒りを買う許し難い犯罪だ。
逮捕されたOBの一人はかつて同じ部長も務め、「部長の間で代々、談合の手法が引き継がれていた」と供述しているという。北海道開発局では5月、別の部の元部長や現職課長ら3人が農業土木工事をめぐる官製談合の疑いで逮捕されたばかりだ。これでは、局ぐるみで違法行為が日常的に行われているのではないかと疑わざるを得ない。この際、地検には徹底した捜査を尽くし、うみを出し切ることを望みたい。
今回の事件がとりわけ深刻なのは、国の公共事業の8割を扱い、かつ談合防止へ向け入札制度改革に率先して取り組むべき国交省で官製談合が起きていたことだ。しかも、官製談合の弊害が叫ばれて官製談合防止法が制定された02年以降も官製談合が恒常的に繰り返されていたというのでは、言語道断だ。
北海道開発局では02年、鈴木宗男元北海道・沖縄開発庁長官の受託収賄事件の背景として、検察側から官製談合の問題が指摘され、これを受けて公正入札調査委員会の設置など再発防止策を導入していた。しかし、逮捕された局長もこの委員を務めていたというから、とても防止効果が期待できる代物ではない。
事件の背景には、公共工事の比重が高い北海道の事情もあるだろうが、一出先機関の不祥事ととらえるべきでないのはもちろんだ。公正取引委員会は昨年、中央省庁では初めて国交省に対し、水門設備工事で官製談合防止法を適用する措置を取った。今年春には、同省のキャリア職員2人が予定価格を漏らした疑いなどで大阪地検に逮捕された。国交省の不正続出は目を覆うばかりだ。
「再発防止の対策を講じることが、地に落ちてしまった省の信頼を回復する唯一の道だ」。冬柴鉄三国交相は17日の記者会見でそう語った。国交省が官製談合体質を断ち切ることは、もはや待ったなしだ。>・・・・・・・・・
福田首相は17日付『朝日』記事で次のようにコメントしている。
「幹部職員がそういう事件を起こしたことは誠にけしからん。こういうことがどうして起こるのか。本当に残念に思う」
冬芝国交相は「最も信頼している本省の局長(の1人)。非常に驚いた。省への信頼が落ちることを大変憂慮している」
このコメントを読んだとき、二人の認識能力はどうなっているのかと疑った。「こういうことがどうして起こるのか」だって?、省への信頼」だって?何ら不都合のない間違っていないコメントだと思って口にしたのだろうか。
一国の総理大臣を務めていて「こういうことがどうして起こるのか」ぐらい理解できないとは何ともお粗末な脳ミソだ。自民党が戦後以来ほぼ一貫して長期に亘って政権に居座ることができたのは政策づくりでも制度設計でも国会答弁でも官僚におんぶに抱っこの恩恵があったからで、そうでありながらすべての手柄は政治家が独り占めしてマスコミ・国民の注目を浴びるのも政治家ばかり、その上政治献金だ、口利きだで懐を肥やしていい思いをするのも政治家だけ、官僚はいつもいつも裏方の黒衣の役割しか与えられてこなかった。
その上長期政権の弊害の常で長期政権慣れが緊張感を失わせ、そのぬるま湯にどっぷりと浸ることにエネルギーを注ぐばかりで官僚依存が当たり前の政治習慣となって官僚は見えないところでの自らの重要性を歴史・文化・伝統とすることとなった。
自分の方に働きがあり、その働きによって政治家を成り立たせることができているというのに見返り・報酬が少ないとなれば、官僚でなくたってバカらしくなるのは人間の自然な姿であって、政治家がいくらお国のための奉仕の精神を説こうと、自分たちが範を垂れているわけではない奉仕の精神だから効き目があろうはずはなく、じゃあ俺たちだってと考え出したのが天下りと談合を手段としたいい思い――見返り・報酬といったところだろう。
政治家たちが官僚の恩恵を受けて成果としている諸活動を表の姿とし、諸活動をエサに政治献金や口利きでいい思いをしている私腹行為を裏の姿とするなら、官僚たちの政治家を支える裏方の仕事が表の姿であり、いい思いとなる天下り・談合漁りが裏の姿ということになって、両者のそれぞれの表裏の姿は対応しあってバランスを取っているだけのことで、官僚から言わせたら、どこに不都合があるかということになるだろう。
要するに官僚たちの天下り・談合は長期政権慣れして緊張感を失った政治家たちの官僚頼り、官僚におんぶに抱っこがつくり出している現象だということである。長期政権に胡坐をかいて政権慣れした緊張感の喪失が官僚依存にも慣れ、そのことに麻痺し、政治家の成果に対する俺たちの成果だと正当化させる口実を官僚に与え、付け上がらせる結果を招いている。
日本の政治家の無能を世界の政治家が陰で笑っているのに対して官僚たちは政治家の無能を陰で笑っている。日本の官僚の違うところは、ただ笑ってばかりいるのでは面白くないということで、自分たちも陰で政治家同様にいい思いをすることとなった。
このことに気づかずして、「こういうことがどうして起こるのか」などと気の抜けたことを言う。一国の総理大臣の言葉である以上、的を得たコメントとはどうしても思えない。
長期政権による自民党政治家の緊張感の喪失が官僚依存慣れを増長・麻痺させているということなら、政権交代のある政治の姿が最良のクスリとなる。支持率を下げているのに政権にしがみついているばかりが能ではないだろう。
冬芝国交相は「省への信頼が落ちることを大変憂慮している」と言っているが、胡散臭げな連中の寄り合い所帯である公明党の中でも胡散臭げが突出している北側、冬芝と続いて国交相に就任した時から「国交省への信頼」はこれまで以上に落ちようがなく、今さら「信頼が落ちる」どころではない。似た者夫婦ならぬ、似た者同士の政治家がトップに座ったに過ぎない。
とてもまともなコメントに入れることはできない。
冬芝は「談合はあってはならないこと。官が関与することは言語道断で誠に遺憾だ。国民に心からおわびする」(≪官製談合陳謝 国交相、給与3カ間返納へ≫MSN産経/2008.6.17 12:30)と陳謝し、大臣給与を3カ月返納するということだが、公明党幹部だけのことはあって認識が大甘にできている。
「談合はあってはならないこと」は極当たり前のことであって、極当たり前のことを極当たり前にコメントしたに過ぎない。公明党の政治家だから仕方がないことかもしれないが、その「あってはならない」談合が極当たり前のようにあったのはなぜなのか、そのことの方をこそ問題とすべきだろう。
例えどのように強烈なショック療法を施しても消滅させる保証はない悪質化した談合や天下りといったところだが、そういった認識を持つことができたなら、大臣給与3ヶ月返納で追いつく話ではないことも認識できたはずである。
但し「談合はあってはならないこと」こととする考え得る最大のショック療法は管轄大臣の即辞任以外にない。
省の人間が下手なことをするとその省を管轄する大臣のクビが飛ぶ、大臣のクビで始末をつけなければならなくなるとの前例をつくり、それをルールとする。そのような覚悟によって管轄大臣にしてもおんぶに抱っこの官僚依存に浸ってばかりはいられないぞと、官僚は大臣のクビを飛ばすことになるから下手なことはできないぞと双方共に緊張感を強いることとなって、少しばかりはシャキッとさせることができるのではないだろうか。
勿論大臣辞任によって少しばかりシャキッとさせることができても、行き着くところまで悪質化した天下り・談合が完全になくなる保証はない。だが、それでも責任を取って辞任する。そのような最大限の責任の取り方の繰返しが双方の緊張感の持続に少しずつ役立っていくはずである。
ところが折角手に入れた大臣の椅子だとばかりに何ら責任を取らずに後生大事にしがみつくばかりの政治家はいるが、官僚側にも襟を正させることになる辞任という形で潔く責任を取る政治家はまずいない。追い詰められて辞任する政治家はゴマンといる。
談合で国家予算を無駄にした金額から比較しても、冬芝の給与返納はその場凌ぎのゴマカシでしかない。
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