大型災害の迅速な人命救助はたった一人の国民の命であっても疎かにしない危機管理に於ける象徴作業

2009-09-19 16:29:15 | Weblog

 民主党政権は大型災害時、大型輸送ヘリコプターを使って災害現場に大型土木重機搬入、人命救助に当たるシステムの確立に既に着手しているのだろうか。災害は待たないと言われている。 

 昨2008年6月14日午前8時43分発生のマグニチュード7以上の岩手・宮城内陸地震では宮城県栗原市山間部の旅館「駒の湯温泉」が土石流で倒壊、1階部分が泥流に埋没、宿の住人と宿泊客7人が行方不明となったが、後に5人が遺体で発見され、残る2人の捜索に手間取った。

 手間取った理由は道路が寸断されたため重機(パワーショベル)が搬入不可能だったことと、寸断された道路が復旧して例え搬入できたとしても現場付近が大量の土砂と川水でぬかるみ、重機が使えなかったからだという。

 〈流れ込んだ土石流の影響で現場付近はぬかるみ状態だったが、最近はまとまった雨が降らず、重機の使用が可能になった。これまではすべて手作業だったが、今後は人力では難しい倒木や柱、がれきの除去などに重機を活用する。〉と「毎日jp」が書いていている

 重機搬入まで救助の自衛隊員や消防隊員は旅館の布団や畳を使い、足場を確保してポンプやバケツリレーによる手作業で泥水をくみ出して捜索に当たった。あるいはスコップで排水路を掘り、バケツで泥水をくみ出す作業を行ったという。

 果して現場周辺は重機が押し流される程の水嵩を持った水の流れ、そして重機が傾く程のぬかるみが存在したのだろうか。

 重機(パワーショベル)はキャタピラ部分が浸かるくらいの水の中でも動かすことができるし、浸かる位置でキャタピラの底が重機の重量を支えることができる土の固さがあれば、作業は可能となる。

 救助の自衛隊員や消防隊員が旅館の布団や畳を使って足場を確保できたなら、重機(パワーショベル)は差し障りなく搬入できたろう。このことは各報道機関の写真を見ても、そう判断できる。

 逆に重機が傾くほどの深さまでぬかるんでいたなら、足場となる板を用意し、それが旅館の布団や畳であっても、それぞれの両端が重ねてあっても、浮橋のようにすべての足場を連結・固定して、橋の形状にした両端を何かにしっかりと固定しない限り、人間は独立したそれぞれの足場の上に乗って体を動かすことなどできはしないだろう。だが、人力で作業が行うことができる足場が確保できた。

 万が一建物付近に入れなくても、旅館建物の上流地点に重機を入れることができる場所を見つけて、そこで足場を固めつつ、川の水路を変える作業を行うと同時に泥濘の流れが停止している下流地点で泥濘は幅は狭く、厚みも薄くなっていて人が埋まっているかどうかは可視できるから、そこに深い穴を掘って、行方不明者が埋まっていた場合傷つけないように見張りを立てた上で穴に重機で泥水を掻き寄せれながら穴を上流に向かって広げていけば、ポンプやバケツリレーによる手作業よりも迅速に短時間で泥水を取り除くことができる。

 また重機(パワーショベル)で土を盛り上げて土手を造り、別方向に流す排水路を構築、上流の川の水や泥流を止めることができたなら、建物の壊れた部材も人間も建物の下に埋まっているか、それよりも下流に流されているはずだから、大型のハサミ重機で残されている建物を屋根部分から剥がして取り除くと同時に建物よりも下流地点の泥流のすぐ脇の地肌が見える場所はスコップ等でわざわざ掘って埋めない限り人間が埋まっている心配はないから、そこに深い穴を掘り、掘ったあと、人力でスコップや鍬(ジョレン)を使って泥流を穴に掻き落として行方不明者を見つけ出す作業を行えば、例え行方不明者が埋まっていても傷つける恐れは生じないし、バケツリレーやポンプで泥流を掻き出すよりも、すぐ足許の穴に掻き落とす方が作業が遥かに捗って時間短縮ができる。泥流の掻き落としは掘削穴から1~2メートルまでの地点とし、その間の地山が見えた範囲まで重機で穴を広げていく。この作業を繰返すことで、スコップや鍬(ジョレン)を使っての掻き落としが手早く行うことができる。勿論作業員が穴に落ちないように気をつけなければならない。

 問題は「道路が寸断」によって重機を搬入できなかったことである。だが、政府は地震発生の6月14日から12日後の6月26日に陸上自衛隊の大型ヘリに吊り上げて中型ショベルカー(重さ4・4トン)を搬入している。重機搬入を阻んでいたという「道路が寸断」は何だったのだろうか。作業にかかってみて、重機1台では不足と見たのか、午後にさらに1台搬入している。

 自衛隊は大型輸送ヘリを1機しか保有していないわけではないのだから、ヘリコプター2機でそれぞれ1台ずつ輸送すれば、それだけ運搬時間が節約でき、反対に最初から2台なら、その分作業は捗ったはずである。

 地震発生時の首相である福田康夫は「人命救助が一番大事だ」と言っていたが、その言葉通りに迅速な人命救助を災害時に於ける危機管理の要点に置く考えに立つなら、常に早手回しの備えを心がけるべきだろう。人力から比較して重機の方が作業能率がいくら高くても、捜索範囲が広範囲に亘る場合、台数が多いに越したことはないからである。2台目が午後になっても時間的にそれ程の差はないと考えているとしたら、人命救助が常に時間との闘いであることと重機搬入までに時間がかかったことを計算して行方不明者に対して生きている可能性を置いていない救助姿勢がそう考えさせた疑いが生じる。

 生きている可能性を置かない人命救助はこのこと自体が既に相互矛盾を示している。生き埋め状態での「生存の限界」は72時間――3日間と言われているそうだが、重機搬入にその4倍の時間がかかったとは驚きだが、例え「生存の限界」の72時間(3日間)が過ぎても、あるいはさらにその4倍の12日が経過していたとしても、生きている可能性を信じて捜索に当たることによって人命救助を常に優先させた危機管理を成立させることできるし、危機管理に携わる者の姿勢を全うさせ得る。

 問題は陸上自衛隊の大型ヘリが搬入したのが中型ショベルカー(重さ4・4トン)だということである。写真で見ると、一度に掘ることができる掘削容積が40センチ×40センチ×40センチの0.4立方メートルにしか見えない。

 以前ブログに書いたことだが、「災害時緊急支援体制検討委員会」が平成18年2月22日に当時の安倍晋三内閣官房長官に提出した『大震災・大事故に当たり、迅速な人命救助・被災地復興支援のため、全国主要地に予め基地を設け、救援する具体策を提案する』とした提案書は自衛隊の大型ヘリよる重機運搬の活用を提案しているが、その内容は「瓦礫に埋もれている人を出来る限り短時間に救出するため、自衛隊所有の大型ヘリコプターで(組立てなしの)12トン前後のハサミ重機を、被災現場に空輸する。」となっている。

 「ハサミ重機」とは倒壊した鉄筋コンクリート建築物のコンクリートの瓦礫、倒壊した木造建築物の柱や梁、あるいは崖崩れ等で崩落した岩石を「掴みバサミ」のように挟んで別の場所に移動させる重機だが、「駒の湯温泉」の災害現場に搬入した重機が車体重量4・4トンで中型だというから、「12トン」は大型重機の部類に入る。だが、「自衛隊所有の大型ヘリコプター」としている以上、「12トン前後のハサミ重機」を運搬可能としていることになる。

 では、「駒の湯温泉」の場合、車体重量4・4トンの中型重機が1台ずつ2台と言うことはどういうことなのだろう。2階部分が殆んど壊れないで倒壊した1階部分に覆いかぶさった状態では倒壊した1階部分に行方不明者が閉じ込められている可能性があり、2階部分を取り除くには建物の解体専用のハサミ重機が最も効率ある作業をこなす。建物の解体や残材を取り除くために大型のハサミ重機、泥濘除去と水路変更用に同じく大型重機(パワーショベル)を早期に投入すべきが人命救助を優先させた危機管理の手本ではなかったろうか。

 岩手・宮城内陸地震発生の6月14日に約1カ月遡る2008年5月12日発生の中国四川大地震では土砂崩落によって川が堰き止められて巨大な堰止湖(せきとめこ)が出現し、決壊した場合の鉄砲水による下流都市住民の生命の安否が危惧されたが、中国政府は大型ヘリコプターで何台もの大型重機を運搬・搬入して排水路を確保、決壊の回避に成功している。

 pdf記事「中国・四川地震により発生した土砂災害に関する調査・研究業務委託報告書」が次のような報告を伝えている。
 〈重機の運搬には大型のヘリコプターM-26 型(最大吊り下げ重量は20t、世界最大)2台とM-17(最大吊り下げ重量は3t)5台が用いられた。これらのヘリコプターは5月26 日に綿陽空港に到着したが、当日は天候不良で視界が悪かったために、天候の回復を待ち、実際に重機の運搬を開始したのは5 月27 日となった。5月27日に現場に重機が運搬されると直ちに緊急排水路の掘削が開始された。〉――

 日本は中国の四川大地震で見せた危機管理を何も学ばなかったのだろうか。「駒の湯温泉」の災害現場に政府が重機を投入したのは地震発生の6月14日から12日経過した6月26日である。

 『大震災・大事故に当たり、迅速な人命救助・被災地復興支援のため、全国主要地に予め基地を設け、救援する具体策を提案する』は大震災などが発生した場合、30分から1時間以内に被災地へ前記資材等を空輸する必要上、日本全土を7~8地区に分けてそれぞれに大型ヘリの発着や必要資材備蓄用の基地の建設を求めているが、「Wikipedia」が次のように解説している。

 〈施設科部隊として最も規模の大きなものは施設団であり、各方面隊に1個ずつ置かれている(北部方面隊のみ方面施設隊)。次に大きな規模の部隊は施設群であり9個置かれている(陸上自衛隊の連隊等一覧#施設科)。また、各師団には施設大隊が、各旅団には施設中隊が置かれている。

 そのほか、施設隊、施設器材隊(架橋中隊、特殊器材中隊)、水際障害中隊、ダンプ車両中隊、坑道中隊などの施設科部隊が置かれている。坑道中隊は、トンネルを掘る部隊である。〉――

 各施設科部隊は重機運搬の必要上、大型輸送ヘリを備えているはずである。災害発生と同時に例え必要が生じなくても、災害現場に最も近い陸上自衛隊基地が施設科部隊を備えていたなら、彼らに出動準備の発令、備えていなければ、備えている基地からの施設科部隊の移動を直ちに発令して、災害現場最寄のその基地に待機させ、必要に応じて直ちに災害現場に出動させる。ハサミ重機など備えていなければ、いくつかの土木建機リース会社と前以て契約しておいて、在庫ある会社までヘリコプターで引き取りにいき、そこから災害現場へ、あるいは一旦基地に戻って出動に備えるといったことをすれば、カネをかけてわざわざ災害出動用の基地を設けなくても済むのではないだろうか。

 麻生太郎首相(68)が今年8月22日午前、豪雨被害に見舞われた兵庫県佐用町の現場を視察したとき、「まだ行方不明が2名見つかっていない。引き続き捜査、捜索に当たっている方々が努力しておられると思うが、ぜひ遺体が見つかるように今後とも努力をしていただきたい」(サンスポ)と生きている可能性を早々と捨てた発言をして、麻生の危機管理意識の程度、国民の命に対する感覚、人命救助をどう把えているかその思いの程を知らしめたが、例え生き埋め状態での「生存の限界」の72時間(3日間)を何日過ぎようが、生きている可能性に立って、たった一人の国民の命であっても疎かにしない人命救助の姿勢こそが政府の国民の生命・財産を守る危機管理全般に亘る象徴行為となるはずである。


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