【謝罪】(訂正2019/12/24 AM3:50) 計算間違いが一箇所ありました。文飾箇所です。 〈もしアベノミクスのバラ色の成果を謳うなら、「平均所得以下世帯」を大きく減らして、平均所得金額以上の「600~700万世帯」は民主党政権最後の年よりも0.6ポイント増やしてはいるが、中間層に当たる「700~800万世帯」、「800~900万世帯」の割合を大きく増やさなければならないが、前者は1.5ポイント、後者にしても、0.6ポイント減らしている。例え0.1ポイントであっても、全世帯数約5千万世帯の0.1ポイントは500万世帯に当たり、バカにならない世帯数となる。〉 全世帯数約5千万世帯に0.1%をかけるべきところを、そのままを0.1をかけてしまいました。5千万の0.1%は5万世帯です。次のように訂正しておきました。謝罪します。 〈もしアベノミクスのバラ色の成果を謳うなら、「平均所得以下世帯」を大きく減らして、平均所得金額以上の「600~700万世帯」は民主党政権最後の年よりも0.6ポイント増やしてはいるが、中間層に当たる「700~800万世帯」、「800~900万世帯」の割合を大きく増やさなければならないが、前者は1.5ポイント、後者にしても、0.6ポイント減らしている。例え0.1ポイントであっても、全世帯数約5千万世帯の0.1ポイントは5万世帯に当たり、結構な世帯数となる。〉 約5千万世帯のうちの5万世帯をたかが5万世帯と見るか、されど5万世帯と見るかですが、“平均所得以下”の収入というのはなかなか深刻です。 |
当時経済再生担当相茂木敏充は2019年1月29日に開かれた月例経済報告等に関する関係閣僚会議で、「景気の回復の長さについて、2012年12月に始まった今回の景気回復期間は今月で74か月、6年2か月となり、戦後最長となったとみられます」とアベノミクス景気の息の長さを評価した。
茂木敏充のこの“戦後最長予測”を前以って報告を受けていて、それを励みにもしていたことなのだろう、前日の2019年1月28日の政方針演説で安倍晋三は次のようにアベノミクスがもたらした成果にバラ色の輝きを与えている。
安倍晋三「この6年間、3本の矢を放ち、経済は10%以上成長しました。国・地方合わせた税収は28兆円増加し、来年度予算における国の税収は過去最高62兆円を超えています。
そしてこの成長の果実を、新3本の矢によって子育て支援をはじめ現役世代へと大胆に振り向けてきました。児童扶養手当の増額、給付型奨学金の創設を進める中で、ひとり親家庭の大学進学率は24%から42%に上昇し、悪化を続けてきた子どもの相対的貧困率も、初めて減少に転じ、大幅に改善しました。平成5年以来、一貫して増加していた現役世代の生活保護世帯も、政権交代後、8万世帯、減少いたしました。
5年間で53人分の保育の受け皿を整備した結果、昨年、待機児童は6千人減少し、十年ぶりに2万人を下回りました。子育て世代の女性就業率は7ポイント上昇し、新たに2百万人の女性が就業しました。成長の果実をしっかりと分配に回すことで、次なる成長につながっていく。『成長と分配の好循環』によって、アベノミクスは今なお、進化を続けています」
アベノミクス景気のバラ色の成果を謳い上げ、なおかつ「アベノミクスは今なお、進化を続けている」とバラ色の輝きを一層増すだろうことを約束している。
安倍晋三はほかにもアベノミクス景気のバラ色の成果を謳い上げているが、数ある演説のうちから二つ挙げてみる。
「共同通信加盟社編集局長会議 安倍総理スピーチ」(2018年10月12日)
安倍晋三「これまでの農政改革によって、生産農業所得はこの18年間で最も高い3.8兆円まで拡大しました。ビザの緩和など観光立国を推し進めた結果、日本を訪れる外国人観光客は、5年連続で過去最高を更新し、2800万人を超えました。生産性の向上や下請け対策など、中小企業政策は安倍内閣が最も力を入れてきた分野です。中小・小規模事業者の倒産は、今、四半世紀で最も少なくなり、この春の賃上げ率は20年間で最高となりました。
こうした中で、地方の法人関係税収は、ほとんどの都道府県でこの5年で4割から5割増加しました。今、地方税収は過去最高となっています。これは、地方にも、確実に、景気回復の温かい風が届き始めた証左だと思います。もちろんこれで十分だとは思ってません。もっとこの流れを加速していきたいと考えています。そして、地方から東京圏への人口流出の問題にもしっかりと取り組んでいきたいと考えています。
皆さんも御存じのとおり、安倍内閣になって史上初めて47全ての都道府県で有効求人倍率が1倍を超えました。そしてこの状況が、既に2年以上続いています」
「この春の賃上げ率は20年間で最高となりました」、「47全ての都道府県で有効求人倍率が1倍を超えました」等々。
このバラ色の成果は、当然、各家庭の所得にバラ色の輝きを失わないままに反映されなければならない。
既知の事実となっているが、安倍晋三は戦後最長と見ているアベノミクス景気が打ち立てたバラ色の成果のその輝きを民主党政権時代の経済指標との対比でも描き上げている。2019年2月10日の自民党大会。5ヶ月後に参議員選挙を控えていた。文飾を当方。
安倍晋三「12年前のいのしし年、亥年(いどし)の参院選、我が党は惨敗を喫しました。当時、総裁であった私の責任であります。このことは片時たりとも忘れたことはありません。我が党の敗北によって政治は安定を失い、そしてあの悪夢のような民主党政権が誕生しました。
今、皆さんにはしみじみと思い出していただいたと思います。決められない政治。経済は失速し、後退し、低迷しました。若い皆さんがどんなに頑張ったってなかなか就職できない、仕事がなかったあの時代、地方においても今よりも中小企業の倒産件数が3割も多かったあの時代、もう人口が減少していくんだから成長なんかできないと諦めていたあの時代に、皆さん、戻すわけにはいかないんです」
「あの悪夢のような民主党政権」との対比で逆説的にアベノミクス景気のバラ色の成果を大型スクリーン一杯に写し出すように描き出している。
安倍晋三がかくまでも高らかに謳い上げているアベノミクス景気の成果が民主党政権最後の年の2012年との比較で第2次安倍政権の2013年から2018年までの階級別の所得金額の分布状況から謳い上げているとおりのバラ色の輝きを実際に放っているのかどうかを見てみることにした。
以下の2012年から2018年までの「階級別所得の分布状況」(2019年分は2020年7月に公表)は厚労省サイト「国民生活基礎調査」から採り、纏めたもの。最後のマス目の「平均」2013年から2018年までの安倍政権の平均を計算した。
但し平均値が全て有力な意味を持つわけではない。例えば「平均所得金額」等は各年ごとの増減がより大きな意味を持つし、ポイント数が下がっている方が統計上の成果を挙げている場合もある。その辺は適宜解釈されたい。相対的貧困とは世帯の所得がその国の等価可処分所得の中央値の半分に満たない人々のことを言い、日本なりに貧困状態にあるとこと示すが、〈「貧困率」は、平成22(2010)年以降の大規模調査年のみ掲載しています。>となっていて、図には載せていないが、2012年と2015年が調査対象年となっている。
〈2012年の貧困線(等価可処分所得の中央値の半分)は122 万円(名目値)となっており、「相対的貧困率」(貧困線に満たない世帯員の割合)は16.1%となっている。また、「子どもの貧困率」(17 歳以下)は16.3%となっている。〉
〈2015年の貧困線(等価可処分所得の中央値の半分、熊本県を除く。)は122 万円となっており、「相対的貧困率」(貧困線に満たない世帯員の割合、熊本県を除く。)は15.7%(対2012年△0.4ポイント)となっている。また、「子どもの貧困率」(17 歳以下)は13.9%(対2012年△2.4 ポイント)となっている。
相対的貧困率も子どもの貧困率も少しずつ下がってきていて、安倍晋三も2019年1月28日の通常国会施政方針演説で、「悪化を続けてきた子どもの相対的貧困率も、初めて減少に転じ、大幅に改善しました。平成5年以来、一貫して増加していた現役世代の生活保護世帯も、政権交代後、8万世帯、減少いたしました」とアベノミクス効果を誇っているが、安倍晋三が「この6年間、私たちの経済政策によって働く人、雇用は380万人も増えました」等々と謳い上げているが、バラ色の輝きを持ったバラ色の成果程には貧困率が急減しているわけではない。
なぜなら、雇用が380万人も増えれば、賃金が上がり、貧困世帯も、子どもの貧困も劇的に減ってもいいはずだが、そうなっていないのは総務省統計局調査の2019年7~9月期平均の「労働力調査」は、〈役員を除く雇用者5681万人のうち,正規の職員・従業員は3492万人と,前年同期に比べ8万人減少。非正規の職員・従業員は2189万人と,71万人増加〉としていて、正規10人に対して非正規は6人も占めている。
尤も政府は、〈非正規の職員・従業員について,男女別に現職の雇用形態についた主な理由をみると,男女共に「自分の都合のよい時間に働きたいから」が最も多く,男性は前年同期に比べ31万人増加,女性は14万人増加〉と自己都合型非正規の多さを以って非正規雇用の正当化を謀ろうとしているが、自己都合型非正規であろうと、非自己都合型非正規であろうと、そもそもからして正規と非正規の賃金格差は年収で120万以上も違いがあるという厳然たる事実、男女間の賃金格差も無視できない金額となっていることがそもそもの元凶であって、その元凶をそのままに非正規雇用の正当化を謀ろうとすること自体が間違っているだけではなく、景気回復で上は上がっても、低所得層の賃金が上がらない要因の一つとなっていて、格差が是正できない原因となっている。
安倍政権は2016年1月の通常国会施政方針演説「ニッポン1 億総活躍プラン』を掲げ、「同一労働同一賃金」をその柱の一つにしたが、2019年9月27日付「時事ドットコム」記事によると、2018年の1年間に得た平均給与は6年連続増加しているものの、〈雇用形態別に見ると、役員を除く正規社員が503万5000円、非正規が179万円で、分類を始めた12年以降、格差は一貫して広がっている。〉としていて、雀の涙程賃金が上がっても、格差の大きさは生活の困窮か解放されるには如何ともし難い。
2018年の正規と非正規の賃金格差、男女の賃金格差は独立行政法人「労働政策研究・研修機構」調査で平均年齢43.6歳所定内給与337万円に対して女性平均年齢41.4歳247万円となっていて、女性は男性の73.3%という差がついているだけではなく、G7の中では男女賃金格差が最も高いとされている。
当然、安倍晋三が「この春の賃上げ率は20年間で最高となりました」と言っているアベノミクスのバラ色の成果は安倍晋三本人が謳い上げる程にはバラ色の輝きを放っていないことになる。
図にある給料から税金や社会保険料等を差し引かれた、実質的に消費に回すことができるカネである「平均可処分所得金額」は「平均所得金額」と比較して120~30万円も少なくなっているが、所得分布が低い世帯程、この差は低くなるにしても、低所得層にとって可処分所得金額が自身の所得金額よりも少なくなるいということは生活に余裕を与えない、かなりしんどい厳然たる事実に違いない。
例えば平均所得が100万円未満の世帯は市県民税が免除されるが、生活保護を受けていなければ、国民健康保険税を払わなければならないし、特に買い物時に常に徴収される消費税は溜め息をつかせる年中行事になっているに違いない。
その「100万円未満世帯」は民主党政権最後の年の2013年6.9%に対して安倍政権2018年6.2%と0.9ポイント減少していて、それなりの成果を見て取ることができるが、「100~200万円世帯」はプラス0.7ポイント、「200~300万世帯」は1.3ポイント、「300~400万円世帯」は0.2ポイント、世帯数を増やしているが、「400~500万世帯」で1.5ポイント減、「500~600万世帯」で0.6ポイント世帯数を減らしている。
要するに「100万円未満世帯」の減少分が、「100~200万世帯」、「200~300万世帯」、「300~400万世帯」の増加で十分に補っているものの、その範囲の増加であって、「300~400万世帯」よりも上の「400~500万世帯」と「500~600万世帯」で民主党政権時よりも減らすことで、全体的に差し引きほぼ等しくなっていて、これと言って見るべき程の成果となって現れていない。
このことは「平均所得金額以下世帯」と「平均所得金額以上世帯」の割合の増減にも現れているが、民主党政権の2012年の「平均所得金額以下世帯」62.3%に対して安倍政権2018年は62.4%と0.1ポイント、悪い方向に増やしていて、「平均所得金額以上世帯」にしても2012年民主党政権の37.3%に対して2018年の37.6%と0.3ポイント、格差拡大を意味する悪い方向に増やしている。
もしアベノミクスのバラ色の成果を謳うなら、「平均所得以下世帯」を大きく減らして、平均所得金額以上の「600~700万世帯」は民主党政権最後の年よりも0.6ポイント増やしてはいるが、中間層に当たる「700~800万世帯」、「800~900万世帯」の割合を大きく増やさなければならないが、前者は1.5ポイント、後者にしても、0.6ポイント減らしている。例え0.1ポイントであっても、全世帯数約5千万世帯の0.1ポイントは500万世帯に当たり、バカにならない世帯数となる。
「平均所得以下世帯」を大きく減らして、「700~800万世帯」、「800~900万世帯」の割合を大きく増やせば、平均所得金額そのものの数値が上がることになる。その数値を目を見張る程に上げることができて初めて、「アベノミクスは格差ミクス」の批判を拭い去ることができるのだが、そうはなっていない。
平均所得金額がしっかりと上がっていないから、そうはなっていないから、いわば
確かにアベノミクスによって少しはマシな傾向が見て取れるが、バラ色の成果を謳ったり、民主党政権を「悪夢」と非難できる資格を認めることができる程には成果を挙げていない。
そもそも平均所得金額を眼を見張る程の数値で上げることができなければ、「平均所得以下世帯」は自らの収入に安心感を持てないことになって、安倍政権は2016年に2025年度を目処に出生率を1.8にする目標を掲げているが、どれ程に子育て支援を掲げたとしても、期待外れに終わる公算が大きい。このことはこれまでの出生数を見れば分かる。
2019年6月7日に厚労省が発表した2018年の出生数は91.8万人、過去最低を更新し、出生率は1.8に程遠い1.42人、2019年の出生数は2021年と見込んでいた90万人割れが推計より2年早くなるのは確実で、勿論、過去最少の予想だという。つまり歯止めをかけることもできていない。
先に挙げた2019年1月28日の通常国会施政方針演説でも少子化に触れている。
安倍晋三「我が国の持続的な成長にとって最大の課題は、少子高齢化です。平成の30年間で、出生率は1・57から1・26まで落ち込み、逆に、高齢化率は10%から30%へと上昇しました。
世界で最も速いスピードで少子高齢化が進む我が国にあって、もはや、これまでの政策の延長線上では対応できない。次元の異なる政策が必要です。
子どもを産みたい、育てたい。そう願う皆さんの希望を叶(かな)えることができれば、出生率は1・8まで押し上がります。しかし、子どもたちの教育にかかる負担が、その大きな制約となってきました。
これを社会全体で分かち合うことで、子どもたちを産み、育てやすい日本へと、大きく転換していく。そのことによって、『希望出生率1・8』の実現を目指します。
10月から3歳から5歳まで全ての子どもたちの幼児教育を無償化いたします。小学校・中学校九年間の普通教育無償化以来、実に70年ぶりの大改革であります」
華々しく掲げた政策の成果をバラ色の輝きで誇るが、特に一般国民が安心と保証を手に入れることができる賃金に関する政策では等しく満足させる程に何一つ実現できていない。統計上、アベノミクス景気が戦後最長景気であることが明らかになったとしても、実感なき景気であることに変わりはない。アベノミクス景気がバラ色の輝きを放っているかのようにその成果を誇るのは自らが看板に偽りありを演じているに過ぎない。
大企業が過去最高益を上げている状況に対して一般生活者の賃金が満足に上がらない状況、実感なき景気回復に過ぎない状況は“上に極厚・下に極薄”のアベノミクスが格差ミクスそのものであることを物語っていて、一般的な国民の一般的な生活に向けてバラ色の成果は逆説となって襲いかかってくる。