どこの民放局か忘れたが、昨日(4月28日)の朝の番組で伊吹自民党幹事長が衆院山口2区補選について次のように述べているシーンを流していた。
「自民党が勝っても、民意だと思わないし、民主党が勝っても、民意だと思わない」
民意を問うものでなければ、では選挙は何を問う場なのだろうか。例えカネで票を買ってそのことが有利に働いた当選だとしても、カネで票を売る民意(=国民の意思)が左右した選挙結果・当落ということなのだから、選挙が民意の所在を問うことで成り立っている構造であることに変わりはない。テレビタレントで面白いからあの人に入れようとする民意が大勢を占めて当落を決定する選挙もある。
衆院山口2区補選は選挙戦中からマスコミによって野党民主党候補の優勢、与党候補の劣勢が伝えられていた。次の衆院選挙で与野党逆転があってもおかしくない苦しい政治状況の中、与党の幹事長として落選した場合のショックを和らげたい気持があったから、衆院山口2区という日本という全体に於ける単なる一地域の補欠選挙とすることで、日本全体の「民意」ではないとしたかったのだろう。
だからと言って、合理的判断能力を失っていいというわけにはいかない。政権党の幹事長の地位にある者の見識の問題にも関わってくる。選挙で争点となっていた道路特定財源問題にしても消えた年金記録問題にしても、後期高齢者医療制度問題にしても山口2区という一地域に特殊な問題ではなく、日本全体の問題、日本国民全体の問題としてあるだから、全体的な民意の帰趨が全体の中の一地域である山口2区の民意と共鳴し合う部分が否定し難く存在するはずで、そういった中で与党候補を排除して野党候補を選択したという選挙結果・民意結果は共鳴し合った割合が多いということを示したもので、どうこじつけたとしても一地域の問題に貶めることはできないはずである。
逆に選挙結果は山口2区という日本の中の一地域の民意が一地域を超えて日本全体の民意の所在を改めて示したとも言える。そのことはマスコミ各社の全国民を対象とした世論調査が証明している。世論調査どおりの選挙結果でもあるからだ。それ程にも地域に関係なく密接に関わっている、民意を刺激せずにおかない道路特定財源問題であり、消えた年金記録問題であり、後期高齢者医療制度問題となっているのである。
いくら敗戦ショックを和らげる自己都合の言葉だとしても、余りにもこじつけ・牽強付会の言葉となっていて、そうであること自体が合理的判断能力を欠いている証拠なのだが、衆院山口2区補選の民主党候補の当選を民意によって判断された結果でないと価値づけてしまったなら、伊吹自身の京都府1区での当選も民意を受けた負託ではないとしなければ整合性を失う。
整合性を失うことになるということに気づかないところにも伊吹文明なる政治家の合理的判断能力の程度を限りなく疑わざるを得なくなる。
伊吹文明のご都合主義・客観的判断能力欠如を解く鍵は伊吹自身が口にした次の言葉から窺うことができる。
「大和民族が日本の国を統治してきたことは歴史的に間違いない事実。きわめて同質的な国で、悠久の歴史の中で、日本は日本人がずっと治めてきた」と自ら口にした言葉が証明している。
これは大和民族あるいは日本人を優越的に上に置く権威主義からの言葉で、その肯定は自らも権威主義に染まって自分自身を優越的上位に置いているから口にすることができた言葉であろう。民族・国家を上に置くことによって、そこから民族・国家を上に置くに都合のいい「民意」は歓迎されるが、不都合な「民意」は無視するという上に立つ者のみの利益に添った原則が導き出されることになる。
だから、昨07年の参議院選挙の野党勝利という直近の民意の自民党に不利な局面を限りなく無視すべく、伊吹は05年衆院選挙の与党大躍進の自らに有利な民意を持ち出して、「参議院も民意、衆議院も民意」だと一見同等に扱っているように見えるが、参議院に対する衆議院の優位性を楯に実際は衆議院の民意を上に置く合理的判断を無視した自己都合の意志を働かせることができたのである。
「民意」を自己都合で価値づける合理的判断を著しく欠く政治家が政権党でそれ相応の地位を占めている。今後とも「おらがセンセイ」だとする「民意」を受けて当選し続け、自民党の何様としてのさばり続けることだろう。素晴らしきかな日本の政界。
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