岡田幹事長は自身の衆院選挙マニフェストの優越性否定が政権担当の正当性喪失の宣言だとは気づいていない

2011-07-22 10:20:28 | Weblog



 岡田民主党幹事長が21日(2011年7月)記者会見で2009年衆院選挙マニフェスト(政権公約)について実現の見通しが甘かったことを認め、謝罪したと言う。《岡田幹事長 政権公約で謝罪》NHK NEWS WEB/2011年7月21日 19時28分)

 岡田幹事長「実現できていない政策がある理由として、マニフェストを作成する際に政策の必要性や実現の見通しの検証が不十分なところがあったことが挙げられる。政権交代で大きな政策転換を一気に実現するという意気込みが、歳出の増大につながった。その見通しの甘さを国民に率直におわび申し上げたい。

 マニフェストに盛り込んだ政策が、震災復興の予算措置と比べて重要性が高いのか検証することも必要だ」――

 「政策の必要性や実現の見通しの検証が不十分なところがあった」

 「その見通しの甘さを国民に率直におわび申し上げたい」

 これは岡田幹事長が一人認めたことなのか、党全体と内閣も認めている認識なのかは分からないが、少なくとも与党幹事長でありながら、岡田幹事長は「国民に率直におわび申し上げたい」で済むことだと思っているらしい。当時野党だった民主党は2009年衆院選でマニフェストに掲げた政策の与党自公の政策に優る優越性を訴えて政権担当の国民の審判を受けることになった。

 公約とした政策を実現するとはその優越性を実現することを言うはずである。いわば政権担当の正当性はマニフェストに掲げた政策の優越性の実現にある。

 訴えた優越性を実現できずに平凡な実現で終わった場合も、やはり政権担当の正当性を失うはずだ。

 それが一つ二つの政策の優越性が実現不可能となって優越性そのものを失った場合、少なくともその政策に関しては政権担当の正当性を失う。

 だが、マニフェストに目玉として掲げた民主党としての主たる政策で国民に訴えた優越性をそのままに実現することができずにその優越性を失っているということなら、与党として政権を担当する全体的な正当性そのものを失っていることになる。

 当然、岡田幹事長が「政策の必要性や実現の見通しの検証が不十分なところがあった」と自らマニフェスト政策の優越性を否定したということは否定を通して政権担当の正当性喪失を自ら宣言したことになる。

 だが、岡田幹事長はそのように宣言したことになることに気づかずに、あるいは政権担当の正当性を失っていることに気づかずに、「マニフェストに盛り込んだ政策が、震災復興の予算措置と比べて重要性が高いのか検証することも必要だ」と政権に居座ったままマニフェストを見直そうとしている。

 このことが許されるとすると、政権を賭けた選挙でマニフェストでいくらでもウソをついてもいいことになる。政策の優越性を根拠もなく口先だけで訴えることも許されることになる。

 岡田幹事長は政権に居座ったままマニフェストの見直しを画策しているばかりか、見直しを野党に対する法案成立の取引材料にしようとしている。

 岡田幹事長「各党には、こうした考え方を理解してもらい、赤字国債発行法案の成立に向けて協力してもらえればありがたい」

 何が起ころうと、それが大震災であろうと、政策は優越性を剥がしてメッキとしてはならないはずだ。メッキとした場合、政権担当の正当性を失ったとして、解散・総選挙して、新たにマニフェストをつくり、改めて政策の優越性を掲げて政権担当に関わる国民の審判を受け直すべきだろう。

 特に岡田幹事長は原理主義者で知られている。厳密に政権担当の正当性に照らした行動を取るべきである。

 もし財源が不足するというなら、あらゆる方法を尽くして何としてでも財源を捻り出し、震災の復旧・復興とは別にマニフェストに掲げた政策の優越性を守り、その優越性の実現に全力を尽くすべきである。それが政権党の国民に対する責任であろう。

 このような厳しさがなければ、政権担当の力は生まれてこないはずだ。厳しさもなく、選挙で議席を獲得しさえすれば政権は担当できると甘く考えることになり、選挙自体、あるいは議席獲得自体が目的化することになる。

 記事は最後に次のように解説している。

 〈民主党のマニフェストを巡っては、自民党が、菅総理大臣が退陣の条件の1つに挙げている赤字国債発行法案の成立に協力する前提として、子ども手当などの主要政策が実現できないものであることを認めるよう求めており、岡田氏としては、これに応じて見通しの甘さを謝罪することで、法案の成立に向け、自民党などの協力を取り付けたいというねらいがあるものとみられます。岡田氏は、22日開かれる、民主・自民・公明の3党の幹事長会談で、直接、説明することにしています。〉――

 結局政策の(優越性の)実現よりも駆引きだけが残る。

 野党も、岡田幹事長と同じくマニフェスト政策の優越性の喪失が政権担当の正当性の喪失を意味していると受け止めていない。《岡田氏謝罪 民主動向見極めへ》NHK NEWS WEB/2011年7月22日 5時51分)

 岡田幹事長の記者会見での発言を受けた自公の反応を伝えている。

 大島自民党副総裁「岡田氏が国民に謝罪したことは、現状を客観的に考えた上での率直な意見だと受けとめている」

 石破自民党政務調査会長、「マニフェストの中身をどのように見直すのか。そして、今年度予算の歳出を、どのように削るのかということがない限り、ほとんど意味がない」

 歳出の見直しが行われなければ、赤字国債発行法案の成立には協力できないなどという意見が出ていないという公明党。

 公明党「党内で根回しもせず唐突に打ち出したことは問題だ」

 かくかように岡田幹事長が「各党には、こうした考え方を理解してもらい、赤字国債発行法案の成立に向けて協力してもらえればありがたい」と、マニフェストの政策変更を取引材料とした思惑通りには野党は素直に反応していない。

 だが、マニフェストの政策変更を取引材料とすること自体が間違っている。同じことを繰返すことになるが、自ら政策の優越性を放棄し、政権担当の正当性を喪失させることになるからだ。

 ちょうどこの記事を書いているときに参議院予算委員会のNHK中継で、公明党の渡部孝男議員が岡田幹事長の記者会見発言を取上げて、菅仮免も同じ考えで国民に謝罪するのかと質問すると、菅仮免は、「マニフェストの方向性は間違っているとは思わない、ただ財源の問題で実現できない政策や、緊急性の問題で震災復興を優先させなければならない場合もあり、マニフェストを全てに優先させなければならないとは限らない。マニフェスト見直しは党で現在行っていることで、見直さなければならない点は岡田幹事長と思いは同じで、その点に関しては国民に謝罪したい」といったことを言っていたが、民主党のマニフェスト問題は殆んどが財源問題で、財源不足を理由にマニフェストの不履行を許すとしたなら、そもそもからして財源の裏付けなくして政策の優越性はいくらでも訴えることができることになり、その不備・不徹底自体が政権担当の正当性を欠く理由となる。

 あるいは政権担当の資格が最初からなかったことの証明としかならない。

 当たり前の状況にあるなら、解散・総選挙で政権担当の正当性を問い直すべきだが、震災復興を優先させなければならないために直ちに選挙ができないと言うなら、政権担当の正当性を失った内閣として菅内閣は総退陣して、新しい内閣に政権を担当させるべきだろう。



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