国土交通省が今年1月1日時点での土地取引の指標となる08年の地価公示価格を発表した。知人の便宜に役立てようと我が住む街の「公示価格」をインターネットで調べてみた。
いつも思うことだが、省庁関係のHPの殆どが1ページに纏めることができる情報を何ページにも分けてハイパーリングでつなげて提供する方法を取っている。クリックして何ページも開くのが面倒なだけではなく、一画面に情報が一括提示してないために一度に情報全体を俯瞰することができず、情報を細部まで把握し、理解するためには頭が悪い私などは前のページに戻ったり、後ろのページに戻ったりして理解が足りない部分を埋めていかなければならない。下手にページ数が多いと、読書していて、たまにしか登場しない人物がどのような背景を持っていたか咄嗟に理解できず、どのページに説明があったか分からない前のページを何ページも探して調べるのと似た面倒が生じることもある。
例えば安倍内閣の目玉だった「美しい国づくりプロジェクト」の「トップページ」は伝統工芸である着物の柄の絵を描いている職人(らしい)写真と新幹線、多分岐阜の高山の茅葺の民家、そして現代日本の高度成長を象徴しているのだろう、東京都庁の建物を中心に据えてその近辺の高層ビルが写っている写真、合計4枚の写真とリングで表示できる次のような各ページの案内が続いている。
「プロジェクト概要」
「この人に聞く」
「発見!みんなの日本『らしさ』」
「『美しい国、日本』資料室」
「『美しい国づくり』推進室」
そして説明文。<四季折々の風景、伝統が織り成す技や文化、日々の生活の中にある日本の美しさ。私たちの国、日本には、様々な分野で本来持っている良さや「薫り豊かな」もの、途絶えてはいけないもの、失われつつあるもの、これから創っていくべき美しいものがあります。私たちの国の未来を確固たるものにするため、私たち一人ひとりの「美しい国づくり」へのきっかけを創ろうとするのが、「美しい国づくり」プロジェクトです。>・・・
これだけで1ページの体裁となっている。他のページにリンクさせると、さらにリンクしなければならないページが枝分かれして、それぞれの情報量も「トップページ」と似たり寄ったりの字数でしかない。
それぞれのページは写真や様々な絵柄で体裁を凝らしているが、全体の情報が1ページに纏め切れない量というわけではないのに何ページにも分割してある。当然のことで提供されている情報全体を一度に俯瞰することができないから、俯瞰できない分、情報理解に時間的な手間がかかる。
国土交通省の「地価公示」にしても、我が市は49件の表示を十分に1ページに纏めきれる情報量であるにも関わらず、20件ずつ3ページに分割してある。各ページの1件ずつをさらにリンクしていくと、以下の「詳細説明」のページに行き着く
「国土交通省地価公示」
標準地番号 清水9-2
所在ならびに地番 静岡県静岡市清水区日の出町101番外
住居表示 日の出町3
調査年 2008年
価格(円/m2) 108,000
地積(m2) 7637
形状 間口:奥行き 2.5:1.0
利用区分、構造 建物などの敷地 RC(鉄筋 コンクリート造) 1F
利用現況 倉庫
周辺の土地の利用現況 倉庫が建ち並ぶ臨海の流通業務地域
道路方位、区分 西22.0m 国道
その他の接面道路 四方路
給排水状況 水道 下水
最寄り駅名、距離 清水 2,100m
用途区分、高度地区、防火・準防火 工業地域 準防火地域
森林法、公園法、自然環境等
建ぺい率(%)、容積率(%) 60 200
都市計画区域区分 市街化区域
これを日本全国に当てはめた場合、目が飛び出る程のページ数になるに違いない。
断るまでもなく、情報はページ数が多い程全体俯瞰が困難となり、そのことに比例して素早い情報理解が困難となる。
ではなぜ、ページ数を減らす方向にないのだろうか。考え得るHP制作側のメリットはページ数で単価を決めているからではないか。
その辺の経緯は以前内閣府主催ヤラセ教育タウンミーティングで有名となった、その高額な経費算定方法が証明するのではないだろうか。民主党の蓮舫議員が03年12月に岐阜市で開催したタウンミーティングに関する内閣府と広告代理店との業務契約内容に関して06年11月22日に国会質問を行っているが、それ相応の会場を借り、文部大臣が来て教育について話し、一般市民が質問をする、たったそれだけの役にも立たない儀式に1千万円もの経費を計上している。因みに蓮舫議員が質問中明かした情報だが、平成13年度前半の1回当りの開催経費が2200万円もかかっていたという。
延長料金を入れても一人頭5万程度のストリッパーにも変身する便利なスペシャルコンパニオンを100人集めて宴会したとしても500万円+宴会費用である。2200万円とは驚きの金額となる。
岐阜の教育タウンミーティングの場合、落札業者の「単価内訳書」は100項目前後に亘っていて、その一つ一つに単価が提示されていた。例えば空港での閣僚送迎に1万5千円、車で到着した閣僚を会場で出迎え、エレベータまで案内するのに4万円、エレベーターを運転するのに1万5千円、エレベーターから控え室までの案内が5千円といった具合に事細かに仕事を分けて、それぞれに単価をつけていた。
このようにすることのメリットは仕事の項目を示さずに高額な全体の金額を示した場合、相手に高いと思わせるが、たくさんの項目を並べて、それぞれにいくらかかる、全体としてこれだけになりますと合計を示した場合、仕事項目の多さによって高額だと感じさせない一種の詐術を行うことができる。
それと同じで、HPのページ数の多さが経費を納得させる心理を利用してページ数を多くしているのではないのか。勿論、この手の金額算定方式は1ページいくらの契約を前提としていなければならない。
だが、情報を受け取る側の人間が1ページの情報量を少なくしてページ数を増やす情報伝達方法に慣らされ、それを習慣とした場合、そのことと併行して一度に情報全体を俯瞰する習慣を失うこととなり、当然の成り行きとして情報把握能力、もしくは情報解読能力に支障を来たすことにならないだろうか。少なくとも情報解読時間能力に影響することになるように思える。素早い情報解読に不慣れとならないだろうか。全体の起承転結の把握に時間がかかるからだ。杞憂であるならいいが、そのような危惧を抱えてしまう。
確実に言えることは少ないページで情報全体を把握できるよう処理してない情報は情報理解を手間取らせる不便を情報の受け手に与えているのは確かな事実だと言うことである。さらに言うなら、情報の受け手に不便を与えるような情報伝達を許していること自体が役所の情報という事柄に対する理解能力の拙劣さを証明していると言えるのではないか。業者に任せているという弁解は通用しない。
ムダ遣いではないかと疑えるのは各情報を小出しにしてページ数を多くしていることだけではない。国土交通省の「地価公示」ページにはそれぞれに「空中写真」のページがリンクされていて、それを開くと、「国土画像情報(カラー空中写真)閲覧機能(試作版)」と銘打って、最初に「解像度50pdi」(サイズ「490×444」)の空中写真が提示される。さらに「100 pdi」(サイズ「980×888」)、「400 pdi」(サイズ「3921×3552」)の写真へのリンクが可能となっている。
「地価公示」価格の提示は土地取引の指標を目的としている。だが、いずれの空中写真も建物の種類や密集度は確認できても、それぞれの建物の種類・業務目的が理解できるわけのものではなく、何を目的に決して安くはない空中写真まで添えたのか理解に苦しむ。例え「試作版」であっても、決して安く収まるわけではない「空中写真」であろう。役に立たないとなったなら、壮大なムダ遣いとなる。その疑いが濃厚ということなら、マスコミにしても野党議員にしても追及しなければならない役所行為となる。
参考にそれぞれの写真をサイズ「250×250」に切り取って左から「50pdi」、「100pdi」、「400pdi」の順に画像を記載。写真のどこから土地価格が把握できるというのだろうか。
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