北海道洞爺湖サミット2日目・G8首脳宣言「我々は、2050年までに世界全体の排出量の少なくとも50%の削減を達成する目標というビジョンを、UNFCCC(国連気候変動枠組条約)のすべての締約国と共有し、かつ、この目標をUNFCCCの下での交渉において、これら諸国と共に検討し、採択することを求める。」(外務省HP)
北海道洞爺湖サミット3日目・主要経済国首脳会合宣言「我々は、成長、繁栄及び、持続可能な消費と生産に向けた主要な努力を含む持続可能な開発のその他の側面を保証する、排出量削減の世界全体の長期目標を含む、長期的な協力行動のためのビジョンの共有を支持する。これらはすべて、低炭素社会の実現を目指すものである。我々は、科学的知見を踏まえ、世界全体の排出量の大幅な削減が、同条約の究極的な目的の達成に必要となること、及び適応はそれに応じた極めて重要な役割を果たすことを認識する。我々は、条約の下での交渉において、締約国が衡平原則を考慮して、世界全体の排出量の削減について世界全体の長期目標を採択することが望ましいと信じる。(外務省HP/仮訳)
G8の合意である「50%の削減を達成する目標というビジョンを共有し、この目標を検討し、採択することを求める」
07年ハイリゲンダム・サミットの「2050年までに温室効果ガスを半減することを真剣に検討する」合意と文言の違いを除けば、どこがどう違うというのだろうか。「採択することを求め」ているが、「採択することを」義務付けてはいない。求めに応じない自由も許されていると解釈するなら、「真剣に検討する」との違いはなくなる。来年のイタリアサミットでの温室効果ガス削減論議は振出しに戻るだけのことだろう。
その上サミット3日目の拡大会合(主要経済国首脳会合)が追い討ちをかけた。
2050年には中印を含む途上国の二酸化炭素(CO2)排出量は世界全体の6割を超えると見られているにも関わらず、中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカの新興5カ国は8日会合を開いて地球温暖化原因の温室効果ガスの蓄積は「先進国の歴史的責任」(「毎日jp」記事)と位置づけ、「共通だが差異のある責任」(「日経ネット」記事)を掲げて「先進国は2020年までの中期目標として1990年比で25~40%、2050年までの長期目標では90年比で80~95%削減すべき」(「日経ネット」記事)と先進国に厳しいまでにより多くの削減責任求める「政治宣言」を発表、その姿勢のまま拡大会合に臨んだ新興5カ国を説得できず、G8首脳宣言で合意したとする「50%」という削減目標値を盛り込むことができなかった上にG8の「採択することを求める」が拡大会合では「採択することが望ましいと信じる」へと後退してサミットは幕を閉じた。
それなのに福田首相は「一応の成果を上げた」と言う。
温室効果ガスの蓄積は「先進国の歴史的責任」だとする中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカの新興5カ国の主張は全面的に正しい議論だと言えるのだろうか。
先進国がせっせとたゆまず怠らずに温室効果ガスを排出して地球を散々に温暖化させ、散々に痛めつけて経済発展を遂げ、そのことによって蓄えたカネの支援、技術の移転を受けて途上国は経済発展の道に就くことができたのである。
いわば中国もインドも自国の経済化・工業化に先進国が排出してきた温室効果ガスの恩恵に浴してもいたのである。先進国による温室効果ガスの排出がなかったなら、現在のような先進国の経済発展もなかっただろうし、その影響下の中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカ等の新興国の経済発展もなく、「新興国」という名前すらついていなかったかもしれない。
言ってみれば、先進国が排出した温室効果ガスの後押しを受けた新興国のこれまでの経済発展と言える。先進国の温室効果ガス排出なくして、新興国の経済発展はなかったとも言える。
先進国が生産拠点を中国に移した結果中国の温室効果ガスの排出が増えた側面もあるが、そのことも中国経済発展の原動力に含まれるべき因果性であろう。
いわば温室効果ガス排出とその削減に関しては先進国も発展途上国も一蓮托生だということではないのか。
一蓮托生な上、温室効果ガスが地球環境維持に悪影響を及ぼすということなら、「先進国の歴史的責任」だとか「共通だが差異のある責任」だとばかり言ってはいられず、その削減に協同で当たらなければならないはずだが、言って憚らない責任の一方的押し付けには胡散臭さを禁じ得ない。
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