安倍晋三が6月18日に同じ自民党に所属する山崎拓の北朝鮮外交姿勢を「百害あって利権あり」と批判し、対して山崎拓が「私の政治生命にかかわる発言だ。私は利権政治家ではない。誹謗中傷する政治家の人格を疑う」(MSN産経)と反論、「名誉棄損に相当する。安倍氏に取り消しと謝罪を求める」(同記事)と色をなしたということだが、大体が安倍晋三は引退すべき政治家であって、どのような形であろうとシャシャリ出る資格はないと思っていたから、その余計なシャシャリ出と同時に役にも立たなかった「美しい国・日本」の奇麗事までも思い出して腹が立ってきた。
(08.7.1『朝日』朝刊の「週刊朝日」広告)
各省の役人たちが深夜帰宅時の公費乗車のタクシーの運転手から乗車の見返りに現金やビールの接待を受けていた、いわゆる「居酒屋タクシー」問題に見る公務員にあるまじきさもしい役得行為体質、国家公務員が公務出張時取得した航空会社のサービス利用ポイント(マイレージ)を家族旅行などに私的流用して得した感覚に浸るみみっちい役得行為体質などのコジキ行為の類が跡を絶つことなく持ち上がるこのような美しくない足許の日本社会の解決に日本人の殆どが人格形成にクスリにもしていない技術行為あるいは見せ掛けの装い行為で遣り過ごすことができるママゴト遊びにも等しい日本"らしさ"や日本 "ならでは"の感性、知恵、工夫、そして行動の再発見を趣旨とした「美しい国・日本」の提唱が役に立つと思っていたのだろうか。
単細胞にも役に立つと思ったから提唱したのだろうが、その実現を図るべく足許の日本社会に政治家・官僚の卑しいコジキ行為・卑しい役得行為が跳梁跋扈していることには目を向けずに大真面目に首相官邸内に「美しい国づくりプロジェクト」を立ち上げ、「日本の美しさ、日本人の美しさとは何かを問い直していただいて」云々の安倍晋三の挨拶を受けて大真面目にバカらしくも活動を開始した。 足許の日本が美しくもなく、足許の日本人にしても美しくないことはお構いなしにである。
プロジェクトのテーマは人間が利害の生きものであることの認識もなく、「私たち日本人の暮らしや仕事の中に息づいている、本来持っている良さや『薫り豊かな』もの、途絶えてはいけないもの、失われつつあるもの、これから創っていくべき美しいものがあることを踏まえながら、皆さんと一緒に、一人ひとりが日本"らしさ"を見つめなおすことから始める」とか、「これからの私たちの成長や活力の"糧"として、日本 "ならでは"の感性、知恵、工夫、そして行動に気づき共有し、そのことを日々の暮らしや仕事の中で磨き上げ、創り出していくことで、『美しい国、日本』を築いていくことを目指す」とし、その具体化の第一弾として、「あなたが思う、日本"らしさ"、日本"ならでは" のものとして推薦できる『美しい日本の粋』>を平成19年4月20日(金)~6月22日(金)の募集期間で公募」といった卑しい人間行為に満ちた足許の日本社会を他処に置いた、だからこそママゴト遊びに等しい「美しい国・日本」探しであった。
だからだろう、合理性を多分に抱えていなければならない政治家でありながら、人間が本質的には日本"ならでは" とか日本"らしさ"とは無関係のところで生きている生きものであることにあまりにも無知であったから、自分が任命した閣僚の政治資金管理団体の事務所費架空計上問題や不適切発言問題等の美しくない行為で支持率を下げる復讐を受けることとなった。
身のまわりのことでありながら、自分自身も含めて政治家・官僚が日本"ならでは" とか日本"らしさ"に則って行動してはいなことに気づかない程に客観的認識性を欠いていたのである。
国家公務員が公務出張時取得した航空会社のサービス利用ポイント(マイレージ)を家族旅行などに私的流用するみみっちい役得行為は出張の交通手段に座席指定の新幹線グリーン車券を受け取りながら、それを金券ショップで売りさばいて新幹線自由席で以って往復の交通手段とし、その差額を私腹するのと大差ないみみっちさであろう。
政界・官界を含めて足元の日本社会がドロドロと腐敗し切っているのに、日本にはこんな美しいものがあった、美しい文化があった、再発見して役立てようと夢見るような子供騙しのことを言っていた。自分の子供が外で悪事を働いていて、それを外部の人間に注意されると、「うちの子に限ってそんなことはありません」と言う愚かな母親と大差ない人間・社会を見る目のない政治家だった。
<女性の政界や経済界への社会進出度を示すジェンダー・エンパワーメント指数(GEM)が93か国中54位(07年)で、前年の75カ国中42位に続き低迷が続いている。>(≪女性の社会進出低迷、93か国中54位…男女共同参画白書≫2008年6月13日11時08分/読売新聞)といった日本に於ける女性の美しくない社会進出状況を伝える記事に出会うと、その改善に何の役にも立たない「美しい国・日本」を安倍晋三が何のために掲げ、首相官邸に「美しい国作りプロジェクト」を何のために立ち上げたのか思い出して腹が立ってくる。
<GEMは国連開発計画が調査可能な国を対象に、毎年公表している数値で、日本は、欧米だけでなく、ナミビアや、フィリピン、ベトナムなどより低かった。日本では、女性議員の割合が衆院9・4%、参院18・2%(08年度)、国家公務員管理職は、1・7%(05年度)にとどまっている。>(同記事)そうだ。
こういった女性のお粗末極まりない社会進出状況が日本"ならでは" のものであり、日本"らしさ"だというなら、安倍晋三センセイ、あなたは正しいということになる。
社会保険庁の年金の杜撰な業務が発覚し、給付金を満足に受け取れない国民がいることが分かったのは安倍首相の任期時であった。「美しい国・日本」の標榜がが何の役に立ったというのだろうか。その役立たずに腹立たしくなる。
役に立つとしたら、安倍晋三が「美しい国・日本」、「美しい国・日本」と言い立てて国民に日本は美しい国だと思わせることに成功した場合であろう。政治家・官僚の卑しい役得行為・卑しいコジキ行為、あるいは怠惰な仕事は「美しい国・日本」の姿に反する例外として扱うことになって、ある種の免罪符を与えることになるからだ。
例外だとしようがない程に美しくない日本の姿があまりに多すぎる。自殺者が10年連続で3万人超し、高齢者や30歳代の若者が増加したという日本の姿は美しいと言えるだろうか。日本"ならでは" とか日本"らしさ"の再発見で片付いた10年連続3万人を超す自殺者だとでも言うのだろうか。「美しい国・日本」の提唱で片付いた自殺問題だとでも言うのだろうか。
公務員や警察官、学校教師の女子中学生や女子高生といった未成年女性に対するワイセツ行為あるいは少女買春の横行。企業の赤字を黒字と偽って虚偽決算して株価維持や投資を誘う企業倫理。止むことのない官僚の天下り利益確保の官製談合。児童が親に虐待を受けていることを把握していながら、危機管理能力を発揮できずに虐待死させてしまう児童相談所等の子供の命に対する鈍感な態度の広がり。牛肉やうなぎ等の安い外国産食品、あるいは低等級国内産食品を高等級の有名ブランド産地に偽装して高く売るインチキ商売の横行。低価格商品を有名ブランド名をつけて高価格で売りつける儲け第一主義・利益優先主義の横行等々の美しくない日本の姿が果して『美しい国・日本』のスローガンで片付くとでも単細胞にも思っていたのだろうか。
現在も時折顔を覗かす仕事を得るために安い建築費を弾き出すべく鉄筋を細くしたり本数を誤魔化したり、コンクリート量を減らしたりして地震に耐えることのできないゴマカシの設計を行う建築士と建築費の世間一般と比較したその安さを疑わずに建築を行うマンション建設販売業者が一例となっている儲け主義第一・利益優先主義の美しくない日本の姿は歴史を通していずれの時代に於いても人間社会に付きものの姿となっているもので、「戦後レジームからの脱却」の掛け声で片付くとでも思っていたのだろうか。
耐震偽装設計を見過ごして建築確認を出した建築確認事務所や行政の社会問題化したおまけつきの怠慢にしても、「美しい国・日本」に反する、それを掲げるだけでは解決しない日本の社会の姿であろう。
無差別殺人、未成年者の親殺し、親の子供殺し、成人男女の介護疲れ等の理由からの親殺し等の横行も「美しい国・日本」を掲げただけでは解決しない問題のうちに入れなければならない。
大手生命保険会社や損保会社の保険金や給付金の未払いを慣習化させた契約者軽視の儲け主義・利益第一主義が日本の社会の顔の一つとなっていながら、日本にはこんな美しいところもあると「美しい国・日本」を掲げていられた鈍感さ。
企業を潤しただけの人材派遣業界の契約社員を人間扱いしない低賃金酷使も美しくない日本の姿の一つで、安倍晋三が「美しい国・日本」掲げている足許で噴出した問題であったことは、如何に「美しい国・日本」のスローガンまやかしと偽善に満ちていたかを物語って余りある。
天下り団体の税金を使った天下り役員の給与を保証し、彼らの懐を潤すためだけの税金の虫食いの我が物顔の横行も、「美しくない・日本」の姿の代表として挙げなければならないが、これも安倍晋三が「美しい国づくりプロジェクト」の立ち上げの際の挨拶で言った「日本の美しさ、日本人の美しさとは何かを問い直」して解決がつく問題ではないのは断るまでもない。
最近の国土交通省の公用車運転業務入札を巡る天下り団体の談合疑惑にしても、それが事実ということなら、「美しい国・日本」の姿とはいえない税金の虫食い事例に入れなければならなくなる。
≪国交省公用車談合疑惑 元運転手「実働1日2時間」≫ (MSN産経/2008.6.20 02:00 )
<1400台もの公用車を保有する国土交通省の地方整備局。運転・管理業務を最も多く受注している日本道路興運の元運転手は産経新聞の取材に「実働は1日2、3時間。ヒマ過ぎてつらい」と語った。元運転手は、公用車の必要性を強調する地方整備局の主張についても否定した。運転手の証言からも、地方整備局が、税金が投入された運転手付き公用車を“無駄遣い”している実態が鮮明となってきた。元運転手の証言は次の通り。
--どのような用途に使っているのか
「パートの女性を乗せて郵便局や銀行へお使いに行ったり、職員を建設現場に連れて行くなど、ちょっとした移動がほとんど。職員が自分で運転したり、バスやタクシーでも十分行ける用事も少なくない」
--実働はどれくらいか
「1日9時間拘束で8時間勤務だが、実働はふつう、1日に2、3時間程度。災害があれば睡眠時間もままならないが、少ない日は1、2時間しか外に出ず、100キロも走らない。1回も出ない日もある」
--それでも事務所で待機しているのか
「待機所に雑誌とテレビが置いてあって時間をつぶしている。正直、ヒマ過ぎてつらい。職員が運転すればいいと思う」
--地方整備局は、職員が移動の際に脇見運転をせずに道路チェックをするためにも運転手が必要と説明している
「自分が乗せた職員はあまり外を見ていない。道路に落下物がないか、損壊がないかはパトロール車がやっている」
--職員が行く現場には駐車場がないので、運転手が必要だともしているが
「職員が行く建設現場や用地買収の交渉地は、これから道路ができるくらいだから何もない場所がほとんど。空き地に止めている」
--移動しながら会議をすることもあるので、400万円を超える大型高級車が必要とも説明している
「めったに大人数は乗せないし、会議と言うほどの話をしているのを聞いたことはない」
--地方整備局はなぜ運転手が必要だと言っていると思うか
「事故が起きたときの責任逃れ。業務委託でなく、運転手を直接、雇用したとしても、かかるお金は変わらないのではないか。運転手は薄給でボーナスも減っているが、国交省から天下ってきた幹部は高給をもらっている」>・・・・・・
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≪国交省天下り2社、公用車運転業務の9割受注≫(asahi.com/2008年6月12日3時0分)
国土交通省が民間に委託している公用車の管理・運転業務の大半を、同省から多くのOBが天下っている在京2社が受注していることがわかった。過去5年間に全国の地方整備局などが結んだ契約計364件のうち約9割。他社も含めた平均落札率は毎年度97%を超え、業界内での談合を疑う声もある。
同省の公用車は全国に1426台あり、うち1186台の管理・運転業務を民間委託している。道路特定財源から支出される委託費は06年度で約82億円。2社の受注総額は5年間で300億円前後に上るとみられる。
民主党の川内博史、大久保勉両氏に同省が提出した資料などによると、北海道開発局、東北、関東両地方整備局を除く6地方整備局と沖縄総合事務局、国土技術政策総合研究所の計72事務所が03~07年度に結んだ公用車の車両管理業務委託契約は計364件。大半が指名競争入札で、受注した計6社のうち、日本道路興運(東京都新宿区)が257件、日本総合サービス(同品川区)が75件と、2社だけで332件(91.2%)を占めた。
同省からの天下りは2社がそれぞれ25、16人に上るのに対し、他の4社は、なぜか1人で、多くの天下りを抱える2社に発注が偏り、独占的な受注につながった構図が浮かぶ。予定価格に対する落札価格の比率を示す落札率の各年度の平均は97.0~99.4%だった。
ほとんどの事務所は5年間、同一の会社と契約を続けており、04年度以降の入札で前年度と契約相手が替わったのはわずかに1件だけだった。>・・・・・・
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安倍が成し遂げたという改正教育基本法にしても、つくり上げたものは「美しい国・日本」と同様、単なるハコモノの看板に過ぎない。中身の教育そのものに関しては現実には様々な問題が噴出し、解決の道を見い出すことができないでいる。
足許の日本社会の美しくない姿に正面切って向き合い、言葉によってではなく行動でその解決に努めるべきを国の形で解決できるわけもないのに「美しい国・日本」だとか「戦後レジームからの脱却」だとか国の形を掲げただけで終えたその罪は政治家引退以外に解決できない重いものがある。
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