菅首相の余りにも無能な指導力・無能な合理的判断能力を曝した国民向けメッセージ

2011-03-26 11:11:49 | Weblog

 菅首相が久しぶりに公に姿を見せた。地震発生から2週間を迎えたということで国民向けにメッセージを発した。相変わらず被災に対して、「改めて心からお見舞いを申し上げます」の常套句、決まり文句で始まっている。被害を受けた被災者の精神的な内実に触れずに、「お見舞いを申し上げます」の言葉で一括りしている。被災者の命からがら避難所に逃れ、それぞれに抱えている不安や悩み、失望、悲しみ、無力感といった現状を思い遣り、励まし、勇気づけるに効果ある言葉は一言もなかった。

 「心からお見舞いを申し上げます」と言ったあと、「政府は現時点で、2つのことに全力を挙げて取り組んでおります」と早々に政府が行っていることに入っていったことでも分かる。

 要するに「心からお見舞いを申し上げます」形式的な社交辞令に過ぎないと言うことである。

 このことは地震発生以後のこれまでの国民向けメッセージを見れば分かる既定事実であったが、ここにこそ菅首相が国民と一体となっていない姿がある。自らは元市民活動家、元市民派と名乗っている、いわば自称していることとの奇妙な乖離、矛盾があることに本人は気づいていない。

 首相官邸HPから採録、記載、質疑応答に入ってから、菅首相の余りにも無能な指導力・合理的判断能力を曝した箇所がある。そこを取上げて、その理由を述べてみる。

 《菅総理からの国民の皆様へのメッセージ》(2011年3月25日)
   
 地震発生から2週間を迎えました。被災された多くの皆さんに、改めて心からお見舞いを申し上げます。

 政府は現時点で、2つのことに全力を挙げて取り組んでおります。その第1は、福島第一原発事故の事態収拾と放射能汚染へのしっかりした対応であります。第2は、被災者の方々への支援と、更に復興に向けての準備を本格化させることであります。

 まず第1の福島第一原発について申し上げます。東京電力、自衛隊、警察、更には東京や大阪などからの消防隊。そういった皆さんが本当に命がけで活動をされていることに、心から敬意と感謝を表したいと思います。

 昨日、被曝により病院に搬送された方々にも、心からお見舞いを申し上げます。安全性に十分留意し、冷却機能復旧に向けて、事故対策統合本部を中心に官民一体で、更には米軍などの支援もいただいて、事態収拾に全力を挙げているところであります。

 また一方、放射性物質の食物や水などへの影響については、自治体と連携をして、しっかりモニタリングをするよう、そのモニタリングの強化を進めてきました。得られた情報は迅速に開示し、すべてを国民の皆さんに、あるいは国際社会に対しても透明性高く公開をしてまいりました。同時に、健康に及ぼす影響についても、しっかりと説明をしてまいりました。これからもこうした姿勢で臨んでいきたいと考えます。

 更に農家や酪農家など、事業者の皆さんには、大きな損害を与えていることに心からお詫びを申し上げたいと思います。こうした皆さんには、確実な補償と支援を行うという点で万全を期したい。こう考えております。

 また、第2の被災者支援とこれからの復興に向けて申し上げます。支援物資の供給は引き続き充実させてまいります。また、ボランティアの円滑な活動を「震災ボランティア連携室」が支援する態勢を取りました。岩手、宮城、福島を始め、更に茨城、千葉など、被害は広範囲に及んでおります。そうしたすべての地域を漏れなく支援してまいります。その上で、今後は本格的な復旧、復興にも目を向けて、準備を進めていかなくてはなりません。住宅、医療、介護、教育、雇用など、そうした生活の面と同時に漁業、農業、そして工業など、生産活動の両面から、この地域全体の、そして、暮らし全体の再建が必要と考えております。

 政府は被災者生活支援のための対策本部を設けました。ここを中心に人材を総動員して、各地域の要望を実現できる、そうした態勢をつくりました。その一環として、被災地域の行政について、政府の職員も派遣をして、支援する、そうした取組みを進めたい。こう考えております。震災に伴う負担を個人や個々の家庭だけに押し付けるのではなくて、社会全体、国全体が負担を分かち合う。こういう姿勢で臨んでまいりますので、どうか被災を受けられた方も、勇気を奮って復興に向けて歩んでいただきたい。そのようにお願いを申しあげます。

 このように、政府はすべての能力を発揮する姿勢で、昼夜を分かたず全力を挙げていることを是非国民の皆様にもお伝えしたいと思います。そして、同時に被災を受けられた皆さんを始め、すべての国民がこの戦後最大の危機に対して、それぞれ力を合わせ、力を奮って立ち向かっていただいていることに心から敬意を表すと同時に、これからもその姿勢でもって、この危機を共に乗り越えていこうではありませんか。

 震災発生から2週間目に当たって、これからの国民の皆さんの一層の団結と一層のこの危機を乗り越えていこうというそういう気持ちを一つにする、そのことをもって、今日、2週間目に当たっての私からの国民の皆さんへのメッセージとさせていただきます。

 【質疑応答】

 (内閣広報官)
 それでは、質問を3~4問受けさせていただくことといたします。坂尻さん、どうぞ。

 (記者)
 朝日新聞の坂尻です。
 
 今日は2週間という節目ですので、やや振り返ったことをお伺いしたいのですが、それは福島第一原発をめぐる政府の対応です。総理が住民の方々に出されている避難指示は、当初3~10km、20kmと変わりまして、20~30kmは屋内退避という指示になっております。今日はその20~30kmの屋内退避の方々に対して、自主的な避難を要請するということが公表されています。この間の経緯を振り返ると、悪化する事態に対して、政府の対応はその事態を後追いしているのではないかという面も否めないかと思うのですが、政権の危機管理という観点から、総理はこの間の対応はどのように考えていらっしゃいますでしょうか。

 (菅総理)
 この退避の範囲については、原子力発電所の状況。また、放射性物質が気候の関係も含めて、どこにどう行くのかという予測。そして、何よりも各地域で得られたモニタリングの数値などに基づいて、原子力安全委員会が中心となって、その専門家の皆さんが分析・判断をいただいた上で、最終的に政府として退避の指示を出しております。そういった専門家の皆さんの判断を尊重した対応でこれまでもありましたし、これからもそうした姿勢で臨んでいきたいと考えております。

 (内閣広報官)
 青山さん、どうぞ。

(記者)
 これに関連してですけれども、管理総は現段階での原子炉、福島第一原発の現状をどのように認識されているのか、改めてお伺いしたいのと、これを収束させるめどについて、どう考えているのか。あと避難指示などの範囲を拡大するお考えはないのか、お聞かせください。

(菅総理)
 今日の福島第一原子力発電所の状況は、まだまだ予断を許す状況には至っていない。悪化を防ぐという形で対応しておりますけれども、予断を許す状況には立ち至ってはいないという認識を持っております。

 引き続き、極めて高い緊張感を持って、一つひとつの事態に当たっていかなければならない局面が続いていると、このように認識をいたしております。

(内閣広報官)
 山口さん、どうぞ。

(記者)
 NHKの山口です。
 現在も多くの方が避難所で厳しい生活を余儀なくされていますけれども、一番は仮設住宅の希望というのが多いということなんですけれども、国はこの仮設住宅についてどういうスケジュール感を持って考えていらっしゃるのか教えてください。

(菅総理)
 仮設住宅については、震災発生直後から、国交省大畠大臣を中心に、関係方面にその仮設住宅に使うプレハブの発注などを進めてきております。早いところでは、月内にもそういう作業が始まるのではないかと思いますが、いずれにしても、大変大規模な震災でありますので、しっかりと地元の皆さんの希望を聞いて、対応していきたい。それぞれ先ほど申し上げました被災者支援対策本部において、そうした計画をしっかりと立てて、進めていきたいと考えております。

(内閣広報官)
 それでは、最後の質問とさせていただきます。

 伊藤さん、どうぞ。

(記者)
 ジャパンタイムズの伊藤と申します。

 先ほどからお話に出ていますけれども、日本政府は20km圏内の住民の方々に避難指示を出されている一方で、各国政府が大使館などを通じて80kmなどという指示を出されたりしていて、特に在日外国人のコミュニティの中では混乱や不安が生じました。

 そういう意味で、日本政府がうまく諸外国とコミュニケーションをとれていないのではないか、または情報などが必ずしもすべて出ていないのではないかということも指摘されるんですけれども、それに対する総理の受け止めと、今後どのようにこの状況を改善し、諸外国との情報を共有されるつもりかお考えをお聞かせください。

(菅総理)
 まず最初の点は、先ほども申し上げましたけれども、この退避の範囲については、原子力発電所の状況とか、放射性物質がどう拡散していくのかという予測、更には各地域で得られたモニタリングの数値などを中心にして、原子力安全委員会、これは専門家の皆さんの集まりですので、この皆さんを中心に、専門家の皆さんに分析、判断をしていただいた上で、そこの助言あるいは勧告をいただいた中で、この退避の範囲を決めているところであります。

 各国の考え方について、それぞれの国による基準が設定されていると思いますが、我が国がそれらの国に対してしっかりと情報を提供するというのは当然のことでありますし、それに努めております。この間、いろいろな形で各国に情報提供をしておりますけれども、例えば各大使館、あるいは英語による記者会見等、状況についてすべての国々あるいは国際機関に透明性高く情報提供をしておりまして、その点については、各国政府からも我が国の情報提供については、十分透明性があるというふうに理解が深まってきているものと、このように認識をいたしております。

(内閣広報官)
 それでは、これで総理からのメッセージを終わります。ありがとうございました。

 質疑応答に入るに当たって内閣広報官が「それでは、質問を3~4問受けさせていただくことといたします」と、「3~4問」と制限を加えたのは菅首相からの指示があったからだろう。まさか菅首相が内閣広報官のロボットではないはずだからだ。

 国民は原発問題や被災者の今後、復旧、計画停電、経済への影響、補正予算、税収問題等々、多くのことを知りたいと思っているはずだ。そのことに応えるべく記者からの質問が途切れるまで受け付けようといった最高責任者としての責任意識、誠実さはなく、逆に質問に制限を加えた責任意識、親誠実さは「改めて心からお見舞いを申し上げます」から「国民の皆さんの一層の団結と一層のこの危機を乗り越えていこうというそういう気持ちを一つにする」までの国民に向けたメッセージを意味のないもの、言葉の実体を失わせるものとしている。

 一つ一つの発言を挙げて、いかに実体のない言葉であるか見てみる。
 
 避難所に避難した被災者に対して「支援物資の供給は引き続き充実させてまいります」と確約している。初期的、中期的に充実させることができなかったにも関わらず、その不手際に対する謝罪もなく、そのことを平気で無視している。しかも現在もなお、医薬品不足や燃料不足を訴える声が上がっている。支援物資が行き渡っているところ、行き渡っていないところのバラつきを指摘する声も上がっている。

 被災者支援が有言実行となっていない、有言不実行の有様が被災者のみならず、多くの国民をして菅内閣に対する政治不信を醸し出している状況にありながら、いわばあれをやります、これをやりますとあれこれ約束しながら、約束通りのことをしないために信用を失った男が「ボランティアの円滑な活動を『震災ボランティア連携室』が支援する態勢を取りました」とさらに約束しているようなものだから、いくら約束しようとオオカミ少年の「オオカミが来た」に等しい実体のない言葉となる確立は限りなく高いと見なければならない。

 前提は常に政府や首相に対する国民の信頼であろう。信頼は言葉と行動を一致させることによって獲得し得る。限りなく言葉と行動を一致させて信頼されていることを前提に言葉を発しないと、言葉は実体を持たないことになる。

 要するに菅首相に対する政治不信の原因となっている有言不実行は地震発生後に現れたのではなく、元々の有言不実行が地震に対して満足に機能させることができなかった危機対応・指導力によってより一層露になっただけのことであろう。

 これまでの政治不信、菅首相不信に加えて被災者に対して早急に充実を図る物資支援と行方不明となった被災者に対する機動的な救命活動・捜索活動を通して不安な中にも政府を信頼させる姿を初期対応という肝心要のときに取ることができなかったことに対する菅内閣に向けた新たな政治不信の蓄積を無視して、政府は「こういう姿勢で臨んでまいります」からと機能していない姿勢を掲げて、被災者も「勇気を奮って復興に向けて歩んでいただきたい」と要求する矛盾したご都合主義は滑稽である。

 菅内閣が発足以来、菅首相が言っていることとは正反対に「政府はすべての能力を発揮する姿勢」を取ることができていなかったために多くの国民に信頼されない政府、信頼されない菅首相となっているにも関わらず、地震被災や原発事故に対して、「政府はすべての能力を発揮する姿勢で、昼夜を分かたず全力を挙げていることを是非国民の皆様にもお伝えしたいと思います」と信頼を求める矛盾も滑稽である。

 「被災を受けられた皆さんを始め、すべての国民がこの戦後最大の危機に対して、それぞれ力を合わせ、力を奮って立ち向かっていただいていることに心から敬意を表すと同時に、これからもその姿勢でもって、この危機を共に乗り越えていこうではありませんか」―― 

 確かに「被災を受けられた皆さんを始め、すべての国民がこの戦後最大の危機に対して、それぞれ力を合わせ、力を奮って立ち向かってい」かなければならない。だが、菅政府の十分な万遍のない精神的支援と物質的支援の関与がそこに存在し、政治への信頼を常にベースとしていたわけではない。満足、的確な情報が政府から発信されていなかったこともそのことに輪をかけ、特に被災者をして混乱と猜疑心に陥れた。
  
 地震と原発事故が益々国民をして、特に被災者をして政治に対する信頼から遠ざけていった。いわば菅政府に対して地震前から離れていた国民の心は地震によって益々離れていった。
 
 国民の心が離れている以上、最後に「震災発生から2週間目に当たって、これからの国民の皆さんの一層の団結と一層のこの危機を乗り越えていこうというそういう気持ちを一つにする、そのことをもって、今日、2週間目に当たっての私からの国民の皆さんへのメッセージとさせていただきます」と涙目で訴えたとしても、菅政府とは「気持ちを一つにする」ことは難しいだろうし、これまでの危機対応、菅首相の姿勢からして、一つことになることは絶望的ではないだろうか。

 政治不信の対象者が「心を一つにして」とか、「気持ちを一つにする」いった言葉を使うのはメッセージを整える美辞麗句に過ぎないだろうし、却って反発を招く原因となるのは間違いない。

 最初に質疑応答に入ってから、菅首相の余りにも無能な指導力・合理的判断能力を曝した箇所があると書いたが、次ぎの質問と応答に見ることができる。

 〈(記者)
 朝日新聞の坂尻です。
 
 今日は2週間という節目ですので、やや振り返ったことをお伺いしたいのですが、それは福島第一原発をめぐる政府の対応です。総理が住民の方々に出されている避難指示は、当初3~10km、20kmと変わりまして、20~30kmは屋内退避という指示になっております。今日はその20~30kmの屋内退避の方々に対して、自主的な避難を要請するということが公表されています。この間の経緯を振り返ると、悪化する事態に対して、政府の対応はその事態を後追いしているのではないかという面も否めないかと思うのですが、政権の危機管理という観点から、総理はこの間の対応はどのように考えていらっしゃいますでしょうか。

 (菅総理)
 この退避の範囲については、原子力発電所の状況。また、放射性物質が気候の関係も含めて、どこにどう行くのかという予測。そして、何よりも各地域で得られたモニタリングの数値などに基づいて、原子力安全委員会が中心となって、その専門家の皆さんが分析・判断をいただいた上で、最終的に政府として退避の指示を出しております。そういった専門家の皆さんの判断を尊重した対応でこれまでもありましたし、これからもそうした姿勢で臨んでいきたいと考えております。〉――

 記者が後追いの対策を追及したのに対して、菅首相は原子力安全委員会の専門家の分析・判断を尊重して政府としての退避の指示を出したと答えている。

 後追いであることよりもより重大な問題は避難及び屋内退避は菅首相が「原子力に強いんです」といくら体裁を張ったとしても専門家の分析・判断が必要だろうし、専門家の分析・判断は原発から何キロ範囲まで避難、何キロから何キロ範囲まで屋内退避と決めるところまでであって、その分析・判断に基づいて政府が避難と屋内退避の指示を出してからの指示を受けた市民の生活が滞りなく維持可能となる取り計らいは政府と自治体が共同で行う政治の問題である。

 だが、菅首相は「専門家の皆さんの判断を尊重した対応でこれまでもありましたし、これからもそうした姿勢で臨んでいきたいと考えております」と、指示だけのことと把え、少しぐらいの不自由は我慢するとしても、一応の差し障りのない市民生活が送れることができるよう政治の関与を必要としたはずだが、そのことへの言及、視線はこの質疑応答に関しては果して一国の政治指導者なのだろうかと疑いたくなるばかりに一切省いている。

 いわば原子力委員会の専門家が分析・判断で終わらせるのは当然であるのに対して、菅首相は首相であるのだからそうであってはならないはずだが、指示以降の市民生活に関しては一国の政治指導者として何のためにそこにいるのか、意味を失った存在となっている。

 屋内待避の指示は3月15日。そして屋内退避を解除して自主避難に切り替えたのは昨3月25日。そして退避指示を出した日の翌日の3月16日に午後4時から開かれた政府の緊急災害対策本部で〈屋内退避している人への支援を充実させる〉よう指示を出している。

《首相“国民に正確な情報を”》NHK/2011年3月16日 17時26分)

 一見すると、避難・屋内待避の指示だけで終わらせていないように見えるが、記事は菅首相が「被災地では、食べ物や水、燃料が不足しており、現在、全力を挙げて、不足を取り除くため努力している。寒いなか、とりわけ燃料がないことは支障を来すため、きちんと提供されるように一層努力したい」と発言していると書いているが、それが地震発生から6日目に入ってからの、菅首相が言っている不足が一向に改善されていない状況にある中での指示であり、それ以降も改善がなかなか進まない実態から見えることは指示は出すが着実な実行をみない菅首相自身の指導力が機能しない姿、政治が機能しない状況であって、このことからすると、屋内退避者への支援充実の指示も菅首相の指導力が機能しないと見て然るべきで、現実にもそういった姿を取った。

 現実に指示が行き渡らない姿を取っている以上、そのことを積極的に改善させることをしなかったのだから、結果的に指示だけで終わらせていたのである。

 このことが記者の質問に対して政治の関与・自らの指導力の関与を一切省いた、そのことに視線を向けることができない答弁へとつながったのだろう。

 屋内退避圏では放射能汚染を恐れて外からの物流が相当量途絶え、また自主避難して商店を閉じる市民も出て、食糧不足、燃料不足、医薬品不足を来たし、市民生活に障害をもたらした。

 枝野官房長官は3月16日夕の記者会見で述べている。

 枝野「過剰反応が生じており、民間業者を中心に(原発から30キロの)屋内退避地域の外側なのに輸送物資が届かないという報告がある。過剰な反応をすることなく、物流でモノを届けてほしい」(asahi.com

 これも要望を口にしただけで、指導力を発揮して問題解決を具体化したわけではなかった。口先だけ達者な詭弁家だから、当然の帰結なのだろう。

 このことは枝野の記者会見から2日後の3月18日 13時37分「NHK」記事――《薬不足などで病院で2人死亡》が証明している。

 屋内退避圏の〈南相馬市の病院では、点滴薬が底をつくなどして十分な治療を受けられずに、少なくとも2人が死亡し、病院は早急な支援を求めています。〉と記事は書いている。

 菅首相が言っている屋内退避生活者への生活支援の充実は屋内退避指示以降も、支援の充実指示以降も、枝野官房長官が要望指示した以降も機能していなかったことを物語っている拠点病院の薬品不足であり、薬品不足の犠牲となった2人の死亡であろう。

 政治も指導力も一切発揮不全の状態にあった。元々指導力を欠いていた指導者という逆説を抱えていたのだから、当然の姿とは言える。

 さらに3月23日08時13分配信の「YOMIURI ONLINE」記事――《静岡・岐阜の援助隊、屋内退避区域の搬送せず》も、菅首相の指示も枝野官房長官の指示も自ら活かしきれていなかったことを証明している。

 記事は書いている。屋内退避圏では〈地元の相馬地方広域消防本部など福島県内の消防隊は活動している〉にも関わらず、〈福島第一原子力発電所の事故で、屋内退避区域となっている原発から半径20~30キロ・メートル圏内にある病院に入院する患者の搬送要請を、静岡、岐阜両県の緊急消防援助隊が「安全が確実に確保されていない」として断っていたことが22日、わかった。〉――

 消防さえ断るのだから、民間業者が配送を断るのも無理はない。

 静岡市消防局「事前準備もなく、詳しい状況が分からない中、出動させることに不安を感じる」

 岐阜市消防本部(市長や消防長、市民病院長らが協議)「隊員の安全を考えて苦渋の選択をした」

 金澤幸夫南相馬市立総合病院長「ここには救急車すら入ってこない。30キロ圏内に入る手前で救急車から自衛隊の車に患者を乗せかえている」《届かぬ食材、閉まる店…福島・南相馬、深刻な食料不足》asahi.com/2011年3月23日20時1分)

 患者の身の安全よりも自らの身の安全となっている。

 記事題名自体が屋内退避圏の南相馬市に於ける政治が機能していない状況、菅首相の言葉が指導力を伴って具体化することはない状況をすべて物語っている。そのことが市民の止まらない流出と物資の流入停止となって現れることとなった。

 〈人口7万人の市に、残るのは2万人。物資の輸送が滞り、各世帯の食料は尽きかけている。〉

 市の関係者「このままでは餓死する人が出かねない」
 同市農家鈴木浩氏(65)「避難した人も不安、残った人も不安だよ」

 〈ガソリンのタンクローリーの運転手が南相馬市のはるか手前で乗り入れを拒んだため、市は大型免許を持つ職員や市民に取りに行かせた。食料品などの生活用品が届かず、スーパーやコンビニが次々と営業をやめ、市全体が深刻な物資不足に陥った。市の関係者は「各家庭の食べ物は底をつきはじめていると思う」と話す。相馬市の相馬総合卸売市場を貸し切って、運送業者が24時間常駐し南相馬市内への食料供給に対応している。ここが命綱だが、届く食料は先細りだ。〉――

 〈近隣の店も閉まり、食材は隣の相馬市まで車で20~30分かけて買いに行く。走行距離は平均40~50キロ。食事は自分の家で作った米と缶詰、ソーセージなどが多い。 〉・・・・

 屋内退避圏内の他の市町村も政治の不在、指導力不在の犠牲となって似たり寄ったりの状況に陥れられることとなった。

 結局南相馬市を含めた屋内退避圏内の高齢患者は家族らが自主避難させたうち3人の死亡を出す政治不在を招いて、自衛隊や協力を得ることができた、多分地元の消防であろう、患者を搬送することになった。《原発30キロ圏内の患者ら避難完了 移動中に3人死亡》asahi.com/2011年3月22日22時32分)

 原子力委員会の分析・判断に基づいた菅首相の屋内退避指示は指示以降、屋内退避者の生活を守るために自らの合理的な判断能力に従った指導力の発揮と政治を介在させなければならなかったはずだったが、機能させることができずに結果的に単に専門家の分析・判断に基づいた指示を出すだけで終わることとなった。

 そのような経緯に見ることができる姿は菅首相の余りにも無能な指導力・無能な合理的判断能力のみである。


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3 コメント

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税金アップは反対 (低所得家族)
2011-05-31 08:12:10
税金の値上げは困ります。一般の家族も被災者と同様きついです。
生活保護世帯、年金世帯の家族には首を絞められるようなものです。断じて許せないです。
政権交代をした方が良いのでは?でも今時期政権交代しても国民は誰も信じられなくなるので官首相もっともっと頑張って頂きたい。
返信する
無能官総理殿 (国民代表)
2011-05-21 21:40:31
何やってんだ 会議ばかしているんじゃあねえよ 被災地は悲鳴をあげているんじゃあねえか 無能官よお前には指揮をとる資格がない一刻早く辞めろ
返信する
無能官総理殿 (国民代表)
2011-05-21 04:25:09
国民代表として あの希にみる今世紀最低無能野郎官総理を即刻退陣を要求する
返信する

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