被災地米軍支援「トモダチ作戦」が在日米軍基地の沖縄75%集中負担の事実を変えるわけではない

2011-04-09 08:22:04 | Weblog

 
 
 《【主張】在日米軍 沖縄でも共感の輪広げた》MSN産経/2011.4.8 02:38) が、〈東日本大震災で米軍が展開した大規模救援活動「トモダチ作戦」を通じて、在日米軍と自衛隊による日米安保体制が国の守りだけでなく、国民の安全そのものを支えていることを浮き彫りにした〉ことから、〈米軍基地を抱えて反基地感情が強いとされる沖縄県で、米軍への共感の輪が広がり始めた。〉と書いている。

 この共感の輪の広がりを〈沖縄でも日米同盟の大切さを見直す重要な動きとして評価したい。〉と肯定的に把え、本紙でも報じたとする沖縄県民の声を伝えている。

 那覇市民「天災対応を含めた新しい日米安保の必要性を感じた」

 名護市民「海兵隊が改めて頼りになると感じた」

 そして沖縄基地所属の米軍の活躍の具体例を挙げている。

 〈第31海兵隊遠征部隊は大震災発生時、マレーシアで災害復旧訓練中だった。急遽(きゅうきょ)、強襲揚陸艦で被災地に向かい、宮城県気仙沼市の離島・大島に物資を運び込み、その後も電気の復旧やがれき除去を続けた。

 海兵隊だけではない。嘉手納基地の米空軍第320特殊戦術飛行中隊は、がれきに埋め尽くされた仙台空港近くにパラシュート降下し、復旧の突破口を開いた。〉云々。

 〈「トモダチ作戦」に続き、放射性物質に関する米軍専門部隊「シーバーフ」の本隊も日本に到着した。深刻な放射能漏れなどの事態に対応する準備をしている。〉云々。

 かくかように〈国家安全保障の有事対応とも重なる部分が多い〉〈災害対応〉で米軍は友好的、かつ有意義な存在であることを証明した。〈震災前、嘉手納の地元では同中隊の降下訓練がアフガニスタン作戦などの訓練とみなされ、「日本の防衛と関係ない」と批判され〉、〈抗議決議を可決した町議会もある〉が、〈訓練が災害支援に生かされた事実は在日米軍と基地の存在の大切さを改めて問いかけた。〉とその有効性・有意義性を謳っている。

 米軍が日本国家有事に関しても災害有事に関してもこのように有効的且つ有意義な存在であると(勿論友好的でもある)証明されたにも関わらず、その証明が沖縄にまで伝わっていない。

 〈沖縄の一部に「トモダチ作戦」の実情をきちんと伝えないばかりか、米軍普天間飛行場移設問題に「政治利用されかねず、不謹慎」などの見方があるのは首をかしげる対応だ。〉

 そして次のように締め括っている。〈菅直人政権(菅仮免許政権とは書いてなかった。)は日米共同支援の成果を積み重ね、同盟の実効性を高めることに全力を注ぐべきだ。〉云々。

 だとしても、このことが沖縄に基地を押してつけていい正当な理由となるわけではない。同盟の実効性の確定化と沖縄の普天間基地を辺野古に移設することは別問題であろう。

 このことは昨2010年2月半ばの沖縄タイムス社の鳩山前首相インタビュー発言が証明している。かの有名となった「抑止力」方便発言である。

鳩山前首相「辺野古に戻らざるを得ない苦しい中で理屈付けしなければならず、考えあぐねて『抑止力』という言葉を使った。方便と言われれば方便だった。海兵隊自身に抑止力があるわけではない。(陸海空を含めた)四軍がそろって抑止力を持つ。そういう広い意味では(辺野古移設の理由に)使えるなと思った」沖縄タイムズ

 四軍を機動的・機能的に組み合わせることが抑止力の要件だと言っていて、必ずしも場所を抑止力の要件だとはしていない。

 このことを逆説するなら、四軍を機動的・機能的に組み合わせることが可能なら、場所は沖縄でなくてもいいことになる。本土であっても抑止力機能化は果たせると。

 鳩山前首相は単に「米国の圧力よりも、日本の役所の中の論理にも(国外県外は)なかった。それを押し切るだけの意思を強く主張できなかった」琉球新報)官僚主導の辺野古移設を受入れざるを得なかったことから、沖縄県民を含めた国民への説明として「抑止力」という言葉を方便として使ったということであろう。

 場所が抑止力の要件でないなら、〈同盟の実効性を高めること〉と沖縄に基地を押し付けることは明らかに別問題となる。米軍基地と米軍の存在の有効性、あるいは有意義性が証明されたからと言って、全国土の僅か0・6%の土地に対して75%もの米軍基地が集中している沖縄に従来どおり基地を押し付けていいという理由とはならない。

 菅仮免許首相は昨2010年12月17、18日、沖縄を訪問、仲井真知事と会見し、18日記者会見を開いて、沖縄の基地問題を「全国民の課題として、しっかり受け止めていかなければならないと、こう思っておりますし、こういう形で申し上げることも、いわばそういうことを全国民に、あるいは全47都道府県の、沖縄以外の46都道府県の皆さんにも考えて頂きたいという思いで(このことを仲井真知事に対して)申し上げさしていただいたところであります」と発言、沖縄基地問題は「全国民の課題」だとした。

 この「全国民の課題」は鳩山前首相の抑止力は必ずしも場所を要件としないとしていることと合致する。あとは政府が指導力を発揮して、米四軍が機動的・機能的に組み合わせ可能となる適地を本土内に決定することによって沖縄の負担を目に見える形で軽くすることができる。

 いわば「全国民の課題」の具体化は全国土の僅か0・6%の土地に75%もの米軍基地が集中という、一極的に場所を要件としていることからの打破、場所を要件としないことへの転換によって実現可能となる。だが、菅仮免許は政権を取る前は沖縄に米海兵隊は要らない、米本土に帰って貰うと公言して憚らなかったが、首相の座につくと一転、焼け石に水の基地負担軽減を掲げて沖縄に改めて基地を押し付ける意志と行動を見せることとなった。

 このことは「全国民の課題」だとする自らの主張とかつての沖縄米海兵隊不要論を二重に裏切る政治的変節行為であるはずだ。

 また、沖縄に対して日本国家が戦前から戦後と今日に至るまで強いてきた数々の犠牲のツケを清算する時がきているにも関わらず、それをも果たさずに先送りする変節にも当たる。

 記事は米軍の存在の有効性、有意義性を補強する“方便”として記事の趣旨に同調的な那覇市民と名護市民を都合よく登場させたが、仲井真沖縄県知事が抑止力は場所を要件としない立場から明快に発言している。

 《“米軍活動と基地問題は別”》NHK/2011年4月8日 16時6分)

 4月8日の定例の記者会見。

 仲井真知事「福島第一原子力発電所の事故への対応など、アメリカ軍がよく協力しているという印象は強く持っている。また、東日本震災対策で一生懸命頑張っている姿は、私もなかなかよくやっていると思う」

 但し――

 仲井真知事「アメリカ軍兵士の事件事故を減らすことや、日米地位協定を抜本的に改定すること、そして、普天間の県外移設は当然やるべきだ」

 仲井真知事が意識していなくても、「普天間の県外移設」実現によって、菅首相が米軍基地問題は「全国民の課題」とするとした自らの発言を自ら裏切らずに済むし、鳩山前首相の米軍の抑止力は場所を要件としないとする主張にも添うことになる。

 そして何々よりも沖縄と沖縄県民が抱えてきた戦争と基地に関わる、一極的に場所を要件として押し付けてきた負担の歴史と現状の負担そのものを和らげることができるはずだ。

 参考までに――

 《米軍普天間飛行場辺野古移設が官僚主導による決定なら、菅首相は政治主導による決定に修復する責任を有する - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》



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