我が日本の麻生太郎首相が7月8日(09年)から3日間開催のイタリア・ラクイラサミット開幕の初日、そのスタートの昼食会で、多分例の自信たっぷりなにこやかな態度でだろう、自らが主導した日本の景気対策について次のように大見得を切ったらしい。
「過去最大規模の経済対策を打ち、底割れを防いだ」(《ラクイラサミット開幕 各国首脳、経済問題や地球温暖化対策についての討議を開始》FNN/09/07/09 06:11)
景気の「底割れを防いだ」とそれを成果として世界的会議で披露するのは、日本の経済・景気はもう安心だ、心配はないという保証がなければならない。以後の不安要素を抱えていながら、「底割れを防いだ」と自らの成果とするのは、不安要素が現実の景気維持の阻害要件となったとき、成果を差引き計算、あるいは逆転を生じせしめる可能性も出てくるから、言っていることと現実が矛盾することになる。
いわば我が麻生太郎は日本の100年に一度の金融危機・経済危機からの回復の救世主役を演じてくれたのである。有難いことではないか
同記事は討議を兼ねたこの昼食会で世界経済について再確認する次のような首脳宣言が採択されたと伝えている。
「安定化を示す兆候があるが、状況は依然として不確実、・・・・金融の安定のために必要な、あらゆる必要な措置を講じる」
景気の「底割れを防いだ」と安心を保証したのは日本のみで、日本を除いた世界は依然として厳しい「不確実」な状況にある。不安定要素を抱えている。
いわば「首脳宣言」と麻生の「底割れを防いだ」とする主張とは相矛盾する状況にあるが、さすが「この100年に一度からの経済危機から、世界の中で日本が最初に脱出する」と宣言しただけのことはある我が麻生太郎の宣言に則った「過去最大規模の経済対策」を迷わずに果敢に打ち、大いなる成果を上げて国民の不安を取り除いた。国民の救世主となったということなのだろう。
その政治的カン、政治的創造性が優れているからに他ならない。日本の名宰相、吉田茂の血を引いていて、その血は60年以上の歴史があるんだ。ポッと出のオバマなんか目じゃないと内心自慢したかどうか。
このようにも現実世界に確固とした形で安心を実現させた具体的成果を勲章として、勲章とする成果がなければ誰であろうと見せることはできない、サミットの討議の場でのあの意識的につくっているにこやかな満面のスマイルで得意然と披露したたっぷりの自信を以ってすれば、明12日の都議選の勝敗に何の不安もなく、解散の時効がまもなく切れる衆議院の選挙でも腕を組んで見守るだけで与党勝利、政権維持の約束が自動的に果たされる予定調和のはずだが、ところが総理・総裁の顔写真を載せるのが従来の慣習であった総選挙用政権公約配布冊子の表紙に我が麻生太郎首相自身の指示で「若い人が抵抗なく電車で読めるように」と自らの顔写真を使わないよう公約策定チームに指示したと7月9日付の「asahi.com」に出ていた。
選挙の顔であるはずの総理・総裁である我が麻生太郎の国民の不安を取り除いて心を癒してくれるあの自信たっぷりなにこやかなスマイル顔を隠す。これはサミットで披露した日本の景気の「底割れを防いだ」とする安心成果を、あるいは自らのその政治的才能に裏打ちされた自信を自ら裏切るというだけではなく、国民の信頼と安心をも裏切る国民に対する背信行為ではないだろうか。
大体が表紙が一国の政治を統括する麻生の顔写真では「若い人」が電車の中で読むには抵抗があると言うことは何を意味するのだろか。自身の経済政策・景気対策を自慢するのなら、逆に若い人であろうとなかろうと、老若男女すべてが、あるいは場所は「電車の中」であろうとどこであろうと、レストランでの食事中であろうと、公衆便所の中でトイレに腰掛けて用を足しているとき誰も見ていなくても、麻生の顔写真の公約冊子を競って読んで、俺は、私は、僕は麻生太郎、この人を支持しているんだと、それぞれが自慢げにそれとなく見せびらかす状況になければならならないはずだが、首相自らが自身の政策を自慢していながら、逆の状況――表紙が麻生太郎の顔写真では読むのに「若い人が抵抗」を持つと不人気を予想している。
記事は〈「首相で選挙は戦えない」という党内の声にも配慮したようだ。〉としているが、それが事実としたら、若い人が読むのに抵抗があるという事実と併せて考えると、麻生首相の「底割れを防いだ」として、以後の不安要素を払拭した成果自慢は架空のものとなる。
事実雇用状況は「5月の有効求人倍率は過去最低。完全失業率は4カ月連続で悪化、過去最悪の5.5%に近づいている」(asahi.com)といった極度な不安材料を日本経済は抱えたままだし、これらの雇用状況が改善されないことには個人消費の回復は望めず、景気の先行き不透明感を拭うまでにはいかないに違いない。
省エネ家電やエコカーといった一部需要が上がったといっても、「政策効果による需要の先食いの可能性もあり、手放しでは喜べない」(ロイター)と、一時的状況改善である可能性を言っている。
要するに買い換えるだけの経済的余裕を持った富裕層、あるいは比較富裕層のみに限った需要であろう。しかもエコポイントによる商品との交換が低所得層には無縁のカネがカネを生む状況をつくり出している。
いわば麻生は経済的余裕ある層の力となったとは確実に言える成果を上げた。
だが、非正規社員が全就業者数の2人1人といった偏った雇用状況やリストラされた非正規雇用者及び正規雇用者の再就職の問題が解決されない限り、個人消費の底堅い回復は見込めないだろうから、「底割れを防いだ」と自慢して景気維持の阻害要素がさも存在しないかのように振舞うのは見え透いたおためごかしとしか言いようがない。
このことは5月に流行した新型インフルエンザの影響があったとはしているが、大手3社百貨店の3~5月期の売上げ大幅減益とか、コンビニエンスストア大手5社が減益・減収・赤字、あるいは総合スーパーの5月までの売上げが6カ月連続でマイナスといった文字・言葉が躍っている状況が証明している麻生のおためごかしであろう。
生活防衛のために勤務者が食堂やコンビ弁当で摂っていた昼食を手作り弁当に替えたといった買い控え傾向、月に何回か外食していた回数を減らす家庭の増加等の生活感覚からは程遠い麻生の景気観と言える。
麻生政治がおためごかしであることの動かない証拠が内閣支持率に具体的数値として表れているということではないのか。
我が麻生太郎はサミットで日本の素晴らしい、目を見張る程の景気対策とその成果を紹介した上で、「短期は大胆、中期は責任という原則の下に、財政健全化の取り組みを進めると同時に、危機克服後の出口戦略の議論を深める必要がある」(asahi.com)と、景気対策でバラ撒きにバラ撒いた財政の後始末の重要性を説き、なお且つ「中長期かつ持続的成長のためには、世界的な不均衡の是正が必要だ。・・・・具体的には米国は過剰消費の抑制、中国などの新興国は内需主導型経済への転換が必要である」と進言したそうだ。
確かに財政再建はどこの国も避けて通ることはできない必要不可欠な政策であり、そうであるからこそ、どこの国の政策遂行者にしても誰の指摘を待つまでもなく分かりきったことで、そういった事情も弁えずに我が日本の麻生太郎が誰もが分かりきっていることを指摘した。
日本以外の先進国の中には、分かりきったことである上に、先進国の中で最悪の財政赤字を抱えている日本に言われたくないと思った指導者がいなかったと言えるだろうか。麻生は人に言う前に先ずは自分の頭のハエを追う必要があったのである。
また、米国の「過剰消費の抑制」の必要性を説いているが、米国の「過剰消費」によって、それが理想的な傾向ではなくても、世界の国々がそれぞれ経済発展させてきた否定し難い側面を無視する説法であろう。中国にしても日本その他から部品を輸入し、それらを自らの安価な人件費を武器として安価な製品に組み立て、米国の「過剰消費」を当て込んでアメリカに輸出、自国の経済発展の助けとしてきた。
このことは発展途上国についても言えることで、米国の「過剰消費」あってのそれぞれの国の経済発展でもあったはずで、それなりの恩恵を受けてきた。
日本のバブル期、バブル経済の恩恵を受けて濡れ手に粟の成金が銀座等の高級クラブで一晩に100万とか200万パッと使う客が出現したそうだが、そういったカネ離れのいい使いっぷりが米国の「過剰消費」に当り、そのお陰で経済的に潤った高級クラブやホステスが日本や中国といった外需型構造国家であり、高級クラブに高級ウイスキーや高級ブランデーを納入して順次潤っていった業者が発展途上国に相当する位置にいたはずである。
また「中国などの新興国は内需主導型経済への転換」の必要性を説いたそうだが、外交だけではなく、経済に於いてもアメリカにおんぶに抱っこで経済を潤わせてきた日本の外需型主導型経済からの「内需主導型経済への転換」を抜きに中国のみに求めたのだろうか。
麻生のやるべきことは、少なくとも計画立てることは、日本の経済構造を外需型から内需型に転換してから、中国やインドにも求める「内需主導型経済への転換」とすべきだったろう。
だが日本は世界経済第2位の地位を獲得しながら、他国の消費に助けを求める外需主導型経済に甘んじる発展途上国の姿を取り続けて、経済大国の責任を十分に果たしてきたとは言えない。
そのくせ、アメリカに対して「過剰消費の抑制」を言い、中国に対して「内需主導型経済への転換」を求める。
合理的に物事を把える能力、政治的創造性に関わる合理的客観性を欠いているからこそ振舞うことができた、我が日本の麻生太郎のサミットでの言動であろう。
アメリカの過剰消費が世界経済を押し上げた
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