菅仮免の言葉によってつくり上げた実体なき菅政権1年2カ月間の成果

2011-08-11 12:12:20 | Weblog



 菅内閣発足は2010年6月8日。目出度くと言うべきか、不幸なことにと言うべきか、就任から1年2カ月を迎えた。本来なら内閣不信任案賛成を受けて辞任がほぼ確定していた身分を前以て取引して首をつなぎ、6月2日の代議士会で「一定のメドがついたら若い世代に責任を引き継ぎたい」と退陣表明したときから居座りが始まったということになっているが、実際は発足の日から居座りそのものではなかったろうか。

 首相職を担うにふさわしい指導力も統治能力も政権運営能力も、何よりも政治的創造性そのものを欠いていて、欠いたまま首相職に収まっていたのだから、居座り以外の何ものでもあるまい。

 2010年9月の代表選で菅仮免に清き1票を投じた民主党国会議員、地方議員、党友等は居座りに1票を投じたと言える。

 だが、本人にはそういった自覚はサラサラない。《月内の首相退陣で与野党調整 首相、時期の明言避ける》asahi.com/2001年8月10日11時59分)

 昨日(2011年8月10日)の衆院決算行政監視委員会。先ず自らの進退について。

 菅仮免「二つの法案(特例公債法案と再生可能エネルギー特別措置法案)が成立したときには、これまで申し上げてきた私の言葉をきちんと実行に移したい」

 但し、具体的な時期については「私の方から日程的なことを申し上げるのは適切ではない」と明言を避けたという。

 「これまで申し上げてきた私の言葉をきちんと実行に移したい」と言うと、さも迅速性を持った有言実行能力と結果能力に優れているかのように思わせるが、実体ある有言実行能力と結果能力であったなら、内閣支持率がこうまでも無残に低くなることはあるまい。

 菅仮免は東日本大震災の復旧・復興対策や原発事故対応を取り上げて次のように答弁したと言う。

 菅仮免「内閣としてやらなければならないことをやってきたし、社会保障と税の問題でも一定の方向性を決めることができた。やるべきことはやっているという意味で、残念とか悔しいという思いは決してない」

 「内閣としてやらなければならないことをやってきた」は国会答弁の常套句とさえなっている。「私は内閣全体としてはできる限りの努力を全力を上げてやってきている」と言ったり、「私は、やらなければいけない、優先度の高いものから取り組んできた。精一杯やってきた中で、私は進んでいると思っている」と復旧・復興の遅れを決して認めない。

 大震災の被災者に対する初動的な食糧支援、防寒着等の支援、飲料水支援、ガソリン支援も遅れたし、現在も仮設住宅建設と入居は遅れているし、瓦礫処理は殆んど進んでいない。義援金の配分も遅れている。

 いわば自分の言葉でつくり上げている復旧・復興の実体なき成果に過ぎない。被災地に於ける実態とはかけ離れた言葉の実体と言ったところだ。

 8日(2011年8月)の衆院予算委員会で佐藤茂樹公明党議員が外交問題で質疑を行った。菅内閣発足以降の1年間の外交日程を取上げ、その成果を尋ねたのに対して当然の如くに菅仮免は成果をぶち上げた。

 菅仮免「カナダのトロントのG20、中でも課題となったのはギリシアの危機、いわゆるソブリンリスク、今日のヨーロッパの状況にずっと継続している。G8の中では我が国の財政健全化の方向性を打ち出した。G20の中ではいわゆる財政の、日本の場合は厳しいもんですから、プライマリーバランスを2015年までに半減すると、他の国は2013年でありまして、そういった日本の姿勢についても理解をいただきました。

 私の最初の総理になってからの活動の第一歩はそういったところでありました」

 そしてさらに横浜で開催したAPECに言及し、

 菅仮免「当時の報道も含めて基本的には私はいい成果を上げたと、来られたみなさんも満足をして帰られたと思っています」

 さらに温家宝中国首相と李明博韓国大統領の被災地訪問を取上げ、「東北の被災地の皆さんに勇気づけをしていただいた」と、そのことを成果の一つに上げた。

 被災者にとっての現実は日々の生活である。食事、体調、健康についての様々な思い、現在の生活や将来の生活に対する不安、近親者の死に対する思い等々が実体を伴って勇気づけられることがなかったなら、外国首脳の勇気づけなど現実の足しにならないその場限りのいっときの祭りでしかない。

 現実の生活の勇気づけには政治の支援が欠かせない。肝心要の支援に不備・不足を来たしておいて、外国首脳の訪問を以って成果とする。言葉でつくり上げている実体なき成果でしかない。

 またギリシアの危機にしても、「今日のヨーロッパの状況にずっと継続している」ということなら、G8の会合は成果を見ていないということになり、単に開催したというだけのことで終わりかねない状況も否定できないことであるのだから、わざわざ持ち出す材料とは言えない。

 さらにプライマリーバランス2015年まで半減にしても、2015年までの成果を試される事柄ゆえ、現在のところただ単に国際会議で約束したという過程にあるに過ぎない。結果を出してから言うべき話題であろう。

 またこのプライマリーバランス2015年まで半減は消費税10%増税を織り込んだ半減だということだから、増税できるかどうか、さらに増税時期も絡んで影響を受ける不透明・不確実な成果としか言えない。

 大体が民主党の公約さえ財源不足で財源捻出に四苦八苦している上に国債発行額も自民党政権よりも増額傾向にあるのだから、このことも影響を与えるプライマリーバランス2015年まで半減の曖昧な実現性であって、「日本の姿勢についても理解をいただきました」と言えること自体が、前々から言っていることだが、「政治は結果責任」を欠いているからに他ならない。

 消費税増税に関して言うと、「社会保障と税の問題でも一定の方向性を決めることができた」と成果の一つとしているが、「社会保障と税の一体化」自体が消費税増税を前提とした改革でありながら、増税時期を曖昧としなければならない指導力の発揮となっていたのである。まだまだ結果とするには早過ぎる「社会保障と税の問題」ということであろう。
 
 「政治は結果責任」を著しく欠いているからこそ、結果を見ないうちから、言葉でいくらでも成果を紡ぎ出すことができる。

 菅仮免の成果の誇りに対して佐藤議員は次のように発言している。

 佐藤議員「要は何をやってきたかということで、殆んどお聞きになって分かりますように、国際会議をこなしてきました、そういう話なんですね、結論から言うと。日程外交でしかないわけですよ。

 あなたは日本の外交戦略として、こういうことを解決した、こういうことをやったというのがありますか。殆んどないじゃないですか。何かAPECのとき話をされましたか。あれは本当に日本国民屈辱的に感じましたよ。胡錦涛さんとの会談。

 あなたは胡錦涛さんの目を殆んど見ずにただ手元のメモを震えながら見ていただけじゃないですか。あんなのはホント日本国民として、それ以外屈辱的な外交はない、そのように私は感じたと思う」

 菅仮免、自分の席で、そんなことはないというふうに首を左右に振るが、激しい反発を示した拒否のゼスチャーとはなっていなかった。

 さらに菅仮免はオバマ大統領との4度に亘る会談に言及して、就任時にギクシャクしていた日米関係を正常な形にしただの、再び胡錦涛中国主席と李明博韓国大統領の被災地訪問を取上げて成果としている。

 菅仮免「単に何かスケジュールをこなしたと言いますが、やはり中国と、温家宝総理、そして韓国の李明博大統領がわざわざ我が国の被災地に足を運んで、そして被災地の食べ物を共に口にしていだだくというのは、私の方から強くお願いしたわけでありますが、それに応えていただくことで日中、日韓の関係、少なくともそういう部分では私は相互理解が進んだと」

 被災地の食べ物を共に口にしたから相互理解が進んだとすることができる認識能力は素晴らしい。日本と中韓との間で領土問題や貿易問題、軍事力の問題、あるいは著作権問題や特許問題等を抱えていない、すべてに利害が一致している平和な互恵関係を結んでいるというなら、食事を共にしたことを以って相互理解が進んだとすることができる。だが、対立する諸問題を抱え、様々に国益を衝突させている。

 いわばこのような処理困難な諸問題を乗り超えずに真の相互理解を築いたとは言えないはずである。

 処理困難な諸問題を自らの政治成果としようとする、あるいは結果責任としようとする厳しい政治意志を持たないからこそ、処理困難な諸問題の解決にまで役立つとは言えないキュウリだかトマトだかを一緒になって口に頬張っただけのことを「相互理解が進んだ」などと甘く考えることができる。
 
 キュウリだかトマトだかを一緒になって口に頬張るよりも被災者救済の優先であり、中韓との間で抱えている処理困難な問題の解決に向けた取り掛かりの優先であろう。

 佐藤議員は退陣表明した首相の居座りが外交の停滞を生じせしめている、外交の空白を生んでいると追及する。

 佐藤議員「首脳外交で成果を上げるには入念な事前調整が必要になります。次の首相が決まったとしても、次の首相の方針が分からないと、外務省始め他の関係省庁というのは本格的に動けない。だから、外交の停滞から早く脱するためには、菅総理は早期に退陣をして、しっかりと次の若い世代の人にしっかりと引き継いで、今年の後半の外交日程にしっかりと準備を整えるべきだと思います。総理の見解を伺いたい」

 菅仮免「あの、今、佐藤さんから今年の外交日程をお示しいただいた。私も就任したときから色々な日程が出てきておりました。本当に考えましたのは、それから1年2カ月が経ちましたけども、残念ながら、我が国、小泉政権は5年間と、やはり長く続きましたが、それ以降は私に至るまで、それぞれ1年前後ということで、そうした中で、なかなか私も最初に出た会議では、また代ったのかと言う顔を各国の首脳からされました。

 G8は2度の出席ということで、今年の5月に行ったわけですが、率直に申し上げて、私はG8ではそれなりの日本に対する注目もありましたし、温かな言葉も得たわけですけれども、残念ながら帰ってくると、不信任案という流れの中で色々な経緯があった。

 私は敢えて個々のことを申し上げるつもりはありませんが、やはり、外交の面から見れば特にですけれども、少なくとも政権は、一人の総理大臣が私は衆議院の任期4年程度は継続する形が日本の国益にとって大変重要だと思います。

 そいう中で、6月の2日に我が党の代議士会で申し上げ、その後記者会見で申し上げましたように一定のメドがつきましたから、責任を若い世代に移したい、その気持に変わりはありません」

 「一人の総理大臣が私は衆議院の任期4年程度は継続する形が日本の国益にとって大変重要だと思います」は前々から持論としている主張である。

 この場合の持論とはそうあるべきだとする考えである。冒頭新聞記事が取上げていた菅仮免の「内閣としてやらなければならないことをやってきたし、社会保障と税の問題でも一定の方向性を決めることができた」は退陣を頭に置いて一区切り付けることができたという感想からの成果発言であろう。

 衆院の任期は政権は維持されるべきだを持論としていながら、それが叶わずに退陣を余儀なくさられた。とすると、「やるべきことはやっているという意味で、残念とか悔しいという思いは決してない」は心にもない強がり、これも言葉によってつくり上げた実体なき成果としか言いようがない。

 菅仮免は政権運営継続の必須条件の一つである参院選勝利を自身の責任によって果たすことができずに惨敗を成果とした、あるいは結果責任とした自身の無能に対する認識を一切欠いている。

 参院選敗北が主として追い詰めることとなった退陣でもあるはずだ。頭数さえ確保できれば、菅みたいな無能でも少なくもと次ぎの衆院選挙まで政権を維持でき、菅仮免が望むように「一人の総理大臣が私は衆議院の任期4年程度は継続する形」を実現できる。

 尤も政権は維持できたとしても、菅仮免みたいな無能なら、「日本の国益にとって大変重要」ということにはならない。

 要は衆院任期4年と言う形式ではなく、首相の政治的資質・能力が実質的問題となるはずだが、「政治は結果責任」意識を欠き、欠くゆえに言葉で成果をつくり上げる中身のない形式主義者だから、“政権衆院任期4年”の持論を延々と持ち続けることになる。

 佐藤議員「あの、総理の話は一般論としては受ける。素晴らしい外交・安全保障政策を推進し、あと内政面でも国民が拍手喝采するような、そういう総理であるなら、どうぞ4年(歓迎の意味で手を小さく叩きながら)、やって貰ったら、それは万々歳だと思います。

 しかし、今総理はご自分で認識しているように党内ですら、総理を支持している人は殆んどいない。今日の読売新聞でも最新の世論調査では、読売、その数字は最低だと出ていたが、18%の世論調査しか、そういう支持率しか出ていない。

 鳩山政権の最悪のときよりもさらに悪い。そいう中で4年遣らせて貰うなんて虫が良すぎると思う」――

 菅仮免は自分の椅子で僅かに顔を赤らめ、目を心なし潤ませて恥ずかしそうな笑いをうっすらと浮かべた。

 一国の首相の資質を問題とせずに衆院任期の4年という時間だけを問題とする。自らが政治的資質を厳しく追求する姿勢を持っていたなら、決して衆院任期の4年を単位とした首相在任期間を求めはすまい。当然持論とすることもない。

 だが、政治的資質を厳しく追求する姿勢を持ち得ていないためにそれを埋め合わせる才能として言葉によってつくり上げた実体なき成果を誇ることによって首相任期を維持しようとする姿勢を持ち得ることになったに違いない。

 参考までに――

 2010年6月29日記事――《菅首相のカナダ・トロントG8存在感、自画自賛 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》

2010年7月10日記事――《菅首相のG8北朝鮮非難首脳宣言採択、「安保理に大きな影響」の客観的認識能力の結末 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》



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