子供手当を「社会全体で子どもを育てる」理念から学歴格差縮小への意味づけの変更も一つの手

2011-07-28 10:30:49 | Weblog


 
 民主党が目玉政策として2009年衆議院選挙マニフェストに掲げた「子ども手当」が今になって始まったわけではないが、迷走を続けている。子どもを社会全体で育てるという理念の元、所得制限なしで中学生以下の子ども1人当たり月26000円支給する政策内容だったが、財源不足から2010年度は13000円。この金額を2011年度以降引き継ぐとしたが、自公がバラマキだと反対。所得制限を設けて、支給額を減じるべきだと主張。

 民主党は赤字国債発行法案のねじれ国会下での通過が子ども手当等の政策の見直しを条件としている自公の協力を欠かすことができないために先ず子ども手当の見直しに舵を切ることになった。

 7月15日になって民主党は次ぎの案を自公に提示した。

(1)所得制限の下限を1800万円とし、実際に制限を行うかの判断は各市町村に任せる
(2)高額所得者の手当を基準額より減額して支給する(「asahi.com」

 だが、自公は「所得の低い世帯に重点配分することにならず、2兆7000億円という総額も賛同できない」(NHK NEWS WEB)と受入れ拒否。

 7月21日になって岡田幹事長が記者会見で、「マニフェストを作成する際に政策の必要性や実現の見通しの検証が不十分なところがあった。その見通しの甘さを国民に率直におわび申し上げたい。各党には、こうした考え方を理解してもらい、赤字国債発行法案の成立に向けて協力してもらえればありがたい」(NHK NEWS WEB)とマニフェストの見直しと見直しに併せて赤字国債発行法案の成立を交換条件とする考えを表明。

 この表明に各閣僚が岡田幹事長の考えに追随する発言を行い、菅仮免も「本質的な方向は間違っていないが財源問題で見通しが甘い部分があった。不十分な点は国民に申し訳ないとおわびしたい」(asahi.com)と同調・追認し、政権担当の正当性を失うことには触れず、鈍感だから気づかないのか分からないが、公約不履行を陳謝。

 岡田幹事長マニフェスト見直し発言の翌22日に民主党は先に出していた所得制限年収1800万円を800万円値切って、年収1000万円とし、1000万円以上の世帯に対しては支給額を月13000円から4000円値切って9000円とする新たな所得制限案を提示。

 大分ケチ臭くなってきた。

 これもあれもすべて菅仮免が参院選大敗を「天の配剤」(=天が与えたチャンス)だとしたにも関わらず、このことに反して逆説に満ちた、与党民主党にとっては防戦一方の野党との攻防といったところなのだろう。

 だが、この1000万円所得制限案の受入れにも自公は難色。「天の配剤」として落ち着くまでには至らなかった。

 石原自民党幹事長「年収が手取りで1000万円以上という世帯はかなり少ないのも事実で、所得制限を現実的な数字に下げていくべきだ。公明党が示した年収860万円というのが落としどころとして良い数字なのではないか」(NHK NEWS WEB

 そして、7月27日の3党の実務者協議。所得制限の対象をバナナの叩き売りよろしくさらに140万円値切って「主たる生計者の年収が手取りで860万円以上」(NHK NEWS WEB)に引き下げる案を新たに提示。

 その上で、〈所得制限の対象となる世帯にも何らかの配慮が必要だとして、年末調整で税金を一定額、還付するか、手当を減額して支給するかのいずれかの措置を講じる方向で調整を進めたい〉(同NHK NEWS WEB)と、あくまでも社会全体で子どもを育てるとする理念に拘ったようだ。

 対して自公が実務者レベルでのすり合わせを終了させるべきだとしたため、3党の幹事長か政策責任者のレベルに引き上げた協議への移行と相成った。

 主たる一致点は「asahi.com」によると、

 所得制限を受けない世帯への支給額

 ▽0~3歳未満に1万5千円
 ▽3~12歳の第1、2子に各1万円、第3子以降に1万5千円
 ▽中学生に1万円とする

 但し自民党内から、「手取りで860万円というのは額面で1150万円以上年収があることになり高すぎる。所得制限の対象世帯への手当ての一律支給は認められない」との異論が出ているという。

 与野党でなかなか纏まらず、民主党内でも纏まらず、自民党内でも纏まらない。参院選大敗が「天の配剤」と言う程にまったく機能していないことにやはり菅のツラにショウベンで、痛くも痒くも感じないのだろうか。感じない図太い神経の持主だからこそ、居座りを決め込むことができているのだろう。

 民主党は所得制限をかけても、かけた世帯に減額して一律支給するか税の一定額還付する考えに拘っている。だったら自らマニフェストを見直しして政権担当の正当性を投げ打つよりも、赤字国債発行法案不成立の時点で解散を断行、改めてマニフェストの正当性を問うべきだが、解散を断行して選挙を戦う力がないというなら、菅仮免が民主党が野党時代の1998年に当時の与党に民主党提案の金融再生法を丸呑みさせた例を挙げてねじれ国会乗り切りの有効な手段だとしたように野党自公案の丸呑み以外に解決の方策はないのではないのか。

 「天の配剤」とは丸呑みのことを言うということである。

 とにかく菅仮免が言い出したねじれ国会乗り切りの「丸呑み」アイディアなのだから、所得制限をかけた世帯には一円も支給しないとする自公案であったなら、その丸呑みとなる。

 所得格差が学歴格差を生み、学歴格差が所得格差を生む親から子への社会的循環が実態として出来上がっている。この社会的循環が大きく影響している若者世代の低所得層の増加であり、低所得(=経済力の低さ)ゆえの未婚率の高さとなって現れているはずである。

 「社会全体で子どもを育てる」理念の実現が立ち行かないということなら、一定の所得以上の世帯の子ども手当を切って、その分を低所得層に手厚く配分するのも学歴格差の解消とまでいかなくても、格差の縮小を図る一つの手になるかもしれない。

 「社会全体で子どもを育てる」から、学歴格差縮小の子ども手当だと意味づけを変えるということである。



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