民主党政権のメリット

2009-04-20 17:10:04 | Weblog

 
 麻生内閣が11年度に景気回復を見込んで消費税を増税し、財政健全化を策しているのに対して、民主党は当面行政のムダをなくすことで消費税増税を補うことと、いわゆる埋蔵金等を活用してそれらの範囲内で予算を執行、政治を行うとしている。

 これは民主党の前々からの持論だが、こういった持論を展開するに至ったそもその原因は自民党政府に於ける税金のムダ遣いと政策の誤りが余りにも目に余る現実があったからだろう。この目に余る現実は国民も承知しているはずである。

 民主党の菅代表代行が4月18日に名古屋市で「政権交代を実現した際には官僚の天下りを禁止するなど行政のムダを徹底してなくし、税金の使いみちを根本から見直したい」(≪“政権交代し ムダをなくす”≫「NHK」インターネット記事/ 09年4月18日 19時3分)と街頭演説したのも、民主党の持論を改めて強調する必要からだろう。

 菅直人「『官僚の悪口を言うと政権を取ったときに困る』とよく言われるが、官僚は一般の国民と感覚が180度逆転しているときがある。税金が増えれば『配れる金が増えた』、『権限が増えた』と思うのが官僚の感覚だ。・・・・税金は使いみちによって意味のある金になるが、今は官僚の天下り先を作るために使われており、財政赤字の原因になっている。これを変えなければせっかく払われた税金が国民の手に戻ってこない」(同「NHK」インターネット記事)

 日本の官僚の業務上の金銭感覚が、それが業務上示すべき金銭感覚でありながら、国民の利益のみに向かっているのではなく、プールした裏ガネや随意契約を利用してキックバックしたカネを飲み食いの代金や臨時収入等に当てる役得、あるいは天下りを利用して高額給与や高額退職金を手にする財産形成といった自己利益にも欠かさず向かって彼らの体質と化している状況は官僚の管理・監督者の立場にある内閣の管理・監督無能からきている惨状なのは断るまでもない。

 いわば自民党一党独裁政治がつくり出した日本の官僚体質・官僚的金銭感覚であり、その偉大な成果としてある行政のムダであり、官僚の私欲体質だと言える。

 当然、満足な政策など実現しようがない。

 麻生首相は就任直後の所信表明演説(08年9月29日)で、「行政改革を進め、ムダを省き、政府規模を縮小することは当然です」と言い、「わたしは、その実現のため、現場も含め、公務員諸君に粉骨砕身、働いてもらいます。国家、国民のために働くことを喜びとしてほしい。官僚とは、わたしとわたしの内閣にとって、敵ではありません。しかし、信賞必罰で臨みます。

 わたしが先頭に立って、彼らを率います。彼らは、国民に奉仕する政府の経営資源であります。その活用をできぬものは、およそ政府経営の任に耐えぬのであります」と言っているが、自民党の歴代内閣は満足に「彼らを率い」てこなかった。満足に「率い」る力もなく、「国民に奉仕する政府の経営資源」として満足に「活用」できなかった。

 いわば日本の官僚を能率よく働かすための管理・監督の責任を十分に果たすことができなかった。その結果の跡を断つことのない予算の膨大な“ムダ遣い”であり、ムダ遣いにエネルギーを殺がれて生じせしめることとなる非能率・非効率であろう。

 麻生太郎は日本の官僚を称して、「官僚とは、わたしとわたしの内閣にとって、敵ではありません」と言っているが、「敵」どころか、ムダ遣いをなあ、なあで大目に見てきたお仲間だったのである。

 当然、「政府経営の任に耐えぬ」はずだが、頭数にモノを言わせて見て見ぬ振りで見逃してきた。ムダ遣いを含めて省益を擁護し、政治家側の族益をのさばらせる政官癒着を成り立たせてきた。

 そのような自民党内閣に「信賞必罰で臨みます」は自らの管理・監督の無能力を省みないおこがましい限りの麻生らしい大口叩き、口先だけのゴマカシに過ぎない。

 麻生は4月8日に都内開催の国家公務員合同初任研修開講式に出席し、新人官僚約700人を前に訓示を垂れたと「msn産経」記事(≪首相が新人官僚に訓示 「私は公務員バッシングにくみしない」≫)が伝えている。

 「私は公務員バッシングにくみしない。公務員は内閣の従業員だ。優秀さを疑ったことはない。・・・・問題は公務員を使いこなせない政治家にある。・・・国民に分かる言葉でしゃべること。君たちのお客は国民だ。現場の意見を聞き、求められていることは何かをつかんでほしい」――

 自民党政治家と官僚が馴合い仲間だから、言っていることが支離滅裂、矛盾だらけの訓示内容となる。最初に「公務員は内閣の従業員だ。優秀さを疑ったことはない」とその能力を信任し、評価したまではいいが、そのあと「問題は公務員を使いこなせない政治家にある」と、公務員を「使いこな」すことができなかった自民党歴代内閣に問題があるとしたなら、そのことを主たる問題として論ずるべきだが、「国民に分かる言葉でしゃべること」などと公務員に対する注意に摩り替えるゴマカシを働いている。

 もし使いこなすことができていたなら、「問題は公務員を使いこなせない政治家にある」といったことを言う必要はないし、なり立ての公務員に「国民に分かる言葉でしゃべること。君たちのお客は国民だ」云々と頼み込まなければならない情けない姿を曝す必要も生じない。

 使いこなせていたなら、先輩公務員が承知していて、順次後輩に伝えていくあるべき公務員の姿となるから、総理大臣がわざわざ訓示する必要もなかったろう。訓示は公務員がそういう姿とはなっていないことの暴露であり、同時に内閣が公務員を「使いこなせ」ていないことを歴代内閣の歴史・伝統・文化としていることの暴露でしかない。

 いわば麻生は口では「問題は公務員を使いこなせない政治家にある」と言いながら、自民党歴代内閣の問題に据えることは自己保身もあるからだろう、客観的認識能力を欠いているからできなかった。使いこなせず、ムダ遣いを放任してきたことも、政官癒着の馴れ合いで、お互いの保身を図ってきたことも見据えることができない。

 このような自己都合な矛盾に満ちた麻生太郎に公務員改革などできようはずはない。

 自民党は民主党が政権を奪った場合のムダ遣いをなくして予算を組むとする財政運営を非現実的だと攻撃している。4月12日の「NHK日曜討論」≪「どうなる暮らし 激論 新経済対策」≫に出席していた自民党の町村信孝にしても、同じ態度を取っている。

NHKのHPでは番組を次のように銘打っていた。

 <「どうなる暮らし 激論 新経済対策」            
                              
政府・与党は補正予算案としては過去最大の15兆円超の新たな経
済対策を決定。景気の底割れは防げるのか?景気回復への効果は?
財源は?与野党の経済政策責任者が徹底討論。         
                              
 (自由民主党日本経済再生戦略会議会長)町村 信孝
 (民主党政策調査会長)直嶋 正行
 (公明党政務調査会長)山口那津男
 (日本共産党政策委員長)小池  晃
 (社会民主党政策審議会長)阿部 知子
 (国民新党政策審議会長代行)下地 幹郎
                         
 (NHK解説委員)島田 敏男>――

 一部抜粋すると、予算に組む財源に関して、

 政府案は
  経済緊急対応予備費
  特別会計準備金
  赤字国債・建設国債――10兆円

 民主党案
  経済緊急対応予備費
  特別会計準備金
  税金のムダ遣いをなくす――としている。

 違いは国債発行か、ムダ遣いの削減かにある。

 町村「あのー、そのー、あんまり、私は民主党さんのね、えー、あれこれ言う積りはありませんが、このムダ遣いをなくして、10兆も20兆もできるんなら、それはやったらいいです。我々も協力しますし、努力もします。現にやってきました。

 しかし、これはいつも議論になるんですけれどもね、や、トータルで、え、1200兆ですかね、違ったかな、一般会計と特会と合わせるとね、ええー、膨大な、アレがあるんだからと。

 しかし、そん中で精査していくと、実際にその削減できるかどうかという対象って言うのは、ですね、そんなにないんですよ。多分30兆少々だったと思います。そのうち20兆円も10兆円もね、できるわけがない。防衛予算5兆円とか、教育関係の予算5兆円とかですね。

 それは共産党のように自衛隊なくせって言うなら、話は別ですけれども。そうではなくしてね、どーおやってこのムダ遣いをなくしてね、その10兆円なりを生み出すことができるか、是非具体的に示していただきたい」

 直嶋正行「かなり具体的なことも含めて、ええ、申し上げてきた積りなんですが、さっきおっしゃったように一般会計と特別会計で、併せて210兆円ありますから、これ大体民間の人の感覚で言うと、一割削減と言うのは難しくないとおっしゃいますよ。ですから、確かに聖域だとか、色々言われているものもありますが、見方を変えて、きちっと決めていきますと、十分代用できる。特に私たちが言っているのは、天下りの問題。天下り先にたくさんのお金が流れている。だから、それはゼロにできないかもしれないけれども、半減するだけで、あるいは天下り制度を変えていくだけで、しっかりお金が出てくる」(以上)・・・・

 東大出だからだろう、町村の言っていることがよく分からない。「そのうち20兆円も10兆円もね、(削減)できるわけがない」と言っているが、09年度の防衛予算は約4兆7千億円計上されているにも関わらず、首尾一貫もなく「防衛予算5兆円とか、教育関係の予算5兆円とかですね」と続けている。

 防衛予算から削減できる余地はないと言うことなら、98年の旧防衛庁調達実施本部の発注に対する三菱重工業やNEC等防衛商社関係企業の億単位の水増し請求、その請求に対する過払い事件や06年の施設庁の元官僚天下り先企業に便宜を図るための官製談合等によるムダ遣い。そして最近では、守屋前事務次官の防衛商社山田洋行からの収賄、接待疑惑事件を忘れたらしい。

 収賄にかかったカネにしても、接待にかかったカネにしても、受注した兵器等の値段につけて請求を受けることになるから、その金額はムダ遣いの形を取るし、元々からして随意契約もしくはそれに近い形で防衛商社の言い値で発注する商慣習からのムダ遣いも発生させてきている。

 01年に山田洋行は当時の防衛庁に納入したヘリ装備品金額を見積書を偽造、正規金額の倍以上の2億円近くを水増し請求している。そのいくばくかは守屋やその他の官僚に接待等の形で流れたに違いない。

 高値発注、高値予算執行となる随意契約は防衛省に限ったことではない。一般入札と言いながら、入札企業を天下り元官僚が在籍する特定企業に限定したりして、限りなく随意契約に近い一般入札を行うムダ遣いも行っている。

 民主党の直嶋正行が「大体民間の人の感覚で言うと、一割削減と言うのは難しくないとおっしゃいますよ」と言っていることはこのことに当たるのだろう。

 ムダをなくすと言うことは限界ギリギリの予算で効果を上げることができる政策を立案し、実行する予算の効率的な編成と効率的な執行を要件とする。創造力の発揮なくして、その効率性は満たすことはできない。

 創造力の発揮による効率性の獲得は公務員の仕事の効率をも上げ、彼らの生産性をも上げることを意味する。

 これらすべては国民の利益につながっていく。単なるムダ遣いで終わらない。菅直人が名古屋の街頭演説で言っていた「払われた税金が国民の手に戻」るを意味する“国民の利益”である。

 政権交代は政治家や官僚の尻を叩くことに意味があると言ってきた。尻を叩くとは仕事の効率を上げ、ムダをなくすことでもある。政治家も官僚もうかうかしていられなくなるだろう。

 町村はムダ遣い削減によって「10兆円なりを生み出すことができるか、是非具体的に示していただきたい」と頭から否定的態度だが、赤字国債発行もせず、当面は消費税増税もせず、ムダ遣いをなくして予算を組んでいくという公約を民主党がもし違えたなら、例え政権を獲ったとしても自分で自分の首を絞めることになる。

 民主党としたら、ムダ遣い削減、行政のムダの徹底的排除を公約に掲げた以上、自分で自分の首を絞めないためにもその実現に必死にならざるを得ない。これまで官僚及び行政のムダを許してきた自民党とその必死さに於いて違いが生じる。

 民主党政権のメリットは偏にここにある。自民党に政権を任せて、国民の利益の喪失にも絡んでくる行政のムダ、官僚のムダ遣いを放任し続けるか、それを断ち切るために一度民主党に任せてみるか。国民の選択にかかっている。


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