必要なのは菅仮免首相の「強い思い」ではなく、実行能力であり、結果である

2011-04-29 09:20:58 | Weblog




 辞任するまでに本免許が取れるのかどうか。この調子では仮免のまま退任という確率の方が依然として高いのではないのか。本人の「一生懸命やっているのに、支持率が上がらないのは分からない」と納得できない様子だということからすると、仮免にとっては低支持率は原因不明のまま推移することになり、改善点に気づかずに指導力ゼロの現状維持――いわば仮免のまま終わることになる。

 菅首相名4月22日(2011年)の記者会見で、「私自身、この大震災のときに、総理という立場にあったひとつの宿命だと受け止めておりまして」と言っているが、実際は仮免のままであることこそが菅直人という政治家にとって総理という立場に立った場合の「ひとつの宿命」だったのだろう。

 仮免が終始ついてまわる「宿命」だということである。

 《お盆までに希望者入居=仮設住宅で目標-菅首相》時事ドットコム/2011/04/26-18:23)

 4月26日午後の衆院予算委員会での小野寺五典(いつのり)自民党議員の東日本大震災被災者の仮設住宅整備についての質問に対して。

 菅仮免首相「遅くともお盆のころまでには希望者全員が入れるよう全力を尽くす」

 と約束した。いや、公約とした。小野寺議員に請合ったわけではない。仮設住宅入居を予定している被災者全員に「遅くともお盆のころまでに」と請合い、全員の入居完遂を心待ちにしている日本国民に同じく「遅くともお盆のころまでに」と請合った。

 記事は菅首相の、いや日本のトップリーダーのこの重大な発言に対する枝野官房長官の記者会見での発言を伝えている。

 枝野官房長官「首相の強い思いとして言ったと理解している。資材の確保は見通しが立っているが、最終的には土地の確保などの(制約)要因がある」

 要するに首相発言を否定した。発言は「首相の強い思い」であって、実行可能なスケジュールではないと。

 仮設住宅入居を心待ちにしている被災者にとっても国民にとっても必要としている事柄は「首相の強い思い」などではなく、スケジュールの着実・強力な具体化である。着実・強力な具体化が伴わなければ、発言はすべてカラ約束、カラ公約、カラ請合いと化す。

 枝野官房長官が上記発言を述べたのは4月26日午後4時の記者会見である。

 《枝野官房長官の記者会見全文〈26日午後4時〉》asahi.com/2011年4月26日18時25分)

 【仮設住宅】

 記者「仮設住宅の入居時期について、菅首相は国会答弁で「お盆のころまでに」と語ったが、それまでの具体的な道筋は?」

 枝野官房長官「詳細は国土交通省にお尋ねを頂きたい。ただ、私が把握しているのは、5月末までの時点で合計3万戸余りの完成が見込まれると。これはもちろん部品、資材の確保と土地の確保ということ含めてだ。その後についても、土地の確保について県の協力、努力をお願いしないとならないところだが、総理の強い思いとして各県にも協力頂いてということで言ったものと理解している

 記者「単なる思いの中での発言なのか。具体的な道筋はないのか」

 枝野官房長官「かなりの部分について、資材等の確保についてはある程度の見通しが立っている。最終的には土地の確保とか、土地に対する様々な建物を立てる以外の要因がある。確定的なところを今言えれば、逆に確定的な見通しで言えるのであって、何とか国も県も最大限のスピードでそういった目標を達成できる方向で努力をしていきたいというのが、今の時点で言えることだ」

 記者「仮設住宅の入居期限は延長する方向で検討しているのか」

 枝野官房長官「これは具体的には原則2年だったと思うので、ある程度の時期で決定というか明確に確定的にさせないとならないと思うが、まずは希望のある方に入って頂くことをしっかり済ませた上で、ただ被災地の状況あるいは原発の方の状況等踏まえた時に当然2年ではなかなか仮設住宅から出て頂くのが難しい地域が少なからずあるということは、ある意味では共有されている認識ではないかと思う。ただ、その手続きというか、そこをいつから始めるかについては、まずは入って頂くことが済んでからだ」――

 いくら「総理の強い思いとして各県にも協力頂いて」いるとしても、実行可能でなければ、意味をなさない「強い思い」で終わる。枝野にしても政治家ならそのくらいのことは理解しているはずだが、単に「総理の強い思い」だとする詭弁でその場を誤魔化したに過ぎない。

 枝野の正体をなす詭弁は次の言葉でも発揮されている。

 枝野官房長官「確定的なところを今言えれば、逆に確定的な見通しで言えるのであって、何とか国も県も最大限のスピードでそういった目標を達成できる方向で努力をしていきたいというのが、今の時点で言えることだ」――

 「確定的なところを今言えれば、逆に確定的な見通しで言えるのであって」とは、「確定的な見通しがつくなら、確定的なことが今言える」と言うことであろう。「確定的な見通し」がついていないにも関わらず、「確定的な見通しがつくなら、確定的なことが今言える」といったことを言うのは詭弁そのものである。

 「政治は結果責任」であって、「政治は努力責任」では決してない。努力しましたが、達成できませんは許されないということである。努力したんだから、責任は負わないは許されない。

 努力は決めた一つの目標の達成に向けて発揮することになる、当然、その目標の達成に対する責任行為となる。その責任を果たすことによって政治の負託を受けた国民に対する責任遂行ともなり得る。

 目標をつくって初めて努力が発生する。しかしその目標を達成するという結果を実らせなければ、努力は責任不履行と化す。

 菅仮免にしても枝野にして、「政治は結果責任」だとする厳しい認識を常に欠いている。欠いているところに「リーダーシップは生れない。

 枝野は一見、菅仮免に付き合わされて「政治は結果責任」意識を欠くことになっているように見えるが、元々の詭弁家を本質としているのである。言葉巧みに自分たちに都合のいいように情報操作する人間にしても、「政治は結果責任」意識を備えるはずはない。

 枝野の仮設住宅に関する詭弁は28日午後の記者会見での発言にも現れている。《枝野官房長官の記者会見全文〈28午後〉》asahi.com/2011年4月28日18時32分)

 【仮設住宅への入居】

 記者「総理は仮設住宅への全希望者の入居について『お盆の頃』と言ったが、国交相は会見で『そういう見通しは立っていない』と言っている。政府として『お盆の頃』という見通しは立ってないのか。

 枝野官房長官「総理の発言自体、正確に記憶しているわけではないが、資材等の確保、人員等の確保、建設場所の確保と、それぞれにおいていろんなハードルあるが、少なくとも資材の確保等について政府として最大限の努力を払って、できるだけそうした時期に入って頂けるようにということに向けて最大限の努力をしているというのが現状だ」――

 建設に向けた障害(=ハードル)として「資材等の確保、人員等の確保、建設場所の確保」を挙げながら、これらすべての障害をクリアして初めて責任を果たしたことになるはずだが、後者二つの障害を取り除いて、「少なくとも資材の確保等について政府として最大限の努力を払って」いると、「資材等の確保」のみが政府の責任であリ、その責任を果たしているかのように見せかける詭弁を働かせている。

 確かに建設資金と資材の確保は政府の責任であり、人員と建設場所の確保及び建設は自治体の責任と分担が分けられているが、政府と自治体が一体とならなければ、仮設住宅の迅速な建設と被災者の入居は実現できない。国民の一部である被災者の生活回復と安心の確保は先延ばしにされることになる。

 菅仮免の「遅くともお盆のころまでには希望者全員が入れるよう全力を尽くす」の“思い”に対して、仮設住宅建設の直接の所管機関である国交省大畠国交相は次のように発言している。《“仮設住宅用地めど立たず”》NHK/2011年4月28日 13時1分)

 記事は、仮設住宅は岩手・宮城・福島の3県で7万2000戸必要とされているが、これまでに完成したのはたったの約2800戸にとどまっていると書いている。

 4月28日閣議後の大畠国交相の記者会見。

 大畠国交相「お盆までに完成できるめどがついていれば、私から申し上げている。特に津波の被害を受けた自治体では用地の確保が難しい。5月末までに3万戸を完成させるめどはついている。できるだけお盆までに仮設住宅に入れるよう、県や地元自治体とも急ぎ調整を始めた」――

 「お盆までに完成できるめどがついていれば、私から申し上げている」。目途などついていないと菅仮免の“お盆完成説”を真っ向から否定している。

 「5月末までに3万戸を完成させるめどはついている」が、必要戸数は7万2000戸だから、差引き4万200戸不足することになる。お盆まで残すところ2ヵ月半だから、スピードを上げて一カ月2万戸近くの建設とすれば、計算上はギリギリ間に合うことになるが、大畠国交相は目途はついていないと言っている。記事題名にもあるように、またテレビでも伝えているが、用地確保が最大の障害となっているのだろう。

 そこで2階建てという発想となった。《国交相、仮設住宅入居、お盆までに「努力」》MSN産経/2011.4.28 11:33)

 この記事では菅仮免の「お盆のころまで」が8月中旬の旧お盆となっている。「5月末までに3万戸を完成させるめど」がついていながら、5月、6月、7月、8月中旬までの3ヵ月半で残る4万2千戸建設の目途がついていないということなら、相当に悲観的な見通しとなる。

 先の記事と同じ4月28日の閣議後の記者会見の報道である。

 大畠国交相「できるだけお盆までには仮設住宅に入ってもらうように努力はしたい。6月以降の仮設住宅の建設がどのような形で実現できるか、関係自治体と詰めに入ったところ。同じ用地でも倍の戸数になる2階建ての仮設住宅が必要かなという思いがある」

 お盆という時期はあくまでも努力目標であって、確約とはっていない。

 大畠国交相は枝野官房長官が「首相の強い思い」といったのと同じように、「思い」という言葉を使っている。「同じ用地でも倍の戸数になる2階建ての仮設住宅が必要かなという思いがある」と。

 既に書いたように緊急に必要としている事柄は「思い」ではなく、具体化の措置である。それを具体化に向けた計画決定以前の「必要かなという思いがある」「思い」の段階にとどめている。

 だが、この28日の大畠国交相の「必要かなという思い」よりも状況が進んでいることを記者会見前日の27日付、《用地不足解消に2階建て仮設住宅 海外製を輸入へ》asahi.com/2011年4月27日9時54分)が伝えている。記事に2階建て仮設住宅の写真が添付してあるから、どんな物か興味のある方はアクセスして貰いたい。

 海外メーカー製のコンテナ式2階建て仮設住宅で、数千戸予定しているという。国内製仮設住宅は現地で組み立てるが、海外製は最初から組み立てが終わっている完成品で、台所、風呂、トイレ、押し入れを常備しているものの、2階建て丸ごとの完成品のまま輸送する関係上、輸送費が割高になるということだが、1戸あたりの建設費用は国内製と同程度の約400万~500万円だという。

 仮設住宅建設だけで約400万~500万円×7万2千戸の費用がかかる。5月に発注し、7月には完成する見込みだと記事に書いてあるが、では大畠国交相は「同じ用地でも倍の戸数になる2階建ての仮設住宅が必要かなという思いがある」などとなぜ言ったのだろうか。

 用地確保難の解決策として外国製仮設住宅の発注を進めていると言えば済んだはずだ。

 再度言うが、仮設住宅建設に向けたスケジュールの達成は決して「思い」ではあってはならない。長期の避難所生活を余儀なくされている被災者がプライバシーを守れない等の理由で各種のストレス障害に陥り、既に健康を害している状況にあるからだ。

 《避難所生活 依然厳しい状況に》NHK/2011年4月16日 4時36分)

 政府が4月6日から10日にかけて岩手・宮城・福島の3県設置の1047箇所のすべての避難所責任者を対象に初めて行ったアンケート調査。回答は31%に当たる323か所。

▽食事
「毎日、主食のほかに、おかずや温かい物が食べられる」60%の避難所
「おかずや温かい物が時々しかない」40%の避難所

▽下着
「替えがなかったり、洗濯ができなかったりして不足している」47%の避難所

▽入浴
「週に1回程度」33%の避難所
「先月の地震以来、入浴できていない」5%の避難所

▽プライバシー
「避難所の中に間仕切りなどが全くない」28%
 
 政府の被災者生活支援特別対策本部「全体的な状況から半数近い避難所が厳しい状況にある」

 記事も書いているように衛生面やプライバシーの問題点を残している避難所がまだ多く残っているにも関わらず、菅仮免は「政府一体となってやるべきことはやっている」と言っている。あるいは、「私自身、この大震災のときに、総理という立場にあったひとつの宿命だと受け止めておりまして」と言っている。

 「政治は結果責任」と言うことは結果を伴わせて初めて責任を果たせたと言えるということだろう。結果を伴わせる意識も努力も欠いたまま、「宿命」だ何だと言っている。

 記事は、〈アンケートの回収は被災した地域の自治体を通じて行っていて回収率が低く、実際には、さらに厳しい状況にある避難所が多いとみられています。政府は当面、週1回のペースで調査を続け、避難所の改善などに役立てたいとしています。〉と結んでいる。

 アンケートを取っている時間も人でも不足しているといった自治体が中にはあって、低い回収率の原因になっているのではないだろうか。

 また、《お年寄り6割、日常生活が不自由に 4避難所で調査》asahi.com/2011年4月28日6時15分)は避難所で日中を過ごす高齢者の6割が床からの立ち上がりや歩行困難となる「生活不活発病」に罹っていると書いている。

 半田一登日本理学療法士協会会長「地震と違って津波で何もかも失い、家の片づけや思い出の品を取りに行こうという動機が持てないでいる人が多い。被災地を離れ、他県の避難所へ避難した人たちも同じ。若くても2週間動かないと、かなりの筋力が衰えるので、元気でいる目標や動機が持てるよう支援してほしい」

 地震と津波に襲われた未だ癒えない恐怖も原因しているかも知れないが、避難所に入る前にはなかった症状であり、行く末の不安や劣悪な環境に閉じ込められていることの憂鬱も影響した心の萎えからの「生活不活発病」だとすると、菅仮免の「遅くともお盆のころまでには希望者全員が入れるよう全力を尽くす」は決して“思い”などであってはならず、「政治は結果責任」でもある手前、具体的な成果を伴わせた着実・強力な結果として現さなければならないはずだ。

 だが、菅仮免には今に始まったことではないが、何事につけてもそういった強い意識がない。

 指導力を欠いていることに相互対応した「政治は結果責任」意識の欠如であるのは今更断るまでもない。

 全く国民は、特に被災者はこの最悪の時期に菅仮免を一国のリーダーとして抱える情けない「宿命」に見舞われたことになる。



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