記者会見の内容を大まかに纏めると、
【財政】分野
1.雇用対策 ――約1兆円
2.地方交付税 ―― 1兆円
3.経済緊急対応予備費―― 1兆円
4.政策減税 ――約1兆円
5.追加経済対策 ――約6兆円
【金融】分野
1.資本注入枠 ――10兆円
2.政策金融 ――3兆円 ・・・・・・・
アメリカ発の金融危機が世界規模に発展、日本の実体経済・実物経済に想定外にして最悪の悪影響を及ぼしている。そのために来年早々に提出する第二次補正予算と平成21年度の当初予算で果断な対策を打ちたいと言っている。その計画内容の発表である。
「対策」には対応型と準備型とがある。例えば予想される首都直下型地震や東海地震等に対する対策は準備型であるが、今回の対策は既に発生し、なお且つ激しく進行中の出来事(経済危機)に対するものだから対応型に入る。準備では遅い。
ところが、過激に現在進行形の「尋常ならざる」経済の悪化に備えるのは一次補正予算では追いつかないからだろうから、埋め合わせるべくそこで打ち出した対策(=対応)が現在進行形に合わせるべきを年明けに開始する。「尋常ならざる」現在進行形は12日の東京金融市場の円相場が一時88円台に急騰したことに集中的に現れている。トヨタは海外での販売が多い関係で、円高が1円進むと、対ドルで 400億円、対ユーロで60億円も減少するという(「asahi.com」)。
このことは麻生首相も「今日も御存知のように、証券市場は株価が下落、為替も円高に大幅に振れておりました」と記者会見の中で触れているとおりに承知事項となっている。
いわば対策が即効性を必要とする対応型であるべきを欠いて、半ば準備型の対策となっている。来年早々に開催される臨時国会を待ち、法案が成立するのを待たなければならないからだ。それまでに準備しておくという後手型となっている。一部を除いてだが、法律として成立・施行した時点から、対策は効果に向けた機能を発揮することになるから、実質的な効果はさらに先送りされる。
このことは「尋常ならざる速さで実体経済、実物経済へ影響し始めて」いるとか、「経済の悪化は予想を超える」といった言葉に反する手回しの悪さではないだろうか。
解雇と同時に社宅からの退去を求められ住まいを失う非正規社員の救済に雇用主に対して労働者1人当り月6万円で3ヵ月から半年の期限付きで助成金を支給する条件で引き続いての社宅入居の要請、受入れ企業に対して年内の無償貸与も対象となるよう遡って助成する条項を二次補正予算に盛り込む。
この点に関しては即効性ある対応型の対策となっているが、「3ヵ月から半年」が条件では、派遣切りが広範囲に深刻化していく状況下でその間に果して新しい雇用機会に恵まれるかといった問題が生じる。
そのためには今回麻生首相が唱えた「生活防衛のための緊急対策」が雇用機会創出に向けた即効性ある対応型の対策ともなっている必要がある。当然、そうなっているか検証しなければならない。
麻生首相は今回の不況は全治3年だと言っている。だが、全治に向けた重症期間がどのくらいかは言っていない。社員寮無償提供要請に期間が「3ヵ月から半年」だということは重症期間がほぼ同じ「3ヵ月から半年」で、それ以降経済が回復曲線を描いてくれないことには、現在は派遣切りが増加傾向にある中で新規雇用創出は簡単には見込めないことになる。
それ以上仕事がないまま収入がないままなら、再度社員寮無償提供を要請し、労働者1人当たり6万円ずつの助成を続けていかなければならないが、それ以上の問題として、仕事が見つからない労働者はどうして生活していくのかということになる。
重症期間が「3ヵ月から半年」以降も続き、1年も2年も続くということになったなら、非正規社員ばかりか、既に始まっている正規社員に対する希望退職募集がさらに加速されて、当然の結果として非正規社員の再雇用の機会はさらに遠のく。
自動車メーカー「マツダ」から契約を打ち切られた派遣社員17人が広島市に生活保護を申請(広島市「今回のように派遣社員の生活保護申請が相次いだ例は過去にない」「asahi.com」)、そのうちの7人に既に支給を開始しているというニュースをマスコミ各社が今日13日に伝えているが、自力では生活できない派遣社員が既に発生しているとなると、社員寮に引き続いて住めることができるケースのみならず、社員寮に残れなかった者に対しては敷金・礼金等の住宅入居に必要な初期費用の貸付制度を整備するケースで、あるいは1万3000戸ある雇用促進住宅への入居を促進する計画といったケースでそれぞれに住まいの点で救済されたとしても、そのことだけでは問題解決しないことを「生活保護申請」は教えている。寝る所があるということだけで人間は生活していくことはできないからだ。
いわば雇用機会創出こそが問題解決に向かう最短の方法であって、住まいの斡旋は一時凌ぎでその場限りの間接的な救済に過ぎない。住まいがあっても、新しい収入がなければ、生活保護に頼るか、年齢が若いからダメだと言われたら、最悪ホームレスになるしかないといった者も出てくるに違いない。
いや、最悪のケースとして自殺を問題解決の手段とする者が出てくる可能性もある。
また、内定取り消し対策ではハローワークに特別相談窓口を設置し、悪質な場合は企業名を公表すると言っているが、企業側からしたら業績悪化を受けて発生した人員過剰に対応した緊急措置であって、契約違反だと言うなら、人員過剰を抱えたまま最悪倒産も視野に入れた業績悪化の加速を覚悟するしかないだろう。
業績悪化が新卒者採用後の4月以降に発生したなら、内定取消しに替えて希望退職者募集に変わるだけのことで、人員整理の対象は違えても派遣切りと同様、企業が雇用機会創出の余裕を失っていることを示している。企業自体がその余裕を回復しないことには問題解決とはならない。
雇用機会創出については麻生首相は「職を必要とする非正規労働者などに、地域において雇用機会というものをつくるために、既に生活対策で発表したものと合わせて、過去最大4,000億円の基金を創設」することと、「21年度において、地方交付税を1兆円増額」し、「これによって、地方が実情に応じて自主的に雇用創出の事業などを実施できるように」することを提案しているが、問題はその有効性である。
断るまでもなく、雇用機会創出は勤め先に仕事があって可能となる。そこに生産がなければ、雇用機会は創り出されない。誰もが承知しているイロハであろう。企業に仕事が創り出されない限り、雇用機会は生み出されない。企業に仕事あっての「雇用」、生産あっての「雇用」である。
つまり、すべての問題解決に向かう真の原因療法となる政策は社会に仕事を創り出すことに結びつく政策であって、政策がそのことに有効であった場合、雇用機会創出はその結果生じる果実に過ぎない。仕事が創り出されることによって、景気も回復する。
「住宅入居費用の貸し付け」も、「内定取り消しの対策として、企業名の公表を含めて指導を徹底」も、「雇用機会創出」のためのに「過去最大4,000億円の基金の創設」も、同じく地方が雇用機会が創出できるように「地方交付税を1兆円増額」も、「雇用維持対策、再就職への新たな支援」も、社会に仕事を創り出し、それが各企業に反映される政策として有効でなければ、バラマキで終わる。
同じく金融対策として並べ立てたどのような政策も、社会に仕事、もしくは生産を創り出す政策でなければ、バラマキで終わることになる。「危機対応業務として3兆円の融資枠」も、仕事が出てこなければ、あるいは生産が上向かなければ、融資は返済困難に陥って、貸し倒れ・借り倒れとならない保証はない。
麻生首相は「少なくとも先進国の中では、最も早く今回の不況から脱出することを目指して、あらゆる努力を行いたいと考えております」と記者会見冒頭部分で請合っているが、この言葉に矛盾はないだろうか。
日本は内需型の経済構造ではなく、外需型中心、輸出産業型の経済構造となっている。このことのためにアメリカの金融危機の直撃とドル不安からの日本円買いによる円高という二つの要因を受けた日本の輸出の鈍化が主としてもたらした日本の今回の不況ということで、世界のトヨタでさえ、「下期(10-3月)の営業損益は1000億円規模の赤字に転落する見通し」(「msn産経」)で、「金融危機以降、トヨタが『ドル箱』にしてきた米新車市場の落ち込みが止まらない。これまで競争力の高かった日本車も販売減を余儀なくされており、トヨタの11月の米新車販売台数は前年同月比34%減の13万307台となった。また、中国やロシアなど新興国市場も減速が著しい」(同「msn産経」)と、日本を代表し、日本経済の牽引役を担ってきたトヨタが外需型中心の企業であり、そのことが原因した“赤字転落”だと伝えている。
その影響が早くもトヨタ系部品メーカーの「トヨタ紡織九州」の派遣切りとなって現れている。「トヨタ自動車系の部品メーカー、トヨタ紡織九州(佐賀県神埼市)が来年3月までに派遣社員の9割に当たる約100人を削減することが分かった。10月から順次、契約期間が終わった人について契約を打ち切っている。」(≪トヨタ系部品メーカー、派遣9割を削減 トヨタ紡織九州≫「asahi.com」/2008年12月12日20時27分)
外需型中心の経済構造から抜け出して内需型経済構造に早急に転換できるとは考えにくいから、アメリカの金融危機を受けた外需型疾患としての日本の景気悪化なら(麻生首相は次のように言っている。「今回の世界の大不況は、100年に一度の規模とも言われております。日本もこの大きな津波みたいなものから、枠外にいる、または逃れるということはできないと存じます)、その性質上、アメリカの景気回復を待って、日本の外需型経済が動く、輸出(=外需)が回復するという手続きを踏んだ不況からの脱出、いわば世界の殆どがそうなのだが、アメリカの景気回復頼みの不況脱出のシナリオということになるから、アメリカの景気回復の後についた日本の景気回復とならざるを得ない。
いわば日本の経済構造が外需型中心であり続ける以上、日本の景気回復はアメリカの景気回復を待たなければならず、「少なくとも先進国の中では、最も早く今回の不況から脱出することを目指」すは合理的認識を欠いた矛盾語となる。当然、社会に仕事を創り出させるかどうかも、アメリカの景気回復にかかっていることになる。
また住宅ローンや設備投資などで1兆円の政策減税を行って住宅建設需要の掘り起こしを計画しているということだが、住宅需要もマンション需要も大きく冷え込んでいる。マンション分譲大手の「日本綜合地所」(本社・東京都港区)が一旦採用を決めた大学生53人全員の内定を取り消したこと、東証2部上場のマンション分譲のモリモト(東京)が11月28日に東京地裁に民事再生法の適用を申請したこと、マンション大手の大京が事業縮小に伴い、40歳以上を対象に社員の1割強にあたる450人の希望退職を募る予定だということ、中堅ゼネコンの若築建設もマンション事業から撤退し、社員の1割強にあたる100人の希望退職に踏み切る等々、悪化の一途を辿っているマンション不況を政策減税のみで軌道修正できるのだろうか。バブル崩壊期と同様に住宅やマンション購入層である正社員でさえ、希望退職の対象となっている今回の不況なのである。住宅ローンを抱えているから、希望退職の募集に応じることはできませんと断ったとしても、企業にとってはそのことを必要人材の基準としているわけではない。仕事で貢献度が低いとなれば、無視される基準となるだろう。
住宅不況、マンション不況と言うことなら、「地方が実情に応じて自主的に雇用創出の事業などを実施できるように」する21年度の「地方交付税を1兆円増額」の使途を麻生首相は道路建設や電柱の地下埋設、あるいは地方の荒れた山林整備(「緑が、植林が、治水が、治山が維持される」と自信たっぷりに言っている。)を考えているようだが、道路建設にしても電柱の地下埋設にしても緊急に必要があっての工事ならいいが、さして必要ではなくても、雇用創出を目的として仕事をつくる必要から工事を考えた場合、これまでのムダな公共事業、ムダな道路建設と同様に雇用創出を果たせたとしても、バラマキに終わらない保証はない。
例えそういう結果にならないとしても、土木工事・建設工事は機械化されていて、一昔、二昔前程には人員は必要としない。専門の土木作業員で賄えるとしたら、畑違いの職を失った者の雇用創出にはさしてつながらず、土木会社・建設会社を潤すだけで終わる可能性もある。
「緑が、植林が、治水が、治山が維持される」と請合った山林整備にしても、日本の山が荒れた原因は安い外材が建設資材として利用・輸入されて日本材を市場から、そして建設現場から駆逐したからであろう。売れない状況が山林業者をして手入れをするだけ赤字となる構造を強いた結果であって、先頃の原油価格高騰時は価格差が縮まったと言うものの、不況によって原油価格の下落と円高で国内外価格差は再び開いているだろうから、国産材・外材の使用状況にさして変わりはあるまい。
このように日本の山が荒れていった経緯は木造住宅に於ける内地材の占める一般的な割合が目に見える柱等を中心に20%、残り80%は外材が使用されているということに現れている。日本材には「間伐補助金」が1ヘクタールにつき23万円が支払われているにも関わらずである。
そもそもからして「間伐補助金」が支払われている上に「1兆円の地方交付税」の使途目的の一つに間伐を挙げる。山の維持に必要であっても、基本的には住宅建設不況からの脱出と価格の逆転を条件として、なお且つ外材に取って代わって日本材が主たる建設資材、あるいは家具材等の需要に間に合う程に山林が整備されていることを条件としなければならないが、この三つの条件を充足するまでに時間がかかるとなると、地方交付税の一部が山の維持にのみ消費されて、このことは決して小さなことではないが、それ以上の発展はなかなか望めないことになる。
京都府のHPだが、面白い記事を見つけた。日付は「平成20年8月8日」となっているから、最近の記事である。記者会見の模様らしく、「主な質疑」と最初に記されている。以下全文引用。青文字は内容を私自身が項目化して付け加えたもの。
<記者 :
先日の森林県連合による要望活動では、主にどういうことを強く求められて、それに対する国や、公庫の反応はどのようなものであったか。
山田 啓二京都府知事:
(負債額/「1兆円超」)この問題は、実は34都道府県にわたっておりまして、林業公社が今抱えている負債、赤字は1兆円を超えております。そして1兆円を超えているだけではなくて、このまま事業を続けていきますと、この赤字というのは楽に2兆円を超えるレベルになってまいります。ただ、林業公社という性格上、非常に長いスパンで木の生育を支援しておりますので、問題が顕在化した時にはとんでもないことになっている。したがって、今でもたいへんな問題なのですけれども、将来に責任を持つ者としては、今のうちにしっかりとした対策を講じて、これ以上赤字が増えていかないような対策を講じる必要があるのではないかというのが、まず基本的な問題意識であります。
(赤字原因)その上で、なぜこうした赤字が出てきたのかと申しますと、もちろん都道府県の事業責任というのもあるのですけれども、この事業自体は国策といたしまして、林業振興、環境の保護という観点から、民間が入れないような奥地を中心に、林業公社によって山林地主さんとの間で分収林契約というのを結んで、それぞれ行っている。そういう形で行ってくださいという農林水産省からの通達に基づいて行われているものでありまして、国策という面がございます。
今、環境問題が大きな問題になっている中で、まさに国策として進めてきたこの事業について、どういう形で収支の改善を図っていくかというのは、単に都道府県だけの問題ではなくて、国にとっても非常に大きな問題ではないかという点をまず国に訴えてまいりました。そして、その負債のうち多くの部分を実は融資という形で担っているのが公庫でありまして、その公庫との関係で非常に切羽詰まった状態になっているのが滋賀県ということになります。これは一括債務返済も含めて、重畳的契約に問題があるとされていることもありまして、その解決が早急に求められているということであります。
(解決策)しかも、これは34都道府県にわたるたいへん大きな問題であります。今申しましたように、国の施策として遂行してきた面があり、もう一度みんなで協力してこの解決策を探っていこうとしている時なので、公庫におきましてもそうした事情を考慮のうえ、その制度の枠組みの中でできるだけ柔軟に対応していただきたいとお願いしてまいりました。
(赤字の付け替え。赤字の押し付け)一方、国としても農林水産省につきましては、国有林野には公費を投入して赤字部門を消していったという事実があります。そうした面も踏まえて、では都道府県分についてはどのような形で解決をしていくのか。総務省につきましては地方財政の観点から、このままでいくと地方財政にとって非常に大きな暗雲になりますので、この問題の解決についても乗り出していただきたいと、財務省につきましては、全体を通じての財政的な問題としてお願いをしてまいったところであります。
国におきましても林野事業の必要性、さらに一連の経緯を踏まえて国としての対応を考えていきたいということの中で協議の場を設けて、都道府県とも話をしていきたいという合意をしたわけであります。もちろん、両方とも非常に財政が苦しい中ですから、すぐに有効な解決策が出てくるかどうかはわかりませんけれども、国と地方とがこの問題について真っ向から向かい合ってテーブルに着く、そういう条件ができたことが大きな進展ではないかと思っています。
(「分収林契約」の方式)もう一つあります。実は、分収林契約に関しては、全く知らない方が多いと思います。要するに、森林整備にかかった費用を全く度外視して、売った場合の売り上げを地主さんと公社が分けるという契約であります。しかし、今までにたいへんコストがかかっておりますので、そうすると当然ながら赤字になってしまいます。
滋賀県さんは、琵琶湖の水源涵養ということで、ヘリコプターで苗木を運んだような時代もあったそうですから、売り上げを分けるとすると、利益などはとても出ない。そういう中で、各府県とも分収林契約の見直しを行っているわけです。
ところが、戦後60年がたち、この制度が始まってからも長い年月がたっておりますので、相続関係が複雑になっておりまして、契約の変更自体もままならない状況になっていると思います。分収林契約の変更方法という問題についても統一的な処理をしておかないと、いたずらに人件費と手間と時間だけがかかってしまうことになりますので、そうした問題についても私どもは話し合いをしていきたい。ですから、今ある負債の処理の問題、今後の事業展開の問題、分収林契約の問題、そしてさらにそれを通じて公庫の対応の問題といったところが、これから協議の中身として出てくることになると思います。>(以上引用)
麻生首相は「市営でやっているもの、町営でやっているもの、いろいろありますけれども、そういったところに人を入れるイコールそれは雇用にもなりますし、同時にそこは緑が、植林が、治水が、治山が維持される」と言っているが、ことはそう簡単な問題ではない。
34都道府県の林業公社が20年8月8日時点で抱えている「負債、赤字は1兆円を超えていて、このまま事業を続けていくと、楽に2兆円を超えるレベルとなる。」
ヘリコプターで苗木を運んだのが祟ったのか、全国最大の1000億円の債務を抱える林業公社が滋賀県だそうだが、1兆円増額分の地方交付税の一都一道二府四三県で割ったその一部を間伐に割いただけでは片付かない問題であることが分かる。
麻生首相は「自分の人件費の穴埋めにするような自治体は考えられませんけれども」と言っているが、雇用創出にまで手が回らずに、林業公社負債の「穴埋め」にまわらない保証はない。例え雇用創出にまわったとしても、「負債、赤字は1兆円を超えていて、このまま事業を続けていくと、楽に2兆円を超えるレベルとなる」状況にさして変化はないだろうから、元気のない雇用となるに違いない。儲けが出てこそ、元気な雇用となる。
こう見てくると、日本の製造業が息を吹き返して退職させられた派遣社員の再雇用へとつながり、住まいや生活の問題を含めた彼らの問題が片付くためには外需型産業構造の宿命としてアメリカの景気回復を受けた日本の外需型経済の復活を条件としなければならないように思えるし、アメリカの景気回復こそが住宅建設不況やマンション不況の強力な助っ人になるということではないだろうか。
そして日本がこのような手続きを踏んで景気を回復したとしても、日本の全体的な産業状況は元に戻るだけのことで、工業の生産活動の高さに比較した農林漁業の生産活動の低さは旧態のまま推移することになるのではないだろうか。
いわば麻生首相が今回提案した「生活防衛のための緊急対策」はアメリカの景気回復の味方なしには有効とはなり得ず、単なるバラマキに終わることになりかねない。正直にこのことの視点を持った政策こそがより確かな効果を見るのではないだろうか。
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