ケイの読書日記

個人が書く書評

門井慶喜 「注文の多い美術館」 文藝春秋社

2020-10-02 15:02:36 | その他
 美術探偵・神永美有(かみながみゆう)が主人公のシリーズ。この人、舌で美術品の真贋を鑑定するというから、美術品をペロッと舐めるんだろうか?と思っていたら違う! 現物や写真を見て、舌が甘みを感じたら本物、苦みを感じたら偽物、というすごく変わった特殊技能を持つ探偵さんなのだ。百発百中、ハズレた事はない。ただ、インフルエンザなどにかかり高熱が出て舌がダメになってる時は鑑定できない。

 そういえば、ものすごく鋭敏な嗅覚を持つ男が、絵画の鑑定をするというドラマが、NHKで放映されていた。絵具の臭いで、制作年代が分かるんだって!

 その美術探偵・神永美有の両脇を固めているのが、京都Z大学造形学部准教授の佐々木と、佐々木の教え子だったイヴォンヌ。イヴォンヌはれっきとした日本人だが、芸術家イヴォンヌと名乗り、奇矯な言動で周囲を悩ませている。

 お話ごとに、由来のハッキリしない美術品が登場し、佐々木先生がウンチクを垂れまくる!!! こういう話って、どこまでが本当でどこからが作者のでっちあげなんだろう? 珍しい情報を手に入れたぞ!とほくそ笑み、友達に自慢気に喋ったりしたら、赤っ恥をかきそう。

 主人公のはずの神永は、実の所あまりパッとせず、佐々木とイヴォンヌでドンドン話は進行していく。イヴォンヌが猛烈に佐々木先生にアプローチするのでバカップルなんだろうと思っていたら、どうもイヴォンヌには双子の姉がいて(顔は似ているが性格は正反対。謙虚でおとなしい人)その姉が佐々木先生を好きなので、なんとかまとめようとしている。しかし佐々木先生には想い人がいて…。

 神永の商売敵の悪徳古美術商・山崎恭子も出てきて、てんやわんや。ただの薄汚い竹とんぼに「藤子不二雄が『ドラえもん』を描いた時、タケコプターを着想するきっかけとなった一品」というでっちあげの由来をつけて100万円で売り捌いた、という凄腕のインチキ業者。
 この山崎恭子さんが本当に良い味をだしている。またこのシリーズに登場してほしい。

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